【完結】大人になった君が見たいから   作:食卓塩少佐

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track8 冬は彩子を抱き枕にして寝たい

「ふぁ……はぁ〜〜〜」

 

 朝ご飯を食べる中、我ながらすごく長いあくびをしてしまった。

 結局、あの後はろくすっぽ眠れやせず、ひたすら目を閉じて意識を休ませる事しかできなかった。

 それでも夢の内容があまりにも衝撃的過ぎて、つい意識してしまう物だから、睡眠時間圧倒的に足りない朝を迎えてしまい、このザマ。

 

「すごい欠伸だね、お兄ちゃん」

「うん……お察しの通りあまり眠れなくて」

 

 食卓の向かい側で心配してくれる渚は、いつも通り俺がよく知る優しい渚だ。

 正直、朝最初に顔を見た時に少しビクッとしたけど、やっぱりあんなのはただの夢。いつまでも引きずる物じゃない。

 

「また遅くまでゲームしてたんでしょ」

「違う違う、怖い夢見て寝つき悪くなってさぁ」

 

 ──あ、しまった。これよくない流れになりそう。

 

「怖い、夢を見たの?」

「あぁ、うん。普段は見ないんだけどな、今日は珍しく」

「……どんな夢だったか、教えてくれる?」

 

 やっぱりこうなった、失言。

 ただの夢ならこの後フツーに話して問題無いけど、今回は渚に殺される夢だからなぁ。言いたくないよ。

 かと言って全く覚えて無いって言うのも、今回はモヤモヤする。散々夢の中で渚に嘘ついてる“俺”を批判した後だし……しゃあない。混ぜるか。

 

「知らない人……に、痛い思いをされる夢だった。酷い夢だったよ」

 

 全く知らない人では無いが、あの渚は俺の知る渚とは見た目と声以外似ても似つかないので、知らない人と言っても全くの嘘じゃ無い。

 痛い思いをされるってのも、殺されるの過程にあったからな。

 

「そ、そうなんだ……知らない人って言うけど、全然見た事無い人だったの?」

「そんな気になる事か? それ」

 

 これ以上詳しく聞かれるとボロが出るので、逆に質問を返してみた。

 洋画とかでよくやる手口だよね。いざ使ってみたらそこそこ便利。

 

「夢占いとか、クラスで流行ってるの。それで気になって」

「あーそれで。ちなみに殺される夢はどんな意味があるんだ?」

「──え、殺される?」

 

 ──やっべ。またやらかし。

 

「半殺しだな、正しくは。殺される勢いだったからさ、朝から物騒な話でごめんごめん……それで、どうなんかね」

「……っ」

「ん、渚?」

 

 答えが返ってこなくなったので、腕を伸ばして目の前で手をひらひらさせる。

 すると、ハッとした様に渚は目をパチクリさせ、慌てて取り繕うに答えた。

 

「ご、ごめんなさい……思い出そうとしてたけど、忘れちゃったみたい、ははは」

「あら、そっか……じゃあ仕方ない。あとで調べてみるわ俺の方で。クラスの女子とかに聞けば分かるだろうし……図書室行けば本ありそうだもんね」

「図書室……うん、そうだね。きっとあるよ」

 

 そう話す渚からは、何故か見つかって欲しくなさそうな雰囲気を感じたのだった。

 

 

 

「はぁ? 夢占い?」

「そー、お前そう言うのモテたさ故に調べてそうじゃん、知ってる?」

「君は人を何だと思ってんだ」

「将来の出会い厨」

「……」

 

 学校のランチタィム。

 亘利とはクラスが別だから、話す時間は放課後除けば今しかない。

 

「それで、夢占いは知識あるの?」

「知らない」

「え、まじで?」

「知りません。知ってたとしても出会い厨と言われるので何も言いません」

「……悪かったよ、言い過ぎた」

「本当? 本当に悪いと思ってます?」

「思ってるよ、すまない、ごめん!」

 

 本当の事でもストレートに言い過ぎるのは悪だった。

 

「……だとしても、本当の本当に夢占いは未履修なのですね、自分」

「んーそっか、じゃああとで図書室にでも行こうかな」

「あるかな、占いの本まで」

「女子からの要望で置かれてそうじゃん」

「確かに。でも、コレの占いなら僕、できるよ?」

 

 そう言って亘利が制服内側の胸ポケから取り出したのは、トランプの束だ。

 

「トランプでも占いって出来るのか?」

「ね、そんな反応を女の子から貰いたくて、調べて覚えたんだ」

「なるほど、夢占いよりも手軽にできるし、タロットよりも意外性あるもんな」

「そうそう」

「まぁ、今反応してるのは男だけど」

「……友達だから許容範囲さ」

 

