オワタ式な神機使いの生き方   作:てっちゃーんッ

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第13話

 

〜 食堂 〜

 

 

 

さて、現在お昼の時間。

 

お腹を満たすために食堂までやってきた。

 

半分サイズのジャイアントトウモロコシを主食にして、冷やしカレードリンクと、冷やさせれていた温かいカレードリンクを添えて、目の前でニコニコと座っているリッカとささやかなお食事デートだ。リッカたんマジ天使。かわいい。

 

 

 

「それで、これがサリエルの幼体と思われるアラガミの群れ」

 

「んー、見た目気持ち悪いね」

 

 

 

流石にお食事中で見せるべきじゃないだろうビデオカメラの映像は前回のミッションで録画した奴だ。風の音がうるさい。

 

 

「そして幼体アラガミの殲滅後に現れたコイツはウロヴォロス。それもかなりでかい個体だ」

 

「何これ!?」

 

「録画の中のリンドウが言った通り、触る神に祟りなしって奴だよ。しかもこの体格に飛行能力があるらしい。ゆっくりと降下してるのがなによりも証拠だな」

 

 

ジャイアントトウモロコシを齧りながらリッカに見せる動画。

 

成長し始める幼体のアラガミ。

 

各々が神機を振るう戦闘シーン。

 

ラストキルを貰ったレンカのワンシーン。

 

そして先程見せたのは雲の中から出てきたウロヴォロス。デコイとして使ったヘリコプターに食らいつく超大型アラガミの姿に新人二人が息をのむ声が鮮明に聞こえる。このショッキン映像も分からないこともない。

 

そして飛ぶらしいウロヴォロス。

 

やはり原作知識は意味が無い。

 

はっきりわかんだね。

 

 

 

「それにしてもこの映像はツバキ教官に渡したの?」

 

「渡したよ。コピーしてな」

 

「なんで?」

 

「元々空木レンカの戦闘スタイルを確認する目的として回したんだよ。まあアラガミの生態を報告して対アラガミの対策を立てるためにもカメラは回したが、俺の中でメインはレンカだ」

 

「相変わらずレンカくんお気に入りだね。 妬いちゃう」

 

「俺にとってリッカが一番のお気に入りなんだってそれよく言われてるから。そんでさ、レンカの戦いっぷりを知ってもらったのだが、そこでリッカにお願いがあるんだよ」

 

「?」

 

「考案した強化パーツにオラクルを節約できる物があったよな?それの開発を進めたい」

 

「別に良いけど、何か考えがあるんだね?」

 

「ああ。俺の目測が正しければレンカはブラストを使いこなす。いま見せた映像でもレンカは剣から銃に繋いだ攻撃を得意としている。柔軟なんだよ彼は」

 

「私は戦いとかよくわからないけど、レンカくんにとってオラクルを節約する強化パーツがピッタリの代物になるんだね?」

 

「ああ」

 

「ん、いいよ。マロンのお願い聞いてあげる。わたしもレンカ君のこと気に入ってるから」

 

「ありがとう。あと妬いちゃう」

 

「私にとってマロンが一番だってそれよく言われてるから」

 

「うれしぃ…うれしぃ…」

 

 

そう言って開発を決めてくれる大天使リッカ。

 

いつも俺のワガママをよく聞いてくれる彼女だけど、ちゃんと理にかなってるからこそ頼みを承ってくれる。そして開発に手を抜かない彼女の作品に俺はいつも絶賛する。大体これの繰り返しだ。

 

幸せすぎて脳内バーストモード不回避ですわ。

 

 

 

「ふぅぅん、あなたが…」

 

 

「?」

 

 

 

俺とリッカの時間に割ってきたのはロシアからやってきたアリサだ。

 

それよりもなんか見下されてる?

とある業界ではご褒美らしいけど。

 

そんでもって相当な至近距離で迫ってこちらを見ているので、座っているあ俺はアリサの胸が下から見えそうになる。随分と無防備だ。この子の恥じらいはロシアで冷凍保存されて置いて来たらしい。

 

 

「聞きました。 あなたは極東支部で最初に作られた新型であり、そして極東最強だと」

 

「前者は事実だけど後者はふざけてつけられてからな?あと厳密には極東最強ではなく極東最"狂"だよ」

 

 

 

俺は個人の生存率や作戦の成功率が高いことで評価されている。あと支援に回った時の貢献率も一番高いとされている。しかも数値化した場合雨宮リンドウを超えているらしい。

しかし認めきれないゴッドイーターや面白がらない輩は皮肉的敬意を込めて俺のことをこう名付けた。

 

