オワタ式な神機使いの生き方   作:てっちゃーんッ

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第11話

 

 

 

「独房の居心地どうよ?」

 

「良くないな。マロンは入った事あるのか?」

 

「いや、今回が初めて」

 

「意外だな」

 

「おい待て、そりゃどう言う意味だ?」

 

 

 

どうも、甘い名前を持つ男、台場マロンです。

 

レンカは独房です。

 

ちなみに俺も独房だ。

 

え??入ってる理由??

 

レンカを連れ戻すと言って戦わせたから。

 

なので無断の行動として断定。

 

そのため半日分、独房行きである。

 

 

 

「まぁ栄光ある独房だよ。ゴッドイーターとして人を守ったんだ。なので今は胸張って寝心地悪い寝床に転が………ん?誰か来るな」

 

「??」

 

 

まず足音からして女性だと判断する。

 

そしてハイヒールのような硬い足音では無い

 

軽い靴音だ。

 

その正体は…

 

 

 

「マロン? そこにいるの?」

 

「あ、姉さん(カノン)

 

 

 

現れたのは義姉の台場カノンだ。

 

心配そうな顔をしていた。

 

 

 

「マロン、そんな寂しそうなところにいて大丈夫なの?」

 

「大丈夫だよ姉さん。今は新人のレンカと反省会するためにこうやって独房を使っているところだ。しかも贅沢なことに1人一部屋で借りることができたVIPレベルの扱いだ。非常に満喫してる」

 

「んなわけあるかよ…」

 

 

 

レンカから呆れたようなツッコミが入る。しかし姉さんは俺の変わらぬ様子を見て安心したようだ。ちなみに姉さんは俺がここに入っている理由は知っている。

 

寂しくないかと心配して来てくれたらしい。

 

 

 

「それとレンカくん、こんにちは」

 

「あ…はい、こんにちは」

 

「ここ出ることができたら今度焼き菓子食べに来てね」

 

「あ、はい。ここを出ることが出来たら是非頂きます」

 

「うん、待ってるね」

 

 

 

ちなみに姉さんとレンカはお互いに知り合いだ。

 

俺がレンカと訓練してるところを度々顔を出していたからだ。

 

あとカノンが俺の義姉である事も知っている。

 

 

 

「じゃあレンカくん、マロンをよろしくね」

 

「ああ、わかった」

 

「おい、待て、それはどう言う事だ?」

 

 

 

短い会話を終えた姉さんは再び俺に振り向く。

 

すると何か思い出したかのような反応を見せた。

 

 

 

「そう言えばマロンの彼女さんから伝言預かってるよ」

 

「リッカが?」

 

「うん。ええとね『初の独房おめでとう、でも早く出ないとグレるよ』って言ってた」

 

「メンテナンス不足だったか…」

 

「??」

 

 

姉さんは首を傾げてるがレンカは微妙な反応を示していた。

 

なんだかんだでレンカは頭いいから今のくだらなさを理解したようである。

 

さて、ここに長時間居座ることも出来ないため姉さんはこの場を去った。

 

また静かになる。

 

俺は適当に座って壁に話しかける。

 

 

「今のうちに何か聞きたい事あるか?俺はレンカよりも先にこの独房を出る。するとそのタイミングで俺は有給が終わり、早速ミッションに飛ばされることになるだろう」

 

「忙しいんだな」

 

「フィールドワークはそうなんだよ。だからこそ俺はもうレンカに何も指南する事は無くなる」

 

「!」

 

「それにな、俺たちが独房でこうやって話せる距離にしたのはツバキ教官による最後の計らいだと思う」

 

「そうなのか?」

 

「だと思うよ?なので聞きたいものがあるなら今のうちに聞いておけ。教官紛いなことは今日で終わりにするからさ」

 

「…」

 

 

 

壁に寄っ掛かり、最近慣れて来た先輩風を吹かせる。

 

しばらくの沈黙だが、レンカは口を開く。

 

 

 

「マロン、なぜ俺にそこまで付き添ってくれる?」

 

「そうだな………お前が眩しいから、かな」

 

「?」

 

「俺は新型だ。でも不完全な新型としてここに降り立った神機使い。悪く言えばモルモット扱いで新型にさせられた…… って、いつだったか前に話したよな?」

 

「ああ…」

 

「だけどレンカは完成した新型だ。少なからず俺も同じ新型のつもり。だから同型であるレンカを応援したい。しかし本音を言えばそんなレンカは俺には出来ない事をやってくれそうだと思ったから」

 

「できないこと??」

 

「あー、いや。あまり気にするな。ただの自己満足だよ。俺はレンカを気に入っている。それだけだ」

 

「そうか…」

 

 

固い寝台に転がる。

 

目を閉じる。

 

思い浮かべるのは先ほどのカノン。

 

血のつながりはない。

 

弟にしてくれた人だから。

 

そして…

 

 

「レンカ…」

 

「なんだ?」

 

「お前は自分の姉の事は、好きか?」

 

「え? ……あ、あぁ、勿論だが…?」

 

「そうか。いいことだな」

 

「?」

 

 

 

たまたま同じように似たような境遇の仲と出会った俺たち。

 

俺は知っているが、レンカはまだ知らない。

 

イロハがまだ隠したいことだから。

 

ならその時が来るまで彼は生きる必要がある。

 

彼女のためにも、ゴッドイーターする必要が。

 

 

 

「頑張れ、主人公…」

 

 

 

目が覚めたらミッションだ。

 

俺も生きるために、今は蓄える。

 

冷たい独房で静かに眠りついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

極東支部。

一人目の新型神機使い__台場マロン。

 

