転生者の放浪記~人間不信の異世界観光~ 作:バトルマニア(作者)
何かが這いずる音が聞こえる。
「……なんだ?」
気が付いたら朝になっており、日の光が眩しい。
そんな事より赤ん坊にリンゴやらなきゃな。そう転生者は、寝ぼけた思考でそんなことを考えながら籠の方を見る。
「ハ?なにこれ?ってそうじゃない!」
何やらスライムの様なものが籠の中に入り込もうとしていたのだ。それを見た転生者は、急いで手元にあった木の棒でスライムを殴り飛ばす。
その瞬間、粘度の高い液体の様なものを殴った感覚が転生者の手を襲った。
「重ッ!」
それでも強化されている転生者の肉体の敵ではなかった。それを喰らったスライムは、体の一部を失い力なく潰れる。そこで完全に倒したのか棒でツンツンと突き無力化出来たことを確認してから、赤ん坊の事を見る。
「……良かった」
籠の揺れにも一切反応せず、まだスヤスヤと眠っていた。そう赤ん坊の様子を眺めていると、転生者に変化が起きる。
「なんだこれ?」
何かが入ってきた感覚とともに、体が少し軽くなったのだ。だがそれ以降は特に目立った反応が出ない。
「まさかこれが魔素って奴か?」
どうやら、この世界では魔物を倒すとこんな感じに魔素か何かを取り込んで強くなれるようだ。それに気づいた転生者は、入ってきた力を動かしてみることにした。
「動くが……鈍いな」
創作物のように思ったようには動かないらしい。それに加え大した効果も見られない。それが練度の低さから来るものなのか、そういう性質なのかは転生者にはわからなかった。
「そういや魔法ってのもあったな」
能力を使い、出来る限り情報を集める。しかし一向にやり方は出てこずに、ズキズキと頭が痛みだしたのか表情を歪め、諦めたようにため息をついた。
「はぁ~何もわからん。きっかけがないことには始まらんか」
何でもいい。偶々できたでも、誰かの魔法を見るでもやらなければ情報は出て来ない。だがここにそんな都合のいいものは存在しなかった。だから地道にやっていくしか無いのだ。
「ん?動きがスムーズになってきたな。試しにやってみるか」
こう悩んでいる内にも転生者は魔力をいじくり回していた。その結果、歪ではあるもののある程度の自由が利くようになり、操作のあるなしで試しに足に力を込めて跳び上がる。
「強化……されてるのか?」
魔力を使ったときのほうが若干であるが高く跳べていた。だが誤差もいいところで、感覚を研ぎ澄ませ無いと実感がわかないようだ。
「もう一度、今度は……」
そのため一応と再度込める魔力を増やして跳躍してみると、さっきよりも高く跳ぶ事が出来た。それにより強化の存在を革新したが……
「足……というか全身が痛い」
やはり込めれば込める程出力が出るようだが、体の方がついて来なくなるのか、やり方が間違っているのか、ここでは判断が着かない転生者は、それをあとに回し次のことをする。
「リンゴをすり潰す……事はできないか」
次に魔力を少しだけ体外に出し、リンゴを包み込もうとした。しかし指先から漏れ出た魔力は、すぐさま制御不能になり分散してしまう。どうやら魔法やら不思議な力でどうにかなるのでは?と考えていたらしい。
「ん?起きたか。……ほら、これ食え」
赤ん坊が起き、眠たげな目で不思議そうにこちらを見てくる。それを完全に起こした後に、リンゴを口に含んで細かく噛み砕き、赤ん坊に食わせる。
「……案外食うもんだな」
嫌がると思ったようだが、腹でも空いてたのかすんなりと食べてくれたので安心した様子の転生者。そうしてしばらくの間、赤ん坊に飯を食わせていた。
「もう少しマシにしてやりたいが、今の俺には不可能だな。少しの間は我慢してもらおう」
そう呟き赤ん坊が満足するまで食事を済ませたあと……
「よし、集落を探しに行くか」
身体能力を強化し、籠を持ち上げ集落を探すために走り出す。それから数時間の間移動をし続け、魔力をより使いこなせるようになり、疲れはしたが途中少ない休憩で移動ができていた。
「これも能力のお陰か。成長速度が速い」
今の転生者は、大人顔負けの体力と身体能力を有していると言っても過言ではないだろう。それは強化があるというのも関係しているが、なにより能力『万能』による影響が大きかった。万能により出来ることの最大化が行われているため、技術の取得も成長も異常に速いのだ。
「にしても何もないな。それにちょっと疲れて来たし、残ったリンゴでも食べながら休むか」
とは言え消耗するものは消耗する。体力も魔素も同年代より高く、回復も早いというだけで無限というわけではない。因みに魔素が完全に無くなると、怠くなるので余裕があるうちに休んどいた方がいいだろう。それに魔力を使えなくなると身体強化が出来なくなり、移動速度が格段に落ちてしまう。
「結構走ったつもりなんだがな」
無差別に走り回っているせいか、方向を間違えているのか、一向に目的である集落にはたどり着かない。それどころか離れてどんどん森の奥深くに入り込んでたりと考える転生者。
「……まあそん時はそん時で、森の中で生活すりゃいいか」
苦労はしそうだが生活出来ない程ではない。だがそうするにしても人がいる場所を確認しておきたい。それは安全圏の確保という意味で非常に重要なことであり、転生者がそう思うのも同然だった。
「適当に食糧になりそうなもん集めるか」
休憩するたび集めているが、一回で集められる量も持てる量もあまり多くはない。幸い食料になりそうなものは割かし多い方で、すぐすぐ餓死なんてことはないだろう。
「なんにしせよ生活環境を整えなきゃな。さて行くか」
そう思い転生者は移動を開始したのだった。