美神の副団長は苦労人 作:金鳥
新年明けましておめでとうございます。
更新が遅い、拙い作品ですが今年も何卒よろしくお願い致します。
アルフィア、まさかの完治。
それは良いのだが代わりにオラリオが大ピンチに。
「いや、どうせ死ぬのはあの猪だから問題ねぇだろ」
「一応君の所の団長では?」
「碌に仕事しないで強くなる為に鍛錬しかしてねえんだからむしろ嬉々として立ち向かう所しか想像出来ねえんだよ」
「オッタル、お前・・・」
旧友の人望が無さ過ぎる。
「それよりあの蠍の化け物なんとかするぞ」
「そうです先生、早く女神様を助けないと!」
「ぼ、僕も頑張ります!」
「全くアフロディーテはいつも苦労を掛けさせてくれるな・・・」
いやそれ君達が言う?
特にアルテミス様、やれやれなんて言ってますけどアフロディーテ様がアンタレスに喰われたの貴方が原因ですからね?
「(お前等全員同じ穴の狢だよ)・・・それより、あのモンスター様子がおかしくない?」
「確かに妙だにゃ」
アンタレスはアフロディーテを呑み込んでから全く動かない。
突然の出来事で呆けているのかと思ったがそれにしては動きが無さ過ぎる。
「・・・ん?あの蠍、顔色が悪くなってないか?」
「いやアレン、いくらなんでもモンスターの顔色が悪くなるなんてことは・・・あったな」
「冷や汗もかいてますね」
「・・・ついでに小刻みに震えてませんか?」
「・・・アフロディーテはよっぽど不味かったのか?」
アルテミス様がサラッと失礼な事を言っているが、確かに様子がおかしい。
よく考えてみれば先程まで呑気に談笑?していて隙だらけだった自分達を前にして襲ってこないのは明らかに異常。
アルテミス様というモンスターにとって不倶戴天の敵がいるのにも関わらずだ。
「・・・そういや、あのモンスターってどういう能力持ってるんだ?」
「私も詳しくは知らないのだが、喰われたアフロディーテが送還されないということはまだ無事ということだろうな。ということは、封印とかの類か?」
「生きたまま・・・なら吸収?まさか神の力を使えるとか?」
「可能性は零では無いが、ならなんで動かないんだ?」
「・・・というかあの蠍、なんというか物凄く気分悪そうじゃないですか?」
滝のように冷や汗を流し続けるアンタレス。
まるで酒を飲み過ぎて吐く寸前の飲兵衛のようだ。
「そういえばアンタレスには単独で子供を産む能力もあったな」
「え、じゃああの蠍は雌なんですか?」
「いや、恐らく性別の無い単位生殖が可能なモンスターだろう。あれと番になれる生物がいるとは思えないしな」
「・・・ん?確か女神アフロディーテは美神だったよな?」
「一応そうだな」
「(一応?)・・・ということは魅了があの女神の能力ってことか」
「何か気付いたんですか?」
なんだろう、妙な胸騒ぎがしてきた。
「単位生殖で性別が無いってことは異性への感情、愛とか恋とかの概念が無いってことだよな?」
「まあそうだな」
「・・・つーことはあの蠍にとって魅了の力って訳の解らない劇物なんじゃねえか?」
「「「「「「・・・あ」」」」」」
言われてみれば、確かに。
「つまり今アンタレスは」
「使い方処か得体の知れない物を取り込んじまってパニックになってるんだろうな」
「ついでに言えば私達神の力は如何に漆黒のモンスターであっても完全に制御することは出来ず、取り込んだ所で最悪抑え込む為に本調子では無くなるだろう」
女神アフロディーテ、足止めの件といいどうやら対アンタレスとしては最適の女神だったらしい。
「ならこのまま様子を見るか?アレンの仮説が正しければ自主的に吐き出す可能性が高いし、吐き出さなければ自滅するかもしれないからな」
「あの、それアフロディーテ様が悲惨なことになるのですが」
「死にはしないから問題無い」
なんでこんなにアフロディーテ様に対して辛辣なんだアルテミス様。
え、もしかして相当恨みがあったりする?
