結論から。
オペレーション・メテオライトは無事に作戦完了とした。
ヘリコプターから銃型の神機使いがバレットのメテオを放つと作戦開始の合図。
メテオによって装置に集まったアラガミをスダボロに転がされる。その隙に接近型の神機使い達が神機に薬を投与してプレデターモードが肥大化させるとその大口で一気にアラガミを食い荒らす。こんな感じにコアの回収は捗った。
しかし途中アラガミの装置が暴走してアラガミの数が一気に増えたりとトラブルが発生。
それでも神機使い達は力を合わせて凌いだ。
作戦は成功だ。
もちろん気にしていたダム湖に被害はない。
安心した。まあバッテリーは引き抜かれて作動はしなかったからな。それもそうか。
ちなみにアラガミを引き寄せる装置が暴走したのはオオグルマダイゴの仕業らしい。
作戦終了後にヨハネスが演説でそう言ってた。
そんでもってオオグルマは消えた。
何のためにいたんだろう、アイツ…
まあリンドウの排除には繋がらなかったし、アリサも洗脳解除された状態だし、お役目ごめんってやつだろう。なんというか哀れ。まあここは原作通りなんだろうけど。
ちなみにリンドウはまだ生きている。
ピターに襲われて永遠のデートを楽しむ流れは無くなったせいだろう。
そのかわり特務やらなんやら誤魔化しながら極東から良く姿を消す様になってしまった。
極東の闇と戦っているのか、または純粋に特務で忙しいのか、それはわからない。
ただし、リンドウから…
『ダム湖の件は助かった。しかしそれは俺が表向きとして見つけて装置を解除しておいたことにしておく。そんでマロンは大人しくしておけ。じゃないと集落はお前以外任せられないからな』
この意味は、そういうことだろうか。
俺は察したが、でも『わかった』と一言だけ。
リンドウも俺が理解した事はわかっているだろうが、表面上は頷いてくれた。
それでも心配だったのか、リンドウはついでにこんなことも俺に言った。
『俺はあまりレンカやアリサに指導はしてやれずマロンに任せっぱなしだな。まあだからこそ任せれると言うか。別に今の役柄や部隊を移動しろとは言わない。だがこれからも二人のことはマロンに頼みたいんだ。てかお前にしか頼めない。頼めるか?』
くそぉぉ……リンドウ、そんな風に言われたら断れないだろうが馬鹿野郎。
そんなわけで俺は頷いた。
そうすることでレンカやアリサを育て、俺は極東の闇から遠下がり、リンドウはまた戦う。
そんな形に落ち着いた。
サクヤとソーマ、コウタもよく知らない。
ただ単にリンドウは忙しく動き回る。
そんな認識で、俺だけは知る。
でもまだ、その時ではない。
この世界は原作からかけ離れた展開だが、もしそれでもゴッドイーターって舞台の結末が同じなら、どこかで行先は結び合うはず。
人の形をした
その場に俺が居るのか。
もしくは居ないか、
その結末は、まだ知らない。
何せ、俺はオワタ式だから。
何かの拍子で死ぬのかもしれない。
だからこの先は何が起きてもわからないのだ。
だから、ゴッドイーターをつづける。
「レンカ、神機の調子どうだ?」
「悪くないが、盾ってこんなに軽かったか?」
「そりゃバックラーの種類は軽いに決まってるだろ。とりあえずジャストガードの技術を叩き込むから頑張ってついてこいよ」
「ジャストガード…また妙なシステムを作ったな…」
「妙なモノとは失礼な。ただ盾を展開するときにオラクルをカチンと発火させることで一瞬だけタワーシールド並みの防護壁を展開するだけだ。別に妙ではない。普通のジャストガードシステムだよ」
「マロンの普通は俺たちにとってハードルが高い…」
「そうか? 少なからず主人公補正を持つレンカは問題なく覚えそうだが」
「意味が分からん…」
少し呆れながらもレンカは盾を展開してバックラーを馴染ませる。盾を展開する時もカートリッジを消費するからあまり多様できないが、最近は調整に慣れてきたのか少ないオラクルの消費量で戦えるようになってきた。やはりセンスあるよな。これが主人公補正か。羨ましい。
「マロンさん、残りのアラガミの討伐完了しました!」
「お疲れ、アリサ」
「はい!」
