インフィニット・ストラトス-落ちてきた歌姫- 作:シャムロック
EGOISTの東京ライブで感動しまくってきたシャムロックです。
今回はライブの影響で少し本編をはずれた内容です。
私がEGOISTとして軽音楽部で活動する前、有名になったきっかけであるミニライブ。
それは小さくやるつもりで1曲だけの予定だった。
これは、そんな時に起きた出来事。
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視聴覚室
「…よし、機材の設置完了!
いのりちゃん、そっちはどう?」
「…大丈夫です。マイクは正常に使えます。」
視聴覚室を借りてやったゲリラライブ。
部屋の使用許可は事前に申請してあったけど、告知はせずに当日まで秘密にしていた。
京子部長いわく、1曲だけならあまり集める意味はないと言っていた。
そんなことで、当日の昼に数枚のチラシを廊下に張り出すだけだった。
結局、聞きに来た人は数人。
でも…
「ん~、まあこんなもんだよね。
うん。今回はあくまで練習だから空気慣れしとかないとね」
って、京子部長は言っている。
開始時間。
「じゃあ、始めよっか?」
「はい」
そして演奏が始まる。
ギターの音色。
そこからドラムの音が加わり、イントロが完成する。
「…突然降り出した雨
土煙をあげて
この街に落ちてきた…」
『雨、キミを連れて』
元の世界で発表までには至らなかった曲。
私と集の思考、思惑がズレ続けた頃に思いついていた曲。
それをここに来てきちんと作曲、作詞して完成した曲。
「…途方にくれる世界の隅っこ
小さなトンネルに閉じこもって
ついたため息 あくびで答える
キミの手を強くぎゅっと握った…」
集が自分の殻に閉じこもって出てこなかった始めの頃。
どれだけ私が居ても出てきてくれなかった…
「…当たり前の言葉が欲しくって
わからずや キミは臆病者
私の気持ちなんか知らないで
もっと強く
その手で握りしめて…」
私の想いを殆どダイレクトに綴った歌詞。
本当は集と居たい。それもお互いの体をくっつけるくらいに居たかった。
でも…結局、集は気づいてくれなかった。
「…ゆるく繋いだこの手
降り止まないこの雨
途方にくれた二人
小さなこのトンネル
キミの顔を見上げて
見つけたこの感情
頼りなくて温かい
遠くで轟く雷が
キミの手を強くぎゅっとさせた…」
集がだんだん私に歩み寄ってくれた時。
集は私を信頼してくれた。
そして、守ってくれていた。
でも、私が求めた言葉は出てこなかった。
「…世界がモノクロのまま走る
増してく激しさ 二人ぼっち
言葉探し またため息をついた
わからずや キミは臆病者
私の気持ちなんか知らないで
もっと強く
その手で握りしめて…」
集が私に好意を抱いていることは自分でも分かっていた。
でも、集は私に必要以上に言葉を発しなかった。
…やっぱり臆病者だったのかな…?
「…もっと強く
その手で握りしめて
その手でもっと握りしめてよ」
私の一番の願いであり、集に求めたこと。
離れ離れにならないくらい、一緒に居たかった。
でも…今は…。
「…すごい」
え?
観客でいた女子が目を丸くしていた。
「ねえ、キミ何処の所属!?」
その女子がいきなり問い詰めるように聞いてきた
「…一年一組 楪いのりです」
「そっか…キミがあの…」
女子はなにかブツブツ言っているけど…
「あ、ごめんね。
私、2年、整備科の黛 薫子。
新聞部に入っているんだ。
普段、ライブなんてやらない部活がどういう吹き回しと思って来たら…とんだ特ダネね」
そんなことを言っていると、視聴覚室の扉がにわかに騒がしくなった。
「ねえ、さっきの歌ってキミが歌ったの?」
「へー、ライブなんてやっていたんだ。
え~とイス、イスは…」
ぞろぞろと入ってくる生徒たち。
視聴覚室は防音のはずなんだけど…なんで?
