とある暗い一室で、一人の男が疲れたようにうなだれていた。
「魔界か。酷い場所だったな」
詳しくはわからないが、おおよそ高校入りたての年齢に見えるその男は、その年齢に合わない目と雰囲気をしていた。まるで何十年、下手したら100年を超えるほどの長生きしているような感じだ。
「これでいいんだろ?なぁ……」
うつむきうわ言を呟く男は、少しして頷く。
「そうだよな。排除すべきものでも、使えるもんは使わないといけないからな」
きっと魔界の事なのだろう。そして同時に、それに準ずるすべての異常に対しての言葉であった。
「ああ、うん。そうだったな」
そこで何をしたのかは彼にしかわからないが、心の中で整理するだけにとどまっているのか、口には出さない。
「きっと……なぁ。そうだな」
出てくるのは判別の付かない言葉の一覧だけだ。そしてそれは誰かと話しているように見え
「へぇ……そんなところまで」
頷き相槌をしながら、次の事を考える。彼にとっては大切な何かなのだろうそれは、彼の隙間を埋めるかのような的確なことを言ったようだ。
「だったら、そうだな。あそことかどうだ?異界だ。神界とかは、ダメだろ?」
何か提案し、熟考し始める。だが何かを言われたのか
「へ?こっちで?理由は……そうか。だよな。って、は?もっとある?」
驚いたような反応をし
「クソッ……そこまでかよ」
苦虫を噛み潰したように表情が歪み、更に熟考した。それは彼が悩むのような、彼にとって不都合な事実なのだろうが
「へ~、なるほど。確かにな。まぁ、そうなるよな」
何かしらのフォローが入ったのか、すぐに納得し冷静に戻る。
「お前の言うことは、正しいもんな。嘘なんて、ないもんな」
自分自身に 言い聞かせるように、語りかけるように、同意を求めるように、そう呟く。
「だな。ありがとう。絶対にやってみせる。取り戻すから……」
小さく呟きながら、握りしめていた両手に力が入り、それと同時に体から漏れた何かが揺れ
「ふ~。はは、すまんな。大丈夫だ」
それに気づいた男は、緊張を解くように息を吐き、周りの空間が歪む。
「必ずやってみせるさ。あいつを殺してな……」
そう呟く。今度はぼそぼそ言うのではなく、小声だがちゃんと聞こえるようにはっきりと……とはいっても、ここには男以外誰もおらず、声も外には聞こえない。
「っと、よし、もうこんな時間だ。早く行かないと学校に遅れる。せっかく入ったんだから楽しまないと。あいつが作ってくれた、異能学園を な」
そして男は立ち上がり、いつものように雰囲気を切り替え、部屋を出るのだった。