その元刑事との出逢いをコナンは事細かに語った。
楠の風貌、経歴、名前、そして盗聴器をあっさりと見抜いた慧眼、そこから情報を読み取り、逆手に取ってみせたその胆力。よほど怖かったのだろうと、降谷はコナンの顔を見て思う。盗聴器なんてものを軽々しく使うからだ、と少し意地悪く思う反面、まあ仕方ない、とも思った。
降谷の脳裏に、懐かしい光景が蘇る。まだ、降谷が降谷と名乗っていたころ。希望と正義に燃えていた、あのころのこと。
そして、あのころの自分たちに強烈な印象を残していった、あの人のこと。
「……安室さん?」
押し黙ったままの降谷に、コナンが声を掛ける。警告のつもりで教えてくれたのだろう少年に、安室の顔で微笑んだ。
「……ああ、いや、何でもないよ。これに懲りたら、君も無茶は控えることだね」
予想外の反応にコナンはえっと面食らった。つい、もの言いたげな目で降谷を見る。それにまたひとつ微笑んで、降谷はコナンの前にアイスコーヒーを置いた。
「……安室さん」
「何だい?」
「……ひょっとして、」
何か知ってるの、とコナンが続けようとしたその時、来客を告げる音が店内に響いた。
*
夜の帳が落ちると虫の音のみが響くこの家を楠は気に入っている。早寝の人間が多い閑静な住宅街。普段なら車のエンジン音すら滅多に聞こえないのだが、今日は違っていた。
来るだろうと思っていた。
家の前に止まったエンジン音を迎えに、玄関へと歩みを進める。ゆっくりと近づいてくる床の軋む音が聞こえていたのだろう、闇夜の中の微かな光をも反射して煌めく金糸が、チャイムも押さずに待っていた。
「夜分に失礼致します」
喫茶店のカウンターにいた時のそれとは違う、降谷の表情。あらゆる感情を排したその碧眼に、楠は口の端だけで笑う。
「まァ、上がれや」
降谷は黙って靴を脱ぎ、楠の後に続いた。まだ会話はない。微かな足音のみが廊下に響く。
晩酌をしていた縁側に座ると、降谷もその場にさっと正座した。そして改めて楠の顔を見、口を開く。
「お久しぶりです、教官」
懐かしい呼ばれ方に、楠は頬を緩めた。
「柄じゃねェ、その呼び方やめろ」
例の事件への捜査打ち切りを受け入れ、定年を目前に引き継ぎと身辺整理の支度をしていた楠にお声がかかった。自分より出世の階段を軽く駆け上がって行った、同期からだった。
『前線に出られなくて鬱憤もたまってるだろ。ちっと気晴らしに頼まれてくれないか?』
聞けばその年の警察学校には、なかなかに気合いの入ったやんちゃな班があるという。優秀は優秀で性根が曲がっている訳でもないが、やることなすことめちゃくちゃで、担当の教官が頭を抱えているとか何とか。一度お灸を据えたいということで、数日で構わないから特別講師として教鞭をとってみないか、という誘いだった。
人にものを教える柄ではないと最初は断ったが、まあそう言わず、とあの手この手で誘いをかける同期に、最後には折れた。そういえば彼は、そうやって人を口説き落とすことが上手いやつで、だから同期の誰より出世したのだったと苦笑したことを楠は覚えている。
そして、引き受けたからには仕方ねェと溜息をつきつつ向かった先にいたのが、降谷たちだった。
「……さすがに魂消たぜ、まさかお前さんが毛利の弟子とか言いながらサ店でバイトたァな」
「ご存知でいらしたのではなかったんですか」
「弟子がいることまでは知ってたが、名前も違ェのにまさかお前さんだとは思わねェだろ」
驚いていらっしゃるようにはとても見えませんでしたよ、と降谷も小さく微笑む。
コナンの影を見てポアロに足を踏み入れた楠。その先にいた懐かしい顔にはさすがに驚かされた。
