とあるところに、自然の化身である精霊と心を通わし力を得る精霊士と言われる者たちがいた。その者たちは、大昔から暴走して災害の化身と化した精霊を治めるために、契約した精霊とともに戦ってきた。そして近代に近づけば近づくほど文明の悪影響により精霊は荒々しくなり、科学の発展により精霊士たちは表世界から姿を消すことになる。
「これはどういうことですか!父上!」
「これは決定事項だ」
(兄貴と……親父?)
一人の少年がとある書類を床に叩きつけ、父親に声を荒げる。それを心配そうに見ている周囲だが、誰も近寄ろうとはしない。
「お前には異能学園に行ってもらう。これは決定事項だ。お前たちも例外ではないぞ」
「っ!?ですが!我々はそういうものとは無縁でしたでしょう!」
(これは……昔の?)
少年の他に、年端も行かぬ若い衆を見渡す当主らしき男に、皆目を背けていた。
約5年前、表世界から姿を消し裏から世界を支えていた一つの業界があらわになっていた。これは時代の流れに逆らえなかった者たちの話だ。
「文明の発展とともに精霊の暴走は日に日に酷くなっている。我々の力では、もはや抑え込むことが難しい」
「だから外から力を借りようというのですか!?」
(なんでこんな夢を……)
冷静に淡々と話す当主とは対照的に、向かい合う少年は霊気をまき散らしていた。
「そうだ。最近現れた異能と共に出れば違和感なく溶け込める」
「そういうことを言っているのではありません!」
(ああムカつく……)
過去最悪の思い出を思い出し、イライラが増す。なぜなら当主含めた一部の者たち以外は、この判断に否定的であったからだ。
「誇りや教えを捨てろとは言わん。だが現実を見ろ。我らが一度表世界から去ったのも世の流れ、それは今回も同じよ」
「っ!?」
(なんでだ……)
しかし同時に当主の言っていることも理解できたので、苦渋の決断をするしかなかった。だがまだ子供たちは、今までと違うことを聞かされ混乱し、納得できずにいた。
「そもそも、我らの使命は世の平穏を保つこと。やり方などいくらでもある」
「そう……ですが……」
(なんで弱気なんだよ……)
年上筆頭である少年は、事の深刻さを理解できていないわけれはなかった。しかしその弟は
(ありえねぇ。親父がこんなこと言うなんて……兄貴が何も言い返せないなんて……なんでこうなっちまったんっだよ。誰が悪いんだよ)
精霊士として優秀でも、人として見れば普通の子供でしかない。精神も思考も視野も視点も経験も、何もかもが不足している単なる子供だ。教え込まれ、凝り固まった考えはそう変えられるものではない。
(おかしいのは世界だ。間違っているのは異能だ!そんなもの世界に蔓延らせたのは誰だ!)
極端化した善悪に囚われ、ぐちゃくちゃになった思考を怒りのままに働かせる。
そして――
「――ガァッ!?」
頭に響く衝撃と共に現実に戻され、一気にその考えは霧散した。
「な……なにがっ!?」
視界が歪み苦しい状態を我慢し、周囲を確認しようとする。だがその前に胸ぐらを掴まれ、目の前の誰かに淡々と何かを言われた。それの内容が理解できなかった少年だったが
「は……はい」
絞り出すように出された返答を最後に、少年は気を失い力が分散するのだった。