入学式の片付け
広い体育館のような場所で、複数人の大人たちが清掃やら片付けやらを行っていた。
「ちょっと君、もう入学式は終わったよ」
「んっあ、あ―っ!?す、すみません!教えてくれてありがとうございます!」
一人の眠りこけていた少年を揺すり起こした男は、礼を言って急いで去っていく少年の背中を見て
「話が長いから眠たくなるんだよな。俺も居眠りした記憶があるからよく分かる。まぁあそこまで酷くはなかったが」
そう昔のことを思い出す。ごく普通の高校を卒業して早三年。最初に入った会社で上手く行かず、その後の転職も失敗。それから開き直り、資格を取るやら色んな仕事がしたいと言い訳を重ねて、ダラダラとバイトをしながら生活してきた。このままではダメだと思いながらズルズルと生活していたある日、とある求人が目に入り、それをチャンスと捉えた男はとある場所に就職できていた。
「にしても俺が異能学園なんかに就職出来るとは、世の中何があるかわからないな。資格いっぱい取ってて良かった」
そこは世間では異能学園と言われる場所で、異能力者を集めて教育、研究する場所だった。しかしこの男にはそんな事は関係ない。
なぜなら……
「にしても異能か、なんか変な開発とか受けるんだろうな。で、あとは研究とか国防に関わることか?怪物とか国のこととかあるだろうし……まぁ大層な事だが俺は関係ないな」
正社員とは言え一介の雇われ。給料の良し悪しで入っただけの彼には、殆ど異能と関わる機会はないのだ。せいぜい一般人よりかは多い程度だが、それでも間近で見れたり、異能力者と話せる程度である。問題が起きなければだが……
「さてと、こっちはこれぐらいだっ!?」
「おい、ちゃんと働いてるか?」
片付けを終えて、別の場所を手伝いに行こうとしたその時だった。後ろから誰かに小突かれ、男は驚来ながら振り返る。
「か、母さん。こっちは終わったよ」
「こっちもだ。暇だったから見に来たんだけど、問題なさそうでよたった」
そこには作業着を着た子供のように背の低い少女が立っており、男は少々怪訝な顔をする。
「俺も子供じゃないんだ。これぐらい出来る」
「親にとってはいつまでも子は子供。それについ最近まで定職にも付かずにダラけてたのはアンタでしょ。ワタシが仕事を持ってこなかったらどうなってたことやら」
母親と呼ばれた少女は、息子の対応にやれやれと呆れた様子だ。
「それは母さんも同じだろ?つまらなくなったらすぐに職変えるし」
「ワタシはどこでも働けるからね。そんなことより、あっち手伝いに行くよ。広いんだからテキパキ動かないと終わらないからね」
そう言って足早に次の仕事をしに行った少女の後ろ姿を見ながら……
「親と同じ職場って……諦めるしか無いか」
そう言って男も向うのであった。