律子にこってり絞られて十数分後。
彼女らはスタジオの端に座っている。
銀時は煽った原因、大人の対応として未熟などとしてさらに奥でいまだに律子に怒られている。
「化粧落ちたか?」
プロデューサーは伊織たちの前に立っており、心配するとともにちゃんと化粧を落としたか確認している。
プロデューサーはちらりと銀時の方を向くと、茶化さないで大人しく正座していた。
銀時曰く「律子の後ろに般若が見えたからさすがに逆らえねぇ」だそうだ。
ちなみに真美がそのことを律子にばらしたので、お叱りの時間は追加されている。
「んー、まあ話はわかったからさ」
プロデューサーは銀時の方から伊織たちの方に目を戻すと、相手の意を酌むように話し始める。
彼女たちからはすでに「何であんな格好をしたのか」ということは聞いている。
理由を聞く限り彼女たちにはあまり非がないように感じたのがプロデューサーの第一印象であった。
「じゃあどうすればよかったのよ」
「そうだよ。真美たち超個性的だったじゃん」
プロデューサーも伊織や真美の言うことはわかっている。
「んー、つまりさ。個性はただ目立つだけじゃないっていうか……」
「ていうか?」
辞書で引けば「個性」の意味はわかるだろうが、言いたいのはそういうことではない。
だがプロデューサーはいまいちピンとした言葉が思いつかない。
「よし! じゃあ一緒に考えてみるか」
だからプロデューサーは一緒に考えることを選んだ。
プロデューサーは時には一緒に悩むことも仕事なのである。
「わからないんじゃないの」
「う、うるさいな」
ただ伊織からは突っ込まれてなんとも締まらないことになってはしまったが。
「あぁ~、ひでぇ目にあった……」
「ミキね、銀さんが普段から真面目にしてないからだと思うよ」
「うるせー、普段から寝てるやつに言われたくねぇよ」
「むー、ミキは仕事の時はちゃんと起きてるもん!」
しばらくプロデューサーたちが悩んでいると、奥の方から美希と銀時がやってきた。
どうやら銀時は律子の説教が終わったようだ。
ただほとんど何もしていないはずの銀時はかなりうんざりしている。
「あれ? みんなどうかしたの?」
美希はプロデューサーたちの存在に気づくと、同じような姿を不思議に思ったのか質問してきた。
今の美希はの感じの服を着ていて、それが彼女の撮影用の服装なのだろう。
「わー、何かすっごい服だねー」
美希は答えを待つこともせず興味は伊織たちの着ている服装に移っている。
「銀時さんお疲れ様です」
「本当ひでぇ目にあったぜ……元はと言えば俺は関係ないのによぉ……」
「ハハハ、銀時さんが大袈裟にするからですよ」
疲れている銀時に、プロデューサーは苦笑いしながら返す。
銀時が言うことももっともだが、プロデューサーの言うことも事実なので仕方ないだろう。
「ん? どうかしたのか?」
銀時は俯いている伊織に気づく。
先ほどまで美希と話していたということは知っているが、何やら考え込んでいるようである。
美希は番が来たので撮影しに行った。
「……美希に服装が似合ってないって言われたのよ」
「ああ、そりゃ普段と全然違うし伊織の服装らしくないわなぁ」
銀時は伊織の発言に頷く。
伊織の今の服装はやはり誰から見てもおかしく見えるのだろう。
「でもいおりんも亜美たちも超個性的でしょ」
だが亜美は反論するように、先ほど真美がプロデューサーに問いかけたことを銀時にも言ってみた。
プロデューサーと一緒に考えてみたが、やはり上手い答えが見つからなかったようだ。
銀時はため息を一回吐くと亜美たちに言う――
「個性的って本当にそういうことを言うのか?」
『え?』
今の驚きはまさか銀時が答えてくれると思わなかったことと、その返答の内容による驚きである。
銀時は伊織の隣に座り、今写真撮影している美希の方を見ながら再び話し始める。
「まぁ、俺も詳しいことはわからねぇけどよ。お前らの言う『個性』って自分らしさってことだろ」
『自分らしさ……』
「持ち味とも言うかもな。お前らのは明らかに逸脱していて自分らしくないだろ。今撮影している春香をみてみろよ」
銀時に言われ春香の方を向く伊織たち。
そこには笑顔で元気に挑んでいる春香がいる。
しばらく春香を見ていたが何もないところで転んでしまっていた。
