異能学園の用務員   作:バトルマニア(作者)

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休日一日目 後半

 島に着いた一行は、まず島の関係者に出迎えられ挨拶をし終わっていた。そして現在は、島から離れた海上で立ち話をしている。

 

「いいのかあんな適当で、一応部下だろ?」

「いいのいいの。今回の目的は仕事じゃなくて遊ぶことだからね。それにかたっ苦しいのなんでめんどいだけだし」

 

 相手方はなんだか話したそうにしていたが、少女はそれを無視して最低限の事だけして振り切っていた。

 

「大変だな。母さんの部下ってのは……」

「一番大変なのはワタシよ、書類の山を当たり前のように突きつけられるんだから。それに現場にも行ったりしなきゃだし……正直学園での仕事は息抜きみたいなものよ。理由付けて休んでるだけのね」

 

「そういや学園にも母さんの部下たちが関わってたような……」

 

 少女は大企業どころではなく、一般には名が知られていないだけで世界でも上位に入るほどの経済圏を作り上げた人だ。政治経済国家ぐるみも全て掌握できると言われているが、部下たちはともかく本人は興味ないのであまり手は出していない。学園の仕事を持ってきたのも少女の部下たちだ。それもこれも裏組織を取り込み続けた結果だが、そのせいで仕事は増え続けるばかりでもある。

 

 

「ま、そんな事より始めましょうか。二十歳過ぎて初めての戦闘訓練を!」

「そ、そうだね……」

 

 元気になった少女に、顔を引きつらせる男。それもそうだろう。今まで理由付けて逃げ回っていたのに、今回それに失敗したのだ。

 

「じゃ行くよッ!!」

「うおッ!?」

 

 少女は一瞬で距離を詰め、超高速の蹴りや拳の殴打を繰り出してくる。それを紙一重でかわし受け流しながら後退する男。

 

「こっちだよ!」

「速いって!?」

 

 男は反撃をしたが、それは残像で拳はむなしく空を切る。そして後ろに回り込んだ少女は、二刀の刀を取り出し斬り掛かる。

 

「うずうずして仕方がなかったんだ!やっぱ全力で体を動かすのは気持ちがいいなっ!!」

「ちょっちょっちょっとっっ!!?」

 

 殺意などが一切こもっていないはずのその連撃は、確実に男を追い詰めるにたる威力と速度で振られ続ける。それから逃げ回る男は、急いで距離を取ったが……

 

「逃げるな!」

 

 飛ぶ斬撃、飛斬が次々に放たれ、男の視界を埋め尽くしていた。

 

 

「あっぶね!」

「流石に避けたか。とうぜんだよな!」

 

 水中に逃げた男は、反撃の衝撃波を何度も発生させた。だがいとも容易くかわされ、上から飛斬の雨が降り注ぐ。

 

(いつも思うけど軽い運動でこれってヤバいよ!だが逃げてばかりだと後が怖いから反撃しねえと!)

 

 水を割り海中数十メートルまで届く少女の斬撃をかいくぐり、男も刀を一本取り出し飛斬を放つ。しかし精度が違い過ぎるのか相殺すらできずに回避がしやすくなる程度にしか役に立たない。

 

「もっと反撃してよ!」

「ッ!?」

 

 気が付いたら目の前にいた少女の斬撃を受け止めようとしたが、それは残像であり背後を取ら水上に蹴り飛ばされる。

 

「もっとよく見て!全体を!!」

 

 そのまま空中に吹き飛ばされた男に、大量の飛斬とともに追いかけてくる少女。一見隙がなさそうに見える構図だが、男は少女の声掛けに答えるように最低限の飛斬を破壊し、少女の斬撃を受け止めた。

 

「できるじゃん!じゃもっと行くよ!」

 

 そのまま空中で斬り合う二人。その攻防は、大気を震わせ、波を大きくし、漏れ出た飛斬が周囲を斬り裂いていく。そしてひたすらに攻防は激しさを増し、少女は楽しげに笑い、男は苦笑いをすることしかできない。

 

「ホントは半年に……いや月一……でもなくて、毎日したいんだよ!なんで付き合ってくれないの!生活には困らせないのに!」

「嫌だ!無理だ!ここは母さんのいた世界じゃない!毎日が戦闘でありふれた世界じゃないんだよ!」

 