極東支部の中で最も『狂って』いる神機使い。

それが、極東最()だと。

 

 

「そんな細かいことはどうでも良いです。ただそれだけ噂される異物なのならば相当な者だと拝見しました」

 

「人を異物呼ばわりとは失礼な奴だな?」

 

「しかし今日の午後から開始されるミッションで同行すると聞きましたので、改めて一眼伺いに来ましたが、緊張感も無く浮かれてる姿を見て些かガッカリなところですね」

 

「異物呼ばわりに関しては無視かよ」

 

 

原作ゲームでもなかなか棘のある言動だったがこうして対面すると結構クるとこあるね。

 

俺は彼女の過去を知ってるからまだ理解できるがそうで無い奴からしたらたまったもんでは無い。

 

彼女の姿は問題児そのものだろう。

 

 

「まぁ、心配すんな。ただミッション前にリラックスしてるだけだ。俺ってメリハリの付け方が上手いからな」

 

「でもマロンってその割には休む時はグデーってとんでもないほど無気力状態になるでしょ?」

 

「それは仕方ないだろリッカ。体のリミッターコントロールは遠の昔に壊れてる。ミッションを終えて部屋に戻ればパタリと倒れちまうのは仕様だ。100%か0%のどっちかだ」

 

「でもその分無防備なマロンを好きなように出来るから良いんだけどね」

 

「好きにって… あのねぇ、無気力状態は空腹すらも無視するんだぞ?ある意味死活問題なんですがそれは」

 

「私だって無防備にパジャマ姿晒してるでしょ?そんな私を好き勝手するじゃん。だからおあいこってことになるよ」

 

「何そのガバガバ理論」

 

「朝ボルト締め忘れたからガバガバなのは仕方ないね」

 

 

「もう! イチャイチャするなら他所でやってください!」

 

 

「「やだよ」」

 

 

「はぁ!?」

 

 

 

アリサが俺を貶してた(?)話題はいつのまにか何処へ行ってしまい、イチャイチャしてるところを見せつけられて顔赤くして怒っていた。

 

なんだ?

 

かまってちゃんか??

 

と、言っても現状は扱いづらい年相応な態度と性格だけであって、根はいい子な事は原作プレイヤーとしてそれはよく知ってる。寧ろ今だけこのアリサを楽しめれると考えればそこまで苦痛でもない。残念さが少し心に残るだけ。

 

 

 

「そんじゃ、そろそろストレッチでも始めようかな」

 

「ストレッチ、ですか?」

 

「ああ。俺には一番欠かせない準備タイムだ。 これを毎日やってるから動きにミスもしないし、傷を負わずにいつもミッションを終えれる。そんじゃ後でな、ロシアのルーキー」

 

「っ!か、勝手に新人扱いしないでください!!」

 

「それでも俺からしたらまだ君はヒヨッコだよ」

 

 

 

年相応な反応。

 

レンカとは違って揶揄いがいがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜 贖罪の教会 〜

 

 

さて、リッカと些細なお昼ご飯デートを終えてから二時間が経過。

 

体を無駄無くほぐし終えた。

お陰で手首が軽い。

 

その上オラクルソードを握れば本当に羽根のように軽くなる。体に肉が詰まってるか心配になるレベルな程だ。もう慣れた感覚だけれど。

 

その状態でおれはアリサと二人でミッションに出た。対象はコンゴウ二体だ。簡単に倒せるアラガミだけど、あの豪腕から繰り出される攻撃は普通にワンパンで死ねる。なので遠距離攻撃で封殺することがオススメだろう。

 

 

「ここから西にオウガテイルが6体。あと西南に討伐対象のコンゴウが2体まとまってる。あと何故かサリエルもこちらに来てるな」

 

「サリエルが…?って、なんでそんなに細かく分かるんですか?さっきも『あの岩陰からオウガテイル』と言い当てて…」

 

「自分、極東最()なので」

 

「誤魔化さないでください!」

 

「まぁ、極東支部で一番の調査兵と認められてるくらいだし、このくらい出来て当然だろ」

 

「規格外か何かですか、あなたは」

 

「ある意味規格外だから間違いではその認識で無い。まあそこらへんのカラクリはその内教えてやるよ。そんじゃあさっさと討伐対象は倒そうか。俺ってサリエルの天敵だからミッションはさっさとクリアしたい」

 

「…わかりました」

 

 

どこか納得いかないアリサだがミッションは淡々とこなしてオウガテイルの駆除。

 

メインであるコンゴウ二体をあっさり葬った。

 

その時にリンクバーストでアリサを強化したりと新型神機使いならではの支援に回ったが… 何故か怒鳴り始める。

 

