オワタ式な神機使いの生き方   作:てっちゃーんッ

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第17話

 

 

 

余命3年。

 

そんな言葉を聞いたら普通は狂乱するか、泣き崩れるか、唖然とするか、何かしらのリアクションを取るはずだ。

 

しかしそれを聞いても尚、堂々とする。

 

それが彼の利点だろう。

少し心配になるが。

 

 

「やはり高い適合率だからこそ、その余命なんだろう」

 

「逆に高くなければ既に死んでた。そう言うことだな?」

 

「そうだとも。高い適合率は生命力の高さだ。そして回復力もある。変異種のピターに半殺しにされても尚レンカくんは生きた。普通なら死んでいてもおかしくない。しかし勘違いしてはならない。今生きているのは死を遅らせた延長に過ぎない。高い適合率から命を繋ごうと酷使したその代償は大きい」

 

 

そりゃ腹を切られて、背中をブッ刺されて、それでも今生きてるのは適合率の高さから。

 

まだ死ななかったけど、いまから死へ向かおうとしている。

 

無事で良かったとは言い難い状態だ。

 

 

 

「レンカの現状はわかった。しかし俺を呼んだのはただ伝えるだけじゃ無いんだろ?」

 

「もちろんだ。君には協力してほしいことがあるからね」

 

 

 

今、俺はサカキ博士のラボにいる。

 

そして待ち構えていたかのようにサカキ博士と廊下で出会い「レンカ君について話がある」と言われて、俺はラボまで付いてきたのだ。

 

 

 

「キミ個人で集めた研究データがほしい。もしくは調査目録と言うべきかな?」

 

「なんだ、知ってたのか」

 

「キミはリッカ君と良く共同開発を行なっているようだね?キミが個人で抱える調査目録を暴いた訳では無いが、開発してきた数々の産物を見れば一目瞭然だ。これでも私はゴッドイーターやアラガミを研究している者だ。アナグラに既存するデータと比較すればなんとなくわかるものさ。そしてキミはアナグラのデータベースには無いところからアプローチを得て開発に着手している」

 

「調査隊としての強みって奴だ。一回のミッションに対して濃厚な情報量を得れるからな」

 

 

まあ半分嘘で、半分本当だけど。

 

もちろんこの世に足をつけて得た知識もあるし、前世の記憶を頼りにしている。

 

そこら辺を併せて研究開発を行なっている。

 

ピターを葬ったメテオは正にそれだ。

 

ブラッドアーツ無しでホンモノに近づけれた産物なんだよ、アレは。

 

 

「まあサカキ博士の言いたいことはわかった。協力しよう」

 

「……良いのかい?」

 

「レンカを助けるためだ」

 

「……そうか。とても助かるよ」

 

「サカキ博士の言いたいことは分かる。だから先に言っておく」

 

「?」

 

「俺は過去の所業をそこまで引きずってない」

 

「!」

 

「俺と言う存在が土台となり、正しい新型が現れたと言うなら、無駄ではなかったんだとその結果を飲み込むことにしている」

 

 

 

レンカとアリサが現れたから。

 

だから俺は報われた気がした。

 

 

 

「そうか。なら、私はキミのことを存分に頼るとしよう、マロンくん」

 

「狂人を忘れない星の観察者と、極東最狂の規格外が手を組むんだ。これ以上に恐ろしい組み合わせはない。加減の知らない神のイタズラを凌駕するぞ」

 

 

 

そう言って俺は部屋に戻って調査目録を整理して、再びサカキ博士のラボまで向かいデータを手渡す。

 

それは表向き独断で支部に渡してない独自のデータだ。

 

そのデータを見たサカキ博士は大変興奮していたが、レンカのために急ぎたいので宥めて研究を始めた。

 

 

 

「君が持ってきたピターの翼刃。それからキミのオラクルソードでピターから回収したオラクルはリザーブされたまま保存されている。これらのデータを合わせて今よりも強固な制御システムを作り上げて、それを神機に搭載する」

 

「元々神機にも腕輪と同じ抑制力があるのは知ってるが腕輪ほどじゃない筈だ。効果は出るのか?」

 

