ウマ娘に責任を取らされる成人男性   作:もちもち大根

8 / 8
1年半ぶりに初投稿です。


ダンツフレーム編

 これまでの劇的な出会いから時間を遡り約一年前。

 芝崎走一がトレーナーに復帰する前、理事長秘書補佐として働いていた過去に遡る──。

 

 *

 

 肌の上から感じる夕暮れの柔らかな光。体育館から聞こえていた活気のある声は帰路につく談笑となり、徐々に学園から離れていく。

 そんな健全的な学園の一コマが溢れる中で、息も絶え絶えに苦しそうに走っている生徒、──ダンツフレームが歯を食いしばって1人で練習を続けていた。

 癖のある茶髪は乱れ、丸い垂れ目が疲労で歪む。教師から模範生として評価される清廉な姿は見当たらず、土と汗で塗れた運動着を着直すこともせずにいた。

 

 横薙ぎに叩きつけてくる石畳のような風、踏みしめる芝と土の鈍い摩擦音、肺が潰れるような不規則に刻まれる呼吸。五感で受け止める全てが彼女の走りを遮り、愁傷を煽ってくる。

 

 他のウマ娘が享受する暖かさとは裏腹に、この広大なグラウンドは冷酷に現実を突きつけてくる。普段なら気にならない程度の環境がそんな自分を邪魔するように思えてしまう。

 ──それほどまでに今日の敗北は彼女にとって衝撃的なものだった。

 

 ダンツフレームが所属するチームは、定期的に親交ある6チームで模擬レースを催している。レースはチーム対抗戦を見据えているため、『芝・短中長マイル』と『ダート・マイル』による基本5種で構成される。

 その中でダンツフレームが出走しているのが花形の芝・中距離だ。自身を平凡なウマ娘と自戒しながらも、チームからエースとして任された責任からは逃れずに努力している。

 

 ──しかし、そんな努力には恵まれず。

 今日の模擬レースは、このチームが創設して数十年の歴史で最低となる悲惨な結果になってしまった。

 

 最終走者の彼女が出走するまでに4レースが行われたが、最高順位がダートの5着で、その他の3レースは6着の最下位だ。

 そうなると愚直に努力を積み重ねる性格のダンツフレームは、チームを率いるエースとして意気込む。最終レースで1着を取り、落ち込むチームに僅かでも活気を取り戻そうとする。

 

 ただ、その気合の果ても4着に終わった。先頭を競る好勝負も、自分の脚質を披露する見せ場もない。その他の大勢として、埋もれ、負けた。

 エースとして不甲斐ない結果。申し訳なさでチームの元へ戻ることができない。

 ゴール地点で震える膝を両手で押さえ、汗で垂れる前髪の隙間からチームメイトの顔色を伺う。

 

 ──だが、視線の先にいる仲間の表情に色は無かった。

 喜怒哀楽、そのどの表情にも当て嵌まらない。退屈な授業を受け、ただ時が過ぎるのを待つような。いつもの光景に飽き、濁った平穏な日常を堕落して生きているような顔であった。

 

 ダンツフレームの仲間たちはとっくの昔に理解していた。このトレセン学園で勝つことが出来るのは一握りの才能を持つ者だけである。自分たちは天才(あちら)ではない。せいぜい一握りの才を輝かせるための装飾品に他ならない。

 それにこうして情けなく敗北に浸る自分たちを奮い立たせていたトレーナーは不在だ。昔は栄光を辿っていたが、今は高齢で床に伏せている。自分たちだけでどうにか粘っていたが、見栄を張るのにも限界がきている。

 

 ならば、そこらにいる学生と同じ生き方をするのが良いのではないか。何となく授業を受け、流されるまま部活動に取り組み、上辺だけは前向きな言葉で青春を着飾る。そうして平穏に卒業し、ありきたりの人生を歩いていく。

 

 それは大半の人たちが選択する生き方だ。誰に責められるものではない。

 誰もが望む夢のような、輝けるプロアスリートとしての道を進めないのであれば、早々に道を変えるのが賢いはずだ。その生き方が最も平均的なものであるはずだ。

 何となくの成長と挫折。それなりの平凡な人生が幸せであろう。

 

 ──ただ、残酷にも、どんな平凡を目指そうとも、ウマ娘の本能が走るということに回帰する。

 抱いた夢を諦めたいのに、現実が辛くとも諦めきれない。そんな感情がチームを蝕み、締め上げるように絡みついている。単なる学生にしか過ぎないダンツフレームには手の施しようがない最悪の状況。

 

「……嫌だ。終わりたくない」

 

 ダンツフレームが独りグラウンドに残り何時間が経過しただろう。

 いつの間にか頭上に広がっていた夜空に彼女の嘆きが溶けた。

 

 彼女自身も才能の限界を味わい、共にする仲間は走りたいという本能に無理やり蓋をしようとしている。どんなに自分が踏ん張ったところで報われないだけなのではないか。そもそも何も実績のない自分がエースを任される時点で、このチームはもうダメなのではないか。

 そんな悪循環の思考が脳裏に張り付いて離れない。

 

「──でも、まだ、もう少しだけ……」

 

 それでも、ダンツフレームだけは今にも千切れそうな細い線を手繰っている。目に見えないほど細く、弱い線を辿っている。

 諦めずに走っているのであれば、何かがきっかけで状況が好転するかもしれないと、淀んでいく日常で独り戦っている。

 

「よしっ──! もう一本!」

 

 何時間も練習を継続しているせいで喉が渇ききっており、踏み込む足にも力が入らない。練習着がビッタリと体に張り付いているのも気分は良くないし、女の子として可愛いらしい格好とは言えないだろう。

 ただ、この走っている瞬間だけは嫌な現実は忘れられる。自分の夢に見る舞台のことだけを考えていられるのだ。この消えかけている灯火を包み守るように、脳裏に張り付く怖気を振り払うようにしなければいけない。ダンツフレームは無理矢理な笑顔で現実逃避し、止まっていた足を踏み込もうとする。

 ──そんな彼女の耳に溜め息が混じった声が聞こえた。

 

「いやいや……。君、オーバーワークでしょ?」

 

 既に学生は練習を終えて帰寮している時間である。自分以外に誰もいないと思っていたため、ダンツフレームの足が驚きで固まる。そして彼女は器用に硬直したまま、首だけを捻って不可思議な音源を探った。

 

 夜空の下、グラウンド外側、ライトには照らされない位置に誰かが立っている。暗闇のせいで細部を確かめることはできないが、その声からして男性だろう。

 

「わっ、私っ!? ですか……?」

「うん、そうでしょ。君以外はみんな帰ってるよ」

 

 ぼやけた輪郭であった()()は緩慢な足取りでグランドに入り、ダンツフレームの帰寮を促すように手を叩きながら近づく。照明を浴びるグラウンドに立ち入ったことで、暗闇では分からなかった風貌が鮮明になった。

 着古したジャージとスニーカー。癖のある髪は、それまで練習をしていたダンツフレーム以上に無造作なまま。亡霊を思わせるようなハイライトの無い瞳は、彼女がこれまで出会った誰よりも生気を失っていた。もし、学園関係者であるIDが垂れ下がっていなければ、不審者として通報されているだろう。

 

 ここで彼女が悲鳴も発さずに対面していられるのは、友人から無警戒とまで言われる性格の良さがあってのことだ。

 ただ男性の事情からすると、他の学生同様に逃げ帰ってくれた方が都合が良い。

 

「寮の食堂も閉じちゃうし、君がいると僕もグラウンド整備できないんだよね」

 

 職員である男性は荒れたグラウンドの手入れが仕事の一つで、それがダンツフレームの練習で遮られている。

 翌日も多くの学生が使用する修練場の整備と、学生1人の練習継続。天秤の皿に置くまでもなく、優先されるのは前者である。彼女がこの場を独占できる理由はない。彼女は日々の整備をしている裏方の彼に感謝し、無断で夜間まで使用していたことを謝罪して去る。

 ──はずが、この日の彼女は学生としての模範的行動ではなく、自分の本能に従った。

 

「えっと……、その……、すみません! あと一本だけ走ったら帰るので!」

 

 ダンツフレームは男性が何かを言い返す前に走り出していた。

 それは今日の敗北による精神的な揺らぎ──、などではなく天命にも等しい直感。神経が四肢を動かした理由を彼女自身も直感と気がつくことはない。ただ単に最後の一本を走ってキリ良く締めたいと思っていた。

 

 しかし、このタイミング、この男性職員がいる状況で2,400mを走るべきであると本能は感得している。ひどく歪なフォームで、ベストタイムには遠く及ばない足での一本。改善点だらけの走りは怪我のリスクがあり、早急に止めさせなければならない一本であってもだ。

 

 ──そして、芝崎もそのような無茶苦茶を目の前でされてしまえば、否が応でも元トレーナーとしての心肝が出てきてしまう。

 

「ふぅ……、すみません! ありがとうございました」

 

 ダンツフレームは最後と銘打った全力走を終え、男性にむかって深く一礼する。

 彼女にとって目線の先にいる男性が学園でどのような立場かは分からない。しかし、教職員の指示を無視して行動した。彼女にしては珍しい不良行動に自分自身が僅かに興奮しつつ、顔を伏せながら男性を横切ってスポーツ飲料とタオルを取ろうとした。

 

「……もう一度言っておくけど、オーバーワークだから」

 

 男性の側を通る瞬間、先と同じ忠告がダンツフレームの耳に入る。

 口調は優しく、あくまでソフトな言い方を心がけているが、その声色の奥に怒りが見えていた。

 

「頑張るのは良いと思うよ。でも、頑張るのは無理することじゃん。メリハリつけたり、効率化するのも頑張るの一種でしょ?」

「……す、すみません」

 

 正論、スポーツをするのであれば小学生にでも理解できる当然を突きつけられた。

 明確に自分は怒られているのだと叱責を受け入れてしまえば、帰寮に向かった足も止まる。余計なことをするのではなかったとダンツフレームは反省し、男はその練習内容について語り続ける。

 

「そもそもあのレース(・・・・・)の敗因はスタートの位置取りでしょ? それなら走る本数を多くするんじゃない。まずはスタートの練習して、余裕あれば加速時の体勢の見直し。あと、集団からの抜け出し方だよね」

 

 ダンツフレームのヘタっていた耳が起き上がった。腕を組みながら指を叩いて怒りを表す男性の口から発せられたのは、彼女が犯した今日のレース展開である。

 誰にも気にかけられないような自分の愚鈍なレース結果を分析する人が学園にいるなど、自身のトレーナーが休業中の彼女は思いもしていなかった。

 

「見ていてくれたんですか……?」

「まあ、たまたま見えたから。──ん? あ、いや、覗いてたとかじゃないよ、本当に。変な噂は流さないでね……!?」

 

 男性は何を深読みしたのか、そこまでの怒りモードから変わり謎の弁明を始めた。

 その雰囲気を察してダンツフレームの頬が綻ぶ。夜間グラウンドの無断使用が許されたのではないが、現状の改善点を模索する彼女にとって絶好の機会だ。こうなったら男性の素性はともかく、その見解を詳しく聴取する他ない。

 ただ、寮に帰るだけのダンツフレームとは違い男性は仕事が控える身だ。彼女から追求が始まる前に、男性がこの状況を仕切り直してしまう。

 

「ともかく! 状態が悪いなら体力勝負で解決しようとしない。問題はアウトプットして、ロジックで解決しないとだから。──はい! 帰った帰った!」

 

 ダンツフレームは勢いよく肩を掴まれ、ぐるりと出口方向へと振り返らせられる。

 先ほどは男性の帰寮指示を聞かずに無茶をした。今度こそ指示に従って行動をしなければ、それこそ彼の見解を聞き出すことは不可能になるだろう。

 ダンツフレームは、どうにかこの場に残る打開策は無いかと唸るが頭は疲れで働かず。仕方なく小さな歩幅で帰り道を歩む。

 

 男性がこの学園の職員であることは確かだ。そのうち会うことが出来るだろうし、その気になれば職員室やトレーナー室を回って身元の調査をすれば良い。精度に欠ける記憶ではある男性の格好や顔も覚えた。あとは手当たり次第にでも、その特徴と名前で所在を漁っていけば──。

