彩りが紡ぐ日常の一時(短編集)   作:咲野 皐月

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 皆さまおはこんばんにちは、ガルパの新イベント&キラメキフェスティバルに絶望しながら作品を書いている咲野です。


 今回は執筆月が6月という事に肖りまして、ジューンブライドのお話でございます。以前パス病みの方に投稿致しました水着回の時と同じ様に、更新時期は不定期となっておりますが、それなりに質の高いお話を用意しようと考えて居る次第です(僕が頑張った所で他の人には敵わんのでどっこいどっこいなのですが)


 長ったらしい前書きを書くつもりも無いので、それでは本編の方に参りたいと思います。それではスタートです。


第一話 雨が齎す祝福の報せ

 日に日に湿度も増し、数日前までの心地好い日々が過ぎ去った雨が降るこの頃……とある場所からは軽快な音楽が鳴っていた。それは俗に言う『ガールズバンド』と呼ばれる者たちが奏でており、毎日の過ぎ行く青春の一時をただひたすら仲間と紡ぐ音楽に賭けているのだ。

 

 

 そんな中でも、その音楽が聞こえて来た場所に居る者たちは……世間では同じ括りに属しては居るが、また別の呼び名で呼ばれることがあった。

 

 

 ……その俗称とは、アイドル。

 

 

 彼女たちは普段こそ、華やかな女子高生として生活してこそ居るが、片やドラマなどの役を演じて表現をする若手女優や、雑誌等に掲載されている、表紙を飾る事の多いグラビアモデル……果てには、バラエティ番組などに出演しているタレントに至るまで、様々な激務をこなしている。

 

 

 そんな中……そのアイドルとして活動をしている彼女たちは、日々のお仕事等で疲れきった身体に鞭を打つ様に、所属している芸能事務所のスタジオを借りて、バンド練習に励んでいた。

 

 そしてそこでは、曲も終盤に差し掛かっていて、奏でる音色にも自然と力が入っていた。

 

 

「そうだよ、そのまま〜!」

 

 

 その音が聞こえる場所の、入口近くに居る少年から告げられる叱咤激励を受けながら……己の担当するパートを着実にこなしていた。

 

 そして、少年の視線の先にいる桃色の髪をした少女が決めポーズをすると……先程まで鳴っていた音楽が止まった。

 

 

「……はい、お疲れ様!」

『お疲れ様でした〜!』

 

 

 そんな言葉で今日の練習が締められる。

 

 これが先程まで演奏をしていたガールズバンドをしている少女たち……『Pastel*Palettes』であり、そのサポートをしている少年、盛谷 颯樹だ。この6人はまだ結成されて間も無いが、確かに着実と成長の兆しを見せていたのだった。

 

────────────────────────

 

「ふぅ〜、疲れたよ〜」

「お疲れ様、彩。はい、ドリンク」

「ありがとね、颯樹くん♪」

「これくらいお易い御用だよ」

 

 

 僕は練習終わりでヘトヘトな彩に、飲み物の入ったボトルを渡した。彼女たちにとっては、絶対に油断のできない糖分の入った物なのだが、長時間に渡る練習を行なえば、嫌でも汗はかいてしまうので、それを考慮して僕の方で準備をした物だ(なお、その準備などにかかる批判等は受け付けていなかったりする)。

 

 

「はい、皆の分もあるから慌てないでね」

「さっくんありがとー!」

「全く、言った傍から……ありがとう、颯樹♪」

「颯樹さんのアシストがあると、本当に今までとは段違いの精度で練習が進むッスね」

 

 

 僕がボトルを入れた籠をテーブルの上に置くと、我先にと言わんばかりの速さで日菜が駆け出して来た。それを見たちーちゃんが呆れながらも受け取り、麻弥がそれを一口飲んだ後にそんな事を口にした。

 

 僕としては、そこまで特別な事をやっている訳では無いので、彼女からの講評には少し自虐の意も込めた言葉で返答を済ませた。

 

 

 ……そして、さっきから姿を見せていない少女は一体何処へやら……って。

 

 

「サツキさん♪」

「うぉっ、イヴ!? 一体どこから……くっ!?」

「ハグハグ〜♪ サツキさんの身体、と〜っても温かいです♪」

「は、ははは……。お気に召した様なら何よりだよ」

 

 