 

「教えなさい! これは何なんですか!」

 

「はい?」

 

 

 

まさか『リンクバースト』を知らないとは思わなかった。

 

 

 

「新型だけが許される力だ。知らないの?」

 

「新型だけが許される…?一体何なんですか?」

 

「……君は何も知らないんだな?」

 

「な、何がですか…」

 

 

どうやらアリサは新型をただ剣と銃が両立できる『便利な』モノだと認識してるだけだ。

 

これはよろしく無い。

 

 

 

「よしアリサ、少し質問しようか。君は旧型と新型の違いを思いつく限りの言ってみて」

 

「え?」

 

「ハイ、よーい、スタート」

 

「うえ!? え、ええとっ…ま、まず変形が出来ること、そして捕食…は、旧型もできるから…あ、でも捕食する事でオラクルを補充して射撃の弾を回復できる能力があります」

 

「他には?」

 

「え?……た、盾と銃が使える…?」

 

「それはただ普通に当たり前なことだろ」

 

「ぐっ…!」

 

「で、他にわかることは?」

 

「え………ええ、と」

 

「どうやら無いみたいだな。なるほど、つまり君はまだその程度ってことだな」

 

「なっ…!!」

 

「ちょうどいい。今からこちらに来るだろうサリエルを駆逐しながら教えてあげよう」

 

 

 

俺はアリサに手招きして建物の中に隠れる。

 

あとアリサは少し拗ねてしまった。オオグルマの洗脳解除前の黒歴史状態のアリサは完璧主義寄りな性格なので、俺の満足行く答えを出せなかった事を気にしているようだ。俺も言葉に意地悪が過ぎたが彼女には良い薬としておこう。

 

さて、俺が指差した場所に視線を向けさせる。

 

すると低空で移動するサリエルが現れた。

 

もうアリサは俺のユーバーセンスに慣れたのか驚きはしなくなった。

 

 

「新型でも銃形態にならなければ銃撃はできないなんて固定概念は捨てちまえ。新型は剣形態でも銃撃できるんだから」

 

「え?」

 

「そこで観察していろ。今から見せるのは『インパルスエッジ』って技だ」

 

「インパルス、エッジ?」

 

「剣形態でも強引に砲撃をねじ込める素晴らしい技だよ。見せてやろう」

 

 

 

眼の良いサリエルとはあまり戦いたくないが不意打ちで叩き落とせば案外なんとかなる。

 

最悪アリサの力も借りて倒せば良い。

 

俺はブラストの銃口を斜めに向けてサリエルに飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はロシアから極東支部にやってきた。

 

ここ極東支部は激戦区と恐れられる場所。

 

アラガミの動物園とも言われている。

 

だからここで戦うゴッドイーターは屈強な者達で集われてるかと思ったが、対してそうでもないようだ。

 

ゴッドイーターに対して緊張感が無い。

本当に激戦区かと疑われるような空気。

 

そんな奴らが多くだった。

 

しかし例外はある。

 

輸送機から私を迎えに来たゴッドイーターはそんな連中と比べて見事と言える者達だった。

 

例えば、雨宮リンドウと橘サクヤ。

この二人はキャリアが長いベテラン神機使い。

 

そして同い年で、同じ新型の空木レンカ。

 

しかし私の方がゴッドイーターとしての実戦経験は長かった。けれど空木レンカの活躍は私に劣ることない働き。更に輸送機のミッションが今回彼だと初めてだと聞いた。つまり外での本格的な初陣。なにかの間違いだと思いたかったが、アーカイブから見れるデータが全て物語っている。

 

防衛区の中で一度だけアラガミと戦闘は行ったらしいが、サリエルの幼体の群れに飛び込むような激戦は初めてらしい。つまり本格的なミッションはあの輸送機の護衛が初めて。

 

どうして?

私とは変わらない年の彼がどうやって?

あの動きは新兵にしては只者では無い。

 

 

しかし原因はすぐにわかった。

 

空木レンカと親しい仲である神機使いがいた。

 

それは新型神機使いのプロトタイプである台場マロンと言う男。彼の存在が空木レンカを強くした。私は気になって台場マロンを調べた。

 

プロトタイプの意味も気になったからだ。

 

そしで極東で『最強』であることも聞いた。

 

これだけの事がわかれはある程度納得はいく。

 

実際に私は台場マロンの戦いを輸送機で見た。

 

後ろを見ずに銃弾を当てる技術。

 

通り魔のごとく繰り出すのは見えない斬撃。

 

