お別れの時間である。私は名残惜しくも立ち上がる。彼に会えてよかったと思う。彼とこうしてお話できたことを私は誇りたい。だってとても特別な体験だったんだから……
これから先、私の心に残った僅かな痕跡だけを残して私のこのお話は終わってしまうけれど私達はそれで本当に良かったのかしら?いいえきっと間違いだったのだわ……。そうでなくてはならない。
だって私があの人に言ったことは嘘になってしまったんだもの。今更ながら私は後悔していた……。
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とある王国の第一王女で聖女でもあるリリアーナは憂鬱そうな顔をしながら玉座の肘掛けに頬杖をついていた。その視線の先には、彼女の側近である宰相がいた。
彼はリリアーナの父王の親友の息子でもあった。昔から気心の知れた相手ではあるが、最近は少し困っていることがある。
理由は彼の態度。
彼が以前のように親しげな態度を取ることがなくなったことに、リリアーナはとても戸惑っていた。以前までの彼であれば、仕事の合間に休憩と称してお茶を入れてくれたり、時にはお菓子を食べさせてくれるような気さくさがあった。
だが今は……。
(どうして最近距離を感じるようになったんでしょう? 理由がわからない)
何か嫌われるようなことをしてしまっただろうか? そんな悩みを抱えていたある日、私はいつも通りに執務をこなしている最中だった。ふと思い出したように口を開いたのは彼の方からである。
「ああ、そうだ……」
「なんでしょう?」
一瞬前まで書類仕事をしていたはずの彼から告げられた言葉の内容を聞いて私の時間は凍りついた。
「俺、死ぬんだわ。二日後」
「……今度、飲みましょうか。奢らせてもらいますよ」
私は、目の前にいる同僚が死んだら、どうやって悲しめばいいんだろう?……それを知るために私は明日が来る前に酒を飲まねばならない。きっとそのはずだ。私はアルコール中毒ではないが、酒精があれば自分の判断力をいくらか鈍くできる。私は私の中にある疑問を打ち消すための理性が欲しかった。
こんな時でさえ、私は彼を哀れみきれない。死ねなんて口が裂けても言えないのだ。私が彼の立場だったら……。……違う?本当に? 彼は既に半分以上が欠けた身体で、まだかろうじて息をしていると言った方がいいくらいの存在だ。ただ辛うじて生きているだけに過ぎない。彼の顔はまだ少し幼さが残っていた。私も同じ歳のはずなのに何故ここまで差がつくのか。それはやはり、彼が死ぬほどの努力を重ねて今のポストを手に入れたからだ。私は彼に嫉妬しなくてすむようにいつも言い聞かせている。
この世界に生きるすべての人間は何らかの努力を積み重ねて上に登ろうと日々戦っている。だが、そこにたどり着くまでどれほどの挫折を味わうのかは誰にも分からない。途中で心折れて倒れてしまった者の中にはもう二度と立ち上がれないだろう者もいるし、そんな者は最初から目指すべきではなかったのかもしれないとも思う。
それでも私は諦められないし、何度膝をつこうが立ち上がりまた挑戦を続けたくなる衝動に駆られてしまう。
ふと見渡す限りの真っ白。そんな空間のなかに、ポツリとそれだけが浮いていた。
なんだこれは? 疑問だらけだがとりあえず近づいて手に取ってみる。見た目はよくある普通のノート。だけど俺はこんな紙切れ見たことがない。それなのにどうしてこれが『紙』だってことを認識できてんのか。不思議すぎる