スーパーロボット大戦K ~夜霧とミスト~ (旧題:俺をさんづけで呼ばないで ) 作:トカGE
ドーモ、ミナサン。ヨギリ=ショーヤ、デス。最初の暴動からはや半年、暴動の頻度は少しずつ上がっていった。最初はあんなだったミストさんも、今では積極的に鎮圧任務に赴いている。一人でも悲しむ人を減らしたいらしい。ええ子や……子供の頃から知っている身としては感慨深いものがあるね。
しかしこれだけ暴動が頻発するようになってきているってことは、そろそろイディクス襲来も近いってことか。ちなみに俺は原作知識をミストさんに直接教える気は今のところない。展開が予測できなくなるからって理由では無い。
だって元がスパロボKだし。各作品のキャラがスパロボK準拠の性格なのか原作準拠の性格なのかが現時点で解らないが、どっちなのかによって展開は大きく変わってしまう。それなのに今から展開の変化がとか言っていてもしょうがない。と言うかそもそもミストさんに憑りついた時点でシナリオ面での原作知識アドバンテージなんてぶん投げている。
教える気が無い理由はただ一つ。『ミストさん達を無駄死にさせたくない』からだ。下手に原作知識があると、ミストさんらはアトリームを守る為にクリスタルハートを自己犠牲の心で動かして突撃をかけると思う。
そうなったらもうミストさんらの生存ルートは無いと思っていい。レヴリアスやセリウス単体だとクリスタルハート単機の出力だから負ける。原作知識使ってソルヴリアスを開発中止させることなく創り上げたとしても、結局ミストさんとアンジェリカが犠牲になってしまう。
だから俺は何も教えない。もし俺の行動でアトリームが救えたとしても、ミストさんが死ぬなら俺はなにもしない。自分が死にたくないと言うのもあるが、さすがに数年間脳内兄貴なんてやっていたのだ。愛着がわかないわけないだろう? いや、この先ミストさん化が進んだらわからんがね。
数週間後、ついにその日が訪れた。突如現れた時空間ゲートから現れた軍勢。間違いなくイスペイル配下の部隊だ。そうして始まるイディクスによる侵攻。最初は防衛隊によって押し返されていたが、時間が経つにつれ徐々に形勢が逆転していった。ミストさんは単純に敵が本気をだしてきたからだと思っているけど、これ実際には敵の攻撃と言うよりは、『欠片』の影響を受けやすかった人らが同士討ちしてるんだろうなあ。上層部の方で情報統制しているのだろうけどいつまでもつのか。
「なあ、しょーや。なんか状況を打開する手は無いのか? このままじゃ被害が広がる一方だ」
基地での待機中、ミストさんがそんなことを聞いてきた。敵のゲートを使った転移戦術によって市民にも少なくない被害が出ている以上そう思うのも当然か。ここは原作の展開を後押しするべきか?
《そうだな、少数精鋭で敵の頭の首を獲るって手はあるが》
「ああ、確かにそれはありかも。相手は巨大生物じゃなくて統制された軍だし」
まあ、実際は最終鬼畜全部ル=コボルで巨大生物と変わらない訳だけど。
「とりあえず、おじさ……隊長に進言してみるよ」
俺の意見をミストさんがエルリックに伝えると、すぐに精鋭部隊が編成された。まあエルリックはル=コボルの事を知っていたみたいだったし、戦いが長引くほど不利になると解っていたのだろう。
ちなみに部隊編成の中にはエルリックとミストさんの名前はあったが、アンジェリカの名前は無かった。
「あれ、隊長。何で俺の名前が? それとアンジェリカは行かないんですか?」
「俺はお前に期待してるんだぞ? まだ未熟な所はあるが、お前は十分強い。自信をもて!」
「は、はい!」
そりゃ伊達に長年鍛えさせてませんし。まあ、実際は実力のほかにもクリスタルハートの事もあるんだろう。あれを搭載しようと考えたのがエルリックかもっと上の人間かは知らないが、こういう時の為だろうし。
「それとアンジェリカには私が居ない間のここの指揮を任せる。普段組んでるパートナーが居ないと言うのはやりづらいだろうが」
「いえ、大丈夫です。それにあいつが居ないから何も出来ませんでした、とか恥ずかしすぎますし」
「違いない」
さあ、ここまでは順調だ。後はベザード転移まで変なことが起こらなきゃいいが。
現在、ミストさんが組み込まれた小隊はイスペイルが駆るエンダーク……と思わしき機体と戦闘中だ。思わしき、と言うのは機体の形状が微妙に違うからだ。滅ぼした文明の技術を取り込んでいるってのを読んだことがあるから、おそらくアトリームを滅ぼして文明を取り込んだ後でまた改修するのだろう。でも本編じゃアトリームの技術は別に取り込んでない的なこと言ってた気がしたんだが……ただの挑発だったっけ?