「・・・天界で散々人の事を高潔過ぎる喪女だとかポンコツだとか委員長(笑)等と揶揄ってきた挙げ句自慢するようにヘファイストスとのイチャイチャを見せ付けた癖に加減を間違えてヤンデレ化したヘファイストスから逃げる囮にした上に詫びと称して私の領地にキャバクラを建造して昼夜問わず男神達とフィーバーされたら怒らない方がおかしいと思うのだが?」
「「うちの主神様がマジでごめんなさい!!?」」
「「「「「「うわあ・・・」」」」」」
想像以上にやらかしてたよあの女神様。
そりゃキレるわ。
「どうせ死にはしないんだから尊厳が木っ端微塵になるくらい問題無いだろう?」
「「・・・すいませんアフロディーテ様。大人しく罰を受けて下さい」」
「なんかすげえぐだぐだだな」
「私は胃がとても痛いよ」
「エリクサーいるか?下手な胃薬より効くぞ」
「・・・うん、貰うよ」
◆オラリオにて
「なんか親指の疼きが洒落にならないくらい強くなってるんだけど、もしかして近くにもうアルフィア来てる?」
「フィンの親指がそうなるということはほぼ間違い無いだろう」
「もう少し飲んでいたかったのじゃが・・・」
フィンの言葉を聞いたガレスとリヴェリアは腹を括らざるを得なかった。
もう少し猶予があると思っていたのだが、フィンの親指に対する信頼は強い。
まず間違いなくアルフィアは近くに来ている。
「・・・」
フィンのそれを補強するように、ザルドもまた長年の付き合いで習得せざるを得なかったアルフィア限定の危機察知能力が警告を発している。
というか、冒険者としての勘が死の気配を強く訴えかけてきている。
オッタルもザルド程では無いがかつてヘラ・ファミリアのあれこれに巻き込まれた経験からいよいよその時が来たのだと察知した。
まあ最も、現在進行形でアミッドとヘイズから正座で説教を受けているので格好がつかないのだが。
そして誰も彼もが都市外から迫るアルフィアに対して最大の警戒をしていたからこそ、別の危険に誰一人として気付く事が出来なかったのである。
◆ダンジョン深層にて
誰もいない、モンスター達ですら狂い死に果てたその階層で蠢く影が1つあった。
神エレボスが立てた計画、神威解放による大災厄召喚の実行約束に選ばれた邪神である。
地上で神々が送還された気配を察知次第、それは計画を実行しその後は直ぐに護衛の眷族達と人造迷宮へ避難するつもりだった。
だが送還前にとある猫娘によるジャイアンリサイタルが勃発。
眷族達は発狂して気絶。
邪神も今まで気を失っていた。
これが神エレボスの計画が頓挫した理由だ。
つまり実はアーニャ、ファインプレーである。
「ア、ガ・・・ッ」
邪神は瀕死だ。
数日間の飲まず食わずは全知零能の神を死の淵に追い込んでいた。
そして何より、今も耳の奥に残るアーニャの歌声が彼の精神を苛んでいる。
それでも邪神は今まで必死に耐えた。
こんな形で終わりたくない、あの無味乾燥とした退屈極まる天界に帰りたくないという想いで生にしがみついた。
だがそれでも、限界は訪れる。
「グ、・・・ア?」
そんな彼の渇望は奇跡を手繰り寄せた。
それが何かは解らない。
だが、生死の狭間であがき続け研ぎ澄まされた邪神の直感が告げた。
今ここで送還されれば自身の心を数千年先まで満たす奇跡にして喜劇が見れると。
全知零能の神であれ見通せない奇跡。
彼はそれに賭けることにした。
◆邪神にとっての奇跡にして喜劇。その他にとっての絶望。
「ッこれは!?」
「まさかこのタイミングでか!?」
「一体誰が!?」
アストレア、エレボス、ヘルメスの三柱。
エレボスにとって寝耳に水過ぎる何それ知らん情報について話し合い、結局なんでそうなったのか解らんという結論に至った彼等はそのまま何となく一緒にいた。
どうせ俺送還されるし一応目的達成した祝いも兼ねて飲もうぜというエレボス。
色々と苦労させられたがアストレアと酒を飲むという滅多に無い機会を逃したくなくてそれに乗るヘルメス。
二人に呆れながらもエレボスを放置する訳にはいかないので仕方なく付き合う事にしたアストレア。
こんなタイミングで飲んでいる場合かと普段の彼女なら止めていたが、アストレアもまた疲れ切っていた為少しくらいなら良いかと流石に飲酒は控えるが参加した。
眷族達もいないので人目につかない所でなら大丈夫だろう。
そう思ったアストレアはふと気が付いた。
「ねえ2人とも、そういえば眷族の子達はどうしたの?」
「あー、俺の子供達、特にアスフィはちょっと働かせ過ぎてね。アルフィアへの戦力としては力不足だし休んでいるよ」
「俺の眷族は1人だけなんだが、顔は知られてないからオラリオを散策しているよ」
そういえばあいつの今後も考えておかないと行けないなと考えたタイミングでそれは起こった。
放出される神の力。
間違いなく神の送還だ。
しかも今度は自分達の足元、つまりダンジョンから発生している。
「かなり深い所で神が死んだのか?下手したら更に大災厄が生まれるぞ!?」
「・・・ねえエレボス」
「・・・なんだいアストレア?」
慌てるヘルメス。対象的にアストレアとエレボスは何故か落ち着いている。
いや、違った。
どちらも目が死んでおり頬も引き攣っている。
「多分今回送還される神がダンジョンから出て来る地上の場所ってあそこだと思うんだけど?」
「奇遇だなアストレア。俺もそう感じているよ」
「・・・いや、待て待て待てちょっと待て?もしかしてまさか・・・!?」
二人の反応を見てヘルメスも気が付いた。
その視線が、ある場所へ向けられる。
◆こんなことある?
万全の状態なら問題無かった。