顔を上げたときには、すでに包囲されていた。
戦場に慣れ、殺し合いに秀でたリードマイヤーをして、まったく気配を感じさせなかった。銀色の矢じりが、冷たくこちらの心臓を狙っていた。
「何用だ、王殺しのリードマイヤーよ」
先頭のエルフが言った。
エルフは全部で六人だった。みな、緑のチュニックの上に皮の胴衣をつけ、箙を背負い、弓を手にしていた。彼らの表情は冷たくこわばり、目は怒りの炎で赤く燃えていた。脅しでも何でもなく、明確にこちらを殺すつもりなのが容易に見て取れた。
深い森の中だった。楡と樫の大樹がねじれながら天に向かって伸びている。下生えはなく、暗い色の苔と、墨のように黒い土が地面を覆っていた。木々の合間を縫って、細長い水流が静かに流れ、地面をやわらかく濡らしていた。その水流にブーツを浸しながら、リードマイヤーは口上を考えていた。どちらを向いても味方はなく、しくじれば即座に死が待っていた。
そしてリードマイヤーは言った。
「貴様らに用はない。俺が来たのは、フェイ=エンに呼ばれたからだ」
ざわりと木々が鳴った。
弓が固く絞られ、弦がぎりりと呻いた。エルフの目にもはや怒りはなく、あるのは冷徹な殺意だった。
リードマイヤーは軽く、腰の剣に手を置いた。それだけで、あふれんばかりだったエルフたちの殺気がぐんと後退した。ひとりなどは、一歩下がった拍子に足を滑らせ、尻餅をつきかけた。地面の小石を跳ね飛ばした。
「俺を殺すのはいいが」
リードマイヤーは言った。
「俺の死で、この森を汚すのか? 俺の血がこの地に流れ込むのが、何を意味するか、お前たちは本当に分かっているのか?」
そして──
焼けた鉄を飲み込むような表情で、先頭のエルフが弓を下ろし、口笛を吹いた。ほかのエルフたちもそれにならい、さっと身を翻して森の木々の向こうに消えた。
どこかでヒヨドリが鳴いた。森がゆっくりと呼吸を始めた。朝もやが流れ、木々の葉を濡らして、水を地面に滴らせた。地面はじっとりと濡れ、細い流れを作って、小川の流れに合流していった。リードマイヤーの足先は、すっかり冷たくなっていた。先頭のエルフひとりだけが残り、リードマイヤーの正面に立っていた。
「老けたな」
唐突に、リードマイヤーは言った。
相手のエルフは答えなかった。たしかに、このエルフからは明らかに老いの兆候が見て取れた。目じり、口元にしわが目立つ。髪の毛は、銀を通り越して白に近くなっていた。本来、エルフは年を取らない。むろん、仙境に留まっていられる限りの話ではあるが。
「老けたといっても、その意味はお前たち人間と違う。リードマイヤー、お前はそのことを忘れたのか」
そのエルフは言った。白に近い銀髪を後ろに流し、首の後ろで結んでいた。尖ったあごひげは、エルフの基準では無作法なまでに長く、先端が胸の辺りにくっついていた。そのひげを見ているうち、不意にリードマイヤーの記憶がよみがえった。このエルフに連れられて、仙境への入り口をくぐった、まさにあの日のことを。
「アル=ベイルン」
リードマイヤーは言った。
「まだここにいたとは思わなかった。もう会えないものと思っていた」
「俺は、二度と会いたくないと思っていた」
にべもなく言われて、リードマイヤーは笑った。
「まあそういうな。十年ぶりの里帰りじゃないか」