しっかし……
「なんというか、ツギハギって感じだな」
《だよな、節操なしって感じ》
そんな会話(はたからみれば独り言だが)をしていると、突然通信が……って相手UNKNOWN?
「ツギハギとはなんだ! このエンダークは私が作り上げた、様々な文明の技術の結晶だぞ!」
何してはるんですか、イスペイル様。
「うわ、なんだお前! あの機体のパイロットか!?」
「ふん、貴様らの機体内の会話データは全て収集させてもらっている」
盗聴ですかイスペイル様。あんた科学者の悪意の結晶から生まれたんじゃなくて、変態の悪意から生まれた存在だったのか? あ、でも犯罪者の悪意の結晶との合いの子だったっけ? ヤバい、うろ覚えだ。
「そんなことより訂正しろ! この機体はツギハギではない! 私の技術の結晶だ!」
あいつ、さらっと自分の技術発言したぞ。なんて奴だ。
《よし、ミストさんおちょくってやれ!》
「いや、何で!? ……あ、そう言うことか」
最初は混乱していたミストさんだったが、さすがに付き合いが長い。すぐに俺の意図を読み取ってくれた。さあ、正論のお時間です。我が教育により、ミストさんはひたすら正論を言うことがどれだけ相手を怒らせるか身をもって知っている!
「でもそれってようはパチモンってことですよね?」
「な!?」
「貴方自身が技術者として優れている訳じゃないですよね?」
「なんだと!?」
「その機体も結晶と言うより寄せ集めって感じじゃないですか? 子供の考えた『さいきょーろぼ』っていうかなんていうか」
「貴様!!!」
「でも、そんな風に激昂しても、根本的な解決にはなりませんよね?」
「あががががが!」
「自分自身の技術ってものでも産み出してみたらどうですか? あ、ダメだからパクってるんですよね?」
「 」
「つまりダメダメってことじゃないか!」
「うがああああああ!」
その言葉にブチ切れたらしく、イスペイルの奴は急にミストさんを追いかけ始めた。ミストさんの煽りスキルはさすがやで! あらゆるプレイヤーの堪忍袋の尾をブチブチぶった切っただけはあるぜ……何が怖いって、俺が矯正してもこれって事なんだよなあ。
まあそれはともかく計画通り。イスペイル様、簡単に挑発に乗ってくれやがりました。
「いいのか? こっちばかり見てて」
「後ろががら空きだぞ!」
「な!? うおおおお!」
周りが見えなくなったイスペイルのエンダークを、エルリックのレヴリアスが背後から急襲する。彼の放ったステアードによる斬撃がエンダークの背中を切り裂く。
ふふふ、計画通り!科学者プラス犯罪者……凄く、戦闘に不向きです……君は悪くないが君の元になった悪意がいけなかったのだよ!
「バカな! こんな!」
「今だ! 一斉攻撃!」
「了解!」
エルリックの指示の元、ミストさんを含めた全隊員が集中砲火を加える。
「ぐ、ぐううう!」
だがさすがのエンダーク。それでも精々中破と言ったところか。
「そ、その程度でこ、このエンダークが落ちるとでも!?」
強がってはいるけど、イスペイルの奴めっちゃ汗かいてる気がする。声しか聞こえねえけど。にしても結構あっけなくないか? そんなことを考えてた時だった。
《がっ!?》
「どうした!」
《いや、何でも……ない?》
「ならいいんだけど」
なんだったんだ、今のは。なんか急に激痛が走ったぞ。体なんて無いって言うのに。
「あれは!?」
ミストさんの声に意識を外に向けると、いつの間にか新たな時空間ゲートが出現し、そこから新たな機動兵器が姿を現そうとしていた。ついに来たか。ツギハギの王様。幹部の力の全てを手にするもの。ル=コボルの機体。
―――グスタティオ―――
いや、というかあいつが来たときに異常が起こるって、なんか俺に変なフラグたってねえ?
フラグは回収するものかそれとも折るものか。