しかも風が強い輸送機の上でビデオカメラを片手に回しながらアラガミと戦う神経は疑いたくなった。彼が調査兵でアラガミの情報を集める役目を背負ってるのはわかる。アーカイブでそのことを知った。でもあの状況でそんなことをやれる精神は相当だと思った。

 

ゴッドイーターになって半分人間やめてるのにさらにそこから半分人間をやめたような動きは印象深い。狂っている。

 

だから極東最狂なのか。

 

これだけの情報量つい前日に起きた出来事。

 

今でも驚きが私の中で巡る。

 

しかし私は台場マロンを見下していた。腑抜けた周りのゴッドイーターと同じ枠に入れていた。

 

でもそれは台場マロンを『強い』と認めたくなかった幼稚な神経からかもそれない。もしそうなら自分でも嫌になってるが、それを止めることはできなかった。けど私はいつものように冷徹な言葉と視線を持った。

 

でも食事中の彼からあしらわられる。

 

そして、彼のつかみどころがわからないままミッションが始まる。

 

 

 

 

「軽いブリーディングを始めるぞ。 今回の討伐対象は__」

 

「コンゴウ二体だけです。事前情報で確認したので問題ありません」

 

「残念、問題ありだ」

 

「なっ!?」

 

「いいか?よく聞け新入り。ここはアラガミの動物園で有名な極東支部。人手が足りないレベルでいつもアラガミでいっぱい。接触禁忌種も半年に一回以上は必ず見かけるヤベーところ。そんな奴らを含めて極東が管理しているつもりである区域に生息するアラガミは一つの場所にこだわらずあらゆるところに現れる。もしかしたらこのミッションにコンゴウ以外のアラガミも現れることだってあり得る」

 

「それは…」

 

「あり得ないとでも?」

 

「ですが、そんな事が簡単に…」

 

「残念だけどそんな簡単がここでは当然のように起こるぞアリサ。だから極東でゴッドイーターをするならイレギュラーを想定しながらミッションに取り組め。何事もなければそれで越したことはない。けど受け取った情報だけを鵜呑みにしてミッションに取り組むのならば極東でいずれ死ぬことになる」

 

「……」

 

「脅してるようで悪いけど、ここ極東はマジでイかれてる場所だ。せっかく現れた金の卵も即座に蹂躙されてしまうところだ。そうやって失った神機使いは多い。俺はその枠にアリサを入れたくない」

 

「……大丈夫です。 ありがとうございます。 けど私はそんな簡単に死にませんから」

 

「そうか。ならまずはそれで良い。何だかんだでその方が頼もしいからな。先ほどの件については、慣れもしない先輩風吹かせているプロトタイプがそう言ってた… 程度に今の話は覚えておいてくれ。じゃ、始めるか」

 

 

 

そう言って彼は走り出す。

 

すると小型アラガミへ一直線。

 

まるでそこにいることがわかってるかのように駆けて行き、背中を撫でるように斬りつけながら最後は捕食。

 

しかし台場マロンのプレデターはアラガミの皮膚に牙を立てた程度であり噛み砕けてない。だから絶命はしない。

 

しかし、アラガミは何が起こったのか気づいてないようだ。台場マロンから攻撃されたことすら理解してない。私は隙だらけの小型アラガミを銃撃でトドメを刺した。

 

 

「アーカイブで個人のプロフィールを調べたなら分かると思うけど、俺って斬撃や捕食でアラガミは殺せない欠陥品だ。銃撃でなければアラガミにダメージを与えれない。そんなわけなので細めなキルはアリサ頼りになるからな、よろしく」

 

「プロトタイプは…… プロトタイプなりの仕事をしていただければ結構です。けれど、了解はしました」

 

「おうよ」

 

「でも今回はあなたが逆に支援してください」

 

「わかった。 そうしようか」

 

 

そしてミッションが本格的に始まる。

 

そして今回はじっくりと彼の活躍を見れそうだから私はそちらにも目を向けた。

 

あくまで興味の対象としたが。

 

 

 

「なんでアラガミはあなたに気づかないんですか?」

 

愛の結晶(リッカのお陰)って奴だ」

 

「はい?」

 

「まあ、意味については、そのうちな」

 

 

時々よくわからないことではぐらかそうとする。

 

絶対なに何か仕組みがあると思うのでそれは今度聞いてみることにした。

 

 

「ところでアリサは捕食の際に全て弾に変換するんだな」

 

「変換?ああ、捕食完了の際の事ですか。私は全て弾に変換させます。身体強化はありがたいですが効果時間は長くないので選択外ですね。 実用性だけを考えるなら私は弾に全て変換します。あと手間かけて捕食したのに効果が薄いのでは強化状態(バーストモード)なんて意味なんかありません」

 

「そりゃ小型アラガミや中型アラガミ程度から得る強化状態は効果薄い。リターンが無いからな。わからないこともない」

 

 

 

オウガテイルやザイゴート。

 

コンゴウやサリエル。

 

大型アラガミならわからないこともないがその程度のアラガミから捕食してもリターンが小さい。

 

それなら全て弾に変換してしまえばまだ良い方だ。

 

だから捕食から得る強化状態に意味など無い。

 

それは彼も理解しているようだった。

 

 

「まぁ俺たち新型ならそんな事は解消されるけどな」

 

「?」

 

 

解消される?