栄光ある一人目(モルモット扱い)として君臨した者。

 

ただそれは不完全な新型として。

 

 

実際のところ、わたしは彼にあまり期待はしていなかった。

 

スターゲイザーを名乗るサカキ博士は実験後になって後悔を生んでいたが…… 私にそんな感情は無い。

 

そもそも後悔や懺悔など起こすことも許されないところまで来た。私は自分を愚者だと認めている。若さ故の過ちを拭うために。

 

また研究成果を奪った者の復讐も兼ねて。

 

そして愛していた者の償いのため、忌み子(ソーマ)を抱えながら私は人類を救いの秤にかけて全てを終わらせようとしている。

 

だから私はどこまでも無情だ。

 

ああ、無情だからこそ一人目として扱われたモルモットな彼を哀れだとも思わない。

 

これからのための踏み台として『それ(呪い)』を背負ってもらうことにした。

 

 

しかし、しかしだ。

 

彼は___ナニカが、おかしい。

 

人類は進化する。

 

ロマンチストなペイラーの言葉。

 

台場マロン。

 

呪われたはずの神機使い。

 

だが彼にとってソレは呪い(まじない)なのか?

 

私はオカルトチックな現象やロマンチストな思考は好みではない。叩き出される数字と実績だけを目に入れる。これは研究員として働いて備わった気質故なんだろう。

 

しかし彼は人類を容易く喰らうアラガミ達を前にしても五体満足で帰投し続ける。

 

何度も何度も無事に戻ってきた。

 

それはまるで、女神に愛されてるように彼は荒神から護られている。

 

そんなロマンチストな考えがよぎる。

 

私は「ありえない」と切り捨てたい。

 

人は神によって常に蹂躙されているのだ。

 

だから女神が救いを差し伸べたなど信じがたい。

 

しかし彼のデータベースを開けばそれは事実だと証明する。私はその活躍を信じざるをえなかった。

 

彼は闘いにおいて類い稀ぬセンスの持ち主… なんてほどではなく、彼は至って普通の人間だ。

 

適合率が高い台場カノンと姉弟であるが、そこに見合わぬ適合率の数値の低さはやはり何かがおかしいと感じられた。

 

 

だが一つだけその異常性が分かったのだ。

 

彼は非常に賢いゴッドイーターであることだ。

 

その証拠として極東支部で一番と言われるほどのバレットエディット作成者だった。

 

バレットエディットは非常に複雑な代物であると聞いている。手慣れない者はエディットの作成に一日中かけることも珍しくない。ゴッドイーターでない私でもその難しさは理解しているつもりだ。

 

しかし扱いに困難な代物こそ大きな力を発揮してくれる。それがオラクルと言うもの。

 

それを周りに理解させるように彼が抱える多大なバレットの数々はミッションの生存率を上げていた。

 

いつだったから接触禁忌種であるポセイドンの動きを封じ込めたバレットを使うことで仲間二人を連れて生還を果たす実績も残した。

 

あのポセイドンを相手にこれは異例だった。正直に言えば私はその報告を疑うくらいだったから。

 

しかし彼が賢いのはバレットエディットが限定ではない。

 

アラガミに対する知識量が豊富である。

 

そのためミッション中でどんなイレギュラーが発生しても丁寧に対応すればそのままアラガミを攻略してしまう。

 

要するに立ち回り方が非常に上手だと言うことだ。

 

 

 

だから私は一度だけ考えてしまった事がある。

 

もし彼があのような実績を欲した故に課せられた神機ではなく、正常な神機を得ればどうなったのだろうか?

 

それこそ神を凌駕する鬼神そのものになってくれたのか?

 

 

 

まったく…… この私が『もしも』なんて考えるとは。

 

濁った空絵を連想する自分の愚かさに嘲笑ってしまう。

 

それほどに彼の力がここまで影響さているのだろう。

 

そしてなによりも…

 

 

 

 

「『メテオ』か……」

 

 

 

彼が作りあげた悪魔の所業(メテオ)

 

バレットエディットの事だ。

 

 

 

 

「…」

 

 

 

 

私はとあるプランを作り上げていた。

 

それにはアラガミのコアを多量に必要する。

 

そのため沢山のアラガミを集めて、一斉殲滅して多量のコアを回収する、そんな空絵を描いていた。かなり難しいプランだろう。しかし必要である、多量のコアが。

 

しかし彼の存在が、彼によって手掛けられたバレットエディットが可能にしてくれる。

 

 

 

神に刃向かう私に示された道…

 

それはまるで…

 

 

 

「神と相対するために【悪魔】となったか…」

 

 

 

 

人 が 神 になるのか…

 

神 が 人 になるのか…

 

 

いや、彼だけは違う。

 

人でも神でもない。

 

彼は私たちの呪いにより『悪魔』となったか。

 

 

 

 

「ふっ、くくっ。 悪魔か」

 

それは流石にくだらないか。

 

愚か者()はどこまでも愚か者()のままだ。

 

本当は神にも悪魔にもならない生き物だ。

 

そう似せるだけの、器用な生き物。

 

 

 

 

ただ、そうなれるように夢見てるだけ。

 

研究者の私がそうだったように…

 

人類の分際で、先を行こうとした愚か者に変わりない…

 

 

 

 

「まもなくだ。まもなく『オペレーション・メテオライト』が完成するだろう」

 

 

 

この愚かさを拭うために、愚かに手を染める。

 

だから人というのは荒ぶる神に喰われて当然なのだろう。

 

なんとも御し難い存在だ……

 

 

 

 

 

つづく


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