転生者の復活記~死にぞこないの物語~ 作:バトルマニア(作者)
風龍の方へと走り出した古内は、速攻で土魔導を発動させ、風龍を串刺しにしようと腹の位置に杭を発生させる。
「効かねぇよな!」
だが極限まで尖らせたはずの杭は刺さらず、体を動かしただけで壊されて風龍は古内の方へと顔を向けた。
「ッ!?」
その瞬間、古内は咄嗟に真横へと飛び退いた。それも全力で
「ふざけやがって!」
転がりながら体勢を整え、針を構える。そして目も向ずそちらを確認する。するとやはり一瞬先までいた場所は暴風と風刃によりズタズタにされており、冷や汗を流す。
「くらえ!」
針を高速で投げつける。それも風龍の眼球に向けてだ。
「チッ!」
しかし届くことなく風龍を取り巻く風に軌道をそらされ、その場に散らばるだけに終わる。そして針が爆発し、風龍の視界を少し妨害した一瞬で短剣を構えて急接近をかましていた。
(せめて一発でも突き刺しとかねぇと!)
現状で近づけるか近づけないかで言えば、恐らく無理で絶望的だ。だが長期戦に持ち込むにしても、状態異常を使わなければ話にならない。なので古内は当初の予定通り、真正面から風龍に突っ込んでいた。
「ぐウゥッッ!!」
そして風龍にあと数歩で届くところで、横からの突風に体が持っていかれそうになる。それを風龍はただ見ているだけで、戦闘態勢にすら入っていない。どうやら古内の事を単なる羽虫程度にしか思っていないようだ。
「ハァッッ!!」
強化を最大まで高め、短剣にも力を回し怪しい紫の輝きが溢れれる。
そして――
「は?」
空に吹き飛ばされた古内は呆けた声を出していた。
「え、え゛ッ!?」
そして次の瞬間には最初に撃たれた風の攻撃で全身が“殴られ 斬られ 捻じれ”たかのようなダメージを受け、ボロ雑巾となった古内は地面に向かって落下を開始した。
それは風龍の真隣に嫌な音を立てて激突し、古内はピクリとも動かなくなる。それを見下ろす風龍は、邪魔な死体を吹き飛ばそうと風を
「ジんでネ゛ェよッ!!」
相殺され、何かしらの方法で急加速した古内は、風纏をものともせずに紫がかった短剣を風龍に突き立てた。そして続けて、傷を大きくするためになぞるように走り出す。
「クソガッ!!」
だが危険視されたのか突風で離されてしまい、着地狩りかのように大量の風刃が古内を襲っていた。それを盛り上がらせた土の壁で防ぐが、すぐに壊されそうになったため、次々に土壁を作りながら走り出す。
「なんだなんだ!?一発攻撃くらっただけでそのざまか!?さっきまでの余裕はどこいった!?なぁ!?」
意味のない事だろうことを煽るように叫びながら風が鈍っているのを感じた古内は壁をなくす。そこ先では、明らかに顔色が悪くなっている風龍がいた。
「ああっそうだったな!お前は紛い物だったな!!空も飛べねぇ贋作だっ!!」
所詮は自然生成された紛い物。本物と比べるまでもない劣化品。そう叫んだ古内に風刃が襲うが、精度が落ちたそれでは古内にも簡単に打ち消せた。
「調子が狂えばこの程度か!?やっぱガワだけだなッ!!」
短刀を振るい風刃を斬り裂き風龍に接近する古内。そして風纏を突破し、一太刀入れた途端に風の出力が跳ね上がり、吹き飛ばされる。
「こんなもんかぁっ!?」
強引に体勢を取りなおし、負傷も気にせず立ち向かう。普通だったら首の骨どころか全身の骨が折れ砕けてもおかしくない攻撃だったが、生存補正でそのすべてを受けきる古内には隙が無いのだ。
「小出しでどうにかなるとでも!?それとももう限界かっ!?」