 何と先程まで姿を見なかった少女……イヴは、僕の背後からいきなりハグをして来た。それが何分突然だった事もあり、反応が少し遅れてしまったのだ。

 

 そしてそんな僕の気も知らず……何とまあ、見てて癒される光景である。間違っても外ではやらないで欲しいが。

 

 

「えーっと、今日はみんなに連絡事項があるんだ」

「颯樹くんから?」

「颯樹さんからの報告事項はいつもの事ですけど、改まってそう言うのは珍しいッスね」

「……話を聞きましょうか。イヴちゃん、こっちに戻ってらっしゃい?」

 

 

 ちーちゃんからのそんな言葉を受け、イヴは少し名残惜しそうに僕から離れて行った。そして全員が一箇所に集まったのが確認出来たので、今回の要件を話す事にした。

 

 

「実は数分前、パスパレ宛に僕を通じてお仕事の連絡が届いたんだ。イヴに関して言うなら、本業とも言って良い部類だよ」

「私、ですか?」

「イヴちゃんはモデルをやっているから、それ関連となれば、雑誌等の撮影をスタジオを借りてするのかしら?」

「うーん、ちょっと違うんだ。今回通達されたのは、雑誌の撮影とは言っても……これなんだよ」

 

 

 ご最もな疑問をちーちゃんから聞かれた僕は、手元にある資料の中から付箋をつけた箇所を開いて、全員に全貌が見える様に見せた。僕も最初聞いた時は……『ああ、そう言えばもうそんな時期になったのか』と、時の経つ速さを実感したものである。

 

 

「うわ〜、綺麗なドレス……」

「この撮影に望まれている方、凄く良い表情をしていますね。確か初版が直ぐに売り切れていたのを思い出します」

「本当ね。……? 颯樹、この話をこのタイミングですると言う事は、このお話が私たちの所に来たと言う事で良いのかしら?」

「ご明察。このブライダル雑誌の撮影のモデルとして、パスパレメンバーの中から、一人ご指名が入ったんだ」

 

 

 僕の言葉を聞いた五人は、声を揃えて驚いていた。日頃からボイストレーニング等を欠かさずに行なっている為、一瞬だけ、耳の鼓膜が破けそうになったのは別の話だったりするのだが。

 

 

「だ、誰だろう……! やっぱり安定な路線を行くとなると……い、いいイヴちゃん!?」

「わ、私ですか!? 私は……その……まだ、そのお話は受けた事が無いんです……!」

「あははっ! 彩ちゃんとイヴちゃん、わたわたしてて面白ーい!」

「日菜さん……笑い事じゃないっスよぉ〜」

「全くもう……お仕事が一つ来ただけで、二人は慌てすぎよ?」

 

 

 彩とイヴは終始オロオロしながら事の重大さを痛感しており、それを見た日菜が麻弥からの諌言を受けながらも、心底楽しそうにケラケラと笑っていた(日菜には後で軽くお灸を据える事にしたので、そろそろ揶揄うのもいい加減にして欲しかったりする)。

 

 

 そしてその光景を、終始冷ややかな目で見ているちーちゃんでさえ、足が少し震えていたので、こう言うお話は割と珍しい部類に入るのだとこの時に察する事となった。

 

 その後に彩とイヴを宥めてから、僕は話を続けた。

 

 

「で、その雑誌のモデルになるメンバーは……彩だ」

「……えっ。わ、私!?」

「撮影担当のスタッフさん曰く『アイドル研究生としての地道な努力の果てに掴んだ夢への第一歩……その成長の確認と今後の躍進の足掛りにする事を踏まえれば、彼女が適任だと我々は踏んでいます』との事だったよ」

 

 

 僕からの説明を聞くに連れて、撮影を受ける当の本人である彩の顔が、熱でもあるかの様に真っ赤になって行った。それを見た日菜からは再度からかわれて居たが、多分彩にしてみれば、そんな事すら今は気に止める暇すら無いだろう。

 

 

「けど、良いのかしら。彩ちゃんはまだアイドルとして成り立ての……言わば新米よ? 撮影の際に何か不手際が起こらないとも限らないのだけれど、そこら辺に関しては考慮をしているの?」

「まあ、万が一に備えてアシスタントにちーちゃん、神父の担当を麻弥にお願いしたいとの事らしくて。イヴと日菜はエキストラとして参加をして、その雰囲気が出るようにお手伝いをして欲しいみたい」

