転生者の放浪記~人間不信の異世界観光~ 作:バトルマニア(作者)
馬車で二日程度かかる距離を移動していた二人は、夜になったことにより野営をする事にしていた。
「アルラウネがくれたテント便利だな。力流せば組み立ても片付けも素早く全部してくれるなんてよ」
「それに魔除とか虫除、維持機能とかもつけてくれてるからな。ランプとの相乗効果で魔物の心配はないだろ」
ユウヤが亜空間から取り出した大きめのアタッシュケースのようなものに力を流し込むと、瞬く間に大人二人が入っても余裕そうなテントが組み上がる。それを見た二人は、アルラウネの仕事具合に感心していた。
「でも耐久力には自信ないから気を付けてって言ってたな」
「便利な術式の付与を重視してるから、素材は自前の使ったって話だ。まぁ壊そうとしなきゃ大丈夫だろ」
アルラウネは、迷宮としては森由来の素材と個人では術式付与が得意だ。そのお陰で低コストで高品質のものを多く提供できたのだが、裏を返せばそこから離れた条件や実力を大きく超える素材はあまり出せない。とは言え、このテントも弱いわけではなく、軽い戦闘の余波に耐えられても、直接攻撃には耐えられない程度のものという事だ。普通に使う上では何の問題もない。
「ホントだ。骨組みとかめっちゃ薄そう。確かに丈夫そうだけど、こりゃ強めに力入れて曲げたら折れそうだな」
「だな。あいつも自慢げにミスリルとか言ってたし、凄いのなんだろ」
限界までコストカットとコンパクトにするために収納技術を使用したため、見た目によらずペラッペラだ。まぁ強力な術式付与と、骨組みにはそれに適した軽くて丈夫なミスリルを使っているので、最低限の耐久性は保証されている。
「じゃ俺は晩飯作るか」
「俺は素振りしてくるわ」
テントの感想を言い終わった二人は、各々やりたいことをしだした。リアは少し離れた場所で素振りをし、ユウヤは晩飯を作るために、亜空間から器具と食材を取り出す。
「米炊いて肉や焼いて、適当に野菜と果物も出そうかな」
殆どが下処理したものなので、ちょっと手を加えるだけですぐに終わる。そして三十分もかからずにすべての作業を終え、リアを呼んでいた。
「いつも通り美味そうだな。てか料理の作り置きすればもっと早いじゃん」
「そんな便利なもんじゃねぇんだよ」
土魔法で適当に作った机の上に置かれた料理を見ながら、そう言うリアに言い返すユウヤ。ユウヤの使う亜空間は、入れ物としては便利だが、事前に料理などを作って置いておくことには向いていない。そのため下処理したり、冷凍保存して必要に応じて取り出して料理するのだ。
「腐りにくいだけで腐らんわけじゃないし、温かいまま保存できるわけもないんだ。冷凍保存とか真空保存できる料理ならまだしも、それ以外はダメだ」
「冷めちまうんだっけ?オレの闇の中も兄貴の亜空間と似たようなもんだからなんとなくわかるけど、毎度米炊くのとか大変じゃないか?温める技術があるんならそれでいいじゃん」
肉は焼いたものを、米は炊いたものを用意しておけば手間も時間も省ける。それらを冷凍保存や真空保存が出来るのであればもっといいだろう。こういった方法はいくらでもあるんじゃないのかと、リアはユウヤに言っていた。
「温めたって、美味くならねぇだろ。時間経ちすぎると劣化するし、水分抜けて不味くなる。何より作り立てが一番いいんだよ」
「細胞が崩れてどうこうだったな。栄養も減るし、やっぱ難しいか」
ユウヤはあくまで一般人。知識豊富で実験の機会が多かったとはいえ、できないことは多い。それに浅く広くを重視した知識しか持っていないので、魔法や能力の力技があっても限界はある。
「ま、そう言う事だ。時間でも止められるんなら話は別だろうが、俺はそんな大層な力は持ってねぇ」
「だな、言えてる」
そんな話をしながら二人は食事を楽しむのだった。