小崎が仕事場に戻っている最中に、何か変な気配を感じそちらを見た。
「あの生徒は……」
そこには入学式で寝ていた生徒がおり、教室に戻るためか足早に移動していた。
「?」
見た目におかしなところはない。いつのまにか気配も普通に戻っている。違和感を感じたのか気のせいだったような感覚に襲われた小崎は……
「ちょっといいか?」
「へ?」
とりあえず話しかけてみることにしていた。
「な、なにか?」
「ちょっと気になってね。こっちはあまり生徒がいる場所じゃないから」
いないわけではないが、それでも理由なく来る者は少ない場所だ。
「ちょっと友達が倒れたって聞いたのでお見舞いに来たんです。その帰りです」
「ああ。彼の……」
どうやらあの暴走生徒の友達のようで、それを聞いた小崎は納得しかけて……
(情報が早いな)
やけに情報が早いことに疑問に思った。なぜなら事が起きてからまだ一時間も経っていないし、母親の方で起きた事件の方が騒ぎが大きく目立っていた。そもそも極力騒ぎにならないようにしていたのに、彼はどうやって友人が倒れたことを知ったのだろう?と
「誰から聞いたんだ?」
「いや聞いたというか、異能の方でわかっちゃって……」
それを聞いた小崎は内心難しい顔をする。
(そういやこの生徒……これは困ったな。そう言われちゃ深くは聞き出せない)
異能でわかったと言われれば、言い逃れし放題になってしまう。積極的な使用は罪に問われやすいが、勝手に発動するものはどうしようもないからだ。せいぜい犯罪を犯したときに刑が重くなるぐらいだろう。
「お~い!どうしたんだ?」
「あっ!すまん。ちょっとこの人に話しかけられて……」
どうしたものかと一瞬考えこんでいたその時。廊下の先から一人の生徒がやってきた。
「……あ~。そうか」
めんどくさそうになにか悟ったその生徒は、友達である目の前の生徒に視線で何か訴えかけている。だが初めに呼び止められた生徒は、困った顔をしてどうしようもないといった感じだ。
「いや、呼び止めてすまない。最近ちょっと厄介事が多くてね。神経質になってたよ」
「あ~確かに。今日だってあんなことありましたからね」
納得した風に頷く二人は、ハッとしてあることを聞き返してきた。
「まさか俺たちを疑ってます?」
「そんなわけ……」
確かに自分たちが怪しい動きをしていた自覚があるのか、少し焦りだす二人。だがそれはスパイだとかの反応ではなく、ただ単に悪いことをしてしまったのではないかという方だった。
「そこまでじゃないよ。別に大した話じゃない。まぁ怪しい動きはやめてほしいな。勘違いするし」
「「すみません」」
異能力者はどこか自分を特別な人間だと思っている節がある。確かに特別と言えばそうだが、そのせいで良くも悪くも行動的で厄介事を起こしやすい。なのでこうやって咄嗟に仲間の心配をして動き出したり、麻希の方でもあったようだがムダに出しゃばってめんどくさくなる。
「君たちは知ってるとは思うけど、君たちの友達の生徒さんが暴走事故に巻き込まれたんだ。これはあっちとは関係ないけど、こういう場所じゃ完全に防げないものなんだよ。一応気を引き締めておいてくれ」
「はい」
「わかりました」
そこで世間話程度にヤバいことが多いから気をつけなさいと話すことにした小崎は、ほぼなくなった違和感が再度出てこないか確かめ始める。だがその傾向は出てこず二人を返す。
(もしスパイや敵でも事を起こさなきゃいいか。どっちみち下手なことすれば母さんに潰されるだけだし。もし俺に仕事回ってきても、いつものように後始末に回ればいいだけだからな)
二人の去っていく姿を見ながら、小崎はそう思うのだった。