そんでもってマジで元気になったアリサ。
もうトラウマに追われていた頃の彼女は居ない。
そしてなにかと俺を慕ってくれる。
もう教えることないんだけどなぁ…
あと教えたとしても連携能力くらいか。
てか俺はソロ専の調査隊なんだから当てにしすぎても困るぞ。
「アリサも強くなったな」
「そんなことないですよ!もっとうまく立ち回れないとなりません。それで!それで!マロンさん?次は何を教えてくれますか?」
「あー、一応これでもう全部教えた様な感じなんだけど」
「まさか!そんなことないです!で、でしたら普通の神機使いにはできないマロンさんの規格での技術を教えてください!それならもっと色々ありますよね?」
「まあ、そうだなぁ…」
「あるんですね!」
うーーん、この。
どうしてこうなったのか知らないが、なんかアリサがアホの子みたいになっていた。
原因は俺もよくわかってない。
気づいたら「次はどんな技術を!?」とか「次は何を見せてくれるんですか!」みたいにズイズイくる子になっていた。
この明るさっぷりは彼女が救われた証拠なんだけど、なんか想像してたのと違う。
けれど彼女の向上心は眼を見張るものがある。
主に戦闘面の吸収力が高い。そう考えるとやはりこの子普通に優秀な神機使いだわ。
「さて、レンカのカートリッジも全部消費したから帰るぞ」
「世話をかけるな、マロン」
「適材適所って奴だ。まあ俺もいつまでも付き添う訳じゃない。いつかまた長期的な遠征に向かう羽目になる、らその時はアリサやコウタにも手を貸してもらいながらゴッドイーターしていけ」
「でもレンカさん、オペレーターのお仕事もありますからね。神機を握るだけの仕事では無くなりました。これから大変ですよ」
「構わないさ。アリサの様に出来ることは全てやると決めたんだ。そうでなければ……」
「そうでなければ…?」
「………」
アリサの問いかけに少し黙るレンカ。
ほんのちょっと、困った様に目線を動かした。
「まあ、
「………アナグラに帰るぞ」
「あ、レンカさん!」
まあそりゃ、いきなり血縁の事実なんて言われたらレンカもどうしたらいいのかわからなくなるよな。なんならイロハも血縁の事実を言い終えるとそのままレンカに対する思いも告げてしまい、勢いで言ってしまったことに顔真っ赤にして建物の奥の方に逃げちゃったし、頭の容量が良いはずのレンカも流石に頭から湯気が出てキャパオーバーを起こしていた。
しかしこんな世界でもちゃんと青春出来るらしい。集落の人たちの目がすごく優しかった。
とりあえずレンカに「俺はどうするべきなんだ?」とマジで困り果てていたので…
『レンカがベテランの部屋を貰って、特務をこなせる位になったら、イロハを向かいに行ってやれ。そしたら階級権限で居住区入りを認められて一緒に住めようになるから』
そう教えてやった。
そして「わかった」と目の色が変わった。
決めるときは何かと早いよな、この子。
さてはオメー主人公だな??
まあ、その前に手段を探す。
レンカを生かすための手段は考え続ける。
そんでもって三年後に現れてくれるだろうレトロオラクル細胞の可能性に賭ける。
これが彼のゴッドイーター人生だろう。
「レンカさん。次はどこへ目指します?」
「そろそろコンゴウを相手に一人で戦える様にはなりたいかな」
「でも無理しないでくださいね?」
「大丈夫だ。そう簡単に死んでたまるか」
アリサとレンカ。
同じ新型神機使い。
俺は少し訳ありな新型神機使い……の、ために踏み台となった新型神機使いもどき。
この先の時代はこの2人から始まる。
でも、まだ、もう少し先の話だろう。
だからそれまではこのペラペラな後ろ姿で二人を率いて、時が来たら本当に踏み台として二人にはこの世界の終末に立ち向かってもらう。
それが俺の出来ること。
オワタ式でも、先輩ゴッドイーターとして新人2人を導ける筈なら、俺はこの神機だらうと握りしめる、それだけなんだから。
♢
〜 夜と自室 〜
「ねぇ、マロン」
甘えるように背中に乗っかる彼女。
無気力気味に布団へ倒れる俺に声をかける。
「どうした、リッカ?」
「子供が欲しいな」
