転生者の放浪記~人間不信の異世界観光~ 作:バトルマニア(作者)
次の日の朝。二人は予定通り気になる店に足を運んでいた。
「ここが魔道具屋か」
「そうみたいだな」
少し大きめの古ぼけた古民家を改装したかのような店に、二人はドアを開けて入店する。
「ん?客か?」
ドアリンが鳴り、それに気づいた店主らしきガタイのいい男が奥の方から出てくる。そして二人の姿を見て……
「ガキが来るような店じゃねえはずなんだが?」
開口一番そう言われていた。
「一応成人はしているが?」
「
「そんなのいんのか?」
ファンタジーでありげな種族名が出てきて、二人はへ~と思う。そんな二人を見た店主は、呆れた顔をして次の事を聞いた。
「はぁ~、まぁいいや。金はあるんだろうな?冷やかしは勘弁だぞ」
「買うかどうかはさて置き、金はある」
「売ってるもの次第かな?初めてだし」
「そうかよ……」
あくまでも様子見で来ているだけなので、いいものがなければ買う気はないのだ。店側としては何とも言えない気分になるが、金のある客を追い出すわけにもいかず、好きにしろと言って整理をしだした。
「さて、どんなものがあるんだろうか?」
「いいのあればいいな」
何かないかなと、商品棚や店内を見ていく。そこには何かしらのアクセサリーや水晶、札や魔法の杖らしきものもおかれていた。
「これは……能力強化用の道具か?」
「魔術札に魔導杖ね。結構いいものだな」
アクセサリーは、特化型から汎用 万能型まで幅広く用意されており、道具は簡易的な魔術を発生させる札や魔法や魔術の発動を補助してくれるものもある。その他にも日常生活で役に立ちそうな雑貨品まで幅広く取りそろえられていた。
(IHコンロとか冷蔵庫?みたいなのもあるのか。完全に家電だな。仕組みは違うが……)
前世であったようなものもところどころに置かれてあり、他の転生者がやったのかな?と思うユウヤ。
「……?店主、これは?」
「ん、あ?それは電話だ。遠くの相手とやり取りできるヤツだよ。売りもんじゃねぇぞ」
棚に大切そうに置かれてあった電話機を見て質問するユウヤだったが、店主は売りもんじゃないと言う。その割にはこの店で使われているように見えなかったので、次はリアが質問をした。
「この店で使ってるようには見えないけど?」
「ああ、注文されてる奴なんだよ。そもそも電話機がこんなちっぽけなところで使えるわけねえだろ。バカたけぇし繋げる相手もいやしねぇ」
少々機嫌が悪そうにする店主。
「へ~、因みに仕組みは?」
「教えるかバカ野郎。それに限らず魔道具は全部だがな。どうしても知りたきゃ弟子になるか王都にある学園にでも行きやがれ」
商売道具を安々と教えないのは当然だろう。機密情報であればなおさらである。
「ふ~ん。まぁいいや」
「こっちも取る気はねぇよ。ところで、いつになったら帰るんだ?どうせ買わんだろ?」
「そうでもない。何があるかわからないから時間かけて見てるだけだ。説明してくれるんならもっと早く済むんだがな」
そこそこの時間商品を見て回っているが、すべての商品を把握したわけではない。しかも乱雑に適当に置かれている物も少なくなく、まるで本人と常連しかわからないようなものも多くあった。そんな初めての場所でいいものを探しているのだから、時間がかかるのもしかたがないだろう。
「……わかった、答えられる範囲で答えてやるから早くしろ」
「じゃあ、旅で役立ちそうな道具はないか?」
「身体能力上げたり耐性付いたり戦闘で役に立つものも」
それを聞いたユウヤとリアは、さっそく要求を伝える。
「はぁ?もっと具体的に言えよ……。まぁいい、俺だったらで考える。じゃあ……」
なんとも適当な質問に、めんどくさそうに商品を紹介する店主。それにより紹介されたのが以下のものだった。
・魔除のランプ……魔力を込めることで周囲を照らすことができる。ランプそのものに魔物除けの効果もある。
・簡易結界杭……杭を打ち込んで簡易的な結界を張ることができる。
・火打ち棒……魔力を込めて先にある金属部に物を当てると火花が散る。
・保温毛布……一定の温度を保持してくれる毛布。
・自動水筒……少しづつ水が溜まっていく水筒。
・収納袋……見た目より多くの物が入る袋。
・快速の腕輪……魔力を込めることにより敏捷性や機動力などを大きく引き上げてくれる。
・耐性の指輪……あらゆる耐性を少し上げてくれる。
