入学式の片付けが終わり昼休憩に入る。用務員たちは足早に休憩室に向かい、男も少女と共に昼飯を喰いに行っていた。
「あ~疲れた。広いし清掃も大変だったな」
「この程度で疲れたって……まぁ気疲れね。慣れないことすると体力使うし。でも早く慣れなよ。仕事なんだから」
そう会話しながら休憩室に着き、昼飯の準備をしだす。
「分かってるよ。一応この学園のことは全部頭に入ってる。後は細かいところの調整だけかな」
「お、流石我が息子。これぐらい訳ないか」
「ま、異能学園は優秀な人材を取り揃えてるって話だからな。できないからクビとか言われたくないし」
就職してから早々、二人はこの学園についてあらかた調べ上げていた。一応、用務員の一人に至るまで優秀な人材を取り揃えていると聞いていたようで、これぐらい当然だろうと思っているようだ。
「これからこの学園の維持管理をしていくのか。何事もなければいいな」
「どうでしょうね。物騒な世の中だから難しいんじゃない?まぁそんな時は警備の人がどうにかしてくれるでしょ。ワタシたちの出る幕はないよ」
彼らの仕事は、この異能学園の清掃や機材の補充、設備点検などの維持管理である。一応警備などの仕事もあるが、それは別に雇われている異能力者たちの仕事であり、彼らは基本的に無縁という契約内容であった。
「流石にそうだよな。ここは世界でも上位に入る異能学園だ。そんな大事起きないよな」
「そうね。事が起きても大事になる前に終わるでしょうね。流石に表立って国に喧嘩売るバカはいないでしょ」
好奇心があるのか少々残念そうだが、それ以上に目立つ行為はゴメンだと考えているようで、二人は楽観視しながら用意した飯を食い始めた。
「相変わらず美味いな母さんの飯は」
「そうでしょ?これでも定食屋とかでバイトしてたからね。それにネットで見かけた料理はあらかた作れるようになったし」
そう自慢げに、弁当の中身を解説しだす。それはいつものことのようで、男は軽く聞き流しながら偶にする質問をしていた。
「いつも思うけど、なんでそこまで出来るんだよ。暇さえあれば勉強したりさ俺には無理だよ、娯楽を嗜みながらじゃないと」
「そりゃ暇だからに決まってるじゃない。やることないし、ゲームや小説っていう娯楽品は、アイデアはともかく簡単すぎてちっとも楽しくない。だから出来ること増やしてんのよ」
男の母親は何でもできた。取れるだけの資格を取りあさり、暇さえあれば参考書や論文を読んだり勉強したりとなんでもしているのだ。本人曰く、ゲームや小説は面白く感じないようで、それらで暇を潰しているだけのようだ。
「まっ、ねぇ。母さんは動いてる方が好きみたいだし」
「そうそう、ワタシは動き回ってる方が好きなんだ。こっちに来てからは自重してるけど、昔はもっと動き回ってたんだぞ。今でもウズウズしてるぐらいだ。あっちにいた頃が懐かしい、アイツら元気かな?」
少女は昔を思い出しながら懐かしそうにする。ホントはもっとやりたいことがあるのだろう。だがそれを我慢して気を紛らわすために、ひたすら自分の楽しいと思えることをしていた。
「どうした母さん?」
「いや、久々に思いっきり動きたくなっただけ」
「それはちょっと……友達との約束だってあるし……」
それを聞いた男は、ゲッと驚いた顔をしてすぐさまやめさせようと説得しにかかるが
「休みは2日あるでしょ。どっちかで付き合って、相手がいないと満足できないから」
「……わかったよ……」
子供のように不満そうな顔をする母親相手に、呆気なく撃沈していた。
「ありがとう」
男の了承を聞いた少女は、満足したのか頬笑みを浮かべ喜ぶのだった。