転生者の放浪記~人間不信の異世界観光~ 作:バトルマニア(作者)
住居の製作と定住に成功した転生者は、家の前にある切り株に腰を下ろし、素振りをする妹を眺めながらくつろいでいた。
「ここまで生き残れるとはな」
転生者も赤ん坊もすくすくと成長し、およそ五年の月日が経っていた。そして赤ん坊は動き回ったり意思疎通が出来るようになり、転生者は非常に過ごしやすくなっていた。
「それに修行もしてたから随分と強くなった。俺もリアも」
因みに二人がこの約五年間で何をしていたのかというと、動けるようになった妹と心身共に鍛えながら生活の基盤を整えていただけだ。その結果、見た目はさておき中身は子供とは思えないほどにまで成長していた。
「色々物を作るのは大変だったが、能力で何とかなったし、あいつには感謝だな」
朝起きて体を動かし、探索して家具や服を作って、そして修行を繰り返す。他にやる事もなかったことも合わさり、大抵の事はできるようになっていた。
それに加え不思議な事に、この森は年々豊かになり色々なものが手に入るので、質はともかく素材に関してはたいして困らなかったのだ。だがそれに比例して魔物も現れ始め、それが時々拠点にやってくるので少々厄介でもあった。
「どうしたんだ兄貴?」
「いやなんでも、今日も平和だなと思ってな。……そういやリア。もうそろそろ狩りにもついてきていいぞ」
転生者が作った木刀を振るのを止め、妹がそう話しかける。それに対し、呑気に返答しながら妹の名前を呼ぶ。一応名前がないと呼ぶのに困るからと、リアという名前を名付けていた。因みに転生者は、ユウヤと名乗っている。
「マジか!やった!いつ行くんだ!?」
「落ち着け、そうだな。どうせなら今すぐ……」
喜ぶリアを見たユウヤは、どうせなら今すぐ行こうと提案しかけたその時
「ん?兄貴、あれ」
「ちょうどいい、あれ狩ってみろ。今日の晩飯だ」
少し離れた草むらから短い角の生えたウサギの魔物が飛び出してきた。この魔物は、いつの間にかこの森に住みついており、今ではユウヤたちの貴重な食料元になっている。
「素早いから気を付けろよ」
「わかってる」
この魔物は、大して強くはないが感知能力と逃げ足だけは凄まじく、ユウヤでも最初のころは視界に入って近づこうとした途端に逃げられていた。それに追い詰めたら追い詰めたで、相当な勢いで体当たりして角で攻撃を仕掛けに来るため非常に厄介な相手だ。
そんな相手にリアは、気配を消し木刀を構え近づく。
「あっ!くそっ逃がさん!」
しかしあと数歩のところでウサギに気付かれてしまった。
ウサギは急いで草を食うのを止め逃げようとするが、それよりも早く踏み出したリアが辿り着き、闇を纏った木刀で一発入れる。凄まじい勢いで打ち飛ばされたウサギは、近くにあった木に衝突し動かなくなった。
「よかった。仕留められた」
「やるな、リア。流石に逃げられると思ったが、一撃とはな」
急加速と力強い一撃に驚くユウヤ。それに対しリアは誇らしげに
「練習したからな。強化も魔法も」
リアは、ユウヤから可能な限り全ての技術や知識を教えられている。そしてそれを理解し、日々鍛錬することで昇華させているのだ。
「これは、大人になる前に越されるかもしれないな」
「何言ってんだ、打ち合いでも知識でもオレは一度も勝った事無いから、そんなことあるわけないって」
それを見てユウヤも負けじと努力していたので、リアよりも上なだけであった。因みにリアが優秀過ぎて、前世分のアドバンテージもあまり機能していない。
そうして魔物の処理を終えた辺りで、リアがとある事を話してくる。
「そういや兄貴。兄貴がたまに行ってる集落に行ってみたいんだけど」
「別にいいが、見に行ってるだけだぞ」
ユウヤは、あれから何度か集落の様子を見に行っているが、中には入ってはいない。外から眺めているだけだ。
「そういや最近あの集落、理由は分からないが最初見に行った時に比べて活気づいて来ていたな。俺が見に行った時が静かだっただけかも知れないが、なにか祭り的な物でもやるのかもしれないな」
「それは行きたい……けどムリだよな。オレたちはあの集落の人間じゃないんだから」
理由は簡単で、自分たちの怪しさを理解しているからである。そのためこの世界で大人と言われる15歳になるまでは、集落に行く気はない。あくまでも様子見が限界だろう。
「そうだな大人になれば旅人としては入れるだろうからそれまで我慢だ。じゃ早速行こうか」
「おう!」
ユウヤたちはそう話して拠点を出た。そして途中休憩や魔物を狩りながら森の中を走って一時間、集落の少し前まで辿り着く。
「ちょっと待てよリア……これでよし」
「なんだこれ?」
「見えなくなる細工をしただけだ。いずれ教えてやるよ」
これはユウヤの作った魔法で、風魔法や光魔法を駆使して匂い、音、視覚を誤魔化す事が出来る。それでも存在が消えるわけではないので、直接触れられると駄目だ。それと発動中は、この魔法の維持のために高い集中力を使うため、他の魔法が使えなくなると言うデメリットもある。
「俺の手を離すなよ」
「分かってるよ」
そう言って集落の見える場所まで移動する。中には入る気がないため、適当に回りを一周する感じに歩いていると、少し大きめの建物が目に入った。
そして近くでは子供たちが遊んでいる。
「兄貴、あれなんだ?」
「あれは身寄りのない子供とかを預かってるところだな」
しばらく話ながら遊んでいる子供たちを見ていると、リアが話しかけてきた。
「ふ~ん。……あっ!そうだ兄貴!帰ったら打ち合いしようよ!朝できなかったじゃん」
「そうだな、いいぞ」
リアが木刀を持ち始めてからユウヤは、毎日リアと模擬戦をしている。それが今日出来なかったからそう言ってきたのだろう。
「もういいだろ、帰るぞ」
「うん、分かった」
そうして俺達は拠点に帰った。