 狭間世界出身の少女は戦闘狂だ。だが本人はそう思ってはいなかった。なぜならもっと戦闘好きな奴は多くいたし、そもそも少女はどこにでもいる一般人で、そいつらに困らされることも多く“これだから戦闘狂は……”と呆れた事も数え切れなかったからだ。しかしこちらに来て少女は自身が……狭間の住人が戦闘狂であることを理解した。理由は今まで当たり前のようにしていた仕事や遊びが戦闘とは認識していなかったからで、それを戦闘だったと認識せざるおえなくなったからだ。

 

「こっちの住人は張り合いがなさすぎるんだよ!だからアンタしかいなんだよ!」

「俺も強くないわ!」

 

 そして満足のいく戦闘が出来なくなり我慢し続けた結果、少女は立派な戦闘狂になり果ててしまったのだ。だからこうやって定期的に発散しなければ、何をしでかすか分からない存在になった

 

「そんな事無い!ワタシの息子だろ!あの人との子でもあるんっ!?」

「その話は聞きたくないッ!」

 

 少女は思いっきり叩き落され、男も渦を巻く水中に飛び込む。その寸前で本気の飛斬を放ち、海底が見える勢いで海を割り切った。

 

 だが――

 

「流石ッーーだッ!!」

 

 その斬撃は少女によって搔き消され、第二撃目が完全に少女を海底に押し付けた。しかし多少体勢が崩れかけただけで大したダメージになっておらず、割れた海のど真ん中で迫る海水を無視して再度斬り打ち合う。

 

 そんな時だった。二人は気にしていないが、地面が揺れ出し巨大な何かが起き上がろうと海底が浮上し始める。

 

「か、母さっ!?」

「この程度気にするな!今はこの時を楽しむのが先だ!」

 

 その場で戦えなくなったのか一旦距離を開け男は説得を試みようとする。しかし少女にとってこの程度脅威にすらならずに戦闘続行の為に男に斬りかかった。

 

 

「っ!?邪魔するなぁっ!!!」

 

 起き上がっている何かが少女の行く手を阻もうとする。それを容赦なく斬り刻み

 

「はぁあぁぁっっ!!」

「舐めるなっ!!」

 

 その隙を男に突かれ、対処が間に合わずに刀を手放してしまった。しかし少女はその程度では止まらない。即座に素手による殴打を繰り出し、最後には男を蹴り飛ばし何かをぶち抜いて吹き飛んでいく。

 

「お前は邪魔だ!」

 

 そんな戦いをしている少女に起き上がった怪物は、触手を向かわせひねりつぶそうとした。だが次に取り出した薙刀に斬り刻まれ、伸ばしてきた触手と腕は見事にズタズタになる。それどころか怪物を踏み台にして男を追う少女。

 

(ヤバイ!母さんがホンキを出した!)

 

 怪物の肩の上まで逃げていた男は、咄嗟に怪物の体の影に隠れる。すると複雑に入り組んだ飛斬が怪物を抉り斬り裂いていく。それで大きなダメージを受けた怪物は叫んでいるが、男はそれどころではなかった。

 

(薙刀を多節棍にした武器。あれは軌道が読みずらくて厄介だ。飛斬ならまだしも間合いに入ったら死ぬ!)

 

 襲い掛かる飛斬の嵐を、怪物を盾にしながらどうにかやり過ごす男。だが少女はそんなとこは関係ないと怪物がどれだけ苦しもうと無視して男を狙って攻撃を撃ち続けていた。

 

 そして怪物のてっぺんに辿り着いた二人は……

 

「くそっ!ヤケだっ!!」

「決着だ、息子よ!!」

 

 両者一歩も引かずに掠れた残像しか見えない速度で激しい攻防を繰り返し

 

(攻防は完璧に近い!どう切り抜ける!!)

 

 巻き込まれた人型の触手まみれの怪物を海に叩き返し

 

(ここだッ!!)

 

 一筋の光を見出した男は

 

「はぁあぁぁっッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガァッ!?」

「一手遅かったな」

 

 最速の突きを見切られ、意識を刈り取られるのだった。

 

 

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