『いらっしゃいませ』
ごくごく普通にそう言った降谷の顔をした「誰か」。その前のカウンターに座って明らかに「ヤバイ」という顔をしたコナン。
そういう態度が相手に情報を渡しちまうんだぞ、と内心で呟きつつ、ある程度事情を理解した楠は顔色ひとつ変えずに珈琲を注文してみせた。
「あの坊主、頭の出来は良いんだろうが、経験不足は可愛いもんだな」
「手酷く虐めたらしいじゃないですか」
「ハン、教育的指導だよ。あれじゃすぐおっ死ぬぞ」
確かに無茶が過ぎる子ですが、と降谷も同意する。
コナンがどう受け取ったかはさておいて、楠が楠なりに彼を心配して脅しをかけたことを降谷はわかっていた。無茶をして痛い目にあう先輩を、部下を、そして自分を見てきたからこそ忠告をしたのだ。歳若い彼が、危ない目に遭わないように。
楠なりの優しさに彼はいつ気づくのだろうか、と降谷は内心で笑い、そして改めて楠を見据える。まっすぐに視線を投げると、その空気の変化を察知してか楠もまたちらりと降谷に目線をやった。
「単刀直入に申し上げます。手を引いてください」
そう一言だけ、告げた。
何を、とは言うまでもない。何故、とも言うまでもない。
コナンと話しているところを見られたこと、そしてあの時のコナンの表情で楠は理解しているはずだ。降谷の立場、そして探っている対象についても。
「鉛を仕込んだ杖程度で太刀打ち出来る相手ではありません」
コナンも違和感を覚えたあの杖音。杖の先には、通常ならありえない鉛が仕込まれていた。鈍く重い音からそれを察した降谷は、厳しい顔を崩さない。敵対しているのは危険で、強大な組織だ。いくら楠が有能であろうと、個人で相手を出来る類ではない。
降谷から繰り出された刃に、楠は何も言わず視線を外した。手近に置いてあった煙草のケースに手を伸ばす。
「教官」
「だァから教官はよせっつってんだろ」
「……楠さん」
一本取り出し、火をつけた。
夜闇に浮かぶ煙草の炎は、まるで人魂のようだ。
「……二年前、だったな。伊達の野郎がいきなり訪ねてきやがってよ」
突然変わった話に動じることなく、降谷はじっと黙っている。細く煙を吐き出した楠は、世間話でもするように続けた。
「どっかで俺の話を聞いたとか言って飛び込んできてな。いろいろ話を聞かせてくれた」
萩原が、死んだこと。
松田が、死んだこと。
諸伏が、死んだこと。
そして降谷と、連絡が取れないこと。
両手を握り締め、奥歯を噛み締め、肩を震わせながら伊達は言った。
楠も、萩原と松田の死は報道で知っていたが、諸伏の死は初耳だった。そうか、と言うほかに告げられる言葉もなく、ただティッシュの箱を伊達に放り投げる。すみません、と絞り出す伊達に、ただうるせえ、と一言だけ言った。
「せめて降谷は元気であって欲しいっつって、そればっか言ってな」
それ以来、ちょくちょくと伊達は楠の家を訪ねてきた。手土産に羊羹を持って、ときには夕食や晩酌を共にした。近く結婚をするから式には是非、と言っていた、その矢先の、訃報。
「なのにテメェは事故なんぞで逝きやがって。殺しても死なねェやつだと思ってたんだがな」
「……それは同感です」
そっと目を伏せた降谷が、小さく零した。表情こそ変わらないが、膝に置かれた拳には力が入っている。楠の目から見ても、仲の良い班だった。やらかすときは決まって全員でやらかし、最後には五人並べて説教をして罰則を与えたものだ。楠が灸を据えても、そのやらかしはマシにはなってもゼロにはならず、ありゃ無理だ諦めろ、と彼らの担当の教官の肩を叩いたことはよく覚えている。
