麻希が魔界に向かい、無事平穏な休日を手に入れた快人は、散歩ついでに近くのショッピングモールへと来ていた。
「やっぱ休日は散歩だよな」
期間限定や新商品がないかと見て回るのも楽しみの一つだ。イベントごとがあればなおの事よしだと周囲を見渡す。
(人化してるみたいだけど、色々いていいな。これからどんどん増えていくだろうし、そうしなくてもいい世の中になればいいな)
人に化けている者たちは結構多い。いくら異能が広まっているからと言っても、それは知識としてだけの場合が多く、一般市民には程遠いものだと思われている。なので異形の姿で人前に出ればどうなるか分かったものではないからだ。
「ん?」
そうやって適当に店を見回っていると、友人の一人である 山田の姿を見つけていた。
「よう山田、買い物か?」
「なんだ小崎か。ああ、ちょっと付き合わされてな」
そう言って山田は、近くにある洋服屋の方を見る。その先には女物のコーナーがあり、長くキレイな黒髪の美少女が服を選んでいた。
「何度見ても美少女だな。どうやって引っかけてきたんだよ」
「ついてきたんだよ。不可抗力だ……」
田中曰く、異世界から帰ってくる際に無理矢理割り込んでついてきた子らしい。それで仕方がなく居候することになったんだとか。
「大変そうだな」
「そうなんだよ。いや、ホントにな。他人と暮らすのがああも大変とは……」
そう話す山田の姿はどこかやつれており、苦労に堪えない生活を強いられているのが見て取れた。元々のお人よし具合と負い目を感じているのが相まって、完全に尻に敷かれているのだ。
「我を相手するのは疲れるか?」
「うんうn……」
話に夢中になっていた山田は、背後から近づいてくる少女に気が付かなかった。それにゆっくりと振り返り、誤魔かすために苦笑いを浮かべる。
「いや……冗談だよ、はは……」
「我に嘘は効かんぞ?心を読む程度容易いからな」
弁解をしようとするが、少女の言葉に山田は結構焦っていた。いや、言葉だけでなく雰囲気が少々しょぼくれているという理由だろうか。
「お主が嫌なら我はあそこを出ていくが……」
「それはダメだ。流石に……」
(言い合い始めやがった。心読める奴の相手は大変だな)
そうして二人は、快人を置いて言い合いを始めていた。それも片方は心を読んでいるため、本人たち以外には断片的にしかわからない会話だ。もちろん快人もついていけないので、巻き込まれないように一度そばを離れる。
だがその先で……
「あ!先輩じゃないっすか!」
「奇遇だな。こんなところで出会うなんて」
「……なんだお前か」
別の誰かに絡まれることになっていた。