「ぶっっ」
「もっとココに宿して良いんだよ?」
無気力状態な俺でもこれには反応を示さざる得ない内容だった。
「まだ改修が足りない。満たされてないよ」
「それは性欲的な意味だろ。女の子が何を言ってんだ…」
「もっと一億年から二週間前まで愛してよ」
「この甘えん坊め…」
「だってお父さんの前では立派な姿見せないといけなかったし… 今まで甘えれなかったのをマロンにぶつけるだけ」
どうやらこの甘え具合はそう言う事らしい。
まあそれも仕方ない。
締めすぎたボルトは壊れてしまい、制御を忘れて弾けたようだ。
「…はむっ」
「痛い」
「んー、マロンの甘い味がする」
「冷やしカレー好きの辛党が何を言ってんだよ」
どうやらリッカも、俺と似てるようだ。
俺はミッションが終わると頭のスイッチが切り替わり、全身無気力状態に陥り、体が全力で休むようになっている。
そしてリッカも同じ。一歩間違えれば暴走するだろう兵器の整備に毎秒緊張を味わっている。そして気を緩めぬよう終わりまで集中している。そりゃ疲れてしまう。
そのため険しい時間から解放されれば彼女もこんな感じにヘロヘロなリッカに早変わり。
そして俺にだけしかできない甘えん坊モードに突入してしまう。まあそれがとんでもなく可愛い。リッカたんマジ天使。
「マロン可愛い」
「おまかわ」
「愛してる」
「知ってる」
「ありがとう」
「こちらこそ」
「好き」
「そうだな」
俺はうつ伏せから体を仰向けに起す。お腹の上には彼女がこちらを見ている。互いの心臓の鼓動が聞こえる距離。それから体温。彼女はこの体制に満足気な表情をしながら胸元に頭を置いてより密着して甘え出す。
俺は可憐そこ背中を撫でながら、もう片方の手で頭を撫でて、今日もオワタ式に負けず無事に帰ってきたことを教えるように。
「子供は…そのうちな」
「ほんとう…?」
「……リッカは、本気なのか?」
「うん、本気。マロンの子を産んであげる」
目を細める彼女の表情はどこか蠱惑的で既に母性を知っているような気がする。
その眼の奥は既に未来の子を宿している気がして少し恐ろしくも感じるが、でもそれだけ本気になる彼女に俺は引き込まれる。
やはり彼女なんだ、おれは。
オワタ式に絶望した心と、忘れてしまった機能を、元の型に取り戻してくれた。
死の恐怖をちゃんと意識して、生きるために戦えるゴッドイーターとして、俺はやっとそうなれたんだ。
「(生きることから逃げるな…か)」
そんなセリフがあった筈。
たしかにそうかもしれない。
俺は生きることから逃げてたと思う。
でも今は違う。
生きるために逃げる。
それがオワタ式としての正しい歩み。
セーブもリセットも無い、一度限りの命。
なら、その一度限りを彼女のために。
「マロン」
「?」
「明日も、頑張って、生きて」
「……ああ、任せろ」
この世の神では編み出せない、人間の営み。
彼女の言葉に Yes と口付けを送った。
♢
〜 極東の屋上 〜
「やぁ、早いお目覚めだね」
「エリックか、お前も早いな」
「たまたまさ。 いつもならまだ寝てる予定だが今日は妹と久々に会う予定だからね。君もご一緒するかい?」
「いや、今日は2時間後に遠征だ。それまで1時間くらいストレッチしてから行くつもりだよ」
「念入りだね」
「死にたくないからな。足くじいてアボンなんて華麗じゃないから」
「そうかい」
ヘリコプターはまだ飛ばない時間だから静かな朝日だけが俺たちを照らしている。
するとこの屋上にまた一人やってきた。
「ソーマじゃん、早いな」
「……なんだ、お前らか」
「黄昏ソーマとかレアじゃん。 早起きしてよかった」
「ちっ、早朝から口の減らない奴だ…」
「やぁソーマ。おはよう。君もこの朝日に引き寄せられたのかい?」
「……」
「違うなエリック。俺たちはなんとなく来ただけだろ。それが今日あり得ない確率で集われただけだ。もしや今日の運は使い果たしたか?」
「ふんっ、だとしたらどこかでくたばるかもな」
「なーに言ってんだソーマ。俺の自室でまだ寝転がってる大天使リッカから運を補充すれば無問題だから」
「今だけ寝顔が可愛い堕天使だろうけどね」
