「うわー、可愛いな~」
765プロダクション事務所。
プロデュースの電話またはメールを受け、アイドル達はぞくぞく帰ってきていた。
そのアイドル達も今は新しい衣装、さらにいうと皆と一緒に歌う時に使う服に夢中になっている。
とくに夢中になっているのはボーイッシュ娘の真だ。
「あっ、でも僕的にはもっとフリフリしても良かったかも」
真は前にも説明したように女の子に憧れている。
今回の衣装はなかなかに女の子らしく本人もかなり満足げだが、少し欲張り気味にもうちょっと可愛い衣装がいいみたいである。
「えぇ。ミキ、真君はかっこいいのが似合うと思うな」
「えー」
「うんうん」
「もう雪歩までっ!」
しかしそこに待ったをかけたのは美希だ。
美希曰く真の性格・容姿からして颯爽とした服装が良いみたいである。
真はそれに少々不服そうだが、隣にいた雪歩も大きく頷いている様子からするとやはりかっこいい服の方が似合ってるようであった。
「あぁ、お前らも帰って来てたのか」
「あっ銀時だ」
真たちが楽しそうに話しているとそこに銀時が帰ってきた。
コンビニの袋をぶら下げ気だるそうにしているが、彼は基本的にこのスタイルである。
「近くのコンビニで何か買ってきたんですか?」
「ああ、ジャンプをな」
「あっ、それ読み終わったら僕にも貸してくださいね」
「おいおい、これは銀さんのジャンプでしょ。ジャンプ読みたかったら自分で買って来なさい」
真は気を図ったかのように銀時に買い物内容を聞く。
それがジャンプだとわかるとしたり顔で、
だが銀時はその魂胆を知ってかジャンプを貸したくないようだ。
「えー、いいじゃないですか。それくらい貸してくださいよ」
「銀時ケチだぞー」
真は口を尖らせて文句を言う。
真の隣にいた響もこの話を聞いていたみたいで、一言だけだが真の方に肩を持ってくれた。
「ケチじゃねぇよ。大人の社会というものを体感さしてあげてるんだよ。金払わずに何でもかんでも手に入るわけではないということを教えてあげてるんだよ。そう考えると銀さん偉いだろ」
銀時はケチと言われて素直になると思いきや、言い訳まがいなことを返してきた。
銀時曰く社会を体験させているのことだが、真達はそう思わない。
なので真は少々反論させてもらう。
「でも銀さんが今使ってるのお金って会社のお金ですよね。給料日はまだのはずですし」
「…………」
「…………」
「まあ、それは置いといてだな」
「銀さん!? 僕今大人の意地汚さを知りましたよ!」
銀時は痛い部分を指摘され、思わず黙ってしまう。
それにより2人とも無言になってしまったが、銀時が再び口を開くと先ほどまでのことを棚に上げて
違うことを話そうとした。
真は大人の社会をある意味知った瞬間である。
「というかお前少女漫画とかの方が好きじゃなかったのか?」
「うっ。父親の影響でジャンプも見てたんですよ……一回見たら続きが気になる作品ばかり増えて……」
真の父親は男が欲しくて真に男として教育していた。
この話は本人から少し前に聞いた。
そこまで深い話はしなかったが、このことはここの事務所にいる皆も知っている話である。
銀時自身も元の世界にそういう人物がいたのは知っているので、こっちでも普通に対応している。
むしろ触っても投げ飛ばされたりはしないかので、楽と言える。
話が逸れたが、真がジャンプも読んでいるのは昔読んでいた影響で続きが気になり今も通読しているようだ。
「なるほど、そういうことか」
「そう、だから――」
「じゃあ俺は向こうで見てくらァ」
「銀さんちゃんと話聞いてました!?」
話を聞いてか聞かずか、銀時は真の言葉を無視してジャンプを読みに行く――
「銀時さん、本当に大人げないですよ」
――ことができなかった。
事務員である小鳥が横から腕を伸ばして銀時の持っていたジャンプをさっと取ったのだ。
先ほどまでデスクワークをしていた彼女だが、銀時のお馬鹿な行動に見かねてこっちに来たのだ。
「わァかったわかった。とりあえず俺がジャンプ読み終わるまで待て。貸すのはそれからだ」
小鳥に言われてかついに自ら折れた銀時は仕方なく了承したようである。
一応ジャンプを読み終わってからとのことなので、少し時間はかかるが。
ちなみに衣装の方に集中しているフリをしてしっかりと響と雪歩。
心の中では銀時に対して「働かないのかな……」と思っていたりしたが、空気を読んで一言も発しなかった。
よくできた子たちである。
「うんうん、ダメダメ」
あずさは現在事務所において応接室とも雑談室とも言えるところにいる。
あずさは何かに悩んでいるようで机に手を伸ばしは引っ込め、伸ばしは引っ込めと機械のように繰り返していた。
あずさの面前、机に置いてあるのは小さい籠(かご)に入った数枚のお煎餅である。
「やっぱり撮影終わるまではダイエットしないとね……」
どうやらこれは女の子特有の悩み事。
もともと太ってない女性でもさらにすらっとした体型を目指したいがためにダイエットという、ちょっとした女の子の病みたいなものだ。
それはあずさも同じなようで、煎餅を食べるか食べないかで悩んでいるようだ。
「たかが煎餅で……」などと思うかもしれないが彼女にとっては大切なことである。
「何してんだ?」
「きゃっ!」
