転生者の生存記~このイカれた過酷な世界で~ 作:バトルマニア(作者)
適当なボードのようなものを用意したメリーは、一般流についてわかりやすく書き込んでいく。
その以下の内容がこんなものだった。
・一般流について
狭間世界に一般的に流通している技術の総称。
以下戦闘での基本系
移動系の 瞬動 空動 乱動 無動
斬撃系の 飛斬 空斬 乱斬 曲斬
衝撃系の 重撃 空撃 乱撃 尖撃
認識系の 感知 探知 察知 把握
それを書き込んだメリーは、水科の方へと向き直り説明を開始する。
「まず瞬動。これは、瞬間的に動く技。あなたも 使えるでしょ?」
「そうだな。移動から攻撃まで幅広く使える技だな」
ただただ早く動くだけの技だが、それ故に応用の利く技だ。その速度は、誰がどう見ても一瞬で動いているように見えるほどの速度を誇る。だが過程は発生しているし、認識できないわけではないので普通に対処可能なものでもある。
「私に撃ち込んで」
「え?ああ、わかった」
そう言われ、水科は戦槌を構え『瞬動』で振り落とす。
「それが、技としての『瞬動』ね」
「技としての?もっと慣れろってことか?」
簡単に受け止められ、戦槌を下ろす水科に今度はメリーがナイフを構えた。
「受けて、見せるから」
「あ、ああ わかッ!?」
その瞬間に直線的な突きが水科を襲い、吹き飛びそうになる。
「どんどん いくよ」
「はっ、ちょッ!?」
結果しか認識できなかったメリーの攻撃が、滑らかかつ変則的に撃ち込まれることによって軌道が見えるようになる。だが、それでも防ぐのに精一杯な水科を無視して、斬撃を撃ち込みながらメリーは説明を続けた。
「瞬動は、動きが 単調になりやすい。それを こうやってカバーする。よく見て」
「そ、そうは言っても!?」
言葉で説明するより受けた方がいい。そう思っているのか、攻撃はさらに激しくなる。それに耐えかねて後方へ逃げようとするが……
「その逃げ方 よくない」
「ッ!?」
次を意識せずに突発的に逃げようとした水科をこかすメリー。
「はっ!これでもッ!?」
「で、勝てるの?」
それを高い対応力で即座に体勢を立て直して、瞬動で戦槌を叩き込む水科。しかしメリーには通じず、ナイフで防がれた挙句、軽く押されただけでたじろぎながら後方へ下がる。
「……無理だな。体勢が悪くなり続ける。逆転の目途が立たない……か」
ないわけではないだろうが、それよりもっといい方法がある場合が殆どだ。小さな可能性に賭けるのも悪くないが、それは運も含めて実力が近しい場合の話だ。
「わかってる ならいい。じゃあ 続きするね」
その回答に満足してメリーは、再度ナイフを構えなおすが
「待ってくれ!ちょっと考えさせて!」
「ん?」
ジェスチャーも踏まえてやめてくれと水科が言い放つ。
「てかなんで俺が攻撃受けるんだ?最初なんだからまず技見せてくれるとかじゃ?」
「……?そう なの?」
不思議そうだ。教えるのってやっぱ難しいね、的な顔をしている。気が付いたら出来うようになるような相手なので、当然と言えば当然だが……
「あれだ。俺ってほら、見て覚えるの得意なんだ。だから受けるよりまず先に見たいんだ」
「そう?わかった」
仕方がないなと、水科の前でナイフを振るメリー。
「やっぱそっちの方がいいわ。ありがとう」
「ホントに、こんなので いいの?」
メリーとしては、打ち合った方が手っ取り早いと思っていた。自分もそうだったからだ。やらなきゃやられる。必死こいてできるようにならなければ、次の瞬間には自分は死ぬか再起不能にさせられる。そんな中でやった方が、緊張感で能力が高まりやすかった。
「お~なるほどなるほど、こんな感じか」
メリーがナイフを振り続けるのを観察して、自身に応用して戦槌を振る水科。その素振りは、始めこそ少しぎこちなかったが、大した時間もかけずに精度が高まっていく。
そして……
「よし、ありがとうメリーさん。こんな感じでどうだ?」
メリーは素振りをやめ、水科の瞬動を見た。
「……わかった。ダメ、今のあなたは 何をしても 上手く行かない」
「はぁ?なんだよそれ。ちゃんと振れてるだろ」
あることに気が付いたメリーは、困った様に水科を見ていた。
「ここまで、できていないとは 思わなかった」
「だから何だって」
少し考え、メリーは
「流れが悪い」
そう言ったのだった。
~おまけ~
・一般流について
瞬動……誰がどう見ても一瞬で動いているように見える技。そこに速度差は関係なく、使用と同時に唐突に最高速度に到達する。無防備な相手に攻撃できるみたいな技なので、これをうまく使いこなせないと瞬殺される。
空動……空間移動ができる技。空間を踏みしめたり、滞空したりできる。だが『飛ぶ』ではなく『跳ぶ』なので、何もしないと落ちる。
乱動……存在をぶらす技。正確な位置がわからなくなったり、超回避ができる。だが使用中は耐久が大きく低下する。
無動……存在を不動にする技。壊れることのない超耐久状態になることが出来る。だが使用中は動きが大きく鈍くなる。
飛斬……斬撃を飛ばす技。基本は射程距離によって薄く細く速くなり斬味が増すが、飛斬そのものの耐久は下がる。逆に太くして耐久性と破壊力を増す技があるが、反動があり遅くなる。
空斬……空間などを切断する技。一部の例外を除けば何でも切断できる。
乱斬……斬撃を散らせる技。一発一発は大したことないが、とにかく数が多く対処が面倒。
曲斬……斬撃を曲げる技。飛斬や形が定まっていない斬撃を鞭や糸のように自在に曲げられる。
重撃……多重の衝撃 又は重い一撃が出せる技。ちゃんと防がないと強力な攻撃を受けることになる。
空撃……空間などを破壊する技。ガラスが割れたように空間を破壊し、その範囲をズラす。
乱撃……衝撃を散らせる技。広範囲に大小さまざまな衝撃を受けることになる。
尖撃……衝撃を一点特化にする技。貫徹能力が高く、貫くような衝撃を出せる。
感知……通常の感知。視界外のものを認識できる。
探知……広範囲型の感知。精度が悪いが、範囲が凄まじく広く、特定のものを探したりできる。
察知……無意識での感知。小さなことに気づいたり、突発的なものや意識外からのものに対応できる。
把握……間合いのすべてを把握する感知。精度重視で範囲は狭い。
基本系以外にもたくさんの種類がある。
・水科のダメな所について
基礎の前に技を覚えてしまった弊害は、ムダに高い記憶能力にある。なんでも覚えられてある程度の応用ができるため、必要な手順をすっ飛ばしてしまっていた。そのため、致命的な失敗が来るまで自身では気づけなかったので、今回知れたのは大きいだろう。
いくら能力を高められても中身が凡人なので、間違いやズレがたまりやすくどこかで致命傷になる場合が多い。正直前世の記憶は足枷になっている。