仲のいい、班だった。能力のある、やつらだった。問題児は問題児だったが、きっとこの先の警察を支えてくれるだろうと、楠もひそかに期待していたことは否めない。たった数日の付き合いだったが、それだけ楠は彼らを見込んでいたし、彼らもまた楠を慕っていた。
「あんだけ叱り飛ばして締め上げてやったってェのに、ひとっつも俺の言うことなんざ聞きやしねェんだから、全く」
ため息混じりの楠の言葉で、降谷の脳裏にかつての怒声が蘇る。
『それで上手くサボってるつもりか萩原!! 死にたくなきゃ手ェ抜くんじゃねェ!!』
『一人で暴走すんなっつってんだろ頭冷えるまで外走ってこい松田ァ!!』
『諸伏テメェ何様だ?ん?それァ一人で背負える案件じゃねェだろが思い上がんな!!』
『詰めが甘ェんだよ報告終わるまで気ィ抜くな! お前が首席を取れねェのはそういうとこだぞ自覚しろ伊達ェ!!』
講義のたび、実習のたび、これでもかと叩きつけられるそれぞれの欠点。反発する気持ちもあったが否定も出来ず、歯噛みしながらそれぞれ自分の現実を呑み込んだ。もちろん降谷とて例外ではない。
慢心せず、卑下せず、己の力と手札を正しく把握し、そして冷静に根気よく。楠の教えは、今も血肉となって降谷の根底に根付いていた。
「……降谷」
楠が静かに降谷の名を呼ぶ。
降谷ははい、とまた静かに返事をした。
「お前、酒の奴ら追ってんだろ。何とかなりそうなのか」
視線を庭に向けたまま落とされた言葉。辺りは静寂に包まれ、風の音すら聞こえない。自分の心臓の音まで楠に聞こえてしまいそうだと、降谷はそんなことを感じた。
「捜査についてお話することは出来ません」
捜査において情をつかうことがあったとしても、決して自分は絆されても振り回されてもならない。これもまた、楠から教わったひとつだった。
降谷の言葉に、楠は喉の奥で笑う。
「すっかりチヨダに染まりやがって」
楠が懐かしい話を持ち出しても、公安の顔を崩さない降谷。たとえ信頼のおける、尊敬する先達相手でも、捜査情報は漏らさない。当たり前だとでも言わんばかりの降谷に、楠は眦を緩めた。
「……まさかお前が、なァ」
らしくもない感傷的な様子に、降谷は少しだけ目を細める。てっきり、鼻で笑い飛ばされるものと思っていた。お前ごときに俺が止められるのかと。それを何とか説得しなければと、覚悟して来たというのに。
「……降谷」
「はい」
「その
「!」
そう約束するなら手を引いてやってもいい。
煙草の灰を灰皿に落としながら、楠は静かに言った。
「……楠さん……さては中身は別人……」
「いい度胸だなァ降谷コラ。お前の黒歴史大声で吹聴されてェか?」
「すみませんでした」
即座に頭を下げると、煙草を口元に戻した楠はまた喉の奥を鳴らす。ひとつ煙を吸い込むと、また煙草の先が人魂のように浮かび上がった。
「んで?報告に来んのか来ねェのか、どっちだ」
「……伺います」
楠の意図を、降谷は正しく理解していた。
「必ず僕が、直接、貴方自身にお伝えします」
ゆらりと、紫煙が揺れる。微かに吹いた風が、二人の頬を撫でた。
少し軽い声で、楠は言う。
「こちとら定年すぎたジジイだ、俺がくたばる前に片ァ付けろよ」
「どう見てもあと30年は余裕でしょう」
「お前どんだけ待たす気だ。とっとと捕まえろ」
そんで、と続ける。
「墓参り行くぞ」
お前車出せ、としれっと言う楠の言葉に、降谷は何か込み上げてくるものを感じた。それをかろうじてぐっと飲み込み、はい、と声を絞り出す。突然楠を連れて行ったら、きっと墓の中にいてもあいつらは反射的に敬礼をしてしまうんだろうな、とそんな馬鹿なことを思って、笑った。「何で教官くんの!?」「嘘だろあの鬼が!?」「お、久しぶりですッ!」「降谷テメェ連れてくるなら先に言え!」頭の中でそんな懐かしい声が飛び交った。うるさい先に逝ったお前らが悪い、と内心で言い返す。