「と、このようにどじっ娘であるのが春香のらしさだな」
『なるほど』
「なんか皆さん失礼なこと言いませんでしたか!?」
春香は銀時たちの方を向いて騒ぎだしてたが、カメラマンに止められ撮影の集中に戻っていった。
銀時たちは気づいているのかいないのかスルーである。
その後も真、貴音、雪歩と次々と写真撮影をしていく。
「らしさが出てますね」
「ああ」
『これがらしさ……』
幾分、それぞれの特徴を見てきて銀時・プロデューサーと同じく伊織たちの胸中にも同じような考えが浮かんできたようだ。
「派手なポーズが出てきない雪歩でも逆に雰囲気ではあってたのかもな……皆、自分に合うやり方が合っているんだよ」
プロデューサーも彼なりに答えを見つけ、伊織たちに少しでもアドバイスになるようにと諭すように話している。
「兄ちゃん、お兄さん。亜美も真美の超いけてるポーズとかアングル知ってるよ」
「へぇ、そうなのか」
現在は響の撮影中、響は肩にハム蔵を乗せ写真撮影をしていた。
いかにも元気いっぱい・意気揚々で見ているだけで、こちらまでもエネルギーが満ちてきそうだ。
そんな折、亜美は響のアングル話を聞いて真美の良い所をあげていく。
プロデューサーは何か思いついたのか微笑んで頷いた。
「ああ、そんなの真美だって」
「亜美のはね、こっちからこうでしょ」
「真美はこっちからこうで」
「じゃあそれで撮ればいいじゃないか(だろ)?」
『ほえ?』
亜美が真美の良いポイントをあげていくと、対抗してたか真美も亜美の良いポイントをあげ始めた。
とても息が合っていてる。
そして銀時と重なったが、プロデューサーは二人で撮ればいいんじゃないかと勧める。
「そっか、2人の良いところ」
「あんたたちが一番知ってるかもね」
やよいと伊織も同じように合点がいったようだ。
2人は自分のことのように嬉しがっていた。
『そっか』
『だよね!』
双海も皆に言われ肌を掴んだようだ。
「兄ちゃん、真美たち先に準備してきてもいい?」
「ああ」
「亜美たちのスペシャルポーズ楽しみにしててね」
そこからの双海たちの行動は早くプロデューサーに許可を取ると風のようにこの場から離れて行った。
去り際にプロデューサーと銀時に言った言葉は自信を感じるもので、彼女たちはしっかりとした道をみつけたのだろう。
「いいわよね。響も亜美たちも」
一寸前は嬉しそうにしていた伊織だが今はもの欲しげな様子で、双海たちの去った方を見ていた。
気づかずかそれは口からも出ていて、その様子は寂しげでもある。
「べ、別に。ああいうのちょっと羨ましいと思ったらいけないわけ!?」
「い、いや……」
伊織は自分でも自覚していたのか銀時やプロデューサーが言う前に逃げ口上を先に言う。
さらにふん、とそっぽを向きながら言うあたり明白だ。
プロデューサーはそのことに苦笑いしているが、理解もしているのだろう。
「まあそりゃあ、あいつらずっと一緒にいるんだろ? 俺来たばかりだからあまり詳しくねぇが、双子ならお互いのことはよく見えてるだろうしなァ」
「そうよ。どっかの天パと眼鏡のプロデューサーよりもよっぽど頼りになるわよね」
「うっ」
「おめぇな……」
自覚がないだろうが銀時は伊織の素振りを見てか、擁護するように伝える。
それに自信を取り戻したのか、それと同時にプロデューサー2人を小馬鹿にしていた。
恩を仇で返すとはこのことだろう。
「そういえば伊織あの兎はどうした?」
「え?」
「いつも腕に抱えてるよくわからねぇ兎だよ」
「シャルルのこと?」
銀時は不意に思い出したことを、伊織に兎のことを言い出した。
兎とはいつも伊織の抱えている耳にアクセサリーをつけた人形のことである。
そしてその名は伊織曰くシャルルと言うらしい。
「あっ、そうだよ! 伊織ちゃんはシャルルと小さい時からずっと一緒にいるんでしょ?」
「あっ……」
やよいも気づいたようで伊織に話しかけた。
伊織もやっと察したのか、自分の後ろに置いていたシャルルの方を向く。
「ああ、そういえば確かにいつも持っていたよな。そういうものこそ何かのヒントになるかもしれないな。今日はシャルルは留守番なのか?」
プロデューサーは確かにと合意しつつ置いてあるシャルルを取ろうとする。
