目指せ813個のスキルすべて活躍! 安心院さんのスキルを使う少女のヒーローアカデミア 作:U.N.とーすた
ら
最初の種目は50メートル走。一度に二人ずつ走り結果は瞬間移動にも対応できるようゴール地点に置かれた機械で計測するそうだ。
「ハッ!」
現在の最速記録は飯田天哉の『エンジン』の個性にモノを言わせた3.04秒。
本人は速く走れる個性だと言っていたが、個性ターボではなくエンジン。発電をしたり燃料のない車を動かしたりと813通りしかないボクと違い応用も効きそうだ。
次点で轟焦凍と芦戸三奈。氷や粘性の毒を使うことでどちらも足元の摩擦を減らし3.8秒代を出した。
そして次の走者はボクと峰田くん。
……こちらに向けられる視線を感じ横を見るとこちらを凝視するボクより小さな姿がある。
「前から見ると分からない大きさだが横から見ると少しある……走ると揺れるかな?」
――瞬間移動のスキル
相澤せんせの合図と同時にスキルを使いゴール手前まで瞬間移動。見えるもんなら見てみやがれ。
『ピピッ、0.64秒』
クールタイムの存在するスキルだけにあまり使いたくはなかったのだが全力を出せと言うなら仕方ない。何よりキモかったし。
「次は上体反らしな。ただし背筋を使わなくてもいい。できるだけ顎を高く上げろ」
測る人、測られる人に別れスタート。
偶数人なのでハブられる奴はいないはずだが、僕の前には誰もいない。
なぜって? 相方が『透明化』の個性の葉隠透だから。解除不可の透明化なんてボクと同じ過負荷みたいな個性なのに本人は元気いっぱいで敗北感を覚えるぜ。
「ふぅ、ハコちゃん!記録は!?」
「54.2だぜ」
「ハコちゃんもっと上だよ!私透明でわかりにくいだろうけど!」
――光を司るスキル
「鼻つままないでぇ!」
「……ズルはどうかと思うぜ?」
葉隠ちゃんと組むことになったのは相澤せんせの指示がきっかけだった。他のクラスメイト達は自由に組んだところを見るにボクなら葉隠ちゃんの『透明化』を破れると考えたんだろう。便利に使われているようで誠に遺憾だぜ。
「ささ、次はハコちゃんの番だよ!」
鼻をさする葉隠ちゃんに促されうつぶせになり体をのけぞらせる。
「記録は46.9!もっと行けるよ!」
無茶言わんでくれ……これが限界だぜ……
無論、スキル無しならな
――首を伸ばすスキル
首がぐんと斜め上に向かって伸びていく。角度は変わらなくても距離があれば顎と床の間は長くなる。
「……うわぉ 140だ……」
見た目は大分やばくなるがコレなら記録がのびる。なお真横から聞こえる葉隠ちゃんの声はドン引きしていた。
八百万ちゃんと峰田くんが顎と床の間にモノを敷き詰めることで幾らか記録を伸ばしていたが他にぶっ飛んだ成績を残した人はいなかった。
「で?品口なにをした?」
相澤せんせが呆れたようななんとも言えない顔で詰め寄ってくる。
3種目は握力。いかなる手も使って握力計の数値を増やせとのことだった。
「記録は測定不能。サブシステムによる概算は400万気圧を優にオーバー。これ地球の中心圧より高いんだが?」
「......ブラックホールを少々」
「…………」
――ブラックホールを操るスキル
握力計を握った手のひらに一瞬ブラックホールを生み出し握力計にのみ作用するように操る。
結果、ブラックホールに引かれるように変形したerrorと表示した握力計が完成する。
目を見張る記録としては複数の腕で同時に握った障子目蔵くんが500キロオーバー、八百万ちゃんが万力を生み出し数トンを記録している。
なお授業後八百万ちゃんに呼びだされ、ブラックホールを生み出したことについて凄い怖い顔で忠告された。
なんでも『創造』の個性を持つ彼女は幼い頃からで命と天体は絶対に作るなと家族から教育され、それと知識と相まってボクのブラックホールを使ったという話を聞いて気が気ではなかったそう。
確かに原子配列まで覚えたものを作り出せるという個性で適当な原子を超超高圧状態で生み出せばお手軽にブラックホールを作れるから個性と相性最高な分恐怖も一入だったろう。
……星を降らせるスキルとか使った日には八百万ちゃんはどんな顔をしてくれるのだろうか?
