ゴールデンウイークに入り……
「休みが……いや分かり切ったことだが……」
異能学園ではゴールデンウイークでも職員に休みはない。それどころか長期休暇など単なる幻想でしかない。休日出勤やシフト、交代制などなど言われているが、言ってしまえば臨機応変に働いてね。という事だ。
「覚悟はしていたが、今回の件で……いやもうやめよう。仕事だ」
なんやかんやで仕事を増やされ丸め込まれ、やることが倍増した快人は学園内を見回りしながら疲れたようにそう呟く。
「まぁ、ほっといたらダメなのが多いのは分かるよ。雇ってる研究員とかだって信用ならんだろうからな」
異能を研究 開発する場所なので、それはもう億越えの精密機械や危険な薬品などだけでは言い表せないものが様々ある。それの維持管理も仕事の内だし、侵入者がいないかの確認も大切だ。
何より少なくない職員が、信用ならない裏世界の住人と言うのもある。
「問題なし、問題なしっと。はぁ~、エラー出やすいんなら機種の統一ぐらいしてほしいな。整備する技の身にもなってくれよ……」
各部屋を回って問題がないか確認し、ついでに指定されていた機械や施設の点検もしていく。どれも各自の自作精密機器な為変わりがなく、しかも業界ごとに対応する力と仕組みが違っているので、わざわざやることが多い。
「あと三件もあるのか、いつもどこか壊れてやがる。何もない日が珍しいぐらいか。はぁ~」
広いし数も危険も多い。これでは壊れない方が珍しいだろう。基本的に専用の整備しや自分たちで直すのが当たり前になっているのだが、すべてを把握して直せる麻希と快人の二人はよく頼まれ代行することがある。
「最初はこんなもんじゃないと思ってたんだがな。考えが甘すぎたか」
外部には漏れていないので詳しくはわからないだろうが、4月中旬から事件が多くなり始めていた。事前に防げるものが多いのが幸いしているだけで、細かいところは修理は増え続ける一方だ。最近は機械の故障と人員不足が重なり、快人はよく駆り出されていた。
「確かここの先は……」
なんやかんやで修繕を終わらせながら、最後の施設へと足を運ぶ。そこの報告書を見た時にふと、とある人物を思い出していた。
「人具計画か。確かエクスさんの所だったか?」
それは裏世界の被害者の一人の名前だ。そして人具計画とは、人に強力な武器を融合させて強化人間を作る計画の事である。
「伝承とか伝説とか過去の武器使ってるんだっけ?どうやって集めたんだか」
特にこの組織は、過去にあった人知を超えた武具と適合者を合わせる実験をしていた所だ。最初は武具の収集と復元をして使い手を作り出す予定であったが、幾度とない抗争と完全な復元が不可能だと悟った組織は、人にそれを移植する実験をしていた。エクスはその被害者の一人だ。
「被害者も多かっただろうに。まぁそれはどこも同じことを言えるんだが」
裏世界は、高度な技術と異能を持った者たちが闊歩する無法地帯だ。全体の被害者は数知れず、麻希のお陰で勢いはなくなったものの、恐らく今なお膨れ上がり続けているだろう。
「そういや、エクスさんの娘さんは学園に入学してたっけな?他にも結構いた記憶があるが……」
作業を進めながら、麻希さんの助け出した人たちの事を思い出す。多くの被害者たちは知人としての接点しか持たないため詳しく知らないが、何人かは直接助けたことがるので名前がパッと出てきたのだ。
「サヤカさんとかミカエルさんもそうだし、シャドウさん、イノリさんとかもそうだったな、親の方は」
他にもいるが、すぐ思い出せたり同じ職場にいるメンバーを呟く。
「みんなゴールデンウイークか。子供いるし優先順位高いんだろうな」
子供がいる家庭は当然の事、更に片親の人たちは休みが取りやすくなっている。そしてその逆の独身者は、その穴埋めをするために休みもこうして働くのだ。まぁその分給料は高いが……
「ま、しゃあねぇな。さっさと終わらせて俺も帰ろう」
別に予定はないが、みんな休んでいるのに自分だけ働いているのは少々嫌なので、ペースを上げてさっさと仕事を終わらせようと気合を入れるのだった。
・投稿キャラを使わせていただきました。