 

「あっ……。名前、聞き忘れちゃった……」

 

 

 

 *

 

 

 

 授業終了のチャイムが鳴り、昼休みの開始が告げられる。クラスメイトが我先にと教室から食堂へと向かう中、ダンツフレームは教科書類を片付け、自前で用意していたお弁当を広げるために机上を除菌シートで拭いていた。

 そんな彼女の元へ、床を猛然と踏みつけて友人が近づいてくる。

 

「よぉ! ダンツ聞いたか? この校舎ってオバケが出るんだとさ!」

「あ! もう駄目だよ、ポッケちゃん。食べながら歩いたら」

 

 ダンツフレームに話しかけて来たのは、クラスでも交友の深い活発的な友人だった。

 友人は食べカスを口元に付けながらサンドイッチを頬張り、ダンツフレームの前に空いていた椅子へと逆向きで腰掛ける。そしてダンツフレームが綺麗に仕上げた机にコンビニ袋を無造作に置き、「いつも悪りぃな」と慣れた態度で相席を申し出た。よほど空腹であったのかチャイムから2分程度でサンドイッチの一袋が空になっている。

 

「それで、なんだっけ? オバケ……? 学校の七不思議みたいな?」

「そうそう! 他の奴が話してるの聞いたんだけどよ。化学室の並びの奥に準備室だっけか? なんか小っせえ部屋あるだろ」

「えっと……、校舎の2階だよね……?」

 

 ダンツフレームは自分の回答にそれそれと相槌を打つ友人を見つめながら記憶を探る。

 校舎2階にある科学室が連続した並びの最奥。この国内最大規模の敷地面積を誇る学園で、最も人通りのない階段の側に一室が設けられている。

 そもそも科学室の付近は移動教室でしか訪れることが無いのだ。その奥は授業と関係が無いため足を踏み入れたことすらない。校舎の行き止まりという印象だけである。

 

「んでよ〜、そこの部屋から夜中に幽霊の声が聞こえるんだと……」

「……へ、へぇ〜。あれかな? 誰も使ってないから隙間風とか?」

 

 サンドイッチ越しに続く怪談に、ダンツフレームはそれらしい原因を提示して怖さを和らげる。

 これはダンツフレームも小耳に挟んだことがある噂話であった。その昔、レースで怪我をしたウマ娘の怨念が棲みついているだとか、トレーナーとして失敗した人が自らを手にかけたなど。学園の歴史が長い分、そういった話は往々にしてあるものだ。

 

 ダンツフレームは適当とは言わないが友人の話はそれなりに対応。花の女子高生としては、学生らしいもっと明るい話題をしたいもの。──だが、残念なことに活発な友人は危険・無鉄砲に縁がある。

 

「だからさ、これ食べ終わったら見に行かね?」

 

 ダンツフレームの笑顔が引き攣った。口に残った食物を飲み込んでNOと否定の準備をする。

 それなのに、元気よく自分の顔を覗き込む友人の目が輝きすぎていて躊躇ってしまった。それに人付き合いが多い友人が、わざわざ自分のことを誘ってくれたことが、転校を繰り返して友人との関係に苦難していたダンツフレームの弱い部分に刺さる。

 心の中で数秒せめぎ合った結果、口をもごもごとさせてから細い声で答えた。

 

「……い、いいよ。──いいけど見るだけ! 見たらすぐ戻るからね!」

「やった! サンキュ! じゃあさっさと食っちまおう!」

 

 ダンツフレームは友人の嬉しそうな声と、それに伴って加速する食事速度に少し呆れたような笑みを溢す。

 肝試しなんて得意なことではないけれど、友達と一緒ならそれは大切な思い出になる。校舎の端にある部屋を見に行く程度なら良いだろう。

 

 怖いもの見たさも相まり、2人はいつもより早いペースで昼食を完食。今日あった何気ない出来事を会話しつつ、目的の校舎2階の奥地へと廊下を歩く。昼休みなだけあり、廊下やグラウンド周りにも人通りがある。若者の活力のある雰囲気が校舎に充満している。

 

 しかし、不思議と目的地に近づいて行くと、言い表せない焦燥感が徐々に浮き出てきた。

 それも当然。七不思議などの学校の怪談だが、舞台になるのは夜中などの陽が落ちた時間が多い。それは普段なら溢れる人通りが全くないこと、そして太陽光が存分に差し込む建物が暗闇で満ちているというギャップがあるからだ。

 今、2人が向かっている部屋も同様である。昼休みの化学室に訪れるものなど殆どおらず、偶然の立地か光も入りにくい。夜中の暗鬱に迫る雰囲気を帯びていた。

 

「あれが噂の部屋か……。ふ、ふ〜ん……、まあ、雰囲気あるけど普通の部屋だな!」

「そ、そうだね……。やっぱり、使われてないだけかなぁ……?」

 

 ダンツフレームはもちろん、肝試しを発案者した友人からも緊張が挙動に溢れている。

 辿りついた部屋は他の教室と外見は全く同じだ。ただ、校舎の端にあるために部屋のサイズが小さいだけ。専門教科室に隣接している準備室と何ら差はない。部屋の利用目的が明確でないから、それとない噂話が流れたというだけだろうか。

 

「ここまで来たし……。教室に戻ろうよ」

 

 ここまで観察すれば肝試しとしては十分だ。気遣い上手のダンツフレームは友人の様子からも、教室に戻っていつもの昼休みを堪能しようと提案をする。

 

「──いや、ここまで来たら部屋に入ってみてぇ」

「えぇっ──!? 別に見なくてもいいよぉ……」

 

 しかし、ダンツフレームの提案は却下される。やってみるなら最後までやり切るという精神が友人を動かし、ぎこちない足取りで薄暗い部屋へ向かって行った。

 こうなると友人に付いて行かず、この微妙な空間に置いていかれるのもダンツフレームとしては嫌なものだ。付き合いとは言え、どうせなら来たのなら最後までという気持ちは彼女としてもある。ギクシャクと歩きが硬い友人を追って、そろりと何かから隠れるような歩みを開始。僅か十数メートルの距離を1分程かけて詰めるなど、この2人のウマ娘にとって最低速度を記録しているだろう。

 

 先行していた友人が扉へと先に到着すると、2バ身差でへっぴり腰のダンツフレームが遅れて到着した。

 2人が扉の前に立ち、これにて準備は完了。友人が小さく頷いて準備を促すと、それを見てダンツフレームも両手胸の前でグッと握り、OKサインを表した。こうして噂の真相を確認すべく、その扉の取手に指をかける──

 

「……君たち、こんなところで何してんの?」

 

 突如2人の後方から浴びせられたのは、この世のものとは思えない不可解な声。壊れたスピーカから呪怨が流れているかのような霞んだ音である。

 

 それは発声者がコーヒーを飲み過ぎて発症している喉荒れが原因なのだが後に判明することだ。今の彼女たちにとっては、ただホラーを助長させる要因にしかすぎない。

 

 そんなオチも弱い小話を皮切りに、ほのぼのとした校舎で悲鳴が鳴り響くのであった。サスペンスドラマでボイスサンプルが必要ならばここまで適したものはない。そのような悲鳴であった。

 

 

 

 *

 

 

 

「……で、この部屋が幽霊屋敷だと?」

「あー……、いや、そこまでは言われてはないんだけどよ。あくまで噂って感じで」

 

 ダンツフレームたちは驚きで上昇した心拍を落ち着け、この部屋の主と語る男性へと事情説明を試みる。

 ただ、事情説明であっても肝試しと大っぴらに言うのは気が引ける。学園きっての図太い精神である友人であっても、貴方の部屋が学校の七不思議に使われますなどとは本人に言えずに苦戦中だ。

 

「なぁ、ダンツぅ……。お前からもなんか言ってくれよぉ……」

「えっ! あ、そうだよね……!」

 

 しかし、ダンツフレームは友人以上に苦戦している。悦楽とした心がお祭り騒ぎであり、まともに会話ができない状態。友人の助けを求める声も耳に入っているのは1割程度である。

 

 彼女の感情が高まる理由は明白。約1ヶ月前、彼女にとって不甲斐なく終えたレースに対してアドバイスをくれた男性が目の前で実在している。史実はグラウンドの使用に対しての説教も含まれていたが、そんな些細なことは記憶にない。たった一度の片手にも満たない数分は、ロマンチックな乙女心で都合よく解釈されていた。

 

 また会いたいと切望していた訳ではない。──ただ、勝手ながら、僅かながら、恩があった。

 あの日から彼のアドバイスを思い出し、誰かが見てくれているのなら走る理由になると、折れかけていたダンツフレームの心は耐えられた。彼女が目指す『主役(・・)』として存在するには、それを目視する観客が必須だ。あの自身もチームも勝てないという地獄のような状況で、その劇場から観客が未だ帰っていないと男性が証明した。

 

 だから会いたいと切望している訳では無いが、やはり挨拶はしておきたい。

 あの人に会えたら何を言おうか、自己紹介で何の話題を振ろうか、そんな事を一日に一回くらい考える程度だ。再三であるが、決して会いたいと切望していた訳では無い──、無いはずなのだが……。

 

「全然、誰もオバケがいるとか! ここの人が怨霊だとかは言っていないので!!」

「……ダンツ、お前。それは全部言ってないか……?」

「へっ……? ──あっ!」

 

 心のお祭り騒ぎは尚も継続中。集中に欠いた発言は、噂話を隠すつもりで全部を晒す結果になる。

 羞恥で爆発するダンツフレームと、いつもと違いフォローする側に回る友人。そんな慌てた様子の2人を見物し、当初は訝しんでいた男性の口も緩んだ。

 

「……ふははっ! 分かった、分かったから。もう気にしなくて良いよ」

 

 そう言って男性が微笑む。相変わらず古ぼけた不審者のような風貌をしているが、その本体とも言える男性自身は若い。健康的な生活を送れてはいなくとも、若人から溢れる魅力があるのだ。ダンツフレームへと微笑んだ表情を好青年に例えなければ国語の点数は取れないだろう。

 その微笑みに隣の友人は冷やかしと言える行動を怒られなかったことで安堵しているが、ダンツフレームはそうはいかない。その笑顔が写真のように海馬に焼き付いて、一つ一つの動作に視線が釣られてしまう。

 

 こんなことでと思う人もいるだろうか。さして、一目惚れとはこのようなものであると宣言しようか。

 自分すら諦めかけていた自分を見つけてくれた人が、こうして爽やかに接してくれるのだ。普通の女の子が憧れる、普通なラブコメストーリーを止める者がどこにいようか。

 

「おっと、5分前だ。君たちも教室に戻りなさい」

 

 気がついたら授業の準備を促すチャイムが鳴り、ようやくダンツフレームのどこかに飛んでいた意識が戻ってきた。

 名残惜しいが授業をサボることはできない。

 

「特に君、ジャングルポケット君でしょ? 注目されているんだから、悪目立ちはできないよね」

「分かってるって。ちゃんと授業には出るからよ。じゃ、お邪魔しました〜!」

 

 友人は軽口混じりの挨拶を済ませ、さっさと体を翻して教室に向かおうとする。

 ──驚きはしないのか、とダンツフレームは友人のことを目で追った。学園内で注目されているとはいえ、まだ実績も無い彼女のこと知っている。よほどの有識者、それこそトレセン学園の()()()()()でもなければ、有望株のウマ娘など知る由もない。ここはもっと喜んで良いのではないかと疑う。

 

 そして、そうなれば必然。次はダンツフレームも自分のことを知ってくれているのではないかと思ってしまう。それに一度会話した過去があるため、友人よりも認識している可能性が高いと希望を抱いてしまう。

 ただ、ダンツフレームは友人のような意外性も、未来にライバルとして出現するウマ娘のような知識性も無い。注目を集められない平凡な彼女の期待は余計に過ぎなかった。

 

君も(・・)、急がなくて良いから。遅れないようにね」

「──っ。はい……」

 