だがそれより先に伊織がひょいと、自分のものだと主張するように取り上げた。
「そうよ。ちょっと留守番してただけよ」
可愛げない言い方だが、素直になれないためこういう言葉使いなのだ。
プロデューサーどころかやよいにも顔を合わせないので照れているのかもしれない。
「おっ、じゃあ今からはシャルロットと一緒に撮るのか?」
「シャルロットじゃないわ、シャルルよ。でも、ん……そうね」
「大丈夫、伊織ちゃんならきっと似合うよ!」
伊織はシャルルを「高い高い」をするように頭上に持ち上げる。
改めて確認するようにはたまた自分を言い聞かせるように、伊織はシャルルと一緒に撮ることを決めた。
やよいも後押しするように賛同している。
ちなみにプロデューサーは千早が何か困っているとのことなのでそちらの方に行った。
数分後、そこには着替え終わった伊織がいた。
その衣装とは普段から着ている服である。
だがその服は先ほどまでふざけているように着ていた服とは違い妙にしっくりくるシャルルとの相性もばっちりな衣装でった。
「じゃあ今から撮影か」
「そうね。コンセプトはナチュラル・プリティーな伊織ちゃん。どうかしら?」
伊織は自分の姿を見せつけるようにスカートの端を持ち上げた。
その姿はダンスのお誘いをするような綺麗な姿である。
この時は伊織が良いところのお嬢さんだと銀時はまだ知らない。
「まあいいんじゃないか」
「レディにはもっと言い方っていうものがあるんじゃないかしら?」
「あー綺麗だな」
「もう……プロデューサーに許可もらってくるわ」
適当に褒める銀時。
銀時の場合褒め慣れていないというより性格の問題だろう。
伊織もそれには諦め、呆れてしまった。
ただ機嫌は良いのか伊織は銀時に大した文句や不満も言わずプロデューサーの方に向かっていった。
許可は実際取らなくても良いのだが、やはりそこはアイドルである。
プロデューサーにも改めてあの服装を見せたいのだろう。
「でやよいはどうするか決めたのか?」
プロデューサーの方にいった伊織を目を注ぎつつ、やよいにも問いかけた。
伊織は無事に決まったが、やよいの方はまだ決めていないのだ。
「あっ、はい。だいたいですけど」
だが銀時の心配とは裏腹にやよいは決定していたようだ。
だが顔はどこか浮かないようであるがその一時銀時はまだ伊織の方を向いていたため、気づかなかったみらいである。
「そうか。じやあ俺は用なしだから部屋に帰るかなァ」
「あの……その前に私のいつもの服はどう思います?」
「いつもの服って……どんなんだ?」
銀時はそれなら大丈夫だろうと部屋に戻ろうとすると、やよいに尋ねられた。
やはり不安そうな顔でいつもの服について聞かれる。
けれども銀時はいつもの服というのが思い出せず、やよいもガクッとお笑いのコントのようになってしまう。
銀時には記憶力というものがないのだろうか。
「『いつもの服』って言うのはやよいが普段着ているオレンジ色のパーカーのことでしょ」
そこに帰ってきたのは伊織だ。
伊織は忘れている銀時に説明する。
追記するとやよいはそこにカエルのポシェットもつけていたりする。
「あぁ、あれか。って伊織帰ってくるの早かったな」
「言ったでしょ。許可をもらってくるって。用事は本当にそれだけだったのよ」
銀時も説明されようやく思い出す。
銀時はそれに納得するが、今度は早かったなと伊織に伺う。
伊織は銀時の質疑に簡潔に答える。
今はやよいに注視しているためでだ。
「やよいのいつもの服……凄く良い……と思うわよ」
「ありがとう伊織ちゃん! この服、お母さんがアップリケをつけてくれたお気に入りだったの。じゃあ私この服で撮るね! うっうー!」
だがいざとなると上手く言えないのか、普段高飛車気のある彼女は照れ隠ししながらやよいの服装を褒め称えた。
やよいはそれでも大切な友達に褒めてもらったのがとても嬉しいらしく、さっきまでの憂い顔が晴れ晴れとしたものに変わっていた。
やよいは口癖を
「お前もやよいも決まって良かったな」
「ふん。ちゃんとあんたも役に立つことできるのね、見直したわ」
「ああ、どうってことねぇよ」
銀時は何気なく伊織に「問題なくなったな」とこの状況で話しかける。
伊織は自分の道にヒントをくれた銀時に内心素直に感謝している。
