エレメンタルジェレイド──蒼銀の同契者── 作:isizu8
1-1
「ここは……」
目覚めたライは軽く周囲を見渡す。その目に映るのはCの世界へと繋がる遺跡の内側。
「そうか、僕は生きているのか」
心臓から少しずれた位置にできていた、塞がりきっていない胸元を見てそう呟く。
ライは例の計画、ゼロ・レクイエムで死ぬつもりであった。当初はルルーシュが皇帝として世界の悪意を背負い、ゼロに扮したスザクがルルーシュを討つ筈だった。しかしライはそれを認めず、彼らにギアスを掛け自身が皇帝となる事を認めさせた。
何故ならルルーシュが悪逆皇帝として死んでいくこと、そしてスザクにとっても親友であるルルーシュを彼自身の手で殺させることにも納得できなかったからだ。だから二人にギアスを掛けライ自身を討つよう仕向けた。
しかしそれとは別に、彼の心の奥底には自分を終わらせたいという願望が確かに存在していた。
「これが君の
コード保持者になったわけでもないし、あのまま放置すれば、間違いなく死んでいた。しかし、こうして生きているということは、誰かが意図的にライを生かしたということだ。そしてその正体はルルーシュ達なのだろうと彼は悟っていた。
彼らが自分に生きることを望んだのなら、そうするしかないのだろう。二人にもそうしたのだから……。今度は自分がその願いを聞く番だ。そうやって無理矢理自分を納得させようとした。
「…………」
しかし、今のライは新たな人生を生きることを決意しきれないでいた……。
◆
ライは複雑な気分のまま起き上がった。周囲を見渡す。どこかの遺跡のようだ。その内装はどこかCの世界の遺跡に似ていた。そして不意に人の気配を感じたライは遺跡の奥深くに注目した。するとそこには一人の女性が倒れていた。
「生きている……」
その女性に近づき脈を測る。とりあえずの無事を確認したライは一安心し改めてその女性に注目する。薄紫の長い髪をしており、端麗な容姿をした女性だ。
そして特に目を惹かれるのは額の部分にある宝石だった。額に埋め込まれているのだろうか? 気になってその宝石に触れる。すると……。
「んっ、うぅ……」
その女性が薄く目を開け、ライを見る。
「こ、ここは……?」
彼女は起き上がる不思議そうな目でライを見つめ口を開いた。
「君はここで倒れていたんだけど、何かあったのか?」
「……わからない」
「えっ?」
「わからないのよ。何も……」
彼女はしばらく呆然とした後、そう答えた。
「(記憶喪失ということか)」
彼女の表情から嘘を言っている可能性は低い。
「何か憶えていることはないかな? 何でもいいんだ。例えば……名前とか」
「……イヴ。それ以外は、分からない」
出来れば今の状況を把握しておきたかったが、分からないのであれば仕方がない。名前を聞き出せただけでも良しとしよう。そう割り切りライは他の質問をした。
「それじゃあ、イヴ。身体は大丈夫かな? どこか痛い所は?」
「……平気」
「そうか……」
「ねえ、貴方は誰?」
今度は彼女が質問をする番となった。まだ名乗ってなかったことを思い出し改めて自己紹介した
「そう言えばまだ名乗ってなかったね。僕はライだ、よろしく」
「貴方が、ライ?」
ライの名を聞いたイヴの反応は、初対面の反応とは思えない、まるで探し人を見つけたようなものであった。
「あ、ああ。そうだ」
「そう、貴方が……」
「……」
これ以上話せることはなく、暫しお互い無言になっていった時、遺跡の外から大きな物音がした。
「君はここにいて。僕が様子を見てくるから」
何かがこの場所に迫っている。身の危険を感じたライはイヴにそう言い残し、一人遺跡の外へ出ていった。
「ライ……あの人が、私の、契約……」
一人残されたイヴがそう呟いた。
◆
ライが外に出るとそこには見渡す限りの森林が広がっていた。しかし、そこにあるはずの木が無造作に倒されている。その数は増える一方だ。その原因の元を目にしたライは驚愕した。
「……あれは?!」
大型の獣が一匹、周辺の木々をなぎ倒していた。生身の人間ではまともに倒せそうではない大きさだが、だからと言って諦めるわけにもいかない。自分一人ならまだしも、この遺跡の奥にはイヴがいるからだ。彼女だけは守らないと。イヴは出会ったばかりの人物だが、記憶喪失という状態で放っておく訳にもいかない。
今手持ちにあるのは銃とナイフ、そして靴に仕込んでいる煙幕。あの獣を相手にするには心もとないが、奴の注意を引き付け、イヴを逃がす時間ぐらいは稼げるだろう。いくつかの戦闘パターンを考えていると、やがて獣がライに気づく。
「生身の戦闘か……昔に戻った気分だな」
ライは覚悟を決め、戦闘態勢に入る。その時だった……。
「ライ」
イヴが遺跡から出てライに声を掛ける。
「イヴ!? どうして……」
ライが注意をそらした瞬間、獣が彼らめがけて突進してきた。
「……危ない!」
ライは急ぎイヴを抱きかかえ回避する。しかし、避けきれずに彼の背中に傷がついた。
「っ……! だが、これくらいなら!」
幸い遺跡の中に逃げ込んだので、あの巨体ではすぐには入っては来れない。だが、ずっとこの場所にいたところであの獣がいなくなる保証はない。最悪の場合、この遺跡さえも破壊しかねない。そうなれば二人そろって崩れる瓦礫に押しつぶされるだろう。
先ほどついた背中の痛みに顔をしかめるも、すぐに反撃に出るべく立ち上がる。すると不意にイヴがライの手を掴んだ。彼はその行為に驚きつつも、彼女を避難させようとする。
「イヴ、ここは危険だ。僕だけでは勝てるかどうか分からない。だから、急いでここから逃げるんだ! 時間は僕が稼ぐから」
ライの言葉を聞いても、イヴはその手を離さない。
埒が明かないと判断した彼はやむを得ず彼女にギアスを掛ける。
「"
2つの鳥の形をした光がイヴ目掛けて飛んでいく。しかし彼女はそれに従わず、掴んだ手を離さない。
「(ギアスが効いていないのか?)
「貴方を、死なせない。それが、私の契約……」
「契約? 何を言って……うっ!」
その瞬間、ライとイヴの周りを囲うかのように風の結界が出現する。彼女の額にある宝石が激しく輝き始めやがて彼女の姿が消える。
「イヴ!」
「大丈夫、私はここにいる」
ライの頭の中から声が響く。その感覚はギアスの契約時とどこか似ていたが、その時とは違い、不思議と温かい感じがした。
しばらくその感覚に身を任せていると、やがて彼女の
「私に合わせて……一緒に謳って」
お伽噺に出てくる魔術の詠唱ような言葉が、詩になって脳内に流れてくる。その詩をイヴに合わせて謳い始める。そして――
『蒼銀の心、風を纏いて、契り
二人の