 それはダンツフレームの友人に向けていた応援とは系統が違う。送り出されたのは、その他の大勢に汎用できてしまうセリフ。

 あの日に出会ったことは男性の記憶から消えてしまったのだろうかと、期待していた自分の愚かさと喪失感を飲み込んで教室に戻るしかなかった。

 

 ──そんな精神状態で受ける午後の授業。集中力が中断を繰り返す。指定された問題は解けず、珍しいですねと教員のフォローが入った。ノートはしっかり取っているが、おそらく書き漏れはあるだろうと確信がある。

 

 授業後のチーム練習でも気分は斜めのまま。これでは状態が改善してきたチームに心配をかけると頭を抱える。

 

 彼女はあの夜以来、今度こそエースとして正しく努力してきた。

 トレーナー不在でも自己で練習メニューを見直し、『流されてやる』だけであった練習を、『自分がやりたくなる練習』へと手を加えた。

 無闇に声を張るのではなく、練習中の気合を入れるべきタイミングで、大きく伝わりやすい言葉で喝を入れる。背中で語るなど恥ずかしいが、地道でも自分のできる丁寧を練習に注いでいた。

 そうして自発的に努力していると仲間もそれに引っ張られる。1人から始まった活気が、波を伝って広がった。

 

 そんなチームが前を向き始めた矢先だ。さっき人生で初めて気になる人ができて、忘れられていたのでフラれた感覚に陥ってますなどと。しかも、それで落ち込んでいて集中ができないと、そんなことは恥ずかしくて言えるものではない。

 そして、そもそもダンツフレームは感情を整理しきれていない。感情を明確に言葉にできていないのだ。初めてのことで、これが『恋』ということですら理解していない。

 

 空にふわっと浮いたような。胸に何か引っ掛かるような感覚。

 グラウンドでの練習中、ふとした瞬間にあの部屋の窓を探してしまう、そんな何にも置き換え難い感情のまま。そのまま、ふわふわとしたまま練習が終わり、ふわふわしたまま寮へと帰ってきた。

 

 ──を繰り返して、3日。

 まさかの事態にダンツフレームも仰天する。ポヤポヤとしていて週も終わってしまった。

 まがりなりにも自分はエースであるだろうに……、と頬を摘んで己に義憤する。このまま集中力が切れて、自分の努力が停滞したらチーム状態は元通り。

 問題は明確にして、ロジックで解決する。今こそ、あの人に言われたことを実践する時だろう。

 

「ミラ子先輩……。少し、ご相談いいですか?」

「ん〜、珍しいね? どうしたの〜?」

 

 ベッドで寝転がる同室のウマ娘へ、ダンツフレームは就寝までのリラックスした時間を使って相談を持ちかけた。

 緊張するので、その相談相手から貰ったクッションを抱えつつ、自分を架空の友人に置き換えて可能な限りありのままを説明する。勿論、この話がトレセン学園内であることや、男性が職員であることなど、危ないところは抑えめにしつつ、他は赤裸々にした。

 

 そんなダンツフレームの調子からか、相談相手のウマ娘は序盤こそベッドで寝転がっていたが、いつしか体勢を起こして真剣な顔つきで付き合ってくれていた。

 最後まで口を挟まず、頷きながら話を聞き終えると、顎を押さえていた指を離した。そして、その丸い顔を限界まで神妙な面持ちにして呟いたのだ。

 

「……それは、恋、ラブ、では?」

 

「いやはや確証は無いけどね」と自身の発言に照れる相談相手を眼前に、ダンツフレームは息を呑む。あまりにも大胆な見落としに全く気づいていなかった。

 ダンツフレームもそれなりに少女漫画も読んでいたが、まさか自分がベタな展開に当て嵌まることになるとは予想していない。学生と教職員、使い古された年齢と立場の違いが舞台となる物語など、ありきたり過ぎて今どきの読者に刺さる題材ではない。

 

 でも、彼女にとっては人生を華やかにする初めての恋だ。ほんのりと桃色に染まる首を抑えて、自覚してしまった恋心の対応策を欲する。

 

「恋……、だとしたら、どうすれば……?」

 

 漏れてしまったのは吐息にも近い困惑だった。初めての感情を持った相手、それが学生には禁断の職員となれば壁は大きい。

 

 この学園の特殊な環境のみを引き合いとするならば、男性の外堀を埋めて卒業と同時にゴールラインを狙う生徒が稀有に見られるが、そのような手段はピュアなダンツフレームに思いつくはずがない。

 今あるのは卒業まで気持ちを秘めるか、気持ちを吐露して玉砕するか。どちらにせよ、このままでは成就困難。策はなく行き止まりのような状況に抱えていたクッションから力が抜けて、耳がヘタっと落ち込む。

 ──だが、ここで眠気に負けそうな相談相手から会心の回答が送られた。

 

「どうって? ダンツちゃんなら分かってると思ったけど〜」

 

 そのレベルの問題であれば余裕で解決できる。そう言いたそうな口調にダンツフレームの目が開いた。

 

「え〜? だっていつも書いているでしょ」

 

 そう言って彼女が指差したのはダンツフレームの机、その上にあるレターセットであった。

 現代はSNSやメールの発達で即時的に伝達が可能であり、ファイル差し込みや修正も行える。交友方法を選ぶ際に化石のような手紙という手段を選ぶ理由は少ない。

 だが、手紙はSNSと異なり相手のアカウントを登録する必要がなく、場所さえ分かれば届けられるという唯一絶対的な物理的利点が残っている。

 

 学生のダンツフレームが職員である男性のアカウントを貰うことはタブー。仮に男性がトレーナーであって、そのチームに所属していて、やっと黙認されるくらいだ。

 それが手紙ならどうだろうか。男性が腰を据えている部屋も分かっていて、生徒として大人に相談を持ちかけるというシチュエーションも怒られるものではない。もし、注意されてもその時にやめればいい。

 条件は整っている。

 

「ありがとうございます、ミラ子先輩。わたっ──、んんっ……、その子(・・・)にも伝えておきますね!」

 

 

 

 *

 

 

 

 トレセン学園に入学を許されるためには幾つかの条件が必要だ。特に重要なカテゴリーを括ると3つ。

 一つ目は身体能力。体力測定で総合的に高い結果を残すか、スプリント力や持久力などの一種以上で驚異的な数値を示すかだ。

 二つ目は学力。筆記テストで前者同様に総合的または専門的に高い点数を取得する。

 これらは、どちらかが秀でていれば入学要項には十分。今年度の例としてはスペシャルウィークだ。学力ではギリギリ赤点以下であったが、身体能力のスコアが最高得点のため入学に結びついている。

 

 そして問題が三つ目が精神性。身体能力と学力は、そのどちらかが欠けていても入学要項には成り得ると言ったが、精神性が欠けた場合は、先の二つが満点でも学園の門を潜る許可は与えられない。逆に、ごく稀ながら精神性の高さだけで入学する者さえいる。

 トゥインクル・シリーズの格式、その中で頂点を目指す過酷な練習の日々。それに精神的に耐えられない者を入学させないのは優しさだ。

 

 だからこそ学園に在籍しているウマ娘は強い信念や叶えたい夢がある。

 ──そう、ダンツフレームにも願いがあるのだ。

 

 根幹にあるのは幼少期の生活。ダンツフレームが繰り返していた親都合での転校と、それによってリセットされる友人関係。対人能力を育む年齢にとって、新たな地で新たな友達を作るのは苦行だ。文化や訛りの違いに適応できないことが当然のこと。恣意的な疎外感に痛みを伴うこともあった。

 

 だから、どこにでも通用する『模範的』であるというペルソナを生み出す。多感な時期の自己を隠し、誰にも煙たがられない在り来たりを振る舞う。そうすれば新たなクラスで疎外感を味わうことは無い。

 

 ──これで辛くは無い。

 ──でも幸せでもない。

 

 疎外感が無くなった替わりに、本当に欲しかったをモノ(友達)を諦めた。

 一緒に悲しんでいるが、涙は流れない。

 一緒に楽しんでいるが、心から笑えない。

 自分の輪郭が無くなり、空気と同化して、当たり障りのない空気になるような毎日が流れるだけ。

 

 そんな、何も無い彼女に一つ残った個性が『手紙』だった。

 転校の度にクラスメイトと約束を交わし、互いの近況を報告しようと手紙を送り合った。

 手紙を読んでいる間は空白が紛れる。自分の存在証明を確かめているようで、誰かと繋がっていると思い込めた。

 

 ただ、それはあくまで一瞬の夢。転校したクラスメイト止まりの彼女へ長く付き合ってくれる者はいない。

 何度開けても空の郵便受けは、彼女の在り方を写した鏡のようであった。

 

 そんな彼女の転機は転校先で出走したレース。それはビギナーズラックか、秘められた才能か。飛び入り参加でありながら、同い年のウマ娘を抑えて先頭でゴールテープを切った。

 賞賛を浴びる自分は正真正銘のヒロインで、多くの人の注目を集められる。希薄であった存在が嘘のようで、クラスで輝く特別な生徒になったような感覚がじんわりと沁みてくる。

 

 ──頑張れば、自分を見てくれる人がいる!! 

 

 そう気がついたら曇っていた視界がクリアになった。

 繰り返される交友関係のリセットに対しての打開策。それはどこにでもいる優等生として打ち解けることではなく、どこにもいない主人公として独壇場に染め上げることだ。

 

 そうして、ダンツフレームが目指したのが『みんなの記憶に残る主役になる』であり、その夢を最大限に叶えられるのが誰もが憧れるトゥインクル・シリーズであった。

 優等生として土台にしていた学力と、何となくで出走しても1着を取れる身体能力。そして幼少期から抱え込んだトラウマが逆転したことで、屈強な目標ができた。学園に入学するには十分な原石である。

 

 それから数年、勤勉な生活が功を奏してトレセン学園に無事合格。さらに入学直後の模擬レースで『戦術の魔女』と呼ばれる凄腕トレーナーと出会い、とんとん拍子で契約に至る。

 トレーナーが率いるチームは歴史があり、過去実績も申し分なし。チームの先輩はテレビや雑誌で特集されるウマ娘ばかりで、平凡であるダンツフレームに対しても優しく指導してくれる。彼女にとってこれ以上とない順調な滑り出しであった。

 

 ──しかし、現実は再び彼女を襲う。

 

 ある日、高齢であるトレーナーが体調を崩した。最初は風邪と診断されており、本人も何度か寝たら治ると笑っていた。

 だが一週間経っても咳は治らず、顔色も血色が悪いまま戻らない。教え子の前では毅然としているが、無理をしていることが滲み出ている。

 

 だが、そんな生活に老体が耐えられるはずもない。練習中に限界を迎えたトレーナーが倒れて意識を失ってしまう。救急搬送される姿に無事を祈り、明日には帰ってくるだろうと願う日々を一週間続けた。

 

 しかし、不安がるチームに追い討ちをかけるように、搬送された病院で劣悪な事実が発覚する。 

 

 指導者不在から数日後、チームメンバーが学園長室に集められる。そこで学園長から告げられたのは、トレーナーの持病が急激に悪化しており、復帰が未定だということであった。病名こそメンバーに伏せられていたが、その説明をする学園長の姿から推測は容易であった。

 

 そして指導者不在となると検討されるのがチーム解体だ。学園は今後のチーム方針という体でメンバーからヒアリングを行ったが、愛するチーム解体の提案に納得する者はいない。加えて実績のあるチームなだけに外部からの存続希望が多く、解体は一旦は白紙で決着。

 チームとして実績を残し続けるという制約は付いたが、トレーナーが帰る場所を存続させようとメンバーで強く誓った。

 

 

 

「悪いけど……。アタシ、別のチーム行くからから」

 

 

 

 ぶっきらぼうに言い放つ仲間を見送ると、それを皮切りに1人、また1人とチームから離れていく。誓いなどと体裁を保っていられようか。トレーナー不在の泥舟に乗っていられるほど彼女たちに余裕はない。

 気がついたらエースであった先輩は卒業し、その後釜と控えた先輩たちは他所で楽しくやっていた。

 

「ねぇ。ダンツは……、ダンツはいなくならないよね……!」

 