表向きは少々ツンケンしているが、彼女の性分致し方ないのである。
「あと……」
「あ?」
――――だが今回ばかりは違う。
「ありがとう、銀時」
彼女はちょっぴり素直になったのであった。
「ふーん」
「な、何よ」
「うんうん、別に」
撮影が無事に終わって、幾許か。
そこには出来上がった写真とともに笑顔になっていたアイドル、それにプロデューサーがいた。
伊織も出来上がった写真を見ていると、後ろから美希が覗いてきた。
美希は伊織が写っている写真を見て一人納得していた。
その表情には「自分の言った通りになったね」と誰から見てもわかるもので、伊織もそれがわかりむすっとしている。
美希はその表情の変化に気づいているため、それ以上は言わない。
「うん、まずまずでしょ」
「まずまずどころか見違えるくらいにイメージアップですよ」
アイドルたちの後ろに控えている大人たち。
銀時もプロデューサーの隣にいる。
ただ控えていると言っても控えている(目立たない)という意味ではなく、テンションのボルテージは上がっており目立つは目立つ。
部屋の中でアイドルたちも写真を見ているため、気にはしていないが。
「ふふふ、これなら次のオーディション……」
「えぇ」
『いける!』
今言えることは、今回の写真撮影で仕事が取れるとは限らない。
プロデューサーたち、そしてアイドルたちので努力次第だ。
だがこの調子なら勢いで大丈夫かもしれない。
「プロデューサー! 銀さん!」
「どうした ?」
「なんだ?」
「善澤さんに皆の写真褒められちゃいました!」
善澤さんとは765プロの社長であると旧知の仲である人物だ。
よく765プロの事務所にお邪魔しており、その折アイドルたちも知り会っていた。
銀時も先日たまたま会ったので、面識はすでにある。
やよいは自身だけでなく、第三者の目からも良いと言われて嬉しいのだ。
「へぇ、良かったじゃないか。皆の良い所がちゃんと撮れたってことだよ」
「ああ、良かったな」
プロデューサーはさぞ嬉しそうに、銀時も口調は適当だが笑っている。
「ちなみにここに兄さんの写真もあるよ」
「お前いつの間に撮ったんだよ……」
真美が銀時に見せて来たのはメイクでいたずらされた時の写真だ。
銀時が寝ている姿から起きる前の、それもいたずら直後の写真だろう。
ちなみにこの後真美・亜美がこの写真を見せ回って、事務所内に笑いとトラウマと相反する感情を植えつけていったという。
ただ社長だけは大層喜んでいたようだったのは更なる余談だ。
「あのプロデューサー、銀時さん。手をあげてもらっていいですか?」
やよいは男2人に手をあげるようにお願いする。
何か考えがあるのは一目瞭然で、よやいのことのなのでいたずらなどの類ではないだろう。
そのため2人は素直に挙げる。
「こうか?」
「ほらよ」
「ほら、伊織ちゃんも」
同じように伊織にも挙げるように言うと、やよいも手を挙げ元気よく
「うっうー、いきますよー! ハイタッーチ!」
『いえい!』
「いえい」
4人でしたのはハイタッチ。
お疲れ様でしたという意味、上手くいってよかったという趣旨。
――――そしてこれからも頑張ろうという気合を入れたのであった。
「さあ、765プロの快進撃はこれからよ! ガシガシ仕事を取りまくるんだから!」
「りっちゃーん、それ打ち切り漫画の最後みたいだよー」
「『俺たちの戦いはこれからだ!』と同様のレベルだな」
「ちょっと縁起でもないこと言わないで!」
銀時と亜美は冗談を飛ばす。
もちろんそれは冗談で、その冗談に部屋ないは笑いに包まれる。
銀時はその後机の方にふと、目を向ける。
そこにはアイドルたち全員が同じ衣装を着て笑顔の写真が写っており、これからも大丈夫だと予感させてくれるような心地よい笑顔だった。
プロデューサーさん、映画ですよ!映画!
ということでアイドルマスターの映画決定ですね
いやー、楽しみですねぇ
あと平田宏美さんおめでとう!(菊地真の中の人)
ぷちますもなかなか人気ですし、色々と嬉しいことが重なりますね
あとお気づきでしょうか
伊織が今回初めて「銀時」と呼んだことを
2話ではこれがやりたかったんですよねw
たぶん次回から「あんた」ではなく「銀時」と呼ぶかも…?
次回はちょっと思いついた番外編かな?
では次回もよろしくお願いします