「あ」
不意に京子部長が声を上げた。
「ゴメン。窓一個閉じるの忘れてた。」
見ると引いたカーテンの一部が小さく揺れている。
換気のために開けて、そのままみたい。
「いい歌だったよね~」
「遠くからいい声が聞こえてきて、つい来ちゃった」
皆、ライブを聴きに来たみたい。
とはいえ、今回曲は1曲のみ。
どうしよう…
「いのりちゃん」
困っていると、京子部長が声をかけてきた。
「これ、使っていいよ」
渡してきたのは、原曲のデータチップ。
練習と、リズム把握にと渡したもの。
「もう、ここでいのりちゃんの歌を知ってもらうチャンスだと思うの。
だから、歌ってもらえない?」
「…はい」
どちらにせよ、もう後戻りは出来ない。
なら、私は今できることをやるだけ。
データを選択して、セットする。
--・-・ -・・-- ・・- --・-- ・- --・-・ ・-・-- -・--・
いきなり流れるはモールス信号。
ここに私の想いを埋め込んだ。
意味は『集、愛してる』
モールスを使ったのは、私が自分の口で集に告白することが出来なかったから。
せめて、何かの記録としておいておきたい。
そんなことから思いついた。
『Planetes』
私がここに飛ばされてから作った曲。
ここにはいない集へ会いたい気持ちを綴った曲。
「…静かの海に一人
拾った貝殻耳に当てた
じっと耳を澄ませば
ほら
聴こえてくる
君のメッセージ…」
幻想でも、集への思いが伝わるように、私へ集の思いが伝わるように、と思った日々。
それは、辛く、悲しい日々。
「…言えなかった想いを
砂に書いては
波がさらってゆく…」
どれだけ、集への思いを連ねても、それは徒労になるだけ。
それでも思わずには居られない。
それだけ、私が集を愛しているのだから。
「…Hello Hello
ここにいるよ
この物語の始まりの場所で
約束だけが繰り返しても
あなたの記憶に私はずっと生きてる…」
私という存在が居なくても、集の記憶には私が居続ける。
そんな、願望じみた歌詞。
私は、あの時、集を救った時から私の本当の物語は振り出しに戻っている。
それを戻すには戻るしか無い。
その時までは、私の存在は集の記憶のなかで生き続ける。
「…私は宇宙から流れ
この物語の始まりの場所へ
その時再び会えるだろう
あの青い地球であなたに辿りつくから」
私が集の元へ戻る思いを綴る歌詞。
集と再会した時、どんな顔をするだろう?
でも、それがどんな顔でも私の物語は再び進み始める。
…集と会う、その時まで私は始まりに居続ける。
歌い終わった時、観客は鎮まりかえっていた。
「す…すごい…」
「私達が聞いていた歌って一体…」
「これは…素晴らしいですわ」
徐々にざわつき始め、駆け出していく。
でも、みんな出て行く時に決まってこう言っていた。
『ありがとう』
何故、お礼を言われるのかわからない。
「あなたが目を覚まさせたからよ。」
黛先輩が来る。
「ISの出現で音楽も随分変わってね。
男より女ウケする曲ばかり作られてるの。
その結果、ハッピーエンドな曲ばかりが乱立。
楪さんのような悲恋歌は少ないの。
それに…いのりさんの歌は、心に直接届くような歌だからね。
それが彼女達に響いたのじゃないか?」
「私の…」
「…ねえ、私の取材受けてみない?」
「え?」
「楪さんの歌、置いとくには惜しいもの。
宣伝して、楪さんの歌をもっと広めたいの。
だらけきった今の音楽業界に楔を撃てるかもしれないの。」
私の歌が…そう。
「…分かった」
「ありがとう!
それじゃ………」
こうして、黛先輩の新聞に私が取り上げられ、視聴と来た人に歌い、その人気がさらに上がると、私達の部は学園でも有名な存在になっていった。
生で聴く声はやっぱり違いましたね。
書きながらEGOIST聞いてると涙腺が…