エレメンタルジェレイド──蒼銀の同契者──   作:isizu8

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「……この姿はっ!?」

 

 ライを覆っていた風が消え、彼は自身の姿を確認する。するとその手には、二振りの剣が握られていた。

 

「イヴ……なのか?」

「そうよ……これが、私」

 

 ライの肩にイヴが寄り添う形でそう答えた。薄く透けているその姿はまるで霊体のようだった。

 

「(イヴ、君は一体……いや、今はそれよりもっ!)」

 

 余りの出来事に戸惑っていたライだったが、今の状況を思い出し次の行動に移る。

 

「まずはあの獣をどうにかしないと! イヴ、力を貸してくれ!」

「ええ」

 

 獣を退けるため、ライ達は遺跡を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 遺跡を出たライ達に反応し、獣が彼を目掛けて襲ってきた。ライはその突進を避けつつ敵に牽制の一撃を与える。動きは単調なので避けることは難しくない。しかし、避けられた理由はそれだけではない。

 

「(剣が……軽い!)」

 

 二つの剣を持っているにも関わらず、それに見合わないほどその装備は軽すぎた。だからこそあの獣の攻撃を軽々と躱すことが出来たのだ。そして……。

 

「グオオォォォ!」

 

 獣が苦しそうに呻き声を上げる。牽制のつもりで与えた一撃だったが、ライが想定した以上の切れ味のようだ。重さも無く、かつ威力も高い。ライは武器に姿を変えたイヴの力に、内心驚きつつも次の手を考える。

 当初は慎重に戦うつもりではいたライだったが、先ほどの牽制で、思った以上のダメージを与えたことを切っ掛けにその考えは変わっていた。何より……。

 

「(うっ……そんなに長く持ちそうもないな)」

 

 満身創痍で目覚めた挙句、先ほどの獣に付けられた背中の傷が疼き、ライの体力をどんどん奪っていく。例え自分がどうなろうと、イヴだけは守ってみせる。そう決意を新たにし、ライは剣を構える。

 

「まだ体力があるうちに、一気に決める!」

「それなら……」

 

 ライの意図を汲み取り、イヴがそれに応える。その瞬間二つの剣が合体し、一つの剣に変化した。

 

「さっきのよりも剣先が長く、大きい。これなら一気に決められるか……」

 

 獣も脅威を感じたのか、警戒してその場から動こうとしない。互いに睨み合いが続く中、最初に動いたのは獣の方だった。敵がライ目掛けて再び突進してくる。一方、ライは剣を構えたままその場から動かない。剣の間合いに入るのを待っているのだ。

 そしてその距離まで近づいたところで、今度はライの方が仕掛ける。相手の勢いを利用して、下からの切り上げを行う。

 

「グオォォォォォォ!!!!」

 

 それは見事に獣を捉え、うめき声を上げ大きくよろめいた。その瞬間、ライは大きく飛び上がり……。

 

「終わりだっ!!!」

 

 獣の頭上から一気に剣を振り降ろし、そのまま一刀両断にした。獣は上半身と下半身に分かれ、その場に崩れ落ちた。獣の絶命を確認したライは一息吐く。その瞬間、ライの手にしている剣が姿を変え元の姿に戻る。

 

「イヴ、君は一体――」

 

 イヴにそう問いかけると、彼女は意識を失い倒れ、ライは彼女を受け止めた。

 

「眠っている……疲れたのか?」

 

 あれだけの威力を発揮する武器に変身したのだ。なので変身している間は、体力を消耗し続けているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 ライはあれから、イヴを抱え安全に休める場所を探した。街や村などがあればいいが……。

 ライも疲弊した状態で目覚め、突然戦闘を行ったことにより、かなり体力を消耗していた。しかし、戦闘が思いのほか早く片付いたためイヴを抱え歩く程度の体力は残されていた。だが、それももう限界に近い。そろそろ倒れそうになったその時、遠方に民家らしきものが見えた。

 

「あと一息か……」

 

 今にも倒れそうなライは残された力を振り絞り、その民家へ向かって歩き出したのだった。

 

 

 

 

 

 

「あの、すみません……」

 

 民家にたどり着いたライは近くにいる女性に声を掛ける。

 

「ど、どうかしましたか? 酷くお疲れのようですが……?」

「お願いします。彼女を……休ませて……あげて、くだ、さい……」

 

 ライはその女性にイヴを預けた直後、その場で力尽きた……。

 

 

 

 

 

 

 一方その頃……。

 

「イヴ様がいない!? どういうことだ、オーファス!」

「言葉の通りだ、ジルテイル。イヴ様が玉座から姿を消した」

「へぇ……」

 

 エディルガーデンの玉座の間にて……誰も座っていない玉座を前で、三人の女性が話をしていた。

 一人は、オーファス。メガネを掛けた茶髪の女性で、基本的には冷静沈着であり、今回の事態に対してもあくまで平静としている。

 もう一人は、ジルテイル。銀髪の長い髪が特徴であり、イヴが姿を消したことに激しく動揺している。

 そして最後の一人が、アジェンナ。桃色の髪をしており、手元には常に不気味な兎の人形を抱えている。今回の事態に対しどこか楽しそうに笑っている。彼女たちは全員エディルレイドであり、このエディルガーデンでは高位の立場にいる。

 

「まぁでも、私たちの目的は変わらないんでしょ? 七煌宝樹(しちこうほうじゅ)さえ捕まえれば、あんな死にかけの女王様なんてどうなっても――」

「アジェンナ、貴様!」

 

 アジェンナの言葉にジルテイルが激高する。

 

「落ち着けジルエイル。それにアジェンナも……イヴ様に対する侮辱はよせ」

「はぁーい♪」

「くっ……」

 

 オーファスに窘められるも軽薄な態度を崩さないアジェンナ。そしてそれを不愉快そうに睨むジルテイル。その様子にオーファスはため息を吐き、2人に決定事項を伝える

 

「七煌宝樹と同じように、イヴ様もまたどこの馬の骨とも知れぬ人間と同契(リアクト)しているかもしれない。我らエディルレイドが、薄汚い人間どもに使われるなど……あってはならない」

 

 二人は黙ってオーファスの続きの言葉を待つ。

 

「あくまで我らが優先すべきは七煌宝樹の捜索と、同契した同契者(プレジャー)の抹殺……。だが、それと並行しイヴ様の捜索も行う。分かったな?」

「りょうか~い♪」

「ああ。すぐに捜索隊を出す!」

 

 オーファスの決定に二人も従い、行動を開始するため玉座の間から立ち去る。

 

「七煌宝樹に続いてイヴ様まで人間に……それだけは絶対に許されない」

 

 一人残ったオーファスがそう呟いた……。

 

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