転生者の放浪記~人間不信の異世界観光~ 作:バトルマニア(作者)
朝になり、二人はさっそく宿を出る準備を始める。
「朝飯は食わねぇの?」
「食わん。そう伝えてある。少しでも早くここを離れたい」
荷物も少ないため簡単な会話をしながらさっさと準備を済ませたユウヤたちは、部屋を出て受付に行っていると
「……考えが甘かったか。まぁいい」
「朝一から修行とはスゲーやる気だな」
朝一なら誰もいないだろうと踏んでいたのだが、窓から外で剣を振っている副団長を見つけ、嫌な顔をするユウヤ。
「流石にあいつ以外はいないらしいな」
「運良かったじゃん。まぁ起きてない訳じゃないみたいだけどな」
外に出ているのが副団長だけと言うだけで、宿の中からは複数人の目覚めている奴の気配を感じ取る二人。それを悟っているのか、二人の足は自然と早くなる。
「おはようございます。お早いですね」
「ああ、今日は出発日だからな」
「色々ありがとな。快適だったぜ」
丁度今来たばかりの受付にあいさつを交わし、手続きを済ませていく。
「誰か来るな」
「無視だ無視」
そんなことをしていると、部屋から一人の男が出てくる。それは騎士団の団長であり、外に出るために受付のある出口へと近づいてくる。
「ん?見ない顔だな。この村の子供か?」
「いや違う。単なる旅人だ」
団長に話しかけられ、ユウヤは不快感を隠しながら答える。リアは空気を読んで一歩下がったところにおり、下手に話を広げないように黙っていた。
「そうだよな。検査の時も見えなかったし、気配も特に感じなかったな」
「それがどうかしたか?」
一瞬で男の実力が分かり、ムダなことを言わないように言葉を選びながらぼろを出さないように惚けた。
「いや別に、普通の奴だなって思っただけだ」
「そりゃな。俺はアンタみたいに強くないんだ。当然だろ」
ユウヤは目の前の団長のように強くはない。勝ち筋はあるが簡単には勝てないだろうし、逃げた方が対処は楽だ。だが戦闘面以外は、すべてユウヤの圧勝といって言い程差があった。話と同時にリアに意識がいかないように多少の細工をしている程度には。
「俺みたいにね。じゃあそれなりには強い自信あるんだ?」
「逃げ足には自信があるな。これでも旅人なんで」
違和感のないように最低限の情報と真実だけをぶつけ続ける。
「旅人ね。今時珍しい。大抵は探索者だとかなのにな。所属してないのか?」
「生憎と興味がないもんでな。身軽な方がいいんだっと、すまんな。失礼する」
入り口を占拠するのも受付を待させるのも悪いと、話を切り上げ外に出る。それに付いてくる団長が外に出た後、副団長の女性が団長に声をかけていた。
「珍しく朝早いですね。どうしたんですか?それにあの子たちは?」
「単なる旅人だとよ。スカウトなんざ面倒なことしねぇぞ。任意だし、そもそもこの村の連中じゃねぇしな」
素振りをやめた副団長と団長が雑談を開始する。それを見計らって、ユウヤたちは普通に宿から離れ村の外に向かっていく。後ろではなにやらガヤガヤ話しているが、ユウヤたちにとっては関係のない話だ。
「兄貴、あいつら何話してんだ?」
「俺たちをスカウトしようかだの、おかしくないかだの余計な事この上ない話だ。近づくもんじゃねえよ、あんな連中」
ユウヤには団長と副団長の話が丸聞こえだった。その内容は、関わろうとして来たり敵になるかもしれない、不愉快しか感じない情報群だ。まぁそれ以外にも、森の話やこの国の事など多くのことが知れたので、それで相殺すればいいかと心底ため息をついていた。
「そっか、町にはあんな奴一杯いんだろ?大丈夫なのか?オレは行きたいけど」
「俺も同意見だ。だから細心の注意を払っていくぞ。対策も増やさねぇとな」
今回のような相手は初めてで、大半は上手く行ったもののまだ粗が出ていると反省するユウヤ。そしてさっそく対策を考え、今後の行動と情報収集を怠らないように心に誓うのだった。