 

 

 途中で投げ掛けられたちーちゃんからの質問に対してはそう答え、僕はそのスタッフさんから伝えられた事を順を追って説明していく。

 

 そうして説明を終えた後、漸く立ち直った彩からこんな言葉が聞こえて来た。

 

 

「わ、私がその……ブライダル雑誌のモデルに選ばれたのはわかったんだけど……えっと……肝心の相手役は、一体誰がするの?」

「それはそうよね。彩ちゃんだけで撮影とは一言も言っていないのだし、その役割を担う人が居るはずよね?」

「確かにね〜」

「そうですね……」

 

 

 イヴまでそんな事を言った後、一斉に視線が僕の方に集まった。……え、えぇ? 何、その何かを期待するかのような眼。諸々予想外なんだけどな。

 

 

「当日まで秘密との事だったよ。撮影は三週間後に星ノ丘大聖堂でやるとの事だったから、体調管理は確りと『それならさ〜、さっくんが彩ちゃんの相手役をすれば良いんじゃなーい?』……は?」

 

 

 ……え? 今、何と言った日菜は。

 

 

「それすっごく良いかも! 寧ろ、颯樹くん以外に適任は居ないよ!」

「彩さん、すごく立ち直りが早いですね……。さっきまでオロオロしていたのが嘘の様です」

「いいえ。颯樹とペアを組めると言う事を知って、一人で勝手に舞い上がっているだけよ」

 

 

 麻弥の呟きに答えたちーちゃんからの指摘は、全くもってその通りで……日菜からの提案にこれでもかと喜びを見せていた。これは当日の撮影がどうなるか予想が出来ないし、加えてスタッフさんからもこの件に関しては極秘事項とされている以上、あまり迂闊に言う事も出来ないのだ。

 

 

「やろっ! 私と組んでブライダル雑誌のモデル! 颯樹くんとなら、私やっても良いよ!」

「あのね……まだそれに関しては分かってないから、あんまりそう言うのを軽率に言えないの。三週間後にはちゃんと分かるから、それまで我慢してってば」

「……三週間後には、わかるんだよね?」

「モチのロン。だから我慢して」

 

 

 僕は急に飛びついて来た彩をそうあしらい、高揚している気分を落ち着けさせた。それを見たちーちゃんがさらに不機嫌な顔になっていたのだが、今回はお仕事として呼ばれているので、こちらも抑えて欲しかったりする。

 

 

 もし撮影に行った先で……メンバーの誰かが何か粗相をやらかしたりすると、お仕事を手配してくれているスタッフさんに申し訳が立たないので、何とか平和に事が終わって欲しいと思っているのだが、それが叶うかどうかは良くも悪くも彼女たちに賭けるしか無かったりするのが現状だ。

 

 だからこそ、こう言う時くらいは何事も無く普通にお仕事を受けさせて欲しい……。そうしないと、大目玉を食らうのは僕だから余計にメンタルが崩れかねないんだが。

 

 

「とりあえず、連絡事項はこれで全部かな。詳しい話とかは当日が近づいて来てから、また会議室等を借りてやるからそのつもりでね」

『はい!』

「あと、撮影を受ける彩は三週間後の撮影の時まで、体型維持を怠らない様に。話では他の4人よりも早く現地入りして、衣装合わせをしたいって事だったから、気を抜いてアイスや甘い物などを食べ過ぎないように十分注意する事!」

「うっ……わ、わかった!」

 

 

 その点まで話をした後、今日の練習はこれでお開きとなった。この後にちーちゃんがドラマの撮影が控えていた為、僕は彼女に付き添う形でスタジオを後にしたのだった。

 

 

 その後の話にはなるのだが……花咲川学園の風紀委員であり、彩と同じクラスに所属している、紗夜から聞いた話だと……何でも、同じ言葉を呪詛の様に呟き続ける彩の姿があったのだとか。

 

 心の中で静かに彩と紗夜に『本当に申し訳ないな』と思いながらも、その撮影が行なわれるまでの三週間を過ごす事となったのだった。




 今回はここまでです。如何でしたか?

 次回はこのお話の続きとなりますので、よろしくお願いします(一個のPartで何話使うかは未定です)。


 それでは……次回に待て、しかして希望せよ。
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