とそこにアホそうな顔の銀時が頭をかきながらやってきた。
顔は少々不可解な面持ちであずさのことを見ている。
今までの行動を見られていたようだ。
銀時が突然現れたことによりあずさは思わず可愛い声をあげてしまう。
銀時の手元にはジャンプを抱えんでおり、ここに読みに来たことがわかる。
「おっ、これ食わないなら俺が全部もらうぞ」
「い、一枚だけ食べますっ!」
そういうと籠(かご)の中から一枚だけ煎餅を取り出す。
残りはしっかしと銀時の前に引き寄せられていた。
あずさは煎餅の袋を開けると凄く嬉しそうに頬張って食べだした。
「そんなに美味しいなら早く食べればよかったじゃねぇか」
「乙女には色々あるんですよ……」
頬張っているあずさを見てささやく。
あずさの言うとおり女子には色々とあるので、銀時にはわからないだろう。
もちろんプロデューサーにもわからないと思われる。
「そういうものか」
銀時もそこからは空返事であずさと同じように煎餅をバリバリと食べ始める。
ジャンプも一番最初の漫画を開けていた。
ここで注目すべきことは銀時があずさと普通に喋っているということだ。
初めて会った時告白紛いのことをしたがあの時は気が動転していたからである。
一番はあくまで結野アナであり、あずさは銀時の人生の中で本人を除いて結野アナに近かった人物であったのだ。
もちろん銀時のイメージの中での話であるが。
そのため今となってはすっかり落ち着きを取り戻し、普通に接している。
(まあ律子からも言われたしなァ……)
さらにいうと律子からは、「これからプロデューサーとして働くならうちのアイドルたちとは恋愛禁止ですよ!」と言われたのだ。
一社員である律子から恋愛したらクビと、社長でないのになぜか言われそのままどうしようもなく渋々と了承するしかなかった。
「坂田さんどうかしたんですか?」
「いやなんでもねぇよ」
煎餅を食べ終えたのだろう。
あずさが近くのゴミ箱に、ゴミを銀時の食べ散らかしたゴミと一緒に捨てていた。
だがあずさは銀時がボーっとしていることに気づいたようで、銀時に視線を向けながら少々心配そうに気遣っている。
銀時は本当に何もないよ、と手をひらひらさせて再びジャンプに読み更けていく。
「あんた、仕事よっ! 私の仕事を手伝いなさい!」
銀時がジャンプを読み始めてわずか数分後。
なぜかセンターカラーであったギンタマンを読んでいるとき、伊織が小さい胸を張って話しかけてきた。
他にも伊織の一歩後ろに双海ややよいたちもいる。
あずさはジャンプに集中している間にどこか行ってしまったらしい。
銀時はジャンプ内の作品をまだ数個しか読んでいなく満たされない気分である。
そのため、
「また後でな」
と寝転がりつつも体を彼女たちの方に向けていたのを、逆方向に向きなおして拒否の意を示した。
先ほどまで『いおりん! いおりん! いおりん! いおりん!』とどこかの宗教かのようなかけ声を連呼しているのを銀時は読んでいる間に聞いている。
何をしているのかと思いつつも、それほど興味もなく今はジャンプの方が大事だと思ったので最終的には気にかけなかった。
「むっ、そんなこと言って。社長に言って給料なしにしてもらうわよ」
「あぁ? お前にそんな権限ないだろ。寝言は寝てから言えよ」
銀時は本気で相手しているというわけではないようで、伊織のとは逆の向きになおり再びジャンプに目を傾ける。
「もういいから手伝いなさいよ! あんたここのプロデューサーでしょ! ということはこのスーパーアイドル伊織ちゃんの奴隷と同じようなものなの。 だから……」
「ああもう、ピーチクパーチクうるせーな。中二の夏のノリですかコノヤロー。今は
伊織はなかなか言うことを聞いてくれない銀時に少々ヒステリックになるも、まだ従ってはくれなかった。
伊織の隣にいる、亜美・真美は「頑固だなー」などと呟いていたがそれほど銀時にとってジャンプが重要なのだろう。
同じく伊織の隣にいるやよいは「もう止めようよー」とたしなめていたが伊織は諦め切れないようだ。
「!」
銀時の頑固さに少々諦めようかと思いもした伊織だが、何かここで思いついたようだ。
今度は「にひひっ」と黒い笑い方をしながら銀時に歩み寄る語りかけてくる。
「ああ、何か急にパフェを奢りたくなって――」
「さて俺がやる仕事は何なんだ?」
なんと銀時は伊織が話し終える前に遮って、仕事内容を促してきた。
顔も先ほどのだらけていた物とは違って、キリッとした顔持ちになっている。
ジャンプは横に置き、
「にひひっ、そうこなくっちゃ」
銀時が仕事を受けたこと、見事餌にかかったことの喜びについつい笑みをこぼしてしまう。
そこからは二人の世界、伊織もソファーに座り仕事の話に入っていった。
伊織の横にいた少し置いていかれた感のあるやよいたちが共通の認識として思ったことが1つある。
「銀時みたいな大人にはならないようにしよう」であった。
更新しました
今回もギリギリ…
とりあえずクリスマスプレゼントとして(ry
もう一個小説投稿していたからなんですけどねぇ…
まあ向こうは超不定期更新でこっちがメインなので、こっちをほったらかすことはしないですけどね
今回で今年の更新は最後になりますね
では次回もよろしくお願いします