――軟体のスキル
邪悪な思考をしながらぴったりなスキルで長座体前屈伸で無双し
――人体を操るスキル
『模糊』の個性により非力な筋肉を補うように自らの体を操り、非人間的な動きで上体起こしでも群を抜いた記録を立てる。
ふむ、周りからの目が尊敬から珍獣を見るような目に変わってきたがするぜ。
再びグラウンドに出て幅跳び。カエルの跳躍力の蛙吹ちゃんや爆破の爆豪くん。モギモギによるバウンドで記録を伸ばした峯田くんを筆頭に素の身体能力の高さも相まって高校生とは思えない記録が次々と出る。
「すげー品口ちゃん以外で初めての無限でたぁ!」
「い、いぇい…!」
麗日ちゃんが吐きそうになりながらも『無重力』で最高記録をマークしたようだ。
「つぎはついに品口さんの番ですわ」
八百万ちゃんがそう言うと全員から何をするのかという期待と恐れを含んだ目線が送られる。飛行するスキルで無難に終わらせようかと思っていたが変更。
期待を裏切るわけには行かないもんな! サーカスのような一発を決めてやるぜ。
――銃火器精製のスキル
で人一人がすっぽり入れそうな口径の大砲を作りだす。
「えっ大砲!?」
「まさか……」
サッシのいい緑谷くんと他数名は気づいたようだ。そうだともキミらの想定通り、その通り!
ボクが大砲に入りに準備オッケー。
ドン!という破裂音とともに派手に煙が撒き散らされる。
――人間大砲のスキル
撃ち出されたボクは50メートル程飛び着地。きっちりポーズも決めてクラス二番の成績となった。
「品口さんに負けていられませんわ!」
お次は爆豪くんが見せてくれたボール投げ。やる気満々な八百万ちゃんは幅跳びのときのボクに対抗するように口径をボールほどの大きさに調節した大砲を生み出し射出。
球が軽いためか爆豪くんの記録844mには惜しくも届かなかったが800m超えの大記録を打ち立てた。
「さあ、次は品口さんの番ですわ」
「別に順番は決まってないだろ……まあせっかく敵視してくれてるし、正面からぶちのめすぜ。その大砲借りるね」
「え、ええ…いいですわよ」
「相澤せんせもそれでいいだろ?」
「……そうだな、900mを超えるなら認めよう。そうでなきゃズルとみなして即退学だ」
ボクの提案とニヤリと笑いながら提示された重すぎるデメリットにクラスメイトたちがざわつく。
「八百万さんの記録は二回ともほぼ同じだから、あの大砲の最大射程と考えていいと思う。だからただただ大砲を使えば確実に900mは超えられない」
「それに火薬を増やした程度では爆豪のやつの記録を見るに900mを超えない可能性が高いんじゃねぇか?」
緑谷くんと切島くんの言うとおり普通の手段では到達できない。だからこそ相澤せんせは許可したんだろうぜ。プルス・ウルトラってな。
――射程距離無限のスキル
大砲から射出されたボールは放物線を描くように飛んでいき最大高度を維持したまま飛翔して行く。
「……ハァ、おい品口。あの球はどのくらい飛ぶんだ?」
「着弾点をブラジル近海にしているから18000キロくらいだな」
「じゃあ、そう記録しとくからボールもう戻せ」
こんなことで国際問題を起こしなくない。と頭を掻きながら気だるげに言う。
ボールを飛ばすのと戻すのは全く別の技能なこと知ってるだろうにこの無精髭は。
――弾丸軌道操作のスキル
ちょっと仕返し。球は物理法則を無視するようにUターンして相澤センセのもとにそこそこの速度で背後から戻ってくる。
「お見事!」
「最後緑谷。しっかりやれよ」
「はい!」
死角から飛んできたボールをノールックでキャッチし、緑谷くんに投げ渡す。
ここまで大した記録のない緑谷くん。あと残す競技はボール投げと長距離走。長距離走だけにプラスに働く個性などあまりないだろうしここで好記録を出せなければ最下位確定だろう。
「やぁぁぁぁ!!」
絶叫とともに繰り出されたボールは50m手前に落ちる。
「……なんで……今確かに使おうと」
「個性を消した。つくづくあの入試は合理性に欠くよ。お前のような奴も入学できてしまう。一度使ったら行動不能になるようなヤツはヒーローになんかなれねぇよ」
「個性は戻した。ボール投げはあと一回だ。腕ぶっ壊して二回目どう投げるつもりだったか知らねぇがとっとと済ませな」
「はい!」
しばらく考え込んだあと、覚悟を決めたようにボールを構える。
「SMASH!」
投げ方はさっきと一緒。でもボールは50mを優に超えて飛んでいく。ボールが705mを少し超えたところに落下する。
「先生、まだ動けます!」
痛々しく腫れる指を見せながら嬉しそうに報告する緑谷くん。
狂気じみてて嫌になるぜ。
◇
「んじゃ、パパッと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括表示する……ちなみに除籍はウソな。君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」
総合成績は無論一位だった。え?持久走?適したスキルがないから痛みでまともに走れない緑谷くんと並んでる最下位をワンツーフィニッシュだったぜ。
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