少しのトラブルがあったものの、無事休日を迎えられた男は、とある場所に向かうために大型の個人用クルーザーに乗っていた。
「またこんなん買って……」
「いいじゃん。どうせ金なんていくらでもあるんだし。使わないと増え続けるだけだし。社会に還元しなきゃね」
呆れた様子の男に、少女はジュースを飲みながらくつろぎまくっていた。
「小崎様、おかわりのジュースです」
「快人様もどうぞ」
「ありがと、サヤカ」
「ありがとう、ミカエルさん」
少女と男がサヤカとミカエルからジュースのおかわりをもらい、少女は子供の様にうまいうまいとストローで飲み、男は二人に話しかけた。
「すみませんね、こんな休日に呼び出しちゃって。娘さんもいるのに」
「別に構いませんよ。こちらも相当お世話になってますから、これぐらいは……それにムツミも連れてきてますので」
「こちらもですよ。誘ってくれてうれしいぐらいです」
「そうそう、楽しい事はみんなでってね。休日に呼び出しちゃってるんだからこれぐらいしないと」
プライベートなので来れそうな人に募集をかけて、とりあえずクルーザーに乗れそうな人たちを集めた結果こうなったのだ。もちろん家族連れもOKで、来てくれた人たちには行き帰りのスタッフ兼、一泊二日の旅行のような形だ。これも少女の人望あってこそである。
ちなみに誰も来なかったら、二人は海の上を走って目的地まで行っていた。
「そういやコトリは?姿見えないけど?」
「すみません、ちょっと娘たちの相手をしてもらってて、呼びましょうか?」
そういいサヤカは、遠くの方で子供たちに遊ばれているコトリに視線を移す。
「あらら、ならいいよいいよ。大変そうだし」
「流石に子供にはな」
コトリはめんどくさがりで、暇さえあれば寝たりだらけている人だった。そんな彼女でも、子供相手では無視できないのか一緒に遊んでいた。
「……そういやあいつ炎出せたよな?バーベキューとかする予定だから手伝ってもらおうかな?」
「それはいいですね。きっとみんな喜びますよ」
本人がいないところで勝手に話が進むところを見て、男は何を思ったのか苦笑いをしていた。
「そういや二人とも、仕事の方はどうだ?また変なことされてない?」
「はい、小崎様がいらっしゃってからは特にそのようなことはされていません」
「ええ、一度は逃げ出した場所とは思えませんね」
二人やコトリも含めた他の社員もそうだが、少女が雇っている者たちはとある組織で人間兵器として作られた改造人間だ。そして少女がその組織を乗っ取り、一般企業に作り替えたおかげで助けられた者たちでもある。
なお、裏業界の組織を乗っ取る事に味を占めた少女は、乗っ取った組織を手当たり次第に法人化し支配下に置いていったことは、まあ別のお話……
「不満があったらいつでも言っていいよ。仕事内容がアレだし、休みとかちゃんと取れてるよね?手当とかも?」
「大丈夫ですよ。確かにやってることは大して変わってませんが、扱いがすごく改善されましたから」
部下が勝手なことをしてないかや、ブラック企業になってないか心配する少女に、大丈夫だと返すミカエル。
「うん、給料もたくさん出るし休みも自由もきく。本当にありがとう」
「ならよかった。ワタシも確認はしてるんだけど漏れがあるかもしれないしね。何かあったら気兼ねなく言って」
なにより人材を大切にする少女は、改善を怠らない。そのため神出鬼没に各組織に現れては、視察や聞きこみをする場合がある。そしてこの行為は、各組織のトップにとって非常に心臓に悪いことこの上ないのだ。
「母さんの下につくって、みんな大変だろうな……」
「その通りだ。あいつの下についたら忙しくて仕方がない」
三人で話している所を外から眺めていた男に、コトリが話しかけに来る。どうやら隙をついて子供たちの相手を他の人に押し付けて来たようだ。
「コトリさん、でもあなたの場合は……」
「聞きたくない、やる事はちゃんとしてる。そんな事より島が見えたぞ。ってことで私は疲れたから休ませてもらう」
それだけ言うと、コトリは逃げるように去っていくのであった。
投稿キャラを出させていただきました。