スーパーロボット大戦K ~夜霧とミスト~ (旧題:俺をさんづけで呼ばないで ) 作:トカGE
うん、一人称の方が書きやすいや。
グスタティオが出現すると同時に、ミストさんの仲間たちはそれに向かって行った。
「ま、待て! お前たち!」
「な、皆! どうしたんだ!」
《これは……!》
そうしてグスタティオに一瞬で返り討ちにされた。たぶん、ル=コボルによって刺激された悪意……たぶん殺意か? それをグスタティオに向けて突っ込んで行ったんだろう。殺意が向く先がミストさんやエルリックじゃなくてよかったと思ってしまう俺は非情だろうか。
「なんなんだ、あれは」
《さて、敵の新手であることは間違いないだろうが》
新手と言うか親玉なんだがね。グスタティオはスパロボKのラスボス『ル=コボル』の乗機だ。まあ全体の黒幕としてはチャロンのあいつで、ル=コボルもいいように使われているだけって感じではあるのだが。
それはともかく、こいつはイディクスの幹部共の機体データを統合して作られた機体で、その能力は今フルボッコにされていたイスペイルのエンダークとはけた違いだ。原作ではそれを感じ取ったエルリックが、こいつを倒さないとアトリームは終わりだってんで自己犠牲の心でクリスタルハートを起動、相討ち狙いに行ったものの届かず捕縛されるんだっけかな。よく数年前のゲームの設定覚えてるな、俺。たぶんうろ覚えになってる部分もあるだろうけど。
結局この後プラネット・クライシスが起動されてアトリームは滅びてしまう訳だが、この特攻によりミストさんは惑星ベザードに飛ばされ、そこでもう一人のヒロインであるシェルディアと出会うことになるわけだ。
ほんと、どうしようね。人の恋愛には口出しするのもあれだが、もしシェルディアといい雰囲気になりそうになったら、アンジェリカを泣かせるなとだけ忠告するべきだろうか。
「遊びが過ぎるぞ」
「な、何故ここに!?」
《ん、これは……》
「しょーや、これって」
《少し静かに》
突然、レヴリアスのコックピットにイスペイルとル=コボルの会話が聞こえてきた。どうやらさっきイスペイルがつないできた通信のラインがまだ生きているようだ。
《あいつらの情報が少しでも欲しい。ちょっと聞いて居よう》
俺の言葉にミストさんがコクリとうなづく。原作知識は役に立たないとは言ったものの、まるで価値が無いと言う訳でもない。この世界の現実とのずれを修正できれば、少しは役に立つかもしれない。そう思って、奴らの会話を盗み聞きすることにした。なんで気づかないんだろうね、イスペイル。
「我々の『欠片』を強く宿したものが居たからな」
「なっ! いやしかし、そんな気配はどこにも」
「お前たちでは気づけまい。奴らの宿す欠片は特殊だからな」
「一体何の話をしてるんだ。『欠片』……それをあいつらは探してる?」
『欠片』……文字通りル=コボルの欠片であるそれは、強力な悪意の塊だ。古代クルス人の末裔は皆それを宿していて、イディクスの連中はそれを集める為に星々を襲い、プラネット・クライシスなる兵器を用いて星を破壊して欠片を回収している。で、たまに強い『欠片』をもつ奴が現れるが、そういう強い欠片は突然変異みたいなものだからプラネットクライシスを使うと力を失ってしまう上、無理やり取り込もうとすると欠片を宿した人の人格まで取り込んでしまう。だから実体をもたないル=コボルやガズムがその人に憑りついて人格を消し去りながら少しずつ欠片を取り込む訳だ。であってますよね猿渡さん!
冗談はともかく、欠片が特殊ってことは原作でエルリックが言ってた精神鍛錬論万能説はやっぱ違うってことか。たぶん『欠片』自体がクリスタルハートの起動を妨げない状態になっているんだろう。力自体は強いらしいから、スリープモードみたいな感じか?
