オワタ式な神機使いの生き方   作:てっちゃーんッ

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第9話

 

 

__私、待ってる。

__いつまでも待ってる。

__だからゴッドイーターになったら…

__ちゃんと迎えに来て…

 

__ああ。

__絶対に…絶対に会いにいく。

__ゴッドイーターとして胸を張れるように…

__そして、強くなったら、必ず……

 

 

 

 

 

 

 

とある姉弟の約束。

 

姉は弟を抱きしめて、色葉を残す。

 

弟は姉に守るために、蓮華を揺らす。

 

そして遠くに見える防護壁の扉に弟は進む。

 

姉は離れて行く弟の背中を眺めていた。

 

いずれ、互いに会える日を待ち望んで…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ここは"ダム湖"の近くにある集落。

 

アラガミ化した森を潜り抜ける。

 

辿り着いた場所は…集落。

 

山の中にある学校だった場所。

 

そしてそこには 人間 が住んでいる。

 

 

 

「ここは一年前に見つけた場所でな、人が住んでいたんだ…誰かの手によってな」

 

「え?」

 

「その人を…いや、そのゴッドイーターを知った時は心底驚いたさ」

 

「ゴッドイーターが、作った集落?」

 

「厳密にはここに住んでた者達と出会い、そして生活を支援していると言った方が言葉として正しいかな?それで俺は調査兵なのでこの場所があることをフェンリルに知らせる必要があるのだが…」

 

「ひ、必要があるのだが…??」

 

「知らんぷりする事にした。ここはマッピングに残さず俺の内に納めた。それで好奇心で接触する事にした。最初は警戒はされたけどこの集落に手を差し伸べているゴッドイーターの知人だと知ればそれなりに友好的に向かい入れてくれたよ。もちろん黙秘込みでね?それから色々あって俺もこの集落を支援している」

 

 

一時間ほど前にレンカと別れたイロハ。

 

俺は彼女を連れてこの場所を案内する。

 

この集落を説明しながら足を進めると…

 

 

 

「お? なんだ、帰ってたのか」

 

 

「んあ? おお、マロンじゃねーか、随分と久しぶりだな」

 

 

プランターで育てた果実を試食してる俺以外のゴッドイーター。

 

またの名は__雨宮リンドウ。

 

彼は片手に持つ果実を頬張りながらこちらに反応する。そして酸っぱそうな顔をする。

 

どうやら疲れによく効いたらしい。

 

 

 

「うぉぉ、すっぺぇぇ…」

 

「俺もちょうだい」

 

 

 

齧られた果実を投げ渡される。

 

俺も一口。

 

 

 

「普通にうまいぞ?」

 

「お前マジか?おじさんの俺には無理だな」

 

「まだ全然若いだろ何言ってんだ」

 

「いやー、世代交代も早いなこれは」

 

「何言ってんだよ、リンドウ」

 

「半分は冗談だよ、マロン」

 

「いや、冗談込みじゃねーか、オイ」

 

「お、たしかにそうだな」

 

 

 

俺とリンドウのやり取りを見た集落に住まう人達は笑う。

 

のどかな場所である証拠だ。

 

 

「しかし南のほうから出張帰りだと言うのにすぐさま様子見に来るとはリンドウもよく頑張るなぁ」

 

「まぁ、お前が代わってくれたからそれほど心配はしてなかったがな…… っと? マロンの後ろにいる女性は?」

 

 

 

リンドウは俺の一歩後ろにいる新顔に反応を示す。

 

 

 

「とある少年のヒロイン的存在だ」

 

「ぅぇ!?」

 

「おお、そりゃまた重要人物だな」

 

 

良いお口直しとばかりにイロハを茶化したリンドウは試食後の一服のためタバコをふかし始める。

 

そして先程の『ヒロイン』の言葉に顔を赤くしているイロハは動揺を誤魔化そうとたどたどしく挨拶をする。

 

軽く俺が説明すればリンドウは慣れたように把握してイロハを招いた。

 

その時「そういやどこかであったか?」と聞いていた。

 

おいおい。

 

あんたにはサクヤさんがいるだろ。

 

マジトーンで「殺すわよ、リンドウ」とぶち抜かれるぞ。

 

 

 

「あの、台場さん」

 

「?」

 

「ありがとうございます」

 

「なーに、気にするな。とりあえずここで生活の仕方を覚えながらちゃんと足の怪我治しておけ。レンカに会うまでにな」

 

「!」

 

「あいつがいつまで掛かるかわからない訓練生を卒業すれば一人前のゴッドイーターとしてフェンリルの外に出ることが出来る。そうした時にいずれ出会える筈だ」

 

「レンカ……うん、そうだよね…レンカ…」

 

 

 

ああ、これはもう恋する乙女と変わりないな。

 

まだ姉として心配してる。

 

しかしその瞳の奥は紛れもなく…

 

 

 

「じゃ、俺は帰るから。あとリンドウ、俺は配給のビール飲まないから後で届ける」

 

「気がきく後輩を持ってて俺は幸せ者だと思うよ」

 

 

 

リンドウはタバコと配給ビール。

 

