転生者の生存記~このイカれた過酷な世界で~ 作:バトルマニア(作者)
時間とともに空が明るくなり、水科は目を覚ます。
「……そういや今日は休日だったな」
なんどもなんども叩きのめされ、なんどもなんども斬り伏せられ、体に風穴の空いた回数など数えたくないほどの過酷な修業を、時間の感覚が鈍くなるほどおこなった水科は、どうにか休日を取ることに成功していた。
「にしてもこの世界。休日って概念がないとかどうなってんだよ」
狭間の住人は基本、やりたいことをやりたいときにやる者たちなので、ゆっくりするという感覚はあっても休日といった感覚はほぼない。というより、生存に必要なことと好きなことしかしていないので、仕事をしているという感覚が薄いのだ。
「飽きずに戦闘とか仕事し続けられるとかもおかしい……よな?」
こちらの常識に侵食されているようで、前世の記憶があっても感覚が薄れているようだ。肉体は狭間の住人なので当然といえば当然だが、戦闘外では考えていた。
「スマホとかパソコンみたいなのある癖、前世みたいなゲームがないのは違和感あるが……」
スマホを起動し、ネットサーフィンをしだす。しかし目的のものは見つからず、掲示板で暇をつぶしだした。超人たちはなんでもできるし動いてるほうが好きなのが多数派なので、そういったものは少ない。辛うじて将棋やチェスのようなものはあるが、なにかと実戦や現実で役に立つように繋げられているものばかりだ。
「これも過酷な世界故か」
水科は高い能力と比較的住みやすい場所に送られたが、世界自体はどこまでも過酷である。実力と運があれば困ることがないが、それがなければ長くは生きられない。弱者を放置し続け、できるものやれるものだけが生き残るためである。
「まぁ役に立たん奴を生かす必要もなければ、面倒な奴と付き合う必要もないからな。助けることのリスクだってあるし」
積極的に排除するわけではないが、特別助けなどしない。低干渉や不干渉を保つことでトラブルを避け、そして誰にも助けてもらえないのだ。
「救済処置もあるにはあるが……リスク高いんだよな」
資源も世界は無限に思えるほど広く多いが、それでゆとりのある生活ができるようになるのもまた実力者だけだ。逃げ場はいくらでもあるとはいえ、それは逃げ道であって安全地帯とは程遠い。
「組織ね。あとは都会と」
組織に属するというのが一番手っ取り早い。資源が集まる都会に行くのも手だろう。可能性としては高い確率で生き残れる。組織は人的資源を大切にしており使いつぶすことは少ないし、都市や巨大施設などはおこぼれを手に入れるには適している。
「ああ、そういや国とかなかったな、この世界」
大小さまざまな組織が存在する狭間の世界では、国といったものが存在しない。いっても都市辺りが限界で、それらも上位陣やその周りの者たちが勝手に作っているものだ。なので警察機関や法などのものも存在せず、トラブルは当人たちで解決しなければいけない。まさしく無法地帯であるが、モラルや組織同士の牽制で被害は出るが致命傷にはならない。
「金も便利どまり」
やろうと思えば無限に増やせるし、最悪なくてもそんなに困らないのでそもそも信用=金とはならず、金銭は便利ではあるが絶対的なものではない。最低限の保証というだけであり、交渉事で言うスタート地点に立った状態だ。
「やっぱ実力をつけなきゃダメだな。盗賊とか詐欺師とか普通にいるし」
力を持っていなければ自然に淘汰され、賢くなければ俗にいう犯罪者に背中を刺される。
そこまで考えて
「暇だし散歩でもしよ」
せっかくのダラダラできる休日を、散策に切り替えるのだった。