ビルの中に入り受付に話を付けた二人は、いきなり客室に通されていた。
「話付けてたのか?」
「うんそうだよ~。行くよって思念送っておいたんだ~」
一方的に思念を送って予約していたようだ。迷惑この上ないが、言ってもムダだと思われているのかちゃんと用意してくれていた。
「……まぁ今度からは相手の都合も聞けよ」
「ん~わかった~」
いつものように聞き流すのではなく、珍しく素直に頷くレチア。それに違和感を覚えたが、偶には人の話を聞くもんだなと流す快人。そんな感じで客室近くに来た時だった。
「あ、快人さん。おはようございます。なぜうちに?」
「降魔さん。こいつの付き添いだ」
そこには渡辺の彼女兼社長令嬢の降魔がいた。
「この方は?」
「レチアだよ~。キミのおばあちゃんに用があってね~。ちょっと遊びに来たんだ~」
そう呑気に言うレチアは、サラッと降魔を見て。
「レチアおばさん?」
「そうだよ~。わかんなかったかな~、久しぶりに擬態したからね~。ん~それにしても、やっぱあの子に似て綺麗だね~」
数年ぶりな上に、以前出会った時とは雰囲気も見た目も違ったのでわからなかったようだ。だが言われてみればとすぐに認識し直していた。
「いえそれほどでも。レチアおばさんこそ、すごくキラキラして変わられたようで」
「そうかな~、えへへ。お世辞でも嬉しいよ~」
降魔に褒められ嬉しそうにするレチア。そんな感じで世間話をしていると、降魔の後ろから声をかけられていた。
「麗奈。廊下で話すと相手にも周りにも迷惑でしょう。それに今日は渡辺さんとお出かけするのでしょう?時間は大丈夫なんでしょうね?」
「あ、そうでした!ありがとうございます、お婆様。では私はこのあたりで」
「デートかな?時間取らせちゃってごめんね。いってらっしゃ~い」
降魔改め麗奈は、そう言うと頭を下げてそのまま出て行った。そのままレチアの会いに来た目的の悪魔がこちらにやってくる。
その姿は、着物を着こなしたパッと見婆さんに見えない程美しく綺麗な人だった。
「ラグニア~久しぶり~」
「久しぶりです、沙麗さん」
「貴方って悪魔は。いきなり思念で来ると言って詳しい事も何も言わずに予定を進めて。配下を使ってでもいいからもっとちゃんと報連相しなさいよ」
能天気なレチアと違い、目の前のこの会社の会長婦人のラグニアこと沙麗は呆れながらそう言うと、普通に客室に案内した。
「気も予定も張り詰め過ぎたら病むよ~」
「お前は極端すぎると思うぞ?」
「快人さんの言う通りね。貴方は何もかもダラしなさすぎるのよ。あと悪魔名で呼ばないでくれる?」
悪魔は自分の名に誇りとプライドがあるがあまり、それが弱点にもなりうるので本名を呼ばれるのを嫌う。これは自分の正体を隠すためであり、相手に対策を取られないようにする初歩中の初歩だ。勿論、マイナーだから知らんやろとか、知られたところでなんてことない悪魔たちもいるので一概にそうと言う訳ではない。常識の一つにあるだけだ。
「そうだったね~、ごめん沙麗」
「わかればいいんですよ、まったく……」
そう雑談して、逆室に着き中に入るのだった。