彼の生きがいはこの二つがあってこそらしい。

 

 

ちなみに俺は冷やされていたカレードリンク(温められたカレードリンク)と姉さんの手作り焼き菓子が好きだぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、空木レンカの空木イロハルートの攻略が開始されたあの日から数日が経過した。

 

俺は溜まりに溜まった有給を使おうと考えて部屋の中でボーっとしていた。

 

ひたすらボーっとしていた。

 

ちなみに俺の部屋はエリートクラスの部屋である。

 

つまり、俺は極東支部からはエリートとして認められている事になる。

 

でも総合的な評価になるとリンドウ以下。

 

もしくはソーマとは同じくらい。

 

理由としてはここ極東支部は激戦区で有名であり戦闘に特化した者が特に評価されやすい。

 

これはソーマが評価されている。

 

もちろんリンドウもだ。

 

ほかにも統率力の高さも評価されやすく、いかに戦力を保持していられるかも重要。

 

これもリンドウが当てはまる。あと第一班のサクヤ、他は防衛班を束ねるタツミもそうだ。

 

その点、俺は双方に当てはまる活躍は無い。

 

だが調査隊としての働きは極東支部のゴッドイーター達を支えることになっている。

 

調査から与えられた情報を頼りに戦うゴッドイーター達の生存率にも関わるからだ。

 

そして俺から得る情報は95%も信頼に値すると言われている。

 

なので調査隊としてここまでの成果を上げているゴッドイーターは俺一人らしい。

 

 

ちなみに何度か軽く説明してるが『調査兵』と『偵察兵』は似てるようで実は異なる。

 

例えば『調査兵』戦いの場となる地形の『安全性』を確認するための兵。

 

それを半年周期で地形などが変化してないかをこの目で確認をする役目だ。

 

ヘリコプターだけでは調査も行えない。

 

そもそも空飛ぶ鉄の塊がブンブン飛び回っているとザイゴートやシユウに見つかり、一番最悪なのはサリエルだ。そうなると永久に追いかけてくるレーザービームと地獄の鬼ごっこが始まってしまう。

 

そのためアラガミに対抗できるゴッドイーター自らがその足と目で調査することになっているのだ。

 

あと生息しているアラガミの数や行動範囲なども調べなければならない。情報は本当に大事なので。信憑性が薄かろうと情報の一つか二つ抱えていればそれだけで生存率は変わる。かなり重要な役割だ。

 

 

そして『偵察兵』は討伐するべきアラガミを監視または観察を行う役割。

 

アラガミの位置や数、または現状の変化を強襲部隊が到着するまで随時報告して追跡する役割だ。もちろん見つかってはならない。

 

時には偵察兵がアラガミを誘導して、戦闘区域まで誘い込み、リンドウ率いる第一部隊のような強襲兵に引き継いでアラガミを討伐してもらう、やや地味な役割だが、確実にアラガミを倒すためにも必要なパイプ役だ。

 

 

まとめると。

 

調査兵がフィールドワークを行い、偵察兵が標的の行動を報告して、殺る気マンマンの強襲兵がアラガミを屠る。

 

こんな流れだ。

 

そして仕事の頻度だが調査隊は一回の仕事がとてつもなく長い。やることがフィールドワークだから時間が長く求められるのは当然。

 

その代わり仕事が無ければ休みも長い状態だ。

 

なので俺はイロハを案内した集落のようなところを気にかけてあげれる感じ。

 

もし仕事が始まればアナグラからは長い時間お別れだ。結構大変です。

 

まあ、その苦労もあり偵察兵と調査兵の中で一番評価されてるのは俺だ。

 

だからベテランの部屋が貰えた。

 

それだけの話。

 

 

 

「うぁぁ……だっっる」

 

 

そして厄介なことに、何もしないオフ中だと脳みそが「やったー!休みだー!」と理解すれば全力で体を休めようと力が無くなってしまう。

 

気力も抜け落ちる。

脳の回転も遅くなる。

何も考えなくなる。

 

ひたすら睡眠欲が襲いかかる。

 

これに関してはゴッドイーターになり、オワタ式のプレッシャーの中で生活したから。

 

まあこの状態はオフ中のみだから別に不便では無いが、ダラけすぎな自分が些か情けないと言うか。

 

まぁ、いいか。

 

そういや今の時間は……あ、もう夜か。

どれだけボーっとしてたんだ?

 

あぁぁ、だっっ、る…

 

 

 

コンコン

 

 

 

「?…どうぞー」

 

 

 

姉さんかな?

軽いノックからすると女性な感じもする。

 

 

 

「やっほ、マロン。 こんばんは」

 

「こんばんは、リッカ」

 

 

軽く上着を羽織った寝間着の姿でやってきた整備士のリッカ。

 

今日は冷やしカレードリンクは持ってきてないようだ。

 

 

 

「ええとね、自販機が壊れてた…」

 

「別の階層なら売ってるだろ?」

 

「やだよ。 上着を羽織ってるとはいえ寝間着の姿であまりウロウロしたくない」

 

「そうか」

 

「それにこの姿はマロンくんだけに見せていたいから…ね?」

 

 

 

何この子?