 何も悪くないけど申し訳ない気持ちになってきた。

 亘利曰く、夢の内容は分からないけど、トランプで今後その人がどんな人間とどんな事になるのか、その特徴含めて占う事が可能だとの事。

 夢占いも、いわば未来予知の色を含めているんだろうから、まぁやりたい事は同じだよな。

 

 信じる信じないはともかくとして、面白そうなのでお願いする事にした。

 

「任せてー。それじゃあまずは、この5枚から一つ選んで」

 

 亘利が束からランダムに選んだ5枚を伏せたまま提示してきたので、すかさず真ん中を選ぶ。

 選ばれたカードを自分の前に置き、選ばれなかったカードは横に置かれる。

 続けて、今度は亘利がシャッフルを繰り返した後に同じくランダムに選んだカードを、1組2枚の3セット用意した。

 

「よし、準備できた」

「え、コレで良いのか? 俺選んだの最初だけだが」

「タロットじゃないからね。それじゃあまず、最初のカードをめくってみて?」

「お、おう」

 

 少し緊張しながらめくったカードは、ハートのクイーンだった。

 

「こ、これは……!?」

「…………はぁ」

「え、ため息!?」

「続き、行こうか。説明は後」

「オッケェ……」

 

 凄く気になるけど、我慢して次に移る。

 今度は、亘利が分けた3ペアのカードをそれぞれめくっていくというもの。

 またため息出されたらどうなるんだろう、と緊迫の面持ちでめくったカードの結果は、それぞれ以下の通り。

 

 ・クローバーの8とハートの8

 ・ダイヤの5とスペードの6

 ・ハートの8とダイヤの3

 

 全てをめくった後、亘利は少しの間結果を考えるように黙りこくる。

 結論が出るのを俺は待つばかりだが、やがてパンっと手を亘利が叩くと、解説が始まった。

 

「最初のカード、これは未来で君が出会う事になる人間と、それがどんなイベントなのかを暗示してるんだ」

「ほうー、てなると? 今回はどうなんだ」

「今回は数あるカードの中で唯一の“女性”が描かれたクイーン、しかも柄はハート。つまり高確率で、君は女性と縁が生まれる事になる様だね、糞が」

「ほう……ほう!?」

 

 マジで!? 

 

「あくまでも占いだけどね。でもここまで都合よくガッチガチの結果が出てくるんだとしたら、僕だったら信じちゃうな……本当なんで僕じゃないんだ」

「それでため息出したのか……」

 

 確かに、自分が女の子と縁を持ちたくて覚えた占いで、相手の縁結びを占っちゃ本末転倒感あるもんな。

 

「しっかし、クイーンが出るのもだけど、ハートだからなぁ」

「ん、何か問題があるのか?」

「問題じゃないけど、もしかしたら、もう縁が出来てるのかも? それか、相手はかなり君を想ってるのかもね」

「……おぉ」

「リアルで嬉しそうな反応するなし」

「──コホンッ、続きも頼む!」

 

 あくまでも占いだと言う事を忘れずに、それと今日見た夢が何なのかってのを知りたいのが本来の目的だからな! 

 誰かに惚れられてるなんて、そんな事で気を緩んでる場合じゃ──にやけるな頬! 

 

「後の数字のペアは、それぞれ相手の特徴を示してるよ」

「何、それじゃあもうコレで俺の彼女候補が特定できると!?」

「ガッツリ期待してるじゃねえかキミ」

「──ハハッ」

 

 小声で死ねっと呟かれながら、俺は気を取り直して亘利に結果を訪ねる。

 すると、亘利は今度は特に勿体ぶらず、サラリと答えた。

 

「見たまんま」

「え?」

 

 見たまんまってお前……88、56、83がそのまま結果って事か? 

 頭にはてなマークを付けていると、見かねたのか答えを教えてくれた。

 

「バスト88、ウエスト56、ヒップ83の女の子が君を待つ子だって」

「スリーサイズかよ!!」

 

 とんだセクハラ占いじゃねえか! 

 

「言ったじゃん! 女の子との賑やかしに使えるって! これで相手の特徴とかスリーサイズ当てたら盛り上がって運命感じてこないかなーって期待してるんだよ僕は! カードの組み合わせを操作する事なんて簡単だし!」

「ならねえよそんな事、ドン引きされて終わるって! 大体どーやって相手のスリーサイズ知っておくんだよ」

「合コン相手のサイズ程度調べなくてどうするんですか!」

「調べられんの……?」

「将来の夢は情報屋か探偵だからね」

 

 その情報の網で、それこそ素直に相手の理想的なムーブしとけば占いより彼女出来やすいだろうに……。

 

 なんかもう、夢が意味してる事なんてどうでも良くなって来たな。

 取り敢えず、この占いの結果は渚に言わない事を固く胸に誓ったのだった。

 

 

 ⇒続く?

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