 仲間の縋りつく声に冷静を装って肯定する。先輩たちのように実績がない彼女たちは行き場がない。ここで自分から出ていってしまえば、もうウマ娘として輝くことは不可能だ。

 だからそんな恐怖に震える仲間を前にして幼少期のように優等生を演じてしまった。どうにか明るく振る舞ってしまった──。

 

 なまじ正気な状態を装っていたからか、正気でない仲間からエースを任されてしまう。

 受賞を獲得した実績もない、一番になる才能もない。それなのに、ただ普通に過ごせているなどという理由でだ。

 いきなり背負わされてしまった責任。もうこの瓦解寸前のチームを投げ出すことが出来ない。エースとして自分が最後の希望である。

 

 逃げてしまえばと何回思っても、それをしてしまえば『主役』には成れないと理解していた。

 絶体絶命ですら生ぬるい。学生には重圧の掛かる数ヶ月を耐えるしかなかった──。

 

 

 

 ──だから、私を見てくれた貴方に。

 ──消えかけた私に声をかけてくれた貴方に。

 

 

 

 同室のウマ娘から寝息が聞こえたら即行動した。対面でも、手紙でも、まずは挨拶と自己紹介からだ。

 転校を繰り返して慣れている。自分自身を知ってもらうために何が必要か。返事を貰いやすい手紙をどう書くのが良いのか。苦労した経験が初めての恋心に加勢している。

 

 それにチーム絡みで相談したいことも山ほど積もっている。この耐え難い現状を打破してくれるかもしれない人だ。言葉を正確に選び、齟齬なく伝わるように、初対面の方へ最大限の敬意を持って文章を紡ぐ。

 

 ──そうして手紙に費やした時間は2日間で6時間、失敗した手紙は11枚。

 我ながら超大作だなと、暗い中で手元に光る手紙を見てダンツフレームは照れ笑いを抑える。

 

 少し減ってしまった睡眠時間を終え、起床と同時に出来上がった手紙を再度確認。文字崩れがないことを確認して丁寧に封筒へ詰める。早朝トレーニングの前、誰もいない校舎へ向かった。あの時は友人と一緒にいても恐怖心があった部屋に嬉々として足が向かった。

 

 あっという間に着いてしまった部屋へ、震える手で、そっと、飛ばされないように扉の下に手紙を潜らせる。

 

 あとはお祈り。どうか、この気持ちには気づかないでください。

 ──それでも、お返事は待っています。

 

 

 

 *

 

 

 

 こんにちは。

 突然のお手紙を失礼します。

 

 理事長秘書補佐様にご相談があり、

 この度、手紙を送らせていただきました。

 

 今、私はチームのエースを任されています。

 しかし、自分の力不足もあり、最近の模擬レースでチームとしての着順が伸び悩んでいます。

 チームメイトもそれぞれの課題を明確にして練習に取り組んでいますが、

 それでも抜本的な解決にはならず改善しない状態です。

 

 ここでご質問なのですが、私がエースとして取り組むべきことは何でしょうか。

 私はエースとしては精神性の高さもなく、

 他人に教えられるほどの技術も持ちえていません。

 実績がない私でもチームに還元する何かを生み出したいのですが、

 今はその回答がございません。

 

 もし良ければ、理事長秘書補佐様のご意見をお聞かせいただきたくお願いいたします。

 ご返事いただけましたら、お部屋のドア口等の隙間に挟んでいただければ、

 こちらで取りに伺います。

 

 どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 平凡なウマ娘より

 

 

 

 *

 

 

 

 手紙を送った当日。

 あの手紙に誤字は無かったか。失礼なことは書いていなかったか。そんな心配ばかりで、写真を撮っとておけば見返せていたと後悔する。

 この状況を改善するために送ったのに、手紙のことばかりを考えていて、未だ少し集中力が切れたりしている。……しっかりしないと!! 

 

 

 手紙を送った翌日。

 そもそも手紙がきちんと届いているか不安になる。扉の隙間から入れたせいで、変な位置に飛んでないか。それこそ風で棚の隙間に運ばれているのではないか。もしそうなら、手紙を再度の配送が必要になる。

 ──でも、読んでいるのに何度も送っていたら迷惑だよね。

 

 

 手紙を送って3日。

 お返事は欲しいけど、まずは目の前のことに集中──!! 

 手紙を出せたことで徐々に気持ちの整理はできていて、数日前みたいな不注意も無くなったし、しっかり授業も練習も出来てる。

 立て直すまでにここまで時間がかかるとは、自分のことながら何とも扱いにくいメンタルなのだろう。

 これでようやく元通り、……だよね? 

 

 ー4日。

 どうせならと、ミラ子先輩に相談してみた。『手紙の返事はどのくらいで来るか』なんて意味不明な相談。ミラ子先輩から盛大にクエスチョンマークが飛び出ていた。──すみません、そこまで深い意味はないんです。

 ただ、自分ができることをしたのに、いまひとつ期待感から抜け出せないモヤモヤを吐き出したくて。何だろう、この気持ちは何かに似ている気がする……。

 

 ー5日。

 ここ数日の放課後は、男性の部屋を遠目で観察して返事が置いていないかを確かめた。ただ、残念ながら今週はお返事がない様子。

 本当は近くで見た方が良いのだろうけど、もし偶然にもあの人と出くわしてしまったら差出人が自分であるとバレてしまう。それは非常に恥ずかしいので。少しの期待と、いっぱいの不安、そんな感情で返事を待っています。

 

 ー6・7日。

 土曜日になって突然に分かった。ミラ子先輩に相談した時の気持ちに近しいのはクリスマスだ。

 サンタさんがプレゼントを持ってきてくれるのは良い子にだけ。自分が良い子かは25日ならないと分からない、──あのドキドキする感覚。

 まあ、今回の場合、私は悪い子だけど……。

 でも、相談内容は本心。自分だってバレないように身元は隠したし、抜かりないはず! 

 ──もし、差出人が私だってバレても、それはそれで、……嬉しいと思うけど。

 

 

 

 8日目、週が明けて最初の日。

 その日は早朝練習の前に、何となく。いつもは放課後に除いていた部屋を見に行った。

 そうしたら部屋の電気が点いていて、扉の下に小さな紙が見えた。

 

 声を抑えて、足音を抑えて。走るように、歩くように。

 ──変だ。いつもと同じ月曜だっていうのに、クリスマスみたいに心がワクワクしている。

 

 どうしよう。いつ読もう。

 何が書いてあるだろう。

 

 拒絶されないかな。相談に乗ってくれるかな。

 私のこと、ちょっと見てくれるといいな──。

 

 

 

 *

 

 

 

 平凡なウマ娘さんへ

 

 

 私は学園の補佐業務でトレーナーのような回答ができません。

 なので、ここに記すのは私的な目線での言葉になります。

 あくまで参考程度、そのような形で捉えてください。

 

 まず、あなたのチームに捧げる真っ直ぐな気持ちを大切にしてください。

 学生の年齢だと曲解することもありますが、

 あなたのチームを思う気持ちは、いつか周りに伝播します。

 

 それまで時間がかかるかもしれません。

 もしかしたら伝わらないかもしれません。

 しかし、それでも、前を向き、走るのがウマ娘です。

 

 また、あなたは精神的にも、技術的にもエースとして足りないと言いました。

 

 ですがそれで良いのです。

 ここはトレセン学園。仲間と共に成長する場所です。

 あなたが引っ張るのではなく、あなたと共に歩む仲間を作ってください。

 

 あなたの健やかな健康と努力が成果になる日を祈っています。

 

 

 理事長秘書補佐 芝崎走一

 

 

 

 *

 

 

 

 理事長秘書補佐 芝崎走一 様

 

 

 以前はお手紙にご返信いただき、ありがとうございました。

 まずは自分の気持ちをチームに伝えることから始めてみました。

 

 最初はストレートに気持ちを伝えるのは恥ずかったのですが、

 今まで以上に自分が何を思っているかがチームに伝わっているかと思います。

 また、その結果なのかは微妙ですが、

 練習中の声かけや、ミーティングで発言するチームメイトが増えてきました。

 少し、チームの雰囲気が明るくなったかなと思います。

 

 引き続き、チームも、私も練習に励みます。

 もし、またご相談する事項がありましたら、お手紙を送らせてください。

 

 

 また、お恥ずかしいご質問なのですが、

 以前いただいた手紙からコーヒーのような香りがしました。

 芝崎様はコーヒーがお好きなのでしょうか。

 

 

 平凡なウマ娘より

 

 

 

 *

 

 

 

 平凡なウマ娘さんへ

 

 

 私の言葉で少しでも問題解決に繋がったのなら何よりです。

 丁寧にお返事のお返事をいただいたので、

 ここで追加の回答をさせてください。

 

 チームメンバーが意見を言い合うのは良いことです。

 ただ、今までそういった環境や習慣がなかったのであれば、

 今後は“言いすぎる“といったケースが発生しやすいです。

 

 難易度は高くなってしまいますが、

 たまにで良いので俯瞰してチームを見る時間を作ってください。

 今後はバランサー、仲介者が必要になると言って伝わるでしょうか。

 

 互いに譲れない意見をぶつけるのであれば、冷静に時間をかける必要があります。

 それが出来なければ、ただの喧嘩です。

 これをどこか頭の片隅に残してください。

 

 

 また、コーヒーのご質問ですが、私が愛飲していますので、

 もしかしたら部屋の空気が移ったのかもしれません。

 その察しの良さがあれば、きっとチームの話し合いも喧嘩になる前に止められるかと。

 期待しています。

 

 

 理事長秘書補佐 芝崎走一

 

 

 

 *

 

 

 理事長秘書補佐 芝崎走一様

 

 

 お世話になっています。

 またご相談したいことがあり、お手紙を送らせていただきます。

 

 直近のご返信をいただいて数日後、

 芝崎様の予想通り、チーム内にてミーティングで口論がありました。

 事前にご指摘いただいていたので、最悪の状況は回避できたものの

 それでも当事者間の関係が修繕されておりません。

 

 私も2人と話し、それぞれの意見を聞いています。

 ただ、どうしても折衷案が思いつかず。

 何を以て、どのような形で、この不和を改善するか。

 

 以前以上にあやふやなご質問になり申し訳ありません。

 芝崎様からお言葉を頂けたらと思い、何卒お願いいたします。

 

 

 平凡なウマ娘より

 

 

 

 *

 

 

 

 平凡なウマ娘さんへ

 

 

 ご相談いただきありがとうございます。

 拝読した手紙が滲んでおりました。

 先のご相談の回答の前に、まずはあなたの頑張りを最大限に讃えさせてください。

 

 あなたはエースとして懸命に努力しています。

 どうか、今までのことが無駄だったなどとは思わないでください。

 あなたが頑張ったから、こうして互いに気持ちを曝け出せる。

 そんな環境があるのです。

 

 では、相談の回答をします。

 結論ですが世の中に完璧な折衷案は存在しません。

 突き詰めても、僅かな差でどちらかが利益を得ます。

 

 なので、お勧めするのは第三者の投入です。

 互いに緊迫する状況にはイレギュラーの投入。

 つまり、あなたが飛び込んで、その問題を3等分にしてダメージを分け合いましょう。

 

 更にどうせならこの際です、全メンバーの不満も全部を吐き出してみませんか。

 全ての意見を並べ、再度チームを構築する。

 難しそうですが、やってみると意外と簡単です。

 

 ただ、こう言っても不安はあると思います。

 それでチームが瓦解したまま、再構築ができなかったらと思うでしょう。

 

 その時は結論が出るまでレースです。

 貴方が所属するチームは共にレースをするための組織です。

 そのチームにとって何が最適か、それは走ってみないと証明できません。

 

 なので、レースをして、会議して、またレースする。

 それを実行するとエースとして言い切って、

 全員を巻き込んじゃいましょう。

 

 ただ、この手段はあなたが非常に疲弊します。

 なので、この手紙に私がブレンドしたコーヒーを付けます。

 ただの気休めにしかすぎませんが、

 どうぞ勝負前にでも一杯飲んでみてください。

 眠気は覚めるはずです。

 

 

 理事長秘書補佐 芝崎走一

 

 

 

 *

 

 

 

