ある日の午前。
ジークフリートは、昼休憩の時間にクリームヒルトの愛妻弁当を食べていた。
「美味しいな…」
それもなぜか海苔で器用に「すまない」と書かれたキャラ弁(?)を。
そしてジークフリートが一人で弁当を食べ進めていると、一人の女性が小走りで近づいてきた。
「…ついに…シグル…ド…様?」
「…すまない…人違いだと思う…すまない…」
突如現れたジークフリートの事をシグルドと呼ぶ女性。
ジークフリートは彼女に見覚えがあった。
ジークフリートには、三つ上の兄がいる。
その兄が初めて彼女として連れてきた少女。
その人とよく似ていたのだ。
そこで、ジークフリートは名前を聞いてみることにした。
「あなた、お名前は?」
「私はブリュンヒルデ…あなたのお名前は?」
やはり、ジークフリートの考えていたとおりだった。
ジークフリートの兄の名前は、シグルドである。
そしてそのシグルドが初めて連れてきた少女の名前もブリュンヒルデ。
しかし、この二人はジークフリート一家が引っ越しをした後に自然消滅の形で別れていた。
単純に気まずい。
自身の兄が付き合っていた女性と二人きりなのである。
さらにジークフリートとブリュンヒルデ。
どちらも言葉足らずなのである。
「あの…連絡先…交換しませんか?」
「あ、ああ」
なので出来ることは連絡先を交換するという初歩的な事しかできていないのであった。
____________________________________________________________
「ブリュンヒルデに会った?」
ジークフリートはその日、シグルドにすぐに連絡を取った。
シグルドの反応はというと、少し恐れるような声色だったが。
「兄さん、どこかおかしいのか?」
しかしこの男、鈍感である。
やはりそんな事は感じ取れない。
するとシグルドが語り出した。
「いや、当方の事情は複雑でね…」
「何か、あったのか?」
「彼女は、殺意を持って愛を証明しようとする。というか、今思えばそんな表現方法しか知らなかったのだろう。だから、当方は殺されないように愛を表明する必要があったのだ。」
ブリュンヒルデの家庭は複雑だった。
父はおらず、時折ヒステリックになりブリュンヒルデに暴力を振るう母。
唯一頼れる、愛をくれる人から振るわれる理不尽な暴力を、幼い世間知らずな少女がどう解釈するか。
ブリュンヒルデの場合、愛だと判断した。
そして、彼女はそれが普通だと思っていた為、シグルドにも殺意を持った愛情を注ごうとしていたのだ。
しかし、シグルドは普通に強い。
後ブリュンヒルデにデレデレであった。
なので平気でブリュンヒルデの殺意を受け止めていた為、ブリュンヒルデはどんどん悪化していたのだ。
それを危険と判断したシグルド達の親が引っ越しを決めたのだが。
「そ、そんな事があったのか…」
それにしてもこの兄弟、ヤンデレに好かれすぎな気がする。
「ああ、それで物理的な距離を置いて連絡を取ろうと思っていたのだが、当方が電話しても繋がることはなく、今までという形だ。」
「そうか…あ、それとブリュンヒルデが今週末に会いたいとも言っていたが…どうする?」
そうジークフリートがシグルドに聞くと、シグルドは即答した。
「わかった。今週末だな。当方は空いていると伝えておいてくれ」
「分かった、では切るぞ」
ツーツー
そうスマホが鳴ると、ジークフリートはスマホを耳から離し、隣にいる人物に話しかけた。
「との事だ。俺はもう帰っても?」
「ええ…ありがうございます…」
すまない、兄さん。
心の中でそうつぶやき、ジークフリートは帰路についた。
無理やりシグルドさんをジークフリートさんの血縁者にぶち込みました。
許して
ブリュンヒルデの話も適当です。
許して(血涙