豪邸や別荘に近いほど巨大な家の前にやって来た快人一行は、さっそくその中に入る。
「お帰りなさいませ、快人様」
「ああ、伝えているとは思うが、客人たちだ。丁重に頼む」
見ての通り屋敷は広いので、こうやって使用人を雇っているのだ。まぁその使用人の殆どは、以前の休日編にいたサヤカやミカエルのような麻希さんが助けてきた人たちで構成されている訳だが。
「随分広くなったね~、使用人もつけちゃって~」
「客が多い時用の別荘だ。普段住んでる家はもっと小さいぞ」
目の前の豪邸は、客人用の家らしい。麻希さんは、良くも悪くも顔が広いので、別荘やマンション、ホテルなどを複数と言うか全世界に持っている。これもその内の一つだ。
「じゃああの家を知ってるのは私だけ~?」
「お前だけじゃないが、少ないだろうな。組織のトップが住むような家じゃないから」
昔住んでいた家は今も普段使い用にしている。その家は、日本ならどこにでもありそうな、家族用のアパートの一室である。
「快人さん。夕飯を作りたいので、キッチンを借りても?」
「好きなように使ってくれ」
ヒョウドルは礼を言いキッチンの方へと向かい、他の悪魔たちも案内されるがまま、部屋に通されていく。
「おい、お前も行くんだよ」
「?」
なぜか一人だけ残ったレチアに、呆れた様子でそう言う快人だが、肝心のレチア自身は不思議そうな顔をしていた。
「お前用の部屋もあるんだ。っておい、嫌な顔をするな。なんでそうなる」
レチアがいつ気が抜けて力を放っても、元の大きさに戻ってもいいように広くて特別な部屋を用意していた。だがなぜか、本人はそれを聞いて文句がありそうな顔をしている。
「昔みたいに同じ部屋で寝よ」
「無理があるだろ。てかあの時は家が狭かったからだ」
レチアを家に迎え入れた時は、アパートだった。勿論、客人を入れるようにはできていないので、寝るところは同じ部屋になっていた。
「じゃあ広くなった今なら一緒の部屋で寝てくれる?」
「いやそれも無しだ。前みたいに抱き着かれたら面倒だからな」
勝手に抱き枕にしてくる上に、レチアは動かないし起きないので、快人も動けなくなる。それは非常にめんどくさかった。
「自制、できると思うから……ね?」
「なんで疑問形なんだよ。とにかくダメだ。子供でも家族でもないんだから、男女が同じ部屋にいるのは問題があるだろ」
精神面ではさて置き、快人も色々と成長している。たまに麻希さんは潜り込んで来る時以外は、一人で寝るのが当たり前だ。やっと母親から顔方されたのに、と思っているぐらいだ。
「じゃあ家族になればいい?」
「変なこと言ってないで部屋に行けって。あっちの奥の方だ。俺は疲れたから休みたいんだ」
そう言って去ろうとするが
「いいじゃん、ケチ」
「は?」
そうチラッと言われて、しょぼくれて部屋に向かうレチアを、理解できなさそうな顔で見る事しかできなかった。