美神の副団長は苦労人   作:金鳥

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 大変長らくお待たせしました。


こうして彼等の運命は変わった5 

 

「はぁ~・・・良い湯だニャー」

 

 

 ダンジョンのとある隠しエリア。

 温泉が湧き出るその場所を偶然見つけたアーニャは久しぶりの入浴を楽しんでいた。

 

 色々と想定外の事はあったが予定よりも楽に稼げたしこうして温泉に入ることも出来て気分は最高だ。

 思わず鼻歌も歌ってしまう程彼女の気分は高揚していた。

 

「ミア母ちゃんの料理は恋しいけどまだ休暇は残ってるしもう1日くらいここで過ごしても良いかもしれないニャー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・なお、呑気にしている彼女は自分がやらかした事に全く気が付いていない。

 

 現在進行形でオラリオが壊滅しかねない程危険な状況であることは勿論、自分の兄が遠く離れた地でヤバいモンスターと訳の解らない理由で戦うことになっている事も知らない。

 

 

 

 そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんのアホンダラァァアアアア!!私の娘に手ェ出したらどうなるか解ってるんだろうねぇぇええ!!!」

「■■■■■~~ーっ?!?!」

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・帰りが遅いことを心配したミア母ちゃんがダンジョンに突貫してデルピュネをぶん殴っているということも当然、気付いていなかった。

 呑気に風呂入っている場合じゃ無いぞアーニャ。

 心配掛けといて実は風呂入って寛いでましたとバレたら確実にミア母ちゃんからの鉄拳制裁待った無しである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっ、ミア母さん!アーニャは無事だから落ち着いてって言ってるでしょ!」

「ミア貴様!シル様をダンジョンまで引きずって連れて来るとはどういうつもりだ!」

 

 

 

 ・・・なお、何故かとある酒場の従業員が暴走するミアを止めようとした身体を張った結果ダンジョンに引きずり込まれていた。

 偶々その場面を目撃した白エルフが慌てて追い掛けたが結局デルピュネと対峙するまで追い付けなかった模様。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

「・・・という訳でしてその、うちの前団長がダンジョンに突貫しました」

「えぇ・・・」

「なんと・・・」

「あー・・・」

「・・・相変わらずだな」

 

 

 

 ところ変わって再びザルドの病室。

 オッタルのやらかしに頭を抱える彼等を申し訳なさそうに訪ねたヘグニ。

 見舞いに果物の詰め合わせを持って来た彼はそれを渡しながら気まずそうに身内のやらかしを告げた。

 

 

「・・・よくよく考えてみたら彼女がいたねそういえば」

「引退したとは言え強さは健在。何より闇派閥が撤退した以上、酒場の守りに付きっきりになる理由は無いな」

「しかしまさか従業員の為にダンジョンへ突貫するとはのう」

「・・・一応今の最大派閥だろうフレイヤの所は?オッタルといい色々と大丈夫か?」

「・・・大丈夫だったら俺みたいな根暗がこうしてリヴェリア様達の所へ謝罪と報告の為に来ることは無いんですよね。うぅ、森に帰りたい」

 

 デルピュネの迎撃に第1級冒険者が宛がわれる事は確定だがアルフィアの襲来にも備えなくてはならない為、誰をダンジョンに派遣するかはこれから話し合って決める予定だった。

 だがその前にダンジョンへ突貫した戦力が2人。

 

 連携もクソも無い事態にフィンは苦笑いするしかなかった。

 それはそれとして哀れヘグニ。

 

 現在地上にいるフレイヤ・ファミリアで1番地位が高いのが彼である故にこうして謝罪役を押し付けられたのである。

 俗に言う陰キャな彼にとって王族であるリヴェリアと顔を合わせるのはかなりハードルが高いし身内というか団長が盛大にやらかしてくれやがった事もあって色々と精神的にキツかった。

 

 流石に哀れに思ったザルドが空気を変える為に見舞いの果物からリンゴを手に取って口を開く。

 

 

「見事なリンゴだな。この情勢で良く手に入った物だ」

「確かに、これは良いリンゴだ」

「酒にしたら美味そうじゃのう」

「これはもしかして、彼女達が作ったのかな?」

「う、うん」

 

 

