~異次元大会~   作:バトルマニア(作者)

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挨拶とルール説明

 暗くなった会場に、いくつかまばらに光が差し込む。

 

 その光の中には、天井からぶら下げられたモニターが設置してあり、ありがちな人型のシルエットが映し出されていた。

 

(主催者本人は出てこずに、姿も見せないか…)

『会場広いから仕方がないんじゃない?それと襲撃対策でしょ』

 

(当たり前のように思考を読むなよ)

 

 観測者はそう思い、羊さんにツッコミつつ話が始まるのを待つ。

 

 

 

「どうもはじめまして、私はこの大会の主催者です。

 今日は本大会へご参加いただき、誠にありがとうございます」

 

 開会の挨拶が響き渡り、ザワついていた者たちが完全に黙り込み、辺りは静寂に支配された。

 

「まず、本大会の大まかな概要を説明します。この大会は、バトルロイヤルにて優勝者が決まります」

 

 違和感はなく、人に限りなく近いが、老若男女判別のつかない声。それが静かな会場に響き渡り、大会についての説明を開始する。

 

 

「バトルロイヤルは、全員に評価点が配られ、制限時間256時間でそれを奪い合って点数がもっとも高かった者が優勝者とします」

 

 長い制限時間に、参加者が多いためかと会場内でどよめきが走る。

 

 だが観測者は……

 

(参加者が多いのもあるが、一人ひとりが強いからだろうな。下手すると決着が着かないやつも出てくるだろうから、こりゃ戦闘能力が高いだけじゃ生き残れんかも……)

『多元存在はしぶといからね~。強さもさることながら、厄介さはその上を行くから簡単にはやられないよ』

 

 大体予想はできていたと言わんばかりに、納得した顔をしていた。

 

「この大会での優勝者には、どんな願いでも一つだけ叶えることが出来ます。ぜひ頑張って優勝を狙ってみてください。以上が大会の概要になります」

 

 

 最後の方に聞こえてきた話が、観測者の耳に入る。

 

(何でも叶えられるね。よくあるものだが、どこまで叶えられるのやら……)

 

 観測者は、似たようなものをたくさん見てきたのだろう反応をする。

 

(どこまでできるかわからないが、俺の願いは決まってる。まずは優勝目指して頑張るか)

『そうしてくれるとこっちも楽しめるから嬉しいよ。頑張って』

 

 だがどれも、なんでもと言いながら限界や代償がある場合が殆どで、完全なものを見たことがなかったようだ。しかし観測者はこれにかけているようで本気で優勝を狙っていた。

 

 

 

「次に試合外についての説明をいたします」

 

(……一応聞いとくか)

 

 それを聞いた観測者は、主催者の声に耳を傾ける。

 

「本施設は、他のお客様や参加者などに迷惑がかからない程度であれば、自由に使用可能です」

 

(自由に使わせてくれるって、随分と太っ腹だな)

『元の施設を勝手に使ってるだけだからね。対人トラブル起きなきゃ痛手にならないんだよ』

 

 羊さんの説明も聞きながら、そんな呑気なことを考え、話の続きを聞く観測者。

 

「なお、試合外での大規模戦闘や施設破壊などは、できる限りお控えくださるようお願いいたします。また、もしその様な事態に陥った場合、大会組織側はそれなりの対処をさせていただきます」

 

 大会の説明が終わり、その後もごくごく当たり前な説明が続く。しかし、観測者も含めた一部の参加者たちは、とある事に気がついた。

 

(やはり、俺たちを対処できるほどの戦力が大会組織側にもあったか。こんな大会開くぐらいだから当然なんだろうが、敵対はしたくないな……。てか変なこと考えてる奴いるな。頼むから暴れないでくれよ)

『そっちの方が身のためだね。詳しくは言わないけど、勝つどころかあなたでも逃げ切れるかどうかわからないからね』

 

 さっと周りを確認した観測者は、嫌な気配を複数感じ取り、そんな事を考える。羊さんもそれに同意し、逃げられないことも教えていた。

 

 

「最後に、本大会参加証明書の契約サインをお願いいたします。

 以上を持ちまして、本大会の説明は終了いた……」

 

「ちょっと失礼」

 

 最後の説明が終わろうとしたその時、画面が映り変わり、ワンピースを着た灰銀髪の少女が怪しく微笑みを浮かべて映っていた。

 

(誰だあいつ?大会側の人間じゃなさそうだな)

『あ~あの子は……まぁ見てれば分かるよ』

 

 会場はざわめき始めたものの、少女は勝手に自己紹介を始めた。

 

「私は大世渡 鏡華(おおせと きょうか)。この大会の参加者だよ。同時に大会側の想定してなかった乱入者でもあると思うけどね」

 

 鏡華の言葉に、更に会場はざわめく。

 

「まぁまぁ落ち着いて、別に大会を壊そうなんて考えてないよ。ただもっと楽しめるようにしようと思っただけ。ってことで、ちょっとルールの追加と変更をしていいかな?」

 

「……別に構いません。こちらが許容できる範囲なら」

 

 鏡華が主催者に話しかけ、主催者は渋々といった感じに了承する。

 

「ん~硬いね。こういう時はいつもそうだよなお前は、もっと楽しく気楽に行こうよ。せっかくの祭りなんだからさ。ってことで、私たち乱入者の評価点を倍増させるって事で願い。どうせならわかりやすくしてもいいよ。特定は済んだでしょ?」

 

「わかりました。では得点を十倍以上にして、点数表記を赤くしておきましょう」

 

 残り時間や点数などは注視すればわかるようになっており、乱入者たちはその表示が赤くなるようだ。そうして少々の調整の後に参加者全員の目の前に、一つのウインドウが現れた。

 

 

「……ま、まぁ悪い話じゃないな。点数は得られやすくなったし。にしても細かい説明に禁止事項か……特にこっちが不利益になるようなこともないし、書いてあることは至って普通だな」

『そうだね。主催者はそういうところちゃんとしてるし、約束事はキチンと守るよ』

 

 それを読み、おかしなことが書いてないかを確認した観測者だったが、特にそのようなことは書いておらず、非常に常識的かつ当然の内容しか記載されていなかった。さらには羊さんのお墨付きもあり大丈夫だと判断していた。

 

「大会自体は真っ当だな。乱入者を除いてだが……」

『まぁあの子たちはね。戦ってみてからのお楽しみだよ』

 

 そう思いながら、観測者は契約書にサインをする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてそれと同時に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、どこまでやれるか」

 

 転移が発動するのであった。

 

 

少し聞きたいのですが、当作品に出てくるキャラの強さは……?

  • バケモノ
  • 凄く強い
  • まぁまぁ強い
  • 普通
  • 弱い
  • 凄く弱い
  • ザコ

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