異能学園の用務員   作:バトルマニア(作者)

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暴走生徒

 現場に近づくにつれて廊下の破損状況が酷くなり、強い気配が近くなる。

 

「こりゃひでぇ」

 

 気温も上がり、ところどころ炎熱により溶かされた場所や焦げ目が目立つ。どうやら結界から出るために、そこらじゅうを徘徊して破壊しまわっているようだ。

 

「お、いたいた。炎の精霊ってところかな?」

 

 そして相手を見つけた小崎は、普通に近づいていき……

 

「うおっ!なにすんだ!」

 

 放たれた炎を片手でかき消した。

 

 

「おいおい落ち着けよ。てか生徒を使うとかどこの馬鹿がやったんだ?」

 

 そこにいたのは、あの時問題を起こした炎使いの生徒だった。その生徒は、自身の使役している精霊と融合し、暴走状態である。

 

(流石にこれは完全には無理だな。この施設の担当者は確か……)

 

 異能学園の出資者は、大きく分けて三つの組織が関わっている。一つ目はこの国である日本国、二つ目は表の世界で研究開発を行っている企業などで、最後に裏世界の実質的支配者である小崎 麻希率いる組織連合の三つだ。

 

 そしてここの施設の担当者は、裏世界の研究者だった。

 

「っと、その前にお前だったな。後処理の事もあるからちゃちゃっと片付けさせてもらうぞ」

 

 そういうと同時に暴走生徒は、炎をまき散らして再度襲い掛かってくる。だが小崎の動きはそれよりも速く、相手が半分も距離を詰めることなく殴り飛ばしていた。

 

「熱いな。それに頑丈そうだ」

 

 相手が生徒なので手加減はしているが、それでも炎とともに一瞬で傷を回復させて立ち上がる生徒を見て眉を顰める小崎。

 

(どこまでやっていいのか調整が難しいな。変にケガさせて後遺症が残っても大変だし)

 

 考え事をしながら放たれた炎弾を打ち消していく。

 

 

「お前っ!お前らのせいだ!!」

「どっちが喋ってんだ?……まぁ、とりあえず攻撃やめておとなしくなってくれ」

 

 うわごとの様な呟きとその目には明確な敵意が宿っているが、小崎は多少の疑問を思い浮かべながら説得をしようとする。

 

「こんな世界認めるか!すべて焼き尽くしてやる!」

「混ざってるのか?」

 

 だが話はかみ合わずに、より攻撃は激しくなるばかりだ。

 

(混ざって情緒不安定にでもなったか?何のことに怒っているのか……心当たりが多すぎて見えてこないな)

 

 説得の糸口を探すが、どれに対して怒っているのかわからず眉を顰める。

 

「わからないか!?お前らが異能と言って世界に広めた力とその存在にかかわることだ!!」

「ああ、お前らの本職と精霊のほうだったか。確かにそうだが、俺たちが公表しなくても時間の問題だったと思うぞ。隠ぺいにだって限りがあるからな」

 

 この世界には様々な力と存在、そしてそれを利用する組織が存在する。異能が公表される以前は、それは秘匿され表世界に出てくることはなかったが、小崎の母親の影響と拡大し続ける異能の力を抑えきれなくなった裏世界の存在たちは、やむなくその存在を公表することになったのだ。

 

「知るか!我々はそうやって世の平安を守ってきたのだ!貴様なんぞに何がわかる!」

「お前らの業界以外にも異形や怪物と戦ったりする奴らはいくらでもいる。今だってそうだ。テレビやニュースで出てきている事件など氷山の一角にも満たない。世間が納得してくれるだけマシだと思えよ」

 

 そして公表された力を異能という一括りにして、表世界ににじみ出て抑えきれなくなった事態をその異能たちが原因であると広めた。これにより対処しやすくなった事件は数知れずになったが、力を秘匿しておきたい連中や秘密結社としてやってきた者たちは大打撃を受けることになる。よって異能学園を筆頭に、それらに関わる者たちは大いに恨まれることになったのだ。

 

「で、話せるぐらいには戻ってきたんならおとなしくしてくれないか?今ならまだ大ごとにはならんから」

「ふ、ふざけるな!言わせておけば!貴様から焼き殺してやる!」

 

 暴走状態から力が馴染んできたのか本来の姿になろうと力を込める。すると炎でできた狼のような耳と尻尾が出てき始め、炎は一層燃え上がる。

 

「まだ足りんがこれで先ほどのようにはうまくいかんぞ、小僧!」

 

 そういい先ほどとは比べものにならない速度で接近されるが――

 

「なっ!ガァッ!?」

「おとなしくしろって言ってんだろ」

 

 あまりの単調な動きに、裏拳一発で壁に叩きつけられ沈められていた。

 

「起きろ、使われるだけのガキ。そんなんだから兄どころか妹にすら勝てないんだよ。まず力に振り回されないようにしろ」

「な……なにがっ!?」

 

 倒れる生徒の胸ぐらをつかみ、目を合わせる。

 

「力が強いだけでどうにかなると思ってんのか?自分の事も知らねえ奴なんてたかが知れてんだよ。ちょっとは自分とそいつに向き合ってみろ。返事は?」

「は……はい」

 

 絞り出すように出された返答を最後に、生徒は気を失い力が分散する。

 

 それを確認した小崎は

 

「はぁ~、話しつけに行くか」

 

 呆れたように呟き、生徒を担いで奥に足を進めるのだった。

 

 

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