 

めちゃくちゃ可愛い過ぎだろ。

 

知ってたけど。

 

あとリッカの寝間着はパジャマだ。

 

スパナとナットの絵柄がペイントされてるクリーム色の可愛らしいパジャマ。

 

そしてどこかしら幼さを残しながらも、整備士として健康的に鍛えられた足腰のくびれ、あと着痩せしてるのかパジャマ越しからそこそこ膨よかな二つの山。

 

風呂上がりなこともあって普段よりも色っぽさを引き出されている。

 

仕事から終えてからはしおらしく立ち振る舞う彼女はとても魅力的だ。

 

俺はこの人と()()で居られることがどれほど幸福だろうか?

 

生きていて良かったって思うわけ??

うれしぃ……うれしぃ……

 

 

 

「オフ中のマロンくんはいつも通りだね」

 

「あー、うん、まぁな。とりあえず何もない限りうつ伏せの状態から動けない」

 

「ふふ、そのままマッサージでもしようか?」

 

「嬉しいけど、仕事で疲れてるでしょ?」

 

「整備すると思えばなんともないよ」

 

「俺はこれから整備されるのか…」

 

「念入りにメンテしてあげるよ、マ、ロ、ン」

 

 

 

そして彼女は「よいしょ…」と小さな声で腰の上に乗ると、背中に手を押し付けてググッと力を込める。

 

しばらく圧をかけると、肩甲骨から首筋まで親指でググッと押しながらほぐす位置を動かす。

 

それを何度か繰り返したあと、首のツボを摘むように伸ばし、頭皮を指で叩いたりと本格的なほぐしを行ってくれる。

 

 

「んー、それほど凝ってないね」

 

「ストレッチは欠かしてないからな。筋肉はあまり張り詰めないんだよ」

 

「流石、極東支部最強の神機使いだね」

 

「残念ながら極東支部では皮肉なんだけどな…」

 

「例えそうだとしても私はマロンの活躍を知ってるから無問題だよね?」

 

「せやなー」

 

「マロンくんは、凄いよ」

 

「ほんまになー」

 

「いいこ、いいこ」

 

「それなー」

 

 

あまりにも心地よいマッサージに俺のIQはなんでも肯定してくれるフレンズ化に染まってしまう。

 

そんなリッカはこのユルユル感を寧ろ楽しむくらいであり、クスクス笑ってはたまにこちらの波長に合わせてノッてくれる。

 

控えめに言って天使。

 

 

 

「ふー、疲れたぁ」

 

「ありがとう、気持ちよかった」

 

「ふふ、それは何よりだよ」

 

 

 

すると手を伸ばしたままグデェーと彼女は倒れこんで、俺は彼女の下敷きになる。

 

背中に柔らかいものがあたる。

 

そして彼女は後ろからぎゅっと抱きしめてからこちらの首筋に顔を埋めて「ん〜」と満足そうな声。

 

風呂上がりのいい香りに包まれながら身を任せていると、不意に肩首に柔らかな感触が襲う。

 

ちゅるちゅる、と啜る音も聞こえる。

それを甘噛みの感触だと知る。

 

 

 

「んちゅ〜……ん、マロンの味がする」

 

「栗の味か? 甘くないだろうに」

 

「ん……ダンボールみたいな味がする」

 

「なんだよそれ」

 

 

 

くすぐったい。

 

へんな気分になる。

 

さっきまで無気力に転がってたのに男としての性が稼働し始める。

 

 

 

「マロン…」

 

「?」

 

「いつも無事に帰ってきてくれてありがとう」

 

「…俺からそう約束したんだ。 当たり前さ」

 

「その約束を何度も守ってくれるあなたのことが私は大好きだよ」

 

 

 

俺は敷布団にうつ伏せで今の彼女の顔が見られない。

 

でも彼女の事を良く知る俺なら、今どんな表情をしているのか、どれだけ愛情を表してくれているのか、それが理解できるから頬が緩みそうでいまこうしてうつ伏せの状態に助かっている。

 

でもこの状態のままは好ましくない。

 

あと寂しい。

 

俺は体を横にしてリッカと共に寝転がる。

 

ほんの数センチから眺めた彼女の顔は、可愛らしくて、頼もしくて、可愛いらしい。それから心身共に彼女を求めたくなる。

 

このような関係(恋人)になってから抑えるのは非常に難しい昂りの感情。

 

そしてそれは彼女も同じようであり、何の合図もなく、いつものように自然と唇が合わさる。

 

ある程度口づけを終えれば甘たるい声で名前を呼んでくれる。

 

脳をくすぐる。

 

激しく奪いたくなる衝動を抑えながらも、可憐な体を壊さぬように抱き寄せて再び交じり合う口づけでゆっくり愛を確かめる。

 

 

 

「マロン…」

 

「?」

 

「明日の仕事はね、昼からなんだ…」

 

「…」

 

「今日はいっぱい愛してね…」

 

「…………ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

このあと無茶苦茶バーストモードした。

 

 

 

 

つづく

 


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