「可能さ。負担を別に移すんだ。言わばキャパシティーを分配する」

 

「分配?……ああ、なるほど。抑えるのか」

 

「そうとも。そして仮で作った神機がコレだ」

 

 

 

モニターに展開された設計図。

 

俺は少し顔を顰める。

 

 

 

「なるほどなぁ……でも、これを新型と言う度胸か。皮肉だな」

 

「これは最初の段階だ。たが心配はないとも。新型として元の形に戻る筈だよ。彼の努力次第でね」

 

「努力云々は問題ないだろ。何せアイツ、物語の主人公みたいな天才型だから」

 

「それは頼もしい限りだ。今後ともよろしく頼むよ」

 

「… それは俺に言ってるのか?まあこうなった以上は俺がまた教えるけど、再びリンドウ(教育)の役割を奪うことになるな。今度リンドウに飯を奢らせるか」

 

「それならいっそ君が部隊を作ってレンカくんを下に置くのはどうだい?」

 

「あー、それは前に考えた。でもアイツのバトルセンスを考えると調査隊として扱うには勿体なさすぎる。これまで通り第一部隊だよ。レンカがゴッドイーターをするならな」

 

「そうか。ならこれからの取り組みは決まったね。だとしたら早速取り掛かるとしよう。それとも他に何か追加案はあるかい?」

 

「ある。リザーブシステムだ。それをカートリッジの代わりとして使おう」

 

「なるほど。それは名案だ」

 

 

その後はリッカも合流してレンカの神機を新しく開発した。

 

ピターの刃翼を加工して新たなロングブレードを生産して、そこにリザーブシステムを参考にしたカートリッジを搭載する。

 

そしていくつかのパーツを外すことでシステムのキャパシティを空けて、空いた分は神機の抑制力を高める。

 

そうして2日程度で出来上がった。

 

俺とサカキ博士の知恵と、リッカの手慣れた技術力でそう苦労はしなかった。

 

そしてレンカを神機保管庫に呼んで、その神機を握らせて訓練所までやってきた。

 

二人でくるのも少し懐かしいな。

もう一ヶ月は経ちそうだ。

 

 

 

「盾と、銃が、無いのか…」

 

「新型なのに旧型。もしくは盾無しの旧型以下だな」

 

「みたいだな。その代わり随分と軽い」

 

「そりゃ盾無しだからな。回避性能を上げるために軽量化を図った」

 

「…これがカートリッジか」

 

「レンカは神機を握った状態で戦闘行為を行うと体内のオラクル細胞が戦闘本能により活性化してレンカの寿命を追い込む。だからその矛先をカートリッジの中にあるオラクルに向けるんだ。そうすることで寿命の減少を抑えれる。まあそれでもカートリッジだから…」

 

「可能な戦闘回数が設けられる、そう言うことか…」

 

「ああ、そうだ。しかもカートリッジ消費から戦闘可能な時間はそう長くない。たとえば目の前にコンゴウが二頭現れて、7回程度神機を振ってそれで倒せた時が、おおよそのタイムリミットだ」

 

「…」

 

「今のところ最大で三回分。つまり一回のミッションに対してノーリスクの戦闘は三回しか出来ない。そこから先は寿命を食らわせる状態になる。早死にするぞ」

 

 

 

もしレンカが神機を置いてゴッドイーターを引退すれば三年間は生き延びれる。

 

まあそれでも三年程度だが。

 

でもその間にレンカの寿命をなんとかできる手段を得れるなら、またゴッドイーターとして咲き誇ることは可能だろうが、まあ彼は引退を選ばないだろう。

 

引退に関してはイロハを引き合いに出せば少しは迷ってくれそうだが、でもゴッドイーターになるためにアナグラまでやってきた彼の人生。

 

ゴッドイーターでは無い空木レンカは彼の中に存在しないはずだ。

 

 

「あ、まだ神機を振るうなよ。戦わない時は地面に寝かせてる状態だ。オラクル細胞は臨戦状態を感じて活発になる。だから刃は寝かせて落ち着かせるんだ」

 