「眠りに堕ちてる天使の意味で堕天使か。堕天使リッカ……うん、アリやな」
「早朝から何故惚気なんか聞かされているんだ、俺は」
「そこは僕も同感かなソーマ」
まさかのソーマ側に回ってしまったエリックに内心驚きながらも冷やされていたあったかいカレードリンクを喉に流し込む。
それから数分は無言の時間。
その間に軽く今後の方針を立てる俺は不意に話題を投げた。
「今日お前ら仕事?」
「僕は午前中だね仕事さ。討伐目標がシユウだから足をパパッと破壊して華麗におしまい。午後は妹のエリナと夜ご飯を楽しんでくるさ」
「ふーん。 ソーマは?」
「…いつも通りだ。 アラガミをぶっ殺す」
「答えになってないけど、とりあえず
「…」
「??」
エリックは特務を知らない。
何か大変なことをやってるのは本人も雰囲気で理解してるがそれが、特務と言う用語の中でミッションを行なっている事は知らない。
俺からしてエリックの実力は確かだけど、リンドウクラスにならないと特務は受けることができない。
ちなみに俺は調査隊として特務となるミッションの下調べに向かわされているため、特務に駆り出されるゴッドイーターを全員知ってる。
まぁ指で数えるほどしかいないけどね。
「まぁ、無理はしないようにね、ソーマ」
「心配なら自分の心配をしておけ、エリック」
やはりエリックに対してはどこかデレがあるよなこの自称死神は。俺に対してはあまりデレはないのになんだよこの扱い。 根っから嫌われてる訳じゃないのはわかっているけど、もう少し仲良くなりたいな。
まあ、いずれデレてくれるだろう。
頑張れ、レンカ!
イロハ攻略ルートと同時にソーマも攻略してくれよなー、たのむよー
「さーて、俺はミッション開始までストレッチしてくる」
「相変わらず念入りにだね」
「ああ、死にたくないからな」
「……本当、君は変わったね。マロン」
「んあ?」
「昔なら『死なないように』って言葉を程度だったが今の君は『死にたくない』ってハッキリしている。友人として心の奥底から安心してるよ」
「え?あ、うん。なんか心配させて悪い…な?」
「なぜそこで疑問形だ、お前と言う奴は」
「いや、ちょっとわかんねーよ、ソーマ」
「ふっ…ふははは!」
エリックは高笑いする。すると手をバッと広げると右腕は俺の肩に、左腕はソーマの肩に、それぞれの肩にエリックは腕を乗せて三人の距離をグッと縮める。
唐突な行為に俺は驚くが、その好意と行為を理解して俺からからもエリックの腕を掴んで固定してケラケラと笑う。
ソーマはフード越しから驚きを示して鬱陶しさを視線に表す。でも本気で嫌がってはいないみたいで、舌打ちひとつだけで抵抗した。エリックはその細やかな抵抗に笑い飛ばしながら腕の力を強めて、俺たち三人の泥臭そうな友情が朝日と共に照らされていた。
…
…
俺たちはゴッドイーターで、アラガミと言う理不尽と戦う兵器だ。
故に、バケモノと言える存在。
でも人である事は変わりなく、この体にちゃんと心もある。
だから幾度無く感情に振り回されながらも毎日を人間として大地を踏みしめていた。
そしてなぜ俺はこんな世界に降り立ったのか未だにわかってない。神のいたずらにしては命安いレベルで笑えない。
理不尽極まりない転生物語だけど、ゴッドイーターになった以上は神を喰らう存在として俺は続ける。
例え、神機が異常な代物だとしても。
それを握りしめて今日も戦う。
そして、自分がヒトである事を忘れないために心で生きる。
それが__オワタ式な神機使いの生き方。
これが台場マロンと言う人物なんだから。
お わ り
色々とデータが破損、または消失してたのでボリュームが落ちてますが、これで投稿できる物は全てでございます。
今と比べて3年前クォリティーですが、こんな作品も書いてた頃があったんだなと、懐かしく思いながら少しだけ手直ししつつ、これにて19話分は工事完了です。
ちなみに続編は書く予定ありません。
なんとなくアニメ進行で綴っただけの作品なので。
次の小説に取り掛かりたいと思います。
一ヶ月程度の更新。
お付き合い、ありがとうございました。
ではまた!