転生者の復活記~死にぞこないの物語~ 作:バトルマニア(作者)
どれだけ経ったかわからない。朝日が顔を照らし、虚ろな目でそれを見る事が限界な古内は、視線を移す。
そこには、素材にならないまでにボロボロになった風龍の死体があった。
「勝った。レベルも、スキルも、上がった。これで 大丈夫だ。その はずだ……」
目標の強さはもう手に入れた。あと数時間だけだが生存補正も切れていない。あとは回復を待つだけだろう。
「もう、立てねぇや」
強引に戦い続けた。何度死にかけたかわからない。装備もボロボロで、自慢の短剣も すでにどこに行ったか分からない。ただ隙を見せれば、きっと酷い結果になるだろうと、風龍を休ませることなく戦い続けた。
「すっきり、しねぇな……」
勝者は紛れもなく古内だ。だが肝心の古内はモヤモヤを残し続けている。
「虚しい、と言うか……」
風龍の死んだ目を見る。何度も目が合った。そのすべては殺意の籠ったものだった。
「悲しい、と言うか……」
殺し合うことしかできない。死闘の末になんとやらなど、創作物のような理想の展開などありはしないと再認識させられた。
「寂しい、と言うか……」
何度語り掛けても意思疎通などできはなしない。全てが悪いとわかっていたし、それが単なる無茶苦茶だととも理解していた。
「ダメだな、こりゃ……」
それでも諦めきれずに、でも手は抜けずに殺して終わった。少しでも気を抜けばきっと結果は逆だっただろう。現に死ぬまで弱らせ続けてやっと勝てた相手だ。
「でも、勝っちまったんだから、生き残らなきゃな」
古内の精神状態は非常に危険な状態だ。転生してこの方、まともに会話したことがないのだ。すべて独り言、うわ言で、その他掲示板を見ることでしか他者を知らない。それに掲示板も、ここが『最果ての大陸』だからか書き込めない。
「そうだ、じゃなきゃこの戦いがムダになる」
だからこうやって無理矢理だ、気を奮い立たせるしかない。自業自得でも、自作自演でも、単なる妄想でも使って、強引にテンションも上げて、ポジティブになって、進み続けるしかないのだ。
「それに、仲間なんて すぐにできるさ。いや、作ってやるさ」
回復したのか起き上がり、魔導で体をキレイにし、服も一瞬で着替え直す。
「世界は広い、俺はまだこの草原しか知らない」
やっと一歩を踏みしめる準備が整ったのだ。まだ始まってすらいないのだ。
「この大陸から出なくたって、探せばいるだろ、一人ぐらいは……よし!」
『最果ての大陸』から出るには生半可な実力では不可能だ。それこそカンスト勢を通り越して、超越者にでもならなければ、人間界の陸地すら拝めない。だったら『最果ての大陸』で仲間を作ればいい。数だけは数え切れないほどいるのだ、魔物なぞ。
「ん~、そうだ誰にしようかな~?
背伸びをしながら考える。時より見かける強力な亜人種は小鬼だけだが、自然生成された魔物は鬼人まで知っている。その他にも狼種や兎種、蟲種など様々存在するが、やはり人に似ていて意思疎通が取れそうな相手方がいいらしい。
「いや、ここは初心者にも優しいと噂の
そう言いながら掲示板を開き、魔物、仲間と検索する。すると『魔物のテイムの仕方!』や『魔物の仲間、おすすめ』や『テイムするならこの魔物!人気ランキング!』などの文字が見える。
「なるほど、粘性生物系は育てるのに楽だと。これは重要だな」
そして目に止まったのが『スライムのススメ』と言うものだった。
「普通の生物系は食事が大変。
明らかにスライム系を贔屓する書き込みに怪しみながら、先を読み進める。
「ん~確かに、最悪食事はそこらの草でもいいわけだし、持ち運びも便利みたいだな」
種類にもよるが、基本的に契約も維持もダントツで簡単なのがスライム系の特徴だ。しかも役に立つことも多く、なによりかわいいと力説されている。
「それに、人化すればいい……か。スキルとか進化とか魔法とかで、ね」
人間に近くなるように進化したり、そう言うスキルを取得させれば、人間と似た存在になるらしい。魔人族や亜人族なんかも、元を辿ればそれっぽい存在が多いようだ。
「薬のレシピは……うわっ!めんどくさ!……でもこれしないと俺の求める仲間ができないか」
スキルを取るにしても進化させるにしても時間がかかるし確実ではない。だが薬を使えば確実に人化できると書かれており、それを見た古内は驚き、次の瞬間にはめんどそうな顔をする。
「技術はスキルでどうにかできても、素材とか製作のための施設も道具もない。迷宮主はコストさえ支払えば簡単に手に入るらしいけこ、こっちはそうじゃないんだよな」
すべてにおいて相当ハイレベルなことを求められることから、考え込む古内。だが……
「いや、これが無かったら結局なんにもできない。だったら作るしかない!よし、希望が見えてきた!俺はまだやれる!!やってみせるぞ!仲間と共に世界を気ままに旅してやるんだ!異世界を楽しんでやるんだ!」
そうして気合を入れ直して目標が決まった古内は、風龍に死体を片付けるためにそちらに目を向け
「って……へ?ちょっ!あ゛~待って待ってっ!!何やってんだ!お前ッ!!」
そこには一匹のスライムに取り込まれる、風龍の死体の姿があったのだった。
~おまけ~
・スライム大好きさんについて
転生者兼 元勇者兼 現迷宮主の一人。約100年前に転生してきて、聖剣に選ばれ勇者になって魔王を倒し、いざこざが嫌で隠居して迷宮主になった人。森の奥にある洞窟でスライム迷宮を運営しており、大好きなスライムたちと仲良く大人しく暮らしている。
個人としても迷宮としても上位陣であり、そこらの小国や魔王なんかとは比べものにならないほどの戦力を持っている。勿論 配下はすべてスライムである。