 理事長秘書補佐 芝崎走一様

 

 

 こんにちは。

 以前はご相談に回答いただきありがとうございました。

 

 あの後、全員を集めて意見と不満をホワイトボードに書き合い、

 そのまま書き合ったことを叫び合いながらレースをしました。

 

 周りのチームからは不思議な顔で見られていましたが、

 終わってみたら当事者の私たちは清々しい感覚で、

 その後のミーティングがすんなりと進みました。

 

 時間はかかりましたがチームとしての方針も固まり、

 今はそれぞれが良い意味で意見を言い合えています。

 

 この調子で来週に控えた模擬レースに挑み、

 今度こそチームとしての勝利を掴みます。

 

 

 あと、コーヒー美味しかったです。

 メンバーとの話し合いの前に飲んだのですが、

 芝崎様に応援いただいている気持ちもあり、非常に集中できました。

 

 もし間に合えば、来週の模擬レースの前に飲んでみたいので、

 あと一杯頂けますでしょうか。

 

 厚かましいお願いで恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

 

 

 平凡なウマ娘より

 

 

 

 *

 

 

 

 平凡なウマ娘さんへ

 

 

 吉報、受け取りました。

 部外者とはいえ気にしていたので、

 解決とあればそれ以上のことはありません。

 

 来週は模擬レースなのですね。

 これまでのあなたの頑張りと、

 共に歩んでくれたチームメイトの成果を祈ります。

 

 コーヒーは気にしないでください。

 こちらは余るほどありますので。

 

 今回は前回のブレンドに加えて、

 苦さ・酸味・コクを際だてた3種類も送ります。

 お気に入りを探してみてください。

 ちなみに、飲み過ぎると私のように胃が荒れるので、

 一日一杯をベースにしてくださいね。

 

 それと、職員とはいえただの補佐職です。

 名前に様付けするほど固くなる必要はないので、

 ぜひ軽い気持ちでお手紙はくださいね。

 

 

 芝崎走一

 

 

 

 *

 

 

 芝崎走一 様

 

 

 お手紙とコーヒーありがとうございます。

 先日、模擬レースが無事に終了しました。

 

 結果ですが、ついにチームとして勝利することができました! 

 模擬とはいえ、チームとしては1年ぶりのことでして、

 これも今までいただいたアドバイスのおかげです! 

 

 みんな、すごい喜んでくれて。

 泣いちゃう子とかもいて。

 ここまで頑張ってきて良かったって、本心で思えます。

 

 

 芝崎さん、本当にありがとうございます。

 相談ばかりで、何も返すものがないのですが、

 貰ってばかりなので、すこしだけお返しさせてください。

 緊張するので、感想はボヤかしてもらえたら嬉しいです。

 

 

 平凡なウマ娘より

 

 

 

 *

 

 

 

 平凡なウマ娘さんへ

 

 

 ついに努力が実りましたね。

 チームレース勝利、おめでとうございます。

 

 努力が求めていた成果になるとは限りませんが、

 努力しない人間に求めた成果は降ってきません。

 そこに貴方の努力があったことは、この後も忘れないでください。

 

 それと贈り物、コースターですね。

 絨毯生地が含まれているのでしょうか。触り心地が良いです。

 それと贈り物の感想は控えめでとありますが、それは無理です。

 良いものにはそれに見合う感想が必要ですので。

 

 ただ、文字面だと難しいので、

 代わりに努力家な貴方に合うコーヒーを送ります。

 

 今回ベースにした豆は栽培から収穫までの念月が他よりも長く、

 豆自体の名前に下積みという由来があります。

 なので貴方の長く、懸命な努力へ。

 

 

 芝崎走一

 

 

 

 *

 

 

 

 ──夏なのでチームで海に行きました。

 芝崎さんはどこか行かれましたか? 

 

 ──海いいですね。

 体幹トレーニングにもなるので効果に期待できますよ。

 私はずっと仕事です。給与も据え置きなので何もない夏です。

 

 

 

 ──自炊するのですが、秋のせいか最近は食べすぎてしまって。

 やはり男性の方は細い体型がお好きでしょうか……? 

 

 ──私の口から具体的な回答は……。

 ただ、この学園で健康からはみ出る体型の方はいません。

 気にしすぎず、バランスの良い食事をしてください。

 

 

 

 ──文化祭でメイド喫茶をしました。

 ヒラヒラして私には可愛過ぎというか、スカートが短くてちょっと慣れませんでした。

 芝崎さんは、メイドさん好きですか? 

 

 ──またしても具体的な回答がしづらい質問ですね。

 回答は控えますが、世論調査をした場合にメイドが嫌いな男性は極少数でしょう。

 あと、手紙にメイドの写真はいるかとありましたが、

 貰ってしまうと危険なので控えておきます。

 

 

 

 ──寒くなってきました。

 芝崎さんは体調など崩されていませんか? 

 お鍋が美味しいので、おすすめのレシピを伝授します! 

 

 ──レシピありがとうございます。

 人参鍋、早速やってみました。

 すりおろしを鍋に盛るのは初でしたが、甘みが出て美味しかったです。

 お返しと言ってはなんですが、我が家の鍋レシピもお返しします。

 

 

 

 ──あけましておめでとうございます。

 今年も宜しくお願いします! 

 芝崎さんは初詣には行かれましたか? 

 おみくじ、私は小吉でどちらとも言えない結果でした……。

 でも、お餅が美味しかったので満足です!! 

 

 ──明けましておめでとうございます。

 こちらこそ宜しくお願いします。

 おみくじですが、2月に引き直しをする地方もあります。

 なのであまり気にせず。

 ちなみに、こちらは大凶です。

 確か『責任感を持つべし』とのお達しでしたね。良くわかりません。

 

 

 

 ──バレンタインなので、チョコを送ります。

 美味しくできたと思うので。

 お仕事が休憩の時にでも食べてもらえたら嬉しいです……。

 

 ──はい、大丈夫です。ちゃんと美味しいですよ。

 それと早いですがホワイトデーとして、コーヒー味のチョコを送ります。

 学園職員は年度末になると忙しいので、少しお返事が送れますからね。

 

 では来年度も、成長したあなたの活躍に期待していますよ。

 

 

 

 *

 

 

 

「──なぁ、聞いたか。ダンツ?」

 

 桜が舞い散り始めた春。麗らかな風が穏やかな気持ちを運んでくれる。

 今日の練習はどうしようか、次に書く手紙は何を題材にしようか、そんな事をかんがえていたら学年が上がっても変わらない口調の友人が話しかけてきた。

 ダンツフレームは友人の春の眠気に負けそうな瞼に笑いつつ、その会話の聞き役に徹する。

 

「去年だっけ? 科学室の奥に行っただろ。あのボサボサのヤツ、覚えてるか?」

 

 ──心臓が強く波打った。今更、なぜ彼のことを取り上げたのだろう。あれ以来は眼前の友人とは関係が無いはずだ。

 ダンツフレームは落ち着いて頭を動かす。冷静に自体の要因を選別して解決に向かう。それは彼と出会った時に言われ、この一年で磨き上げたロジカルシンキングだ。

 

 眠気に負けている友人が次に口を開くまで数秒。推測して生まれた答えが2つ。

 まず、これまでの文通が表に出ていることはない。文通自体に校則上の問題があり、それが表に出たのであれば本人へ指導が来る。しかし、ダンツフレームに対してそのような指導や警告は無かった。そうなれば文通は問題でない。

 

 では他の線、ダンツフレームが知らない彼自身の何か。

 濃厚なのは退職か。この学園で成績を追い求められるのはウマ娘だけではない。トレーナーはもちろん、そのほかの職員にもしっかりと個人目標は設計されている。

 彼にどのような目標が設計されていたかは分からない。ただ、学園長秘書補佐というの特殊な肩書きだ。それなりに重要な職務であろう。

 では、その目標が乗り越えられず。退職まで切迫していなくとも転職している可能性はある。

 

 そんなダンツフレームの焦る気持ちは伝わるはずもなく、あくまでも暇潰しの口調で友人が話を続けた。

 ──ただ、友人が次に口にした内容は、ダンツフレームにとっては到底信じることができず、裏切りにも近い衝撃であった。

 

「で、ソイツが元トレーナー(・・・・・・)だったんだと。そんで4月から復職っていうんだっけ? またトレーナーやってんだと」

 

「いやぁ、人は見かけによらないよな〜」と呟く友人。しかし、ダンツフレームにその声は全く届いていない。

 

 座っていた椅子を跳ね除けて勢いよく立ち上がる。彼女らしくもない行動に友人が驚いているが、それは無視して教室から飛び出した。

 

 あの部屋へと、周りの生徒に謝りながら廊下を駆ける。

 もし、本当にトレーナーであるならば確かめたい。彼がチームを持っていないのならば、契約しているウマ娘がいないのならば、トレーナー不在の自チームに来てもらいたい。

 彼が来てくれれば。もっとチームは良くなる。勝ち始めたチームが常勝チームになることだって夢じゃない。この学園の主役に、貴方となら──!! 

 

 勢いよく、自分の意思で、これまでタブーであった校舎2階奥の扉をあけた。

 最初はなんて挨拶しようか。いきなり手紙を書いていた本人ですというのは驚かせるだろうか。

 

 そんな膨らむ思いで、開け放った扉の向こう。そこには大きく開かれた窓から春の柔らかな風が吹き、その風を全身に浴びた──

 

 

「えっと……、こんにちは? 何かご用でしょうか?」

 

 

 ウマ娘──、その名をサイレンススズカ。

 すらっと伸びた体躯、なびく艶のある栗毛の髪。桜の花を逆光にして、尚も輝く大きく澄んだ緑色の瞳。彼女は何かを作業していたのか、小脇にファイルを挟んで棚に手を伸ばしていた。

 

 そんな日常の風景にダンツフレームの意識が止まった。

 思い出すのは美術の授業。神話を模した絵画より、街や人を切り取った絵画に心躍った。その絵画は誰しもが見慣れている日常の景色のはずなのに儚く美しいものがあった。

 ダンツフレームの前に立っているウマ娘もそれと同じ、──いや、それ以上に視線が釘付けになる。今にもこの風に攫われてしまいそうな美しさが眩しい。

 

「その、ごめんさい。トレーナーさんは外していて。もう少ししたら帰ってくるはずなのだけれども……」

 

 そんな美しいウマ娘がトレーナー(・・・・・)と言っている。それが誰を指しているのか考える前に、視線は扉の上部にある立札に走った。

 

 そこには変わらない彼の名前がある。──しかし、確かに『理事長秘書補佐』には二重線が引かれていた。もし、この部屋の主が変わっていれば、部屋の中にいるウマ娘のトレーナーは別人であったが頼りは外れた。

 

 勝てない──。

 

 凡人として悩み続けているダンツフレームだからこそ、このウマ娘がどれほど秀でているのかが肌で感じられた。こんなに素晴らしいウマ娘と契約した彼の隣に並ぶなど、どんなに驕っても彼女には無理であった。

 

「──い、いえ。こちらこそ。間違えました……」

 

 開け放った扉を閉めることさえ忘れ、来た道を走って戻る。

 先に口にした言葉を復唱し、溢れそうな涙を瞼で抑えた。

 

 そう、間違い。最初から間違いだったのだ。彼のような素晴らしい人、そこを目指したのが間違い。こんな自分には身に余るほど幸せな夢が見れた。良い思い出として大切にしておけば良い。

 

 ぐちゃぐちゃな気持ちが溢れないように走り、無我夢中で逃げ場を探した。

 人が多い教室やチームメンバーが居そうな場所はダメだ。この時間に寮は帰るのには担任に申告がいるし、トイレに篭っても迷惑がかかる。ともかく人のいない場所を探す。どこか彼を思い出さなくていい場所へ。

 

 ──それなのに走っていた足が止まったのは、あの夜に彼と出会ったグラウンドだった。 

 生徒たちは未だ校舎におり、グラウンドは独占状態だ。彼女には遠くから葉が靡く音だけが耳に入り、太陽と風が優しく頬を撫でる。陽春を体現したような昼下がり。

 それはあの時、1人で残って練習をしていた時に感じていた気持ちの悪い感覚と真逆。それなのに、こんなにも哀切としている。

 