 見舞いの品を褒められたヘグニ。

 だがその顔は何故か気まずそうである。

 

「そっか、元気にやってるんだね彼女達」

「最初はどうなるかと思ったが今回の大抗争を考えるとむしろあの時ああなって良かったのかもしれんのう」

「彼女達?あれってなんだ」

「ああ、うん。ちょっとね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「立ち直ってくれたみたいで良かったよ、ディース姉妹」

 

 

 

 ◆一方その頃、アフロ様。

 

 

「~~~っっっ」

「あ、アフロディーテ様!頑張って下さい!」

 

 

 アフロディーテは限界を迎えていた。

 数日に渡る魅了の行使。

 眷属の支えがあったとはいえ全知零能である彼女がアンタレスを抑え続けることは厳しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・と、言う訳では無い。

 いや、確かに体力的にキツいと言えばキツいのだが今アフロディーテは命とは別の物がピンチだった。

 

 

 

 ◆同時刻、アレン一行

 

 

 

「・・・」

「どうしたアレン、先程から黙り込んで?」

「何か気になる事でもあるんですか?」

「いや、ちょっとな」

 

 

 

 アンタレス討伐の為に村で物資を補給していたアレン達。

 なお、流石に恩恵無しで連れて行くことは危険な為ベルは今アルテミスに恩恵を刻んで貰っている為ここにあるのはレオンとアレン、そしてレフィーヤだった。

 

 とはいえこんな田舎にエリクサー等の高級な薬品があるわけが無く、保存食やその他旅に必要な物を買っていたのであるがある物を見たアレンが何かに気が付いたらしい。

 

 

 

 

 

「・・・なぁ、確かアルテミス様は3日前にこの村に着いたんだよな?」

「そう言っていたな」

「でもってその前にアフロディーテ様を捕まえてアンタレスの足止めに置いてきたと」

「魅了が使えるから足止めは余裕だろうと仰っていましたね」

 

 

 

 実際はそんなことは無いのだがそれはさておき。

 何故か気まずそうな、それでいてとてつもなくマズいことに気が付いたように顔が蒼ざめて冷や汗もかき始めたアレン。

 

 そんなアレンを不思議そうに、それ以上に不安そうに見てくる2人に対してアレンはその懸念を口にした。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・神って数日間トイレ行かなくても大丈夫なのか?」

「「・・・あ」」 

 

 

 

 

 アレンの視線の先には旅先でそういう事をした後に使う臭い消しが置かれていた。

 2人もそれを見て察した。

 

 あ、これ女神様の尊厳大ピンチでは?

 

 

 

 

 

 ◆尊厳が大ピンチのアフロ様

 

 

 

「・・・と、トイレ行かせてぇ(涙目)」

「気持ちは解りますが耐えて下さい!今貴女がこの場を離れたら下界は終わりますし耐えられなかったら貴女の尊厳が死にます!!!」

 

 

 

 美神の尊厳、大ピンチである。

 神とて飲み食いはする以上当然生理的なそれもあるわけで、数日間もそれを我慢するのははっきり言って無理だった。

 

 つまり、限界である。

 

 

 

「~~~(涙目でプルプル震えながら眷属を縋るように見る)」

「ッ、(ごめんなさい無理ですと首を振る)」

「???(え、こいつら何やってんのという顔のアンタレス)」

 

 

 

 理解は出来ないがマズい事態が起きていると察したアンタレス。

 理性は1度停戦しておけと告げてくるが悲しいことにアンタレスはモンスター。ダンジョンにより植え付けられた神への殺意、即ち本能がそれを許してくれない。

 

 ちなみにアンタレスは捕食機能はあるが出す方の機能は無いのでアフロディーテに何が起きているのか理解出来ていない。出産機能はあるがそれとは違うアレなので仕方が無いが、もしアンタレスにその機能があれば理性がフル稼働して本能を抑えつけていただろう。

 一応、アンタレスにはそれなりに知性があるのだ。

 

 

 

「☆♪ §◎●◯◆♬♯♭✓、っッーーー!!!・・・・・・・・・・・・・・・・( ・_・)」

「「あ、アフロディーテ様ぁぁああーーー!!!」」

 

 

