転生者の生存記~このイカれた過酷な世界で~ 作:バトルマニア(作者)
佐地たちが尻尾を巻いて逃げ出したのを見送った後に、ため息を付きながら先を見る水科。
「安倍さんか。わざわざ来てくれ来るとは」
「広場に行くついでに見えたもので」
「朝から元気だな。今日は私が相手だと言うのに」
安倍家のセイカとツバサにそう言われ、苦笑いを返す。
「いつも襲ってくるんだよ。真正面からだからマシな方なんだろうが」
「みんなそんなものよ」
襲われない週などないのが当たり前な世界だ。ここは安全地帯だから少ないが、場所によっては毎日どころか半日ごとに襲撃を受けるところもある。他人や怪物、他組織など、戦闘やいざこざになるものに事欠かないので当然だ。
「外の方がもっとキツイらしい。昇進せねばな」
「何度も言うけどここは安全地帯。強い人もいないし怪物も限定的。手段を選ばない奴もいないから子育てにはもってこいなのよ」
「そう言えば、セイカさん……に限らず、大人たちの多くは外から来たんだっけ?なんでです?」
ここにいる親世代の人たちはみんな外から来た人たちである。なぜこちらに来たのかを気になった水科はそう質問していた。
「子供産んだからかな。あの人も死んじゃったし、娘を置いて先に死ぬなんて考えられなくなって」
「そうなんですか」
戦闘狂である彼女らも、流石に子供が出来ると思うところがあるらしい。それでも親がいない子供が多いのはそう言う事なのだろう。
「大抵の人は組織に預けたりするんだけどね。子供は組織とか社会が育てるもんだとか、親が戦死したり行方不明になる事なんて珍しくないし。中にはほっぽり出したりする人もいる。でも私はそうできなかった」
大人になればなるほど強敵と戦う機会が増え戦闘の危険さは増していく。すると当然ながら、戦死する者も大量に出てくるのだ。そうした背景から、親が個人で子供を育てるよりも、組織や社会などがまとめて育てた方が効率的になる。
「世間じゃ放任主義が当たり前だけど、私は側にいて見守りたいし、成長を見ていたいと、そう思って、危険が少ないここへ来たの。この子を抱えて外で生きるのは、ちょっと厳しいからね」
夫を失い、自分の実力も娘を支えて外で生きるのには、少々身が重かったのだ。せめて町の中とかならいいのだが、それよりもこちらの方が近かったので、安全地帯に来た経緯もある。
「あの人を失ってから少し自信がなくなってしまって。逃げでもあったのかもね。そのせいで勘も落ちたと思うわ」
頷きながら聞いていく二人。娘は以前聞いたことを思い出し、水科は狭間の住人でも落ち込むことはあるのかと思っていた。
「ツバサにも教えられることも少ないし、腕も落ちたんなら尚更ね。いつまでも安全地帯に浸ってることもできないのにね」
教えると言う名の実戦である。みんなそうだが、見て覚えろ、体で覚えろなので結構ハードなのだ。その証拠に、あれでも弱った方なのかと二人は遠い目をしていた。
「近所の人と戦ってるけど、同じ人と戦ってばかりじゃダメね。それにこれ以上弱くなると外に出られなるから、心配してたのよ。この子の事も。だからあなたには感謝してるわ」
だがこの世界で生きていく以上、戦闘は避けて通れないし、誰も避けて通るつもりもない。感じることも思う事もあるが、それはさておき彼ら彼女らは戦うのだ。
「そういうことですか。だから強く育てようと?」
「そうよ。でも強さも重要だけど、一番は隙の無さですよ」
「ああ、それは痛感している」
苦笑いをするツバサに、調子を戻したセイカはそう言う。
「ってことで、ツバサ頑張ってね」
「分かっている……」
「ははは……」
そんな感じで三人は、広場へと向かうのだった。
~おまけ~
・子供の扱い
組織や社会が育てるものだと言うのは、大体合っているが少し違うかもしれない。正確には、子供が理不尽で死ぬような環境を作らない事で、積極的に干渉しているわけではない。大人や守護者や組織は、場所や機会の提供こそすれど、それは手を差し伸べる行為でもなければ、助ける行為でもないからだ。
・親が育てる場合
親が直接育てる場合ももちろんある。その場合、安定して大人になれるし、最悪な事態は回避されやすい。だが守ってもらえるだけで、甘やかしてくれるわけではないので注意。