 

「──そっかぁ……。わたしじゃ、なかったかぁ……」

 

 

 その理由を口に出してしまう。

 今度こそ正真正銘、諦めてしまった。

 

 途端に膝が崩れ、体を丸くして肩を押さえないと耐えられなくなる。

 屈んだ体が震え、耐えていたはずの雫が頬を伝っていく。制服の袖でそれを拭っていくが、拭き漏れた一滴が重力に惹かれて芝に落ちた。

 

 視界に入ってしまった液体を涙と理解すると、もう耐えられない。

 伝う涙は段々と数を増やし、嗚咽と共に溢れていく。

 

 ──今日はちゃんと泣こう。

 大丈夫、ちゃんと立ち直るから。エースだから、こんなところで止まっていられない。この胸の奥で熱くなっている気持ちを全部出して。

 そうしたら、またみんなと頑張る。

 

 ……でも、これは初めての失恋だから。ほんの少しだけ時間をください。

 少しだけ、好きだったという気持ちを忘れさせる時間をください……。

 

 

 

 *

 

 

 

「皆さん、次回のチームレースの対戦相手が決まりました」

 

 矍鑠(かくしゃく)とした女性の声がロッカーに響いた。声の主である白髪で細身のトレーナーは、杖をつきながらロッカーの中心へと移動する。その動きから談笑していたウマ娘たちがパッと雰囲気を変え、練習の片付けはそのままに意識を女性に向ける。

 楽しいと真剣のメリハリをつける。それはこのチームのエースが一年をかけて徹底させたこと。それがしっかりと根付いている。

 

 女性トレーナーはメンバーの顔を見渡スト、プリントアウトされた資料を各員に配る。そして、「正式なミーティングは別日にする」と続けて次回の対戦相手について簡単な説明を始めた。

 

「チーム名はレグルス。本年度、再び活動を始めたチームですね」

 

 その言葉でロッカールームの緊張感が増した。

 チームレグルス。数年前に最強と謳われ、無敗に近い実績を誇ったチーム。当時、在籍していたのは現生徒会長や三冠ウマ娘など。この界隈でその名前を知らないウマ娘はいないくらいだ。

 

 ただ、そのチームは数年前に突然の解体。それ以来、御伽話のような扱いを受けていたのだが、ここにきて再び突然と言える発足となった。

 しかも、メンバーは元三冠ウマ娘から、今春に学園で話題になっていた引退直前から復活した大逃げのスペシャリスト。他にも有名なSNS配信者や、学園では珍しい転校生が2人など。メンバー実績では以前に劣るものの、総合的な話題性と掴みどころのないイレギュラー性は厄介この上ない。

 

「……物語の主人公、みたいですよね」

 

 ロッカーで囁かれるのは誰のため息か。配られたデータにはその愚痴に見合う実力差が記されている。勝負前に希望を捨てたとまではいかないが、ここから数日で逆転を狙うには現実性が欠ける。

 

 だが、これはチーム戦であり、相手は発足して浅いチームであるということ。

 それに対してこちらのチームは1年でしっかりと連携を高めてきた。芝状態を後走者に正確に連携するコミュニケーションや、チームとして互いに士気を高め合うことでは負けていない。全5種のレース順や当日の状態によっては対抗できる。可能性を捨ててはいけない。

 

「──でも、私たちもトレーニングしてきたよ。 相手がどうよりも、自分たちがどうするか! 出来ることから、着実に出し切ろう!!」

 

 それにこうして仲間を鼓舞するウマ娘、──ダンツフレームにとっては恩返しできる機会なのだから、全力を出し切って勝ちに行かねば失礼である。

 

 そんな気合いの一言を放つ彼女に対して、メンバーの表情にも闘志が宿る。

 これまでだって格上に挑むことばかりだった。今更相手が強いことなど、臆する理由にならない。昨年から負け越してるチームでも、この数ヶ月で勝率が改善している。ならば、自分たちに与えられる僅かな勝率を本番に持ってくる。それを可能にするためにトレーニングを積んだはずだ。

 

「そうだね──! 勝とう、みんなで!!」

「私も……、ベストタイム出すよ! それでチートデイ!」

「ならなら私はパフェ! パフェ食べたい! 勝って食べよぉ!」

 

 各々が勝利に燃えている。近年でも素晴らしい団結力を持つチームであった。

 この団結力があれば勝利を手繰り寄せられる。今度は上辺の言葉ではなく、他者に流されるのでもなく、それぞれが本心で勝利を信じていた。

 

 

 

 *

 

 

 

 レース当日。学園グラウンド、13時、晴れ。

 この日は夏を先取りするかのように、燦々と太陽が降り注いでいた。幸運であったのは春の終わりを告げる風が吹き荒れていたこと。流れる汗もすぐに冷ましてくれるため、運動をするにはコンディションが良い。環境に敗因を付ける要素は見当たらず、参加者全員がそれぞれ最高記録を狙えた。

 

 最高の環境で継続されているチーム対抗レースは既に第4戦までが終了。

 現在行われているのは第5戦、第4レース、芝の長距離2,800m。レースは中盤であるが、既に勝負結果が目に見えていた。

 

 前方を独走するのはレグルス所属、今春に地方から転校してきたスペシャルウィーク。その呼吸は荒れているが、走力・表情に苦しさは見受けられない。ただ純粋に走ることを楽しんでいる様子だ。

 その後方、どうにか追い縋るウマ娘。スペシャルウィークのペースに負けないよう、彼女を風除けにして追いついているが、その作戦が通じたのも序盤のみ。スペシャルウィークのいつまで経っても落ちないペースに飲まれ、徐々に距離を離されている。最早、本来の彼女が持っていた走り方はどこへ行ったのか。あとはジワジワと、ここから更に離されるだけであった。

 

「──これで、3敗と1勝」

 

 ダンツフレームは手元にメモした記録を睨む。芝の短・中距離、そして目の前で進む長距離。これで3敗であった。

 唯一の勝利はダート。チームメイトが本力を出し切り、笠松から転入したという相手選手に大きく差をつけて勝利。この4レース目に希望を繋いだのだが、これで3/5敗の負け越となってしまった。

 

「ごめん、ダンツ──。 私、勝てなかった……!!」

 

 長距離を走り終えたチームメンバーの謝罪。疲労でおぼつかない足を他の仲間に支えられながら、最終レースに備えて腱を伸ばすダンツフレームの元へと来た。

 

 ダンツフレームは今にも倒れそうな仲間の頬をタオルで包み、彼女の激走を賞賛する。

 決着がついても、懸命に1秒でもタイムを縮めるために走り切った彼女を責める理由がどこにあるか。敗北という結果であっても、最後まで懸命な姿はダンツフレームにとっては激励の走りに他ならない。

 

 ダンツフレームは強く勝利を宣言し、頼もしい仲間を強く抱きしめた。

 

「うん、大丈夫! 私、最後にちゃんと勝ってくるから!!」

 

 そうしてスタート位置へと芝の外周を柵に沿って小走りで向かう。

 移動して直ぐに耳に入っていた観客のまばらな話し声が届かなくなる。耳元に流れるのは風で擦れる芝の音だけだ。騒がしい都会から、田舎町に飛ばされたようなレース特有の孤独感に慣れることはない。

 

 スタート位置まで残り数メートル。

 一度だけ後ろを振り返り、チームを目にする。

 

 ダンツフレームが振り返ったことに気づいた仲間が大きく手を振り、口を大きく開けて何かを叫んでいる。声は聞こえずとも応援してくれている。その気持ちが伝われば他には必要ない。彼女は小さくガッツポーズを作って仲間に応えた。

 

 そして、スタート位置に翻す一瞬。自チームから離れたベンチ。そこに()とそのチームが座しているのが見えた。

 彼らはチームとして勝利を確定していても誰ひとり気は抜かず、冷静な姿勢でこちらを見つめている。その姿はアスリートとしての強度が滲み出ているようであった。

 

 学生としてレースをする集団ではなく、プロフェショナルとして走ることに人生を注ぐ覚悟のある者。無論、ダンツフレームとチームメイトにプロフェッショナル性が欠如しているのではない。走ることにおいて、向こうのメンバーがより人生を注いだ時間が長く、より濃密であっただけだ。

 もし、もっと早くにダンツフレームのチームが団結していたら。もし、あと1人でも頂点に手が届き得る才の者が在籍していたら。今日の結果は変わっていたかもしれない。

 

 ──だが、そのような『もしも』を嘆いて何になろうか。それはとうに乗り越えてきた。

 このチームのエースはダンツフレームである。エースとして最終レースに勝ち、一つでも良い成績で次戦に繋げるのが役目だ。

 

 両手を大きく使って深呼吸を3回。いつものルーティーンで緊張する筋肉をほぐす。

 

「よろしくお願いします──!」

 

 既にスタート位置にいた対戦相手に挨拶をする。

 芝・マイル距離。ダンツフレームの対戦相手は、あの眩いほどの緑色の瞳を宿したウマ娘だった。

 

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 そんな対戦相手は伸ばした背筋で綺麗に会釈すると、その数秒後には何もなかったようにどこか遠くを見据えていた。

 その何気ない一瞬の所作。その動作にダンツフレームの背中に冷汗が滲む。

 

 チームの勝利が決定していることでの余裕か。ダンツフレームなど敵ではないと、勝ちを確信した余裕か。

 ──否、どちらでもない。この落ち着き様は遥かなる高みを見据えているからだ。彼女のゴールはここではなく、その先の何よりも速い先頭にしかない。ここが勝負どころのダンツフレームと、ここが通過点の競争相手。その規模の差が余裕に表れていた。

 

『各走者、ゲートにセッティングしてください』

 

 使い古された無機質な電子音に背中を押され、2人は並ぶように用意された鉄扉の前に立つ。

 位置はインコースにサイレンススズカ、アウトコースにダンツフレーム。

 

 腰を低く構え、呼吸は規則正しく。脳内でプランの最終確認をして発走を待つ。

 その音が鳴るまでの数秒、これまでのレース結果も努力した過去も忘れ、無心への境地へ。1,600mという短い距離、そのスタートダッシュを決めるために全身の集中を聴覚に束ねる。

 

 

 ──P!! 

 

 

 ホイッスルのような高い電子音が一拍。両者がそれを認識したと同時に眼前の分厚い鉄が開いた。

 

 瞬時に踏み込む力に合わせ、ダンツフレームがラストスパートをかけるような体勢の低さで前に飛び出す。

 彼女の作戦は序盤と後半の2段構え。彼女の中距離にも適性がある心肺を活用する。

 

 まずはスタートダッシュを起点にサイレンススズカの前に出ること。そしてそのまま、逃げ・先行を潰すためのオーソドックスな作戦から入る。

 

 この作戦は本来8人以上の規模で、先頭集団がペースを作り、他選手のペースをコントロールまたは乱すことに使用される。ただ、今回のような相手が1人のレースならばのペースをこちらで作りつつ、更に進路に蓋をするといった戦術が加算される。

 集団戦では1人で全員の進路を塞ぐことなどできないが、これはタイマン勝負だ。中距離スタミナを有するダンツフレームは、相手の抜きに出る速度に合わせて加速してもスタミナが尽きない算段であった──。

 

「──ぇ?」

 

 ダンツフレームから畏怖の感情が漏れた。

 数秒前にダンツフレームが発揮した瞬発力、完璧な踏み込み位置、低く滑るような体勢は、余す事なく全身を使い切った完璧なスタートダッシュとなった。本人としても、これ以上ないと思えるほどに完成されたものだったはずだ。予定通りの戦術を開始したはずだ。

 

 ──しかし、その予定で彼女の斜め後方に位置しているはずの相手走者が居ない。

 

 まさか──、と想像する時には視野の端にソレが映っていた。

 ダンツフレームの斜め前方。序盤の位置取りに勝つために、ラストスパートのように低い体勢で駆け込んだダンツフレームより低く、鋭く、円錐が空気を切り開くようにウマ娘が走っていた。

 

 スタートダッシュの位置取りに負ける事、それは逃げを得意とする選手を相手取るには最悪のケース。急ぎ作戦を変更する必要がある。──だが、そんな当たり前のことがダンツフレームの頭から抜け落ちており、その代わりに相手の走り方から一つの推測に辿り着いた。

 

 それは『既にラストスパートに入っているのではないか』という懸念である。

 

 ウマ娘に限らず、すべてのレース競技において求められる黄金の回答。それは最高速度であり続けること。止まることも緩むこともなければ、常に最高パフォーマンスで記録を伸ばせる。

 ただ、そんなことは生き物なら当たり前に、機械を用いるモータースポーツでも不可能だ。タイヤ交換による停止や、パーツ不備でのレース中止だって起こりえる。

 

 だからこそ、目の前で行われようとしている愚行にも近い挑戦を、サイレンススズカの最高速度で1,600mを走り切るという空想のようなレースを、──そんなことを許すわけにはいかない。

 

 

 並び、出る──!! 