機動力さえ損なわなければいい古内は、最低限の攻撃だけをかわし受け流して、それ以外は無視して攻撃を続ける。特攻に近いその猛攻に流石の風龍も防ぎきれないようで、軽いながら傷が増えていく。そしてその度に少しづつ弱っていく風龍。
「っと、できんじゃねぇか!!」
そこで風龍は本気を出した。瞬間、暴風が吹き荒れ、いくつかの竜巻が発生して古内目掛けて向かっていく。
「ッ!?」
流石に竜巻はくらえないと間を縫って風龍に近づこうとした。だが途中で何かにぶつかり、抉れるまではいかないものの強い衝撃に弾かれる古内。
「空気弾か!」
そこらかしこに巻き散らかされた空気弾が、竜巻を縫って古内へと向かって移動を始める。
「面倒だな!」
竜巻に囲まれ、当たれば抉られ、壊せば破裂する空気弾がそこらかしこにある。おまけに奥の方では風龍が何かをしているのが見て取れた。
死なないだけ、動けないような負傷をしないだけの古内にとって、足止めは最も警戒するものであった。なんせ時間がないのだ。
「させるかよ!」
なら強行突破だと、今度はホントに何も考えずに短刀を振りながら突っ込む。それにより打撲痕ができ、血をまき散らし、全身が軋んでいるが気にも止めない。そうやって数秒もたたずに風龍の目と鼻の先まで近づいた古内は、短刀を振り落とす。
「ギぐかッ!!!」
鼻先を掠ることが精一杯の斬撃と、暴風の咆哮がぶつかり、土魔道まで使って踏ん張る古内。そして無事耐えきった古内は、反動で鈍っている風龍に飛びつき――
「ジ、ネ゛ぇッ!!!」
吐血しながら短刀を風龍の眼球目掛けて振り落とす。それにより片目がつぶれた風龍は、暴れ狂い古内はゴミのように地面を転がる。そこへ風龍の踏みつけが決まり、潰されながら地面に埋まる古内。
「い、でぇ、なッ!!」
何度も何度も潰されるが古内は死なない。それどころか、強引に力を引き出し強化を繰り返し、風龍の踏みつけを受け止めていた。
「ガハッ!」
だがふと重圧が消え、空気弾に吹き飛ばされる古内。
「距離ばっか、取りやがって!」
急速に治っていく古内の体。それと対照的に風龍は傷はひどくなり辛そうにしている。だがこれだけしても古内の方が不利だ。なんせ決定打がないのだから。
「生まれて初めての本気はどうだ!?苦戦の味は!?最悪だろう!?」
体勢を立て直される前に攻撃をしようと踏み出す古内。だがその前に風龍から近づけないほどの暴風が吹き荒れ、状態異常が少しづつマシになっていく。
「治すんじゃねぇっッ!?」
足を風刃で斬り裂かれ、一瞬立ち止まる。そこへ調子を戻し始めた攻撃の数々が飛来し、転がるように逃げる古内。
「クソガッ!!だったらこっちだって!!」
風龍に追いつくために、強引に力を引き出しドス黒く見えるほどの強化を自身に施す。その姿はまさに死んでいないだけと言った風貌で、二体の殺意の塊は向かい合う。
「最後まで、付き合ってもらうぞッ!!」
そして始まる長い長い戦い。
あらゆるものを使い、使えるものを使い潰す 生存をかけた戦いの幕が、火蓋を切って落とされたのだった。
~おまけ~
・不幸な風龍について
死なないアンデッドみたいな奴に襲われる風龍。
古内を甘く見たせいで初撃を食らい、感覚異常や状態異常 能力低下だらけになり飛行能力を失い、不得意な地上戦で戦う羽目になっている。しかもまともな戦闘経験はこれが初。
・卑怯な古内について
死んだふりを駆使して風流に大量の状態異常を食らわせたやつ。その後もダメージを無視して動き続けたり、強引に力を出して限界突破したりとやりたい放題。だがこれだけしても状態異常以外は大したダメージになっておらず、数時間どころか数日がかりで倒す気でいる。