・生命のネックレス……回復力が少し増加し、大きなダメージを受けた際には砕けて所持者を大きく回復させる。
「とまぁ、これぐらいだな。うちで用意できるのは」
「なるほど。じゃあ魔除のランプと保温毛布を二つづつ。あと快速の腕輪と耐性の指輪を買いたい」
「あ、兄貴。ついでにこれも」
自分が持ってなさそうで、かつ便利そうなものを選ぶユウヤ。そうやって店主と話していると、リアがこれもと言って商品を出す。
「ああ、わかった。店主これも頼む」
「保全札と……これどこから持ってきた?」
「普通にあっちにあったけど、ダメだった?なんか強そうだったし、兄貴に合うと思って」
そう言い奥の方を指さすリア。どうやら二人が話し込んでいる内に勝手に奥の方から見つけ出してきたらしい。
「それは……まぁいいか。買うんだったら説明するが?」
「じゃあ買う。説明頼む」
そう言い、乗り気じゃない店主はリアが持ってきた何の変哲もない幅広めの薄い金属性の腕輪の説明を始める。
「これは俺が作った最高傑作の一つだ。つけてるだけであらゆる能力を強化水増しして、素の力を引き上げてくれる。だがその代わり一度つけると外せなくなっちまうんだ。その上に他の強化系の装備とか道具の効果を打ち消しちまう、わかってるだけでもこれだけの欠陥を抱えたもんなんだ。」
苦い思い出しかないのか、昔を思い出して苦笑いをしていた。だがそれを聞いた二人は……
「そうか?その分強化は強いんだろ?常時発動系なのに」
「それが全部だしな。どこを取っても並みの特化型にも劣らねえんだし」
普通に便利なものと捉えていた。
因みに魔道具に限らず能力などには、常時発動系と任意強化系と任意発動系の三つの種類がある。
・常時発動系……常に発動しているもの。持続力は随一だが、それ以外は他の二つに劣る。
・任意強化系……常にある程度発動して、意識すると更に効果が増すもの。他二つの中間的存在。
・任意発動系……意識的に使うもの。他の二つよりも強力だが、意識的に使用しなければいけない。
それに加え、汎用型と特化型と万能型があった。
・汎用型……幅広く使えるが、すべてが並み程度に収まる。
・特化型……一つの事に特化させ、その能力を最大まで高めたもの。
・万能型……すべてが高水準の汎用型の上位互換。ただし個々では特化型には劣る。
そういうものがあるのだが、店主は常時発動系で万能型という強力な装備を作ろうとして生まれたのがこれと言うわけだ。
「いやいやちゃんと考えてみろよ。一度付けると外せなくなるんだぞ。重ね掛けさえできやしねぇ。それに詳しい副作用もだ。こんなもん中途半端のな代償武具みたいなもんだぞ」
「人が作ったものだからか?」
人は日々技術を進歩させている。そんな技術の目標の一つに、迷宮から産出される道具を超えることというものがある。それを強引の代償ありきで作り出したのがこれというわけだ。
「……そうだ。迷宮産の装備に勝るものを作りたかった。だから大金叩いて作ったんだ。前の店まで担保にしてな。だがこのざまだ。今は強くても、未来それ以上のものが出てきたらお役御免になる程度のな……」
技術は日々進歩しており、迷宮から産出されるものも少しづつ強力なものも出てきている。そんな中こんな一度付けたら外せないようなものは流行らない。しかも重ね掛けが出来ないものならなおさらだ。
うんうんと頷き、ユウヤは……
「わかった、じゃあ買おう。いくらだ?」
「今の話聞いて変わらんか……わかった。全部合わせてこれぐらいだ」
なんとも言えない顔をした店主は、少し考え振り切れたような表情をして金額を提示する。
(高いが……思った以上じゃない? 店主、これでいいのか?」
「別にいい。どうせホコリ被って終わっていたもんだ。使ってくれるってんならそれでいい。これはそのお礼だ」
どうやら大分安くしてくれているようで、ユウヤはそれに感謝しながら会計を済ませる。
そして……
「じゃさっそくっと、確かに外れない……というか」
「染み込んだ?」
「こうなるのか……」
ユウヤは腕輪を付けると、腕輪は染み込むように腕の中へと入っていき、その部分の肌に金属のような性質が加わる。
「力が上がってるな。調子もいい」
「想像以上だ」
「かっけぇ」
そのまま馴染むように右腕の肘から先を金属のようにして変化が止まる。
「買ってよかった。ありがとう」
「こっちもだ。使ってくれてありがとよ」
そうして、ユウヤたちは店を出るのだった。