 

 

 心の叫びが脚を跳ね上げた。

 体格とパワーはダンツフレームの方が上だ。競り合えば勝負の形に持っていける。影を踏める距離ならまだ間に合うのだ。大臀筋を遺憾なく使用して、脚を必死に伸ばす。

 

 スタートの畏怖から3歩半。相手の脅威的な能力に臆すことなく立て直した。一歩ずつ確実に近づく背中。遠くに離してしまいそうだった相手を逃さず。その横に並ぶまで残り幾分か。予定外のことで体力は消費しているが、それでも中距離を得意距離にするスタミナは健在である。

 

 並べさえすれば、──と希望を見出した彼女の瞳が吸い込まれた。

 

 サイレンススズカが、こちら見ている。

 猛禽類のような焦点を絞った瞳で、瞬きもせず、僅かな隙も見逃さないという狩人としてダンツフレームを見ていた。

 

 そんな瞳の奥で『やっぱり、そうなのね』とサイレンススズカは納得する。

 後方から迫り寄るダンツフレームの監視を継続し、数日前にトレーナーとの打ち合わせをしたこちらの戦術(・・・・・・)を再度記憶から呼び起こす。

 

『──相手のエースは強い。最高速度はスズカに劣るが、スタミナとパワーがあるから近寄らせたくない。それに根性も据えているタイプで、トレーナーも熟練の腕がある。最終直線で縋ってくると何が起きてもおかしくない』

『いつもの逃げて、差す、──だけじゃ対策としては不十分なんですね』

『ああ……。スズカを自由に走らせてやれなくて悪いが、こちらも()()を解禁しよう──』

 

 サイレンススズカはトレーナーが発した『根性を据えているタイプ』というのがデータでは読み取れなかった。しかし、こうして走っていれば自分に近づく姿には敬意を払うべき『根性』を感じた。

 ただ、こうして予定通り(・・・・)に中盤で追いついて来てくれた。サイレンスズカも対抗して戦術を繰り出すタイミングだ。

 

 一つ息を整えてサイレンススズカが前を向き直す。

 ダンツフレームはそれに気がつき、先ほどまでの凝視は何だったのかと瞬きをした。

 

 その瞬きの5フレームにも満たない時間。たったそれだけの一瞬。

 次にダンツフレームの虹彩が働いた時には、並びかけていた相手の姿が消えていた──。

 

 もちろん、レース中にサイレンスズカが本当に消えた訳ではない。チェンジオブペースと呼ばれる緩急の技法と、観察していたダンツフレームの癖を駆使して消えたように見せかけたのだ。

 

 サイレンススズカはウマ娘きっての最高速度を誇る。その彼女が高速から低速へと切り替えるだけでも、相手にとっては超スローモーションのような体験を与えられる。

 加えて、ダンツフレームのように心拍と思考を昂らせた相手にとっては、超スローは更に停滞し、最終的には停止したかとも思える現象になるのだ。

 

 ──そして狡賢くも、それを瞬きのコンマ数秒に合わせる。

 それにより、速度変化で発生する遅延が数センチであっても、『1秒後に相手はあの辺りを走っているはずだ』と思い込んでいる相手の思考にズレを生じさせる。しかも、そのズレは高速の戦いをする彼女たちにとては、引き伸ばされ、今回のように相手が消えたような錯覚までも生み出す。

 

 一つ、付け加えるならば、『1秒後に相手はあの辺りを走っているはずだ』と予想できるウマ娘は数多くない。直感を言語化できないし、自分の走りで思考に余裕がないことも多い。

 だからこそ、これは賢いウマ娘にしか効を生み出さない。だからこそ、ダンツフレームには効いた。芝崎が用意した作戦は、相手の知能を逆手に取るといったもので、今年初めて切ったカードだ。

 

 

 ──っ! 体勢が崩れる!! 

 

 

 アウトコースから詰めたはずの相手がいないことで、ダンツフレームの横移動していた重心が停止標識を失った。体勢は斜行し、本来なら必要の無い一歩が内側に入り込む。

 

 さらにサイレンススズカが間にいたため隠れていたコースの内柵が突如とてして目の前に迫った。実際に接触するまでには1人分の幅が残されているが、突然視界に収まる障害物に動揺が判断を鈍らせる。

 危機を察知した脳が踏み込みを弱らせる。フォームが崩れ、速度低下は必至であった。

 

 ──そしてその狂わされた時計の中で最速が機能する。

 

 相手を寄せ付けるため偽装していた(・・・・・・)最高速度から、今度は逃亡者として持つ本来の最高速度へ。

 

 もう影を踏ませることはない。

 ダンツフレームの意地の再加速に一瞥もなく、戦術は完成したと独り旅に入った。

 

 これが勝敗を確定させる要因となった。

 レースの見所はこれで終わりだ。これが録画なら早送りやスキップも推奨されるだろう。

 

 

 

 ──だが、それでも脚を抜いて良いはずがない。

 先に走った仲間がそうだったように、敗北が全力を出さない理由になろうか。

 チームとしての敗北が決まり、エースとして引き離されている状況であっても、ハロン棒の先で声を枯らして応援している仲間がいるのに、諦めることが許されるのか。

 

「──まだ!! 終わってない!!」

 

 ここまで積み重ねた自分の努力を裏切れようものがない。

 1秒ごとに遠のく背中を羨み、悔やんで、砂粒のような奇跡が吹き飛ばされていても。

 自分が本当に『チームを照らす(エース)』であるならば──!! 

 

 

 

 *

 

 

 

 熱戦が続く学園のグラウンド。

 チームが入れ替り始まったレースの歓声は風に乗り、ベンチに座るダンツフレームの肩にかかったジャージをはためかせた。

 

 グラウンドからロッカールームに繋がる一本道。ダンツフレームはレースを終えたメンバーを送り、1人で放心状態である。

 靴下ごと脱ぎ去った自由な足をパタパタとしたり、触れる草の感触を確かめてみたり。終いには空を見上げながら、ぽけーっと口を開けていた。

 まるで幼児のような動作であるが、それも仕方ない走りであった。

 

 彼女が披露した終盤直線の追い上げ。AIが中盤の展開でサイレンススズカの勝利を100%としてから、突然として結果を変動し出すという希少現象。そして、そこに魅せられた者たちからの歓声。小さなレースの敗者に送られるものとしては異例も異例であった。

 

 あの追い上げは彼女にとって初となる『固有』の発現であった。

 チームを照らすためにと走ったことで、ダンツフレームはウマ娘として高い段階に至ったのだ。

 

 未来で勝ち取る最高峰レースの先頭。今回のレースはその喝采に多大なる跳躍を及ぼしたのだが、今は負けたという事実に大半の意識が持っていかれている。

 限界を超えたことで疲労はピークに。浮遊感や高揚感のような呆けた感覚でベンチに座っていた。

 

 ──だが、そんな乙女に残念なことが一つ。

 先述した通り、このベンチはグランドからロッカールームに繋がる一本道にある。そしてそのロッカールームは『棟』だ。いくつかの部屋があり、レースに出るチームごとに部屋を借りて使用する施設である。

 そうなると必然。両チーム(・・・・)とも帰り道は同じだ。

 

「……あ、さっきマイル走ってた。岡田先生のとこの」

 

 ダンツフレームの体が跳ね上がった。比喩ではなく、物理的にベンチから2センチの浮上であった。

 今の彼女は呆けた表情に涎が垂れそうなほど開いた口、太ももに両手を挟んで、素足は真っ直ぐ放り出している。声をかけられた驚きよりも、だらしなさへの羞恥に襲われる。

 

 へぐぅと漏れた音を口ごとを押さつけて、恥ずかし悶えながら呼びかけられた方向を確認した。

 

 見上げるような視線の先に立つのは、対戦した相手チームのトレーナーである。レース中の鋭い目つきと冷たいオーラは感じない。スーツさえ着ていなければ、徹夜して疲れている研究生と言われても通用しそうな弱々しい佇まいである。

 そんなどこの大学にでもいそうな、疲れ気味で、何か訳のありそうな、メガネが似合うちょっと顔が良いだけの男だ。

 

 ただ、そんな男でも呆けた姿を見られたダンツフレームは致命傷。恥ずかしさは耳の頂点を飛び出し、顔は血行の良い健康的な桃色になる。いきなりの挨拶に慌つつ、まずは転がる靴下を拾って隠した。

 

 しかし、芝崎は衣類を雑にするという光景を自チームの三冠経験ウマ娘で嫌なほど見ているため気にしていない。むしろ、『よし、洗っておけ。あと夕飯は肉が良い』と我儘を言い出さないだけ花丸である。

 

「お疲れさまでした。いい走りだったね」

「……へぅ! ありが……、いや、まぁ、負けちゃったのですが……」

 

 相手チームを監督する者からの純粋な感服。アスリートにとっては最上級の一言だ。ここは素直に受け止めるのが学生的である。

 ただこのダンツフレーム、恥ずかしい姿を見られている。さらに汗だくの体操服に芝崎が近づいたものだから、心に引っかかる悔しさから卑屈な返答をしてしまった。

 

 卑屈であるが事実なだけに芝崎も否定はしない。

 だが、その上でレースで感じた感想を重ねて、奮励した彼女を讃えた。

 

「ん〜……。でも、あの時(・・・)はミスってたスタートの位置取りも今日は成功してたし。数ヶ月前から急成長してると思うんだけどなぁ……」

 

 どう表現すれば彼女が自身の成長を純粋に喜んでくれるかと芝崎は当惑する。盛大に湾曲する眉が見所を迎えているが、芝崎の当惑を以上に混乱しているダンツフレームにその余裕はない。

 

 たった今評価された成長点は、彼女が初めて芝崎と出会った時に指摘された点と合致する。加えて、彼は数ヶ月と言ったが、あの日から1年以上の期間があった。それを記憶していたなど微塵も予想していない。

 

「覚えてて、くれた──……」

 

 大切な思い出が自分のものだけではなかったと歓喜し、じわっと目頭が熱くなる。今にでも手を握って感謝を伝えたい。そしてそのまま、あの手紙も自分だったと打ち明けたい。

 

 ──それなのに彼女のコンプレックスが邪魔をして、手を伸ばせば触れられる彼に届かない。

 

 ダンツフレームの思考を遮るのは、幼少期からこびりつく記憶。

 寂しさを紛らわすため読み返し、文字が掠れてしまった友人の手紙。今日は届いたのではないかと、どんなに待ち望んでも空洞の郵便ポスト。転校のたび指切りをして、手紙を書こうと約束しても自分はいつか忘れられる。

 

 ぬか喜びしてはいけない。期待してしまったら現実の辛さが膨れ上がってしまうから。

 転校して、友達ができて、また転校して。

 手紙が来て喜んで、来なくなって寂しがって。

 そんな息継ぎのような苦しさはもう嫌だから。

 

 今回のレースに挑むに当たってトレーナーとして相手選手を研究したはずだ。さっきの発言も知識として参照しただけ。主役じゃない自分のことなんて覚えている人なんていないのだと、強く自己暗示をかける。

 

 だが、芝崎がダンツフレームを忘れることはない。

 それは累計37回もの──

 

 

 