「こうか?」

 

「ああ、それで良い。そしてカートリッジを消費するためのオラクルリザーブのスイッチが手元にあるはずだ」

 

「これは普通のオラクルなのか?」

 

「ピターのオラクルに似た別のオラクルだ。俺が回収してきたデータから引き出して作ったオラクルだ。まあヴァジュラ種のオラクルで代用できるからヴァジュラ種が絶滅しない限りはカートリッジの量産に問題ない。そのオラクルを神機に統合して肩代わりしてもらう」

 

「………色々と、迷惑をかける」

 

「気にするな。リッカ!ダミー出してくれ!」

 

 

 

そう言ってリッカは「ほいほーい」とダミーを出す。

 

ヴァジュラの形をしたアラガミ。

 

ほんの少し柔らかいダミーだ。

 

 

 

「オラクルリザーブのスイッチを押せば神機に搭載された小型モニターに戦闘可能な行動数値が出てくる。移動と攻撃に対して消費する。最初は意識して振るってみろ。それで消費量を把握して最終的に感覚だけでやるんだ」

 

「意識しないと難しそうだな」

 

「複雑に考えすぎるな。なんなら車の運転と同じだよ。おおよそこのくらいのスピード出ているだろうの感覚で法定速度を守れば良い。レンカの場合は使用量を把握するんだ」

 

 

まるで携帯の受信料金とのご相談だ。

 

今はまだ回線の悪いオラクルリザーブ。

 

しかし少しずつ改善すれば多くの通信が可能になる。そんなメカニズム。

 

 

「!!…この神機、良く斬れるな……」

 

「嫌な思い出か?」

 

「まあ、そうだな。だから頼もしいくらいか」

 

「前向きなのはレンカの強みだな。いま残量はどのくらいか?」

 

「2度振るって残量が67%…」

 

「ピターの刃翼はよく切れる。力いっぱい握らずに振るえば消費量は抑えれる筈だ。しっかり体に落とし込むぞ」

 

「ああ、もちろんだ」

 

 

 

盾も無し、銃も無し。

 

旧型のように剣だけで戦う新型神機使い。

 

身を守れない姿。

 

それが……俺と重なる。

 

まあだからこそ、教えれることが多い。

 

俺にしかできないことだ。

 

 

 

「レンカは神機に慣れる。それして神機がレンカに慣れてくる。そうして余裕で出来れば枠が空いてくる。キャパシティーが増えるんだ。そうなれば盾も銃も搭載出来る。新型神機として正しい形に戻るまでは大変だろうがゴッドイーターであることには変わりない。頑張れよ」

 

 

 

俺は 銃 だけでしかアラガミを殺せず、レンカは 剣 だけでしかアラガミを殺せない。

 

今はそうなってしまった縛りプレイ。

 

でもいつかは克服できる筈。

それを未来に託そう。

 

 

「…」

 

 

三年だ。

 

三年あれば、なんとかなる。

 

俺が未来に託すのはGE2に出てきたオラクル。

 

それはレトロオラクル細胞

 

オラクルを永久に複製する優れもの。

 

それをレンカに使えるなら寿命の代わりにレトロオラクル細胞が彼を生かしてくれる筈だ。

 

そこに可能性を賭ける。

 

 

 

「皮肉だな…」

 

 

 

この世界で神頼みなんて、救えない。

 

でも、三年だ。

 

今はそこに可能性を賭ける。

 

他に何か有ればそれでも構わない。

 

でも、この先どうなるかわからない。

 

だから生きようが、死のうが、終着点は三年後。

 

それまでの軌跡がここから始まる。

 

そう、彼の縛りプレイが始まるんだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ、そんなこんなで5日経過。

 

レンカはミッションの出撃数が大幅に減った。

 

てか、俺が止めるように言った。

 

リンドウとも相談した結果だ。

 

それから…リンドウに頭を下げられた。

 

 

_俺にはできないことをマロンがしてくれる。

_部隊長として、すごく感謝しているんだ。

_アイツを気にかけてくれて、ありがとうな。

 

