5月入った!仕事が増えた!
なんやかんやで四月が過ぎ、五月に入る。その間に、山田が神二人を連れて無事帰ってきたり、街中や学園内で厄介事が起きかけたが、速攻で解決して快人は学園長に呼び出されていた。
「早速で悪いが、この契約書に目を通してサインしてくれないか?」
「……仕事を増やす気ですか?」
快人が軽く目を通したそれは、業務内容の一部変更と拡張という内容の紙だった。
「すまないが、こちらも手が回らなくなってきてね。全員にこうやって業務の変更を頼んでいるんだ」
「それにしても、これは多すぎでは?」
快人の配属先……と言うか仕事内容は、学園全体への仕事範囲の拡張であった。それもいつもの仕事に加え、警備や見回りなどの事項も増えている。
「言っちゃ悪いが、君なら余裕では?今の仕事も十全に熟せている訳だし、それどころか暇な時間の方が多いと思うけど?その空いた時間でやって欲しいんだ」
「そういうことを言ってるわけではないです。確かに初期の契約書には、業務の増加がある場合があると記述されていましたが、限度と言うものがあると言ってるだけです」
快人ならできなくもない仕事量ではあるが、こうも一気にやることが増えると困る。特に快人は、責任が大きくなったり、残業はしたくない派の人なので、面倒なことは嫌なのだ。
「正直、麻希さんの息子である快人君は、そこにいるだけで、いると思わせるだけで抑止力になる。だから見回りをしてほしいんだ。それだけの組織内の問題は大きく減らせるんだ」
快人は麻希の息子であり、同時に世界でのトップクラスの実力者でもある。その他にも学園内に入っている組織の人からも一目置かれており、彼の目に見える範疇で変なことをするものは少ない。
だが……
「母さんじゃダメなんですか?」
そう言うなら快人よりも、特に裏組織の者たちにはトラウマ級の存在である、麻希に頼んだ方が効果的だ。頼み方にもよるが、ホントに大変なことになるのなら、渋々付き合ってくれるだろう。
「いや、麻希さんはダメだ。ああ見えて結構手一杯だったりするんだ。なにより彼女が私や他人の要求にまともに答えてくれたためしがない」
「それは……まぁそうですね」
しかし麻希も中々難儀な性格をしており、ギリギリまで動かない可能性がある。と言うか、そうするだろう。それにそもそもの仕事量も多いので、優先順位の低いことは途中でほっぽり出すのは目に見えていた。
「麻希さんには善意や良心はあっても正義なんてものはない。特に誰かに求められたものなんて、機嫌がよくでもなかったら簡単に切り捨てられる。君もわかるだろ?」
「母さんはそう言う人ですから」
麻希に限らず、純粋な『狭間の住人』とはそう言ったものだ。自我が強く、自分のしたいことをしているだけなので、正義なんてものは持ち合わせていない。あくまでそう見えるだけでしかないので、余計な口を出すと何をしでかすかわからない。
またこれは快人も近いのだが、モラルとルールが重なっているから従っているだけなので、それと乖離したルールを突きつけても彼らは従わない。
「まぁそう言う人だから、あまり頼りにならない。それに……まぁあれはいいだろう。とりあえず、頼めないか?せめて見回りだけでもいいから。余程の事がない限りムダに呼び出さないから」
「……わかりました。流石に死人が出たりするのはヤバいですからね。背に腹は代えられません」
切実にそう願う学園長に快人は、同情したのか、少し悪気を覚えたのか、はたまた別の何かを思ったのか、最後には頷いた。
「了承してくれて感謝するよ。では細かい点を詰めようか」
「そうですね」
そうして仕方がなく了承した快人は、細かい仕事内容を決めるために学園長と話合うのだった。