仕事が終わり、レチアを迎えに中庭へと向かっていると、近づくにつれて違和感を感じ始めていた。
「結界?」
またあいつが適当に寝ているのだろうと違和感を放置していたが、どうやら違うらしく、何かしらが戦う気配と結界を確認し中へと入る。
「悪魔祓いか。それもうちの生徒の」
日本中にいる異能力者やそれに類ずる各業界の少年少女を集めている異能学園には、勿論このような人物が多数在籍している。目の前で戦っている数人の悪魔祓いもその内の一つだ。
「結界張ってるからいいものを、こんな戦いされたら中庭は荒れまくりじゃねえか。片付ける身にもなってくれよ……」
物陰から無数の黒い影か鞭のように生えており、それが悪魔祓いたちを蹴散らしながら隙を突いて銃弾を放っている。そしてその中を掻い潜って、二人の悪魔が奇襲を仕掛け、片方が殴り飛ばし、もう片方が大剣で斬撃を放っていた。
「レジェンドにタイクーン、あとヒョウガーか」
影を操る悪魔のレジェンド、風を操る悪魔のタイクーン、氷を操る悪魔ヒョウガーの三人に追い詰められる悪魔祓いたち。それもそうだろう、彼女ら悪魔たちは王クラスの護衛なのだ。彼らも優秀とは言え、同じ数で戦って勝てる相手ではない。
「結構激しいな。声かけても聞こえなさそうなんだが?てかあいつら安易呑気に飯食ってんだ?」
「いつもの事だ。本当あの方には困らされる」
結界の影響で外部への影響は出ていないが、内部はぐちゃぐちゃだ。庭は荒れまくり、その中心ではレチアと数人の悪魔がなぜか呑気に食事をしていた。そして快人に話しかけるウミノと言う悪魔。
「ウミノさんか。なんでこんな事に?」
「私の、と言うかレチアの気配を感じ取って来たんだ。で、問答無用で払うって聞かないから、護衛に相手させてたんだ」
どうやら案の定の結果らしい。そして当の本人は部下と一緒に食事をしている。
「手加減はしてくれてるみたいだな。よし、終わらせるか」
そう言い快人が三対三の戦いに近づき、手を叩いた。すると重く高い音が鳴り、あらゆる異能は消え去り、全員の動きが止まる。
「終わりだ終わり、解散」
そう言うと、悪魔たちは撤収作業に取り掛かり、悪魔祓いたちは不満げと言うか何を言っているんだ?と言う顔をして、苦情を言おうとする。
だがその言葉は口から出ることなく、全員ピタリと止まっていた。
「あ~快人だ~。迎え遅いよ~」
「お前はな……」
レチアが快人に近づく経路にいた悪魔祓いたちは全員、レチアの怠惰に直で触れてしまい、声が出ないほど戦意喪失していた。と言うか何も考えられない状態になっていた。それに呆れながら、ちっさくなって飛びついてきたレチアを受け止める。
「お前はもうちょっと加減というものを知ろうな?」
「え~でも~、快人には効いてないからいいじゃん」
そう言う事じゃないと降ろそうとするが、不満げな顔をして
「おぶって行って!」
「はぁ~、わかったよ」
そこまで動きたくないのか?と半ば諦め気味に背負い直す。
「レチアは出会った時からあの性格だからね。快人さんも食べるかい?うちの料理」
「母さんの手料理はおいしいよ!」
「料理人だからね~」
「料理長も認めるぐらいだからね」
「いやいい。帰ってからにしてくれ」
後から付いてきた悪魔たちの数人、ヒョウドル、ヒョウガー、ウミル、タイフーンがそう言う。
「ウミノさん。これでこっちに来てる悪魔は全員?」
「そうだ。レチアの配下はこれで全員だ。あっちでも仕事があるから、私たち以外のレチアの配下は出て来れないだろう。なんせあの麻希が来るんだからな」
「大変なもんね。こっちは事前に知れたからよかったものの、他の国も忙しくてこっちには手が出せないと思うよ」
「麻希さん以外にも、問題が色々あるからね」
ウミノとレジェンド、タイクーンの三人がそう教えてくれた。それを聞いた後、快人は惨状後を見返し、悪魔たちに断りを入れてから、無線を取り出し残っている用務員に連絡を入れる。
「セイスドさん、ダイヤズさん。ちょっと仕事が発生した。生徒が色々やらかして中庭が少々荒れてしまってな。他の用務員とかイカロスさんにとかにも手伝ってもらって片付けといてくれ。俺は今、手が離せないからさ」
そう言った矢先無線の先では、「どうして私がこんなことをしないといけないの!?」とか「前に変わってもらったし仕方がないわね」などが聞こえてくるが、「頼んだぞ」と言って無線を切る。
「生徒は……あの様子じゃ無暗に動かさん方がいいな。後から来た用務員たちに任せよう」
そう判断し、快人はレチアたちを家に案内するのだった。
投稿キャラを出させていただきました。