 

原作キャラからこんなにも感謝されるようになってなんだか感情深い気持ちになるが、俺は純粋にレンカを気に入ってる。

 

助けたいと思っての行動だ。

 

見返りが欲しいわけじゃない。

 

前も言ったように俺に出来ないことはレンカが出来る筈だから、そこに期待を寄せたいだけ。

 

だから彼を救う。

 

 

 

まあ、期待を寄せるのは実のところレンカだけではない。

 

それは…

 

 

 

「マロンさん、何ボーッとしているんですか! 進行するアラガミがもうすぐポイントまで現れますよ!」

 

「気合い入ってんなアリサ。てかわかるのか?アラガミの位置」

 

「まだ大雑把にですが意識すればわかります」

 

「もうユーバーセンスを使いこなしてるのか、天才かよ」

 

「天才さどうかはわかりませんが、この(スキル)と相性が良かったのか、よく分かるんですよ」

 

 

 

彼女が扱う盾は原作ゲーム通りの力を引き出している。

 

なら何故今までユーバーセンスの力が発揮されてなかったのか?

 

単純な話。

 

アリサは戦闘技術が高い。

 

変形を良く使いこなしている。

 

本人はまず『器用』なんだ。

 

けど神機に対する理解力が低かった。

 

元々リンクバーストの存在も知らない… と言うより忘れていたくらいだ。それからインパルスエッジの技術を知らなかったりと、ただ神機に備わった殺傷力と射撃性能だけ把握してアラガミを屠る。

 

そんなプレイングでこれまでゴリ押してきたので神機に備わった力に対して意識がなかった。

 

なので俺が意識させるようにした。

 

 

 

「インパルスエッジの威力は一律にしておけ。多数に変則つけすぎると変に体を痛めるぞ」

 

「わかりました。絶対に覚えてみせますから」

 

「まあ君は天才だからすぐにモノもにすると思うけどな」

 

「でも知らないことが多いです。だからいろいろな戦いを教えてください」

 

「構わないが俺は一応調査隊だぞ?基本的に戦闘はNGなんだよ」

 

「しかし知識力はアナグラで一番です。なので私はあなた以外の新型神機使いから学ぼうとは思いません」

 

「お役目盗られた部隊長(リンドウ)が泣くな、こりゃ」

 

 

まあリンドウからは「先輩として色々教えてやってくれ」と言われてるので、そうしている。

 

そんでもって俺がプロトタイプではない正しい新型神機使いとして成功していたら絶対に第一部隊に入れたかった。そう言っていた。

 

 

 

「俺もリンドウと肩を並べたかったよ…」

 

 

 

俺たち二人なら最強だった筈だ。

 

そこにソーマもサクヤを添えれば無敵だ。

 

そうなってたと思う。

 

だからレンカに俺の願いを託す。

 

そしてアリサにも期待を寄せるんだ。

 

 

 

「ミッション完了です、お疲れ様でした」

 

「ああ、お疲れ様」

 

「コア回収しておくのでマロンさんは休んでいてください」

 

「わかった、ありがとう」

 

 

 

数メートルほど歩く。

 

この世界でも夕日は綺麗だ。

 

そしてとある方角を眺める。

 

今俺たちがいる『愚者の空母』から眺めることができる一つのドーム。

 

 

 

「一年前に比べて、随分と力を蓄えている…」

 

 

 

特異点(シオ)がいなければどうしようもないが、その個体に着々と溜まっていくエネルギーはゴッドイーターになった当時よりも更に濃ゆく感じられる。

 

 

 

「…」

 

 

 

この世界は原作ゲーム進行ではない。

 

だから何が起こるのかわからない。

 

それこそシオが現れるかもわからない。

 

でも、もし。

 

結末が同じ方へ進むなら、俺もその時は考えないとならない。

 

でも最終的な役割は俺じゃない正しい者がそうしてくれる筈。

 

だから、託す。

 

残酷な世界だから、人間は神に祈らない。

 

それがゴッドイーターなんだから。

 

 

 

ではまた


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