 声にならない声を上げながら悶えていたアフロディーテ。

 そんな状態であるにも関わらずアンタレスへ魅了を掛け続けていたのは善神としての矜持故か。

 美の女神としての誇りよりも下界を、子供達を守るという意思が強かったのである。

 

 ・・・だが、それも限界。

 何かを堪えるような苦悶の表情はやがて全てを諦めたかのように完全なる無表情へと変わった。

 その顔には本当に何の感情も浮かんでいない。

 完全なる、無である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「・・・え、何/ニャこの状況」」

 

 

 

 

 ◆同時刻、オラリオにて

 

「「ん/あら?」」

 

 闇派閥が逃げ出した為、即座に活動を再開したファミリアが2つあった。

 農業系最大派閥のデメテル・ファミリアと水産系最大派閥のニョルズ・ファミリアである。 

 ニョルズ・ファミリアは厳密に言うと都市外のファミリアだが諸事情あって数年前からオラリオに半分所属しているような扱いになっていた。

 

 大抗争により食糧の補充が出来ず満足な食事を取れていない子供達の為に2柱はすぐさま自分達の眷属を引き連れて都市外の拠点からオラリオへ食糧を輸送するべく動いたのである。

 

 そんな2柱はふと、何かを感じ取り空を見上げた。

 そして、最近恩恵を与えた半所属状態の子供の顔が何故か頭に浮かんだのである。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・クロエ?」

「・・・ルノア?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆救世主、爆誕

 

 

「ウオオオオオーーー!!!」

「何でミャーがこんな目にぃぃいいいいーーー!?!?」

「嘆いて無いで手を動かせバカ猫ぉおおおーーー!!」

 

 

 【黒猫】クロエ・ロロ、【黒拳】ルノア・ファウスト。

 まさかの参戦である。

 

 ◆回想

 

 最近都市入りした2人だが、オラリオ内で仕事が無かったので出稼ぎの為に大抗争勃発前から都市外に出ていたのである。

 厳密に言うと、仕事もとい暗殺依頼自体はあったのだが、

 

 

『フレイヤ様に不埒な欲望を向ける男神を送還して下さい』

『シル様のスカートを捲ろうとしたガキを2度と泣いたり笑ったり出来ないようにして下さい』

『団長に色目を使う雌共を駆逐して下さい』 

『職場環境を改善してくれない猪団長を去勢して下さい。どうせ使う予定無いでしょうし』

『遠征帰り、久し振りに食べられるとワクワクしながら屋台に行ったら目の前で残りのじゃが丸くんを買い占めた人を殺して下さい。やっと食べられるというその思いを支えに頑張って遠征してたのに心が折れました』

『アイズたんを泣かせたゴミを地獄に落として下さい。それはそうとジブン、ウチの子供にならん?』

 

 ・・・うん、なんか違う。

 後ろ暗い仕事をやって来たので依頼人が抱く負の感情には慣れてきたつもりだったが、これは違う。

 今まで経験したことが無い、比喩表現すら浮かばない類の負の感情に溢れた依頼しか無かった。

 

 無駄に報酬は良いのだが、こんな依頼受けたら自分の評価・評判が色々とアレなことになって仕事が激減するか同じ類の変な形でメンタルをゴリゴリと削ってくる仕事しか入って来なくなる予感しかしないので2人は依頼書をそっと暖炉の火に焼べたのである。

 

 灰になっていく依頼書と燃え盛る火を見つめる2人の目が死んでいたのは余談だ。

 だが働かなければ食って行けない。

 それなりに貯蓄はあるが稼げる時に稼いでおかないといざという時困るということを基本的に根無し草だった2人は知っていた。

 

 新しい主神は生産系ファミリアということもあり、仕事を探している2人にアルバイトでもしないかと誘ってくれたが後ろ暗い仕事をしてきた自分の事情を知った上で親切にしてくれることに喜びはあれど戸惑いが大きく、断ってしまう。

 

 そして散々悩んだ挙げ句思い付いたのが都市外でのモンスター退治だ。

 ダンジョンと比べて都市外のモンスターは弱いが、偶に脅威的な強さを持つモンスターがいる。

 それでもレベル4の自分であれば倒せる可能性は高く、一応善行の類なので新しい主神に迷惑が掛かる事は万が一にも無いだろうと考えた2人。

 

