あらかたの仕事が終わり、気配のする方へと向かう快人。その場所は学園の中心部で、中庭に当たる広い空間だった。
「……あいつか」
中心に寝そべって寝ているそいつを見つけた快人は、近づき声をかける。
「何したんだ。レチア」
「ん~あ、快人君だ~。おはよ~。キミも一緒に寝ない?気持ちいよ~」
自分の長くふわふわな髪の毛を布団に気持ちよさそうに寝ている、トナカイのような角を生やしシロクマと狼が混ざったような獣人っぽい悪魔は、友達でも誘うかのようにそう言う女性悪魔のレチア。
「仕事中だ。そうでなくても断る」
「なんでさ~。働きすぎは良くないぞ~。私の前任者とか他の悪魔たちにみたいに過労死するよ~」
彼女は怠惰の悪魔であり、常にこうやってダラダラしているのだ。そして他人(働いている者や忙しそうな者)を見かけると休めよ~と言ってくる。
なお前任者はめんどくさいと言いながら何でも請け負ってしまうお人好しで、過労により倒れて七欲王の席を引退している。
「死んでないだろ。悪魔はしぶといんだ。で、なんでお前がここにいるんだ?悪魔界に何かあったのか?」
「別に~麻希さんが近いうちに来るって聞いたから、早めに避難しに来ただけだよ~」
寝ながらそう答えるレチア。どうやら自分の国や配下を置いてさっさと逃げだして来ただけの様だ。
「危機察知だけは凄いな。前もそうだったが。どうせ配下も放置だろう?かわいそうに」
「え~あの子たちは優秀だし、引きこもってれば大丈夫だと思うけどな~?それに外に遊びに行くって言ったら喜んでたから大丈夫でしょ~」
王がそんなのでいいのかと心配になるが、怠惰の悪魔が支配する国だ。悪魔界で最も怠惰で大人しく平和な国で、王であるレチアもそれを体現した存在なのだが、どうしてかわからないがこれでも不思議と上手く行く。
「なんで見限られないんだか……」
「私は平常時以外はあんまり役に立たないからね~。戦闘力も王たちの中じゃ最弱だし~。適材適所ってやつだよ~」
そしてレチアはあんまり働かないし弱いのに人望のある王として有名であった。なぜならいるだけで利益のある王だからだ。なので危険があればさっさと逃げて、あとで戻って来てくれればいいと思われているのだ。
「まぁ分かった。どうせあてもないんだろ?」
「そうだよ~。一応、元色欲の王の所にって考えてるけど~入れてくれるかな~」
前回もそうだった。レチアは思い付きの無計画に地球に来て、迷子になっている所を助けて二人は知り合ったのだ。その時も色欲に会いに来ていたようだが、普通に追い返されていた。
理由は……
「無理だろうな。お前、力を垂れ流すし姿も変える気ないから」
「ん~、だって~。めんどくさいんだもん~。疲れるしさ~」
レチアは隠れる気がないのだ。他の悪魔や妖怪など他種族ですら、隠れるなり人類に配慮している部分が多いのに、彼女はそんなことを一切しない。
「それに違和感持たれないんだからさ~」
「じゃあせめて縮んでくれ」
能力のお陰で、変った人だなと思われるだけで、実力者以外からは違和感も敵対もされずにいられているが、こいつは体がデカい。角も含めると3メートル強になり、普通の建物に入るのも一苦労するのだ。
「そういや快人君の家は小さかったね~」
「お前がデカいんだよ。後で迎えに来るから、縮まっとけよ」
そうして、快人は残りの用事を済ませるために仕事に戻るのだった。