「なァに笑ってやがんだ、気持ちわりィ」
「いえ、きっとお墓参りしたら奴らも喜ぶだろうな、と」
「飛び上がって冷や汗流す、の間違いじゃねェか」
そう言い捨てた楠に、よくわかっている、とまた降谷は笑った。
一日でも早く、その日を迎えたい。そんな強い想いが、降谷の胸に芽生える。堂々と、降谷の顔と名前で、彼らに顔を見せに行きたい。特に諸伏には、俺たちが追っていた奴らはもう終わったぞと、言ってやりたい。そしてその後にでも、楠と共に酒を一杯やりたいものだ。彼らとの思い出を肴に飲む酒は、きっと格別の味がする。
知らずのうちに、降谷の両手に、力が入った。
「降谷」
「はい」
「お前は昔っから危なっかしいが、まあ優秀だ。酒の連中がどんなやつらなのか知らねェが、お前に逮捕出来ねェならきっと他の誰にも逮捕は無理だろうよ」
お前は俺が知っている中で、一等優秀な警察官だからな。
目も合わさずに告げられた初めての賛辞に、降谷は初めて公安の顔をかなぐり捨てて目を見開いた。叱責を食らったことはあっても、褒められたことはただの一度もなかった。返事も上手く返せない降谷に構うことなく、楠は同じ調子で続けた。
「お前だから手ェ引いてやるんだ。……しっかりやれ」
顔が赤くなる。目頭が熱くなる。しかしそれを全力で抑え込んで、大きく頷いた。
「はい」
その二文字に込められた覚悟と決意を受け取って、楠は静かに目を伏せる。
煙草の先の人魂が、淡く燻って消えた。
*
RX-7のエンジン音を見送った後、楠は改めて縁側に座り込んだ。
再び完全な静寂を取り戻した庭に向かって、冷酒を喉に流し込む。
「……すまねェな」
誰に対して、何に対してかもわからない謝罪を、風に乗せた。
昼間、ポアロで降谷の姿を見たとき、彼が何をしているのかを察したとき、不思議なほどあっさりと捜査をする気が失せていた。妻にいいところを見せるのだと、自分が逝ったときの土産話にするのだと、自分でもそう意気込んでいたというのに、降谷が同じ連中を追っているのだと察した瞬間に、思ってしまったのだ。これは、自分の出る幕ではない、と。
「……俺も焼きが回ったかねェ」
降谷に言った言葉に、嘘はない。
あれほどの頭脳、知識、腕っぷし、立ち回りの器用さ、そして揺らがぬ心根の全てを含めて、降谷より優秀な警察官を楠は知らない。警察学校の時点でそうだったのだから、今は経験を重ねてさらに優秀になっていることだろう。
諸伏の死を伊達に伝えてきた経緯から、降谷がチヨダにいることは察していた。降谷ならば公安でも十分にやっていけるだろうと思ったし、実際そうなのだろう。今も降谷は、「公安捜査官として」楠の家を訪ねてきたのだから。
ひどく優秀で、数日とはいえ自分の教え子と言える警察官。その彼が奴らを捕まえようとしているのなら、自分の事件に手を出すなと言うのならば、それはきっと、手を出すべきではないのだ。
現役の自分でも、自分の事件に横やりを入れてくる隠居のジジイがいれば真剣に噛みついていた自信がある。
「……老兵は死なずってか」
老兵は死なず、ただ去り行くのみ。
少し前までの楠ならば、去るかどうかはテメェで決めると言い捨てただろう。だが、白いスポーツカーに乗り込む、まっすぐに背筋を伸ばした教え子の後ろ姿を見た今では。
「……」
もう一杯、お猪口に酒を注ぎいれる。
自分の中に渦巻く寂寥と安堵を、酒に溶かして喉に流し込んだ。
*