「それにしても奴らって誰の事だろう」
そりゃ、エルリックと……後はミストさんか。確か原作でそんなことを言って居たはずだ。と言うか主要メンバーは皆特殊な『欠片』持ちだったはずだ。ミストさん、アンジェリカ、エルリック、シェルディア。クリスタルハートを阻害してしまうレムだけは例外か。
《解らんが、何時でも動けるようにしといた方がいいな》
「そうだな」
「ではイスペイル。お前は先程までお前が追っていた奴をとらえよ。我々は隊長機を捕える」
「解りました」
そうして奴らは動き出した。グスタティオはエルリック機へ、エンダークはミスト機へそれぞれ向かって行く。
「貴様はくびり殺してやりたいところだが、命令だ。捕えさせてもらおう!」
「くっ、出来るものならやってみろ!」
そう言えばこの時のイスペイル様って、クリスタル・ハート欲しがってたんじゃなかったっけ? そこら辺原作とは違ってるんだろうか。まあ、ル=コボルが居るのとミストさんが煽りまくったからかもしれんが。
本来なら今のミストさんの実力では、エンダークと渡り合うのは不可能だ。だが、先程の一斉攻撃でエンダークは半壊している。直接ぶつかり合わなければ十分戦えるだろう。だが、イスペイルもそれは解っているのか、ミストさんを揺さぶりにかかる。
「まったく、仲間が殺されたというのに臆病風に吹かれたかね? 少しはかかってきたらどうなのだ」
「このっ!」
《落ち着け、ミストさん》
「解ってる。解ってるけど!」
ミストさんの熱くなりやすい所は結局直せなかったからなあ。それでも俺の話を聞いてくれるだけましだろう。だが、一度爆発してしまえば納まる所を知らないのがミストさんだ。エルリックがクリスタル・ハートを暴走させるまでもたせられるか?
「やれやれ、ならこういうのはどうかね?」
そう言うとイスペイルは、先程グスタティオが破壊した量産型レヴリアスの残骸をこちらに向かって投げつけてきた。
「や、やめろ!」
「ふむ、無駄死にした奴らでも弾丸の節約にはなるな」
「き さ ま は」
《だめだミストさん!》
「落ちつけ、熱くなるな! 熱く……うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
《ミスト!》
俺は思わずさんをつけるのも忘れて叫んだ。だが、完全にキレたミストさんは止まらない。くそ、さっきまでは熱くさせるのはこっちだったってのに、一気に逆になっちまった。
「グルーヴァイン・バスター!」
エンダーク目がけて、最大出力で砲撃を放つ。だが、それは容易に避けられてしまった。砲撃の硬直を狙ってエンダークが放った一撃がレヴリアスを揺らす。
「何!?」
「隙だらけだぞ? それでは敵が討てないまま終わるぞ?」
「くそっ! くそっ!」
そのまま嬲られ続けるレヴリアス。このままではまずいか。
「倒してやる! 倒してやる《落ち着けこの愚弟!》……しょーや?」
可能な限りの大きな声で叫んでみた。実際には脳内会話だから声の大きさとかあるか知らんけど。それでも、ミストさんはこちらの声に耳を傾けてくれた。
《いつも言ってるだろう。落ち着け、冷静になれ。そんなんじゃまた嬢ちゃんに笑われるぞ》
「……だけど」
《それに熱くなるなと言ってるんじゃない。思考を鈍らせるなと言ってるんだ》
そうだ。戦う意志と言うものは大事だ。だが、同様に思考し続けることも戦いに置いては重要だ。
「そうだな。ああ、そうだった。ごめん、しょーや」
《気にするな。さあ、戦いはまだ続いているぞ》
「ああ!」
これでもう大丈夫だろう。たぶんこの戦いの間は。まったく、世話が焼ける弟分だ。
「ステアード、シュート!」
「くっ!」
それからはミストさんも挑発に乗ることなく、冷静に距離を取りながらエンダークにダメージを与えて行った。だが、エンダークを倒すほどではなく、こちらも少なくないダメージを受けていた。そろそろ『あれ』が起こってくれないときつい。そう思った時だった。
「うおおおおおおお!!!」
「な、何だ!?」
「隊長!?」
エルリックのレヴリアスが凄まじいエネルギーに包まれた。ようやくクリスタル・ハート発動か。原作通りいけばエルリックは死ぬわけでは無いのだが、特攻するのを止めずにむしろ待っていると言うのは、ちょっと心苦しいものがあるな。
「な、なんだ!?」
突然、機体が揺れた。どうやらエルリック機の放出しているエネルギーに時空間ゲートが反応しているらしい。少しずつだがレヴリアスや周囲の機体の残骸を吸い込み始めていた。
そしてエルリック機がグスタティオに突撃した瞬間、ゲートが暴走。レヴリアスは光に包まれた。
「隊長ーーーー!」
意識が遠のいて行く。どうやらミストさんが気絶しそうになっているようだ。それに合わせて俺の意識も閉じられようとしていたその刹那、ル=コボルの声を聴いた気がした。
《また会おう。我が■■■》
やっぱ変なフラグ立ってねえ?
こうして俺たちは惑星アトリームから惑星ベザードに転移したのだが、そこでちょっと予想外の出来事が待っていたのであった。
さて、この後夜霧さんはどうなるでしょう?
A)裏遊戯みたいに表に出てくる。
B)あれ、あそこに居るのはミストさんじゃないか。じゃあ俺は?(別人憑依)
C)脳内会話安定。現実は非情である。
正解者にはアトリーム名物詰め合わせをプレゼント。