「それに、エースとしてチームも立て直したでしょ? 『平凡なウマ娘さん(・・・・・・・・)』にしては目立ちすぎじゃないか?」

 

 

 

 芝崎はやるじゃんと、友達を冷やす子供のように口角を上げて秘匿情報を放り込んだ。

 エースとしての苦難と平凡なウマ娘という名前。それは芝崎にとって手紙にしか存在しない『誰か』のはずだ。それなのに、その『誰か』がダンツフレームだと見透かして喋っている。

 

 それは累計37回の1年に渡る文通。最初こそ差出人が不明だった手紙の名残。

 しかし、芝崎は学園長秘書補佐としての業務で全生徒の経歴に目を通しており、序盤数回の文通で送り主のプロファイリングを完結させていた。

 そのため、芝崎にとってこれまでの文通は顔の知った相手とのやり取り。こうして気兼ねなく、相手を間違うことなく言える。

 

 

「ダンツフレーム、君はすごいウマ娘だよ。本当に、よく頑張った」

 

 

 ──ポロポロと涙が落ちる。

 見てもらえていたなんて、覚えてもらえていたなんて。

 幸福なんて表現なんかじゃ足りないくらいの温かさ。

 

 涙でぐちゃぐちゃな顔は早くタオルで隠したいけど、初めて名前を呼んでくれた。

 これは手紙じゃなくて、自分の口で言わなければいけない──。

 

 

「──はいっ……! 頑張りました……!! がんばって、よかったなぁ……!!」

 

 

 感情が耐えられたのはここまで。最後に残った理性で肩にかけていたタオルを被り、桜唇を痛いほど結んで歓喜に満ちる。

 芝崎はまさか自分なんかの言葉で泣き出すとは思っておらず喫驚。ダンツフレームの涙が悪いものではないと知りつつ、このまま放って帰ることはできない。

 厳重に辺りを見渡したのちに、ダンツレームの隣に腰掛けて彼女の背中をさすった。

 

 ダンツフレームにとって隣同士で座るなどなんとも憧れのシチュエーションだが、和気藹々とするような会話を挟む余裕はない。涙でイガイガとする喉で、おまけ程度のコミュニケーションを取った。

 待ち侘びた瞬間は彼女の瞳の根元が紅くなるまでの、レースよりは長くて、手紙を書き終えるよりは短い、そのくらいの時間だけ。

 

 

 

 体も頭も使い果たして、ついに待ち侘びた瞬間まで訪れた。

 頭上に広がる空のように心は透き通っている。

 

 この距離が最後だとしても、諦めず、頑張ろう。

 自分の人生はいつだって主役だ。

 

 だから離れていく、あの人へ。

 転校の度に言い続けて、今や言い飽きているセリフを。

 そんなセリフをほんのちょっと書き換えて言ってみよう──。

 

 

また(・・)、お手紙書きますね──!!」

 

 

 

 *

 

 

 

 トレセン学園の端、外部との境を作る分厚い壁が交差する秘境。

 人目のつかないことで手入れが浅く、木々は好き勝手に伸び、蔦が壁に絡んでいる。

 ここは学園に籍があるのであれば誰でも訪れることができる場所だが、その陰鬱な空気から需要が低く、屋上などの時折に特別開放する場所よりも年間の訪問者が少ない。

 

 そんな陰鬱な場所に芝崎走一は1人で立っている。トレーナー復帰から幾許か、ようやくスーツ着の習慣を取り戻した彼はタブレットを叩いていた。

 その画面に映るのは本日のレースデータ。最終レースの相手選手が披露した驚異的な追い上げの映像と計測値を反復していた。

 

 そうしてタブレット操作をして数分。待ち合わせ時間から少し遅れ、左手で杖をついた老婦人が現れた。

 彼女は芝崎と同じくスーツを着用し、胸元には最高ライセンスのバッジを光らせている。長年の劣化に耐えながら鈍く光る白銀は、芝崎が幼少期から尊敬している最古のデザインを保ったままであった。

 

「お久しぶりね、坊や。少しは健やかな心が戻ったのかしら……?」

「……体調良さそうだね、岡田の婆さん。現場復帰は喜ばしいけど、また倒れるような無理はすんなよ」

 

 その日に対戦したチームのトレーナ同士が話し合うなど談合との噂も立つ。そんな事態を避けるため、老婦人のトレーナーは、古株のみぞ知る見捨てられた地を集合場所として選んでいた。

 彼女は膝に悪いと舗装のない道に不満を垂れつつ、勝手に芝崎のタブレットに映るダンツフレームの出走結果を拡大する。

 

「──で、彼女はどう? 連れて行ってはくれないのかしら?」

「連れて行かないよ……。優秀だけど、あの子はレグルスって柄じゃないでしょ」

 

 そうは言っても惜しいことをした、と芝崎は頭を掻く。逃した魚が鯛であることは認識していたが、歳月をかけて黄金に輝き出したら訳が違う。

 芝崎が再びトレーナーとして立ち上がった際、横に立つ老婦人が不治の病から復帰しなければ、指導者不在のチームから強奪のようなスカウトでダンツフレームを加入させていただろう。

 

 ──そして、そのような芝崎の願望を知っていたのか、老婦人が芝崎へとレース数日前にある提案を持ちかけていた。

 それが先の言葉が示していた通りにダンツフレームの移籍である。

 

 魔女と呼ばれた老婦人も勝てないものが二つ。それは重なる年齢と、相手に研究され尽くしたレース戦術だ。トレーナとしてのプライドは盛んに燃えている。しかし、自身が不在だったことで教え子に迷惑をかけ、勝てない現状を耐えさせていた。

 

 そんな現実から病棟で考えたのはトレーナー引退の文字。

 そのために教え子を性格や戦術に合わせて他チームへ移籍させようと考えており、ダンツフレームはその1号のハズであった。

 優秀なウマ娘を預けるのだ、どうせなら同じく優秀な教え子に任せたいと思うのが老婆心というもの。

 

「あら、そう。残念ね……。私も、もう長くないのだけど……」

「24時間の手術から目覚めた一言目が『ハンバーガー食べたい』って人がお先短いなんてある?」

 

 ケラケラと笑いながら良心に付け込むような軽口。魔女と恐れられた勝負師の性格は治療不可であった。

 

 そしてそれを見て、やはり移籍をチャラにしたのを正解だと芝崎は考える。彼の性根にはない太陽のような明るさは、平凡と蹲っていたダンツフレームや、挫折の中にいたウマ娘たちを救いあげる源となり、強いチームの基盤となっている。

 芝崎もその魔女の魔法を知っていたから、幸運にもサイレンススズカが救えた。芸当として何度もできることではない。

 

「ダンツフレームは責任をとって(・・・・・・)婆さんが最後まで面倒見切ってくれ」

 

 ダンツフレームは太陽のような場所で伸び伸びと。

 焦がれた恋に溶かされず。健全な光と共にあることが最大の成長につながる。

 

 ──などと綺麗に収まれば話は綺麗だが、レース前に移籍の誘いなどと動揺必至な依頼をされた芝崎。無事に勝利を収めたとはいえ、あれこれ考えたせいで心労は通常のレースより大きい。これでは一人相撲をしていたようでスッキリしないのだ。

 

「……あっ、でも一つだけ頼みたいことが」

 

 芝崎は詐欺師のような笑みをこぼしてタブレットを操作。そして、スライドして表示された日程表と小さな網目で作られた表を魔女に渡した。

 そこから岡田が老眼を調整しながら画面を覗き込んで数秒。弟子と同じような悪どい笑いで魔女が応える。

 

「あらまぁ……。坊や、それは大層なお願いねぇ」

「そこはほら、勝者の特権ってことで頼むよ」

 

 チームの談合を生まないように人気のない暗然たる場所で組まれた密会。それがこのような笑顔で会話しているのを万が一でも目撃されたなら、言い訳など微塵の効き目もないだろう。

 

「──いいでしょう。それなら私からも一つ」

 

 成長した教え子の計画を承認しつつ、魔女がタブレットを返す手で交換条件を提示した。

 その言葉に怯える芝崎であったが、それは蓋を開けてみると彼の要求にはまるで比重が釣り合わない軽いものであった。

 

 本日のレースで見せた踏ん張り、そして自分が復帰するまで頑張ったエースである教え子への褒美だ。

 自分の錆びた膝を言い訳にするのは残るものがあるが、それに見合う働きであった。

 これも魔女の千里眼、──否、やはりただの老婆心だ。

 

 

 

 *

 

 

 

 芝崎走一さんへ

 

 

 この前はチームの買い出しのお手伝いをいただき、ありがとうございました。

 運転係と仰られた時は驚きましたが、ご一緒できて光栄でした。

 岡田トレーナーからも感謝を伝えておくよう言われたので、

 改めてこちらでお伝えさせてください。

 

 それと買い出しの後半はすみません。

 みんな好き勝手に散らばってしまって、結局2人で回ることになってしまい……。

 いつも出かける時はそんなことしないので、今回は多めに見ていただければ! 

 

 あと、夏服を選ぶのも手伝っていただいて、ありがとうございました。

 自分のお洋服を選ぶの苦手で、

 メンコの色を決めるのにさえ3日もかけちゃうので。

 でも、芝崎さんに選んでもらった大切な服なので、

 ちゃんと大切な日に着るって決まりました! 

 

 それと忘れないと思いますけど、ゲームセンターの約束も忘れないでくださいね。

 ホッケー、5点ハンデでも勝ったのは私なので! 

 パンチングゲームも、利き手と逆でも勝ったのは私なので! 

 破ったら針千本です! 

 

 それじゃあ、約束なので、……また一緒にお出かけしてください。

 今度は芝崎さんが選んでくれたお洋服を着ていくので──! 

 

 

 ダンツフレームより

 

 

 




執筆逃げ出した理由は下の活動報告で。
感想と誤字脱字報告もお待ちしております。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=335596&uid=15254
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ブエナビスタのお姉ちゃんのお兄さん(作者:幼馴染にされたネクパイ)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

 あの日。▼ 幼い私が、「お姉ちゃん」と一緒に見た、あの花火。▼ とても綺麗な金色の光を、よく覚えてる。▼ けれど、どうしてだろう。▼ あの日に見た花火は、今の私が「トレーナーさん」と見た花火よりも、ずっと近かった気がした。


総合評価:2057/評価:8.98/連載:17話/更新日時:2026年04月28日(火) 20:22 小説情報

トレセン学園は爛れている(作者:スーさんFDP)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

▼いつもの様に爛れているトレセン学園にて、芦毛ウマ娘のトレーナーをしている無駄にイケメンでクソボケでデリカシーゼロな男とそんなトレーナーが何だかんだで大大大好きな色物芦毛ウマ娘たちの物語。▼「あらすじはこれでいいかなパックイーン?」▼「ぶっとばしますわよ!!」▼どうも、以前からウマ娘の小説が書きたくて、こんな時期に投稿をしました。▼話の内容は基本ギャグです。…


総合評価:796/評価:6.45/連載:18話/更新日時:2026年03月24日(火) 08:00 小説情報

ジェンティルドンナのにぃに概念(作者:おっき!!!)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

▼某よーつべの反応集を見て感化されました。▼芹にゃんほんと好き…………。MFゴーストで妹成分補給補給……。


総合評価:4735/評価:8.53/連載:7話/更新日時:2026年05月12日(火) 01:58 小説情報

ライスシャワーはお義兄さまと結婚したい(作者:雅媛)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

ライスシャワーの義理の兄に転生したお兄様トレーナーとお兄様と結婚したいライスシャワーのラブコメ。▼ひとまず一区切り▼2026/1/27 日間ランキング一般総合7位▼2026/1/28 日間ランキング一般総合6位▼ありがとうございます。


総合評価:3224/評価:8.02/完結:23話/更新日時:2026年02月01日(日) 18:00 小説情報

うおっ乳デカいね♡ 違法建築だろ(作者:珍鎮)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

オラッ デカ乳むちむちウマ娘たちと交流したいのに悉くスレンダー体型の女子とばかり面識が生まれる気分はどうだ? 感想を述べよッ!


総合評価:40816/評価:9.12/連載:73話/更新日時:2026年02月02日(月) 22:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>