かららん、と軽いベルの音が店内に響く。
ゆっくりと杖の音を響かせて入ってきた客に、コナンはうえっと顔をゆがめた。それを見て楠は、楽しそうに口元を歪める。
「よう坊主。よく会うな?」
「……本当だね楠さん」
いやアンタわざとだろ、と半眼になるコナンの頭をいつものようにぐしゃりと撫でた。そして、よく見知っているようで知らない顔をした彼に、楠は目を向けた。
「安室っつったか兄ちゃん、ホット頼むわ」
「はい、かしこまりました」
傍目には全く顔色の変わらない安室だが、楠にだけはわかった。安室の目は語っている。アンタ何でまたここに来てんだ、手を引くって言っただろ、と。面白そうに楠も、目線だけで返す。手を引くとは言ったがもう来ねえとは言ってねえ、と。
二人の顔を交互に見るコナンは、ただただ戸惑った顔をしていた。
「……二人って知り合いなの?」
「いんや?前にここで会ったっきりだ」
「そうだよ。毛利先生から噂は聞いているけどね」
現役時の雄姿を熱弁されましたよ、と安室が言うと、何話してんだあの野郎は、と楠は苦笑を零した。あまりにナチュラルに交わされる会話に、コナンは瞬きをすることしか出来ない。何かしら繋がりがあるのかと疑っていたが、この調子では何も読み取れそうにない。
腹芸という意味では一枚も二枚も上手なのだろう二人を見ていると、何となく悔しい。
「まぁそう拗ねんな坊主」
「拗ねてないよ」
「何を拗ねてるんだい?」
「だから拗ねてないってば!」
そんなコナンに楠はからからと笑い、安室もくすりと微笑みを零した。
拗ねてねェ奴の顔じゃねえよ、と楠に言われ、コナンは頬を膨らませる。そうやって大人しくガキの顔をしていればいいものを、と楠は心の片隅で思った。
「坊主よ、あんま危ねェことすんじゃねェぞ」
どこか改まった調子で言う楠に、コナンは一瞬固まって、小さな声で言った。
「……しないよ」
どうだかなァ、と楠は安室から受け取った珈琲に砂糖を入れる。スプーンで珈琲をかき混ぜるその横顔は、コナンの目には何となく寂し気に映った。
しかし、再びその目がコナンに向けられたときには、いつも通りの楽し気な色に戻っていた。
「そうだ坊主、大人しくしてたらおいちゃんが面白い話をしてやろう」
「面白い話?」
「ああ、迷宮入りした事件の話とか」
「聞きたい!」
ぱっと食いついたコナンに安室は苦笑する。そうだろうそうだろうと楠は楽し気に笑った。この子供の好奇心の強さは把握している。
「あとな、おいちゃん引退前にちィとだけ警察学校で教えてたこともあってな」
「え!そうなんだ」
ぴくり、と誰にも気づかれないところで安室の指が震える。
何を言うつもりだアンタは、という目線をひそかに楠に送るが、楠は欠片も気づいていないという振りをして続けた。
「そんとき面倒見た奴らがそりゃァ問題児どもでなァ、面白おかしい話が山積みよ。聞いておくといいかもしれねェぞ?いつ何の役に立つとは言わねェが」
頭の上に?を浮かべたコナンは一瞬考え、はっと安室を見る。そして改めて楠に顔を戻して、ひときわ大きな声で「聞きたい!」と叫んだ。
「楠さん僕その警察学校でのお話聞きたいなぁ!」
「そうかそうか、じゃあ危ないことしねェって約束できるな?」
「する!します!」
「コナンくん少し声が大きいかな?あと楠さん珈琲のおかわりとケーキサービスしますよ如何ですか?」
全力で食いつくコナンと、いつもより少しだけ話すスピードがはやい安室に笑いを堪えながら、楠はいつになく穏やかな気持ちで改めて口を開いた。
降谷さんが彼らとの思い出話をできる相手はいるのだろうか、と。
お付き合いありがとうございました。