転生者の放浪記~人間不信の異世界観光~ 作:バトルマニア(作者)
見たいものは大抵見終わり、帰路に着こうとしていた時だった。
「兄貴、あれ」
「なんかの店か?」
迷宮のある場所から少し離れた場所に、こじんまりとした店があり、リアはそこに指をさしている。その店からはいい匂いが漂っていた。
「そうだな。食っていくか」
「よし!そうしよう!」
今泊まっている宿には食事は付いていない。ユウヤはいつも通り、戻り帰ってから何か簡単なものを作るつもりではいたが、たまには外食もいいだろうと喜ぶリアと共に店に入った。
「いい匂いだな」
「そうだな」
立ち込める蒸し暑さに懐かしい匂い。
そして……
「いらっしゃい!」
店主と思われるガタイのいい男からの大きな声。
店の中は少し汚れているものの、最低限の掃除が行き届いた感じで、数人の客が席に座り食事をしている。
「ラーメンか」
「兄貴が言ってたヤツだな。楽しみだ」
どうやら話に聞いていたラーメン店だったようだ。しかも結構旨そうなようで、二人とも期待の眼差しでメニューを見ていた。
「兄貴、あれ旨そうだぞ」
「豚骨ラーメンか。じゃあ俺は塩だな」
席に座り、壁に付けられている板に書いてあるメニューを見ていくと、この世界特有のものから、なんと前世にあったようなメニューがズラリと並んでいた。それを見て店主に注文を付けて再度メニューを見る。
「醤油に味噌もあんのか」
ポツリと呟く。西洋風の世界観を見せ来たユウヤにとっては、少々違和感のある構成だ。だがそれも仕方がないだろう。転生者がいる世界なので、誰かが持ち込んだと考える他はない。
「どんな味なんだろうな?」
「匂いからして美味いんだろうな」
前世通りならきっと旨いのだろう、そう考えてリアと話す。そんな感じで雑談をしていると、頼んだ品が出される。
「おお旨そうだ!いただきます!」
リアはさっそくと麺をすすり始め、美味いうまいとトッピングも食っていく。
「がっつくなよ」
そんなリアを見ながらユウヤは自分の塩ラーメンを見た。薄い液体に黄色い麺、それとその上に乗っている肉や卵などのトッピング。少し違うところがあるが、それは世界が違うからだろう。ほぼ前世で見た塩ラーメンそのものと言っていい。
匂いに関しても特に違和感もなく、逆に食欲をそそる。
「これは……」
味は塩ラーメンに似ているが、俺が知っているものとは少し違う。詳しくは言えないが、さっぱりしているのは間違いない。
「うめぇな!こんなの初めて食ったぞ!」
「確かにな」
「いい食いっぷりだな、お二人さん」
そんな感じに食っていると、いい食いっぷりだなと、店長が声をかけてくる。
「おお、旨いぞこれ、ありがとな」
「そう言ってくれると嬉しいぜ、嬢ちゃん」
そして店長とリアの話が始まり、ユウヤも相槌は返事をしながら聞いていた。これが美味いとか、どういう食材や香辛料使っているのかとか、こだわりが何なのかを、リアは心底楽しそうに聞いていた。
(ラーメン店は他にも色々あるんだな。ここは本家の忠実に守りながら、それをブラさないようにアレンジした店か。醤油とかの調味料は分からんな)
調味料は高価なものが大半だ。それは醬油や味噌も例外ではない。買いたければ、町に出るか専門業者に頼るしかないのだ。
(まぁ見かけたら買ってみるかな)
そうして会話も終わり、あとは食べるだけだと追加注文した料理も含め、残りの食事を楽しんでいた。
「量も多いし食べ応えがあっておいしかったよ」
「ん、旨かったぞ。腹いっぱいだ」
「まぁな。探索者は大食いが多いからな。残らず満足できるように絶妙な量にしてるのさ」
汁だけでなく、麺やトッピングもそれに合う様に量などが調整されていて、一杯で十分満足で出来るものだった。なので追加注文した品に苦戦したぐらいだ。話に乗せられてリアと共に頼んだのは間違いだったと少し後悔していた。なおリアは普通に食い切った。
「会計はこれぐらいか」
「ちょうどだな、助かるわ」
そう思いながら、会計のために懐から金を取り出し、ぴったしの額を店主に渡す。そしてそのまま店を出ようとしたが、その前に気付いた事があった。
「客が多いな。人気店だったのか」
「あんなけ旨いんだから客も多いんだろうな」
溢れる程ではないものの、席が無くなるくらいには客の数が増えていた。どうやら探索者が帰りに一杯食っていくらしい。丁度会計時にそれが重なったのだ。
「もしかしてここじゃねえの、兄貴が言ってた美味い飯屋って」
「そうかも知れないな」
満足できるくらいの料理は食わせてもらった。なのでそういう事にして、二人は帰路に着くのであった。