 

強制解放剤の事だろうか?

 

そんなのロシアにもある。

 

それを伝えようとした時だ…

 

 

 

「じゃあ、受け取れ」

 

「!?」

 

 

 

彼はいつのまにか私に近づいて銃形態に変えていた。彼の神機の銃口は私の神機に向けられてトリガーが引かれる。

 

すると銃口から吐き出された白いオラクルが私の神機に吸い込まれる。

 

次の瞬間だ。

 

 

 

「ッッ!!?」

 

 

 

体が軽い。

 

力が湧いてくる。

 

握る神機が暖かい。

 

これは……まさか強化状態??!

 

 

「お? アラガミを確認。いくぞ」

 

「なっ! ま、待ってください!」

 

 

私は久しぶりに感じる強化状態で追いかける。

 

すぐに彼へ追いつき突然の出来後に少し文句を言い放つ。

 

アラガミをあしらいながら私の文句に首をかしげる。彼はわたしが怒ってる理由がわかってないらしい。

 

それよりもコンゴウを一体討伐して尚、強化状態は続いている。既に効果は無くなっていておかしくないはずなのに…

 

 

「彼は一体何者なの?」

 

 

プロトタイプと言えども私よりも新型として戦い続けてきたから知ってる量も違うと思う。

 

だからこの瞬間、彼との差を認めてしまいそうで怖かった。

 

ダメだ。

 

私は周りの腑抜けたゴッドイーターよりも強いんだと、正しいんだと、意思を通し続けないと、舐められないように。

 

けどアラガミに臆することなく神機を振るう彼は幼稚な私なんかよりも大人で、落ち着いていて、理想的な強さだ。

 

新型のプロトタイプなんて言葉は関係ない。ひとりのゴッドイーターてして強い。その力は無意識に憧れを抱きそうになって、彼に対する感情ご少しわからなくなってきた。

 

っ…ダメ。ここで緩んでしまっては。

 

く、食いつかないと…!

 

 

「教えなさい!今のは何なのですか!」

 

「……は?」

 

 

彼から受け渡された白く光るオラクルを問い詰めた。見たことない不思議な現象はちょっとした恐怖も交えながら、同じ新型なのにそれを知らない自分自身の苛立ちも併せて彼に怒鳴ってしまう。

 

しかし彼に色々と説明されてから私は"新型神機使い"として恥ずかしさが巡る。

 

知らないだらけだった。

 

しかも彼の言うことのほとんど当ては嵌り、無言で肯定し続けた私は完全に打ち砕かれた。

 

そのためこのミッションの始まりから終わりまで何も言い返すことが出来なかった。

 

むしろミッション前の食堂で顔合わせした会話からマウントを取られ続けていた。

 

私ってこんなに恥ずかしい存在だったんでしょうか?

 

 

「インパルスエッジは重量の関係上ロングブレードで使用する方が良い。他の武器だと体重移動が面倒だからな。もし慣れたらショートでもバスターでも好きに使えばいいさ。俺はショートだが慣れたから使っている」

 

「…あの、もう一度見せてくれませんか? 形だけ確認しておきたい、です…」

 

「なら俺と同じ構え方をして」

 

「は、はい」

 

「まずこの持ち手をひねる。その時に銃口だけ大きく展開されるから。あとは放ちたい方向に神機を傾ける。そして腰を低くして、後ろ足をしっかり地面につけてから、最後はトリガーを引くんだ。腕だけで制御を__」

 

 

トリガーを引いた。

 

あまりの衝撃に神機が振り回された。

 

 

「うわああ!お、押さえきれません!」

 

「あっぶねっ!!?腕だけで制御するな!!後ろ足だよ!後ろ足!!」

 

「ご、ごめんなさい!!」

 

「あ、危うく頭がお陀仏だった…」

 

 

 

今日はとことん恥さらし。

 

極東で初ミッションにしてとても忘れられない日となった。

 

あと、彼は強い。

 

それは認めないとならないらしい。

 

 

 

つづく


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