 そんな訳で最近強いモンスターが現れたという場所に近い町へ向かったのである。

 予想通りその町では突如現れたモンスターを退治してくれる人間を募集していた。

 

「(なんだこの派手な女)」

「(何ニャこの女子力皆無な女)」

 

 そこで初めて顔を合わせた2人は最初、お互いにあまり良い印象が無かった。

 なんとなく同業だと解ったということもあるが、趣味嗜好が違うことも察したからである。

 

 

「「((けどまあ、1人でやるのはあれだったし組むのも悪くないか/ニャ))」」

 

 対人特化で鍛えてきた2人はモンスターとの戦闘経験が少なく、如何にレベル4とはいえ油断は禁物だと解っていた。

 そんなこんなでやけに数が多い蠍型モンスターを討伐し始めて数日後、町の病院に入院していたアルテミス・ファミリアの団長が意識を取り戻したのである。

 

 そして伝えられる、古代のモンスターの復活。

 アンタレスの特性も説明され、いくら退治してもキリが無くこのままだと物量差で押し切られると判断した2人。

 幸いにも神アルテミスがオラリオへ救援を呼びに行くと言っており、その間アンタレスを足止めする宛もあるとの事だが油断は出来ない。

 

 本調子では無いがアルテミス・ファミリアも上級冒険者の団体であるため町の防衛は可能であり、レベル4の2人が足留めに加わった方が救援が来るまで保つ可能性が高かった。

 

 とはいえ、そこは裏稼業の2人。

 あくまで大切なのは自分の命であることに変わりは無い。

 いかにレベル4とはいえ正面から戦えば負ける可能性が高いと考えた2人は毒や爆弾等を使った時間稼ぎとアンタレスの情報を集めることに専念する方針で行くつもりだった。

 

 

「なのになんで美神がいてミャー達が正面から戦う羽目になるんだニャーーー!?」

「魅了まで使いやがってあのクソ女神ぃぃいいいいーーー!!!」

 

 だが、アンタレスに対峙していたのはまさかの美神という考慮外の事態。

 

 

 

 思わず固まってしまう2人。

 その隙を見逃さずアフロディーテは魅了を使い、命じた。

 

「あんた達、私が戻るまでこいつを足留めしなさい!けど絶対に死ぬんじゃないわよお礼出来ないから!!」

 

 眷族に運ばれて遺跡から離れていくアフロディーテ。

 ちょっ、おま!と呼び止める間もなく去って行く美神達を呆然と見送るクロエとルノア、ついでにアンタレス。

 

 暫しの沈黙、そして───。

 

 

「・・・ウオオオオオーーー!!!」

「「な、なんでこんな目にーーー!?」」

 

 

 ◆

 

 本能が強いモンスター故か、真っ先に正気に返ったアンタレスはアフロディーテを追撃しようとした。

 それを阻止せざるを得なくなった2人は強制的にほぼ真正面からの戦闘を余儀なくされる。

 

 真正面からターゲットを始末してきたルノアがヒットアンドアウェイでひたすらに足へ拳を叩き込み、クロエが毒の入った瓶や爆弾でその隙を作り続けた。

 

 本当なら魔法も使いたいクロエだが、使った所で幻影ではあまり役に立たないのでアイテムによる撹乱を必死に行うしか無い。

 ルノアもルノアで、人間とは比べ物にならない程頑丈なアンタレスに手を焼いていた。

 全力以上の力を込める勢いで無いと真面にダメージが通らず、しかも殴る度に拳が傷む。だがクロエのアイテムが尽きる前に出来る限りダメージを与えなければ自分達は蹂躙されるしかないと解っていた為、血が流れる拳の痛みを無視しながら殴り続けるしかなかった。

 

「バカ猫、あとどの位保つ!?」

「アイテムの残量から見て10分!」

「10分!?それじゃ足1本も折れないぞ!?」

「毒が効かないんだからしょうがないにゃ!!けど手はあるからもう少し待つにゃ!!」

「あー、もう!信じるからね相棒!!」

 

 僅かな隙を突いてポーションで傷と体力を回復。そして治った拳を再び握り締めて突貫した。

 

「オラアアッ!!」

「ウオオオオオーーー!?」

 

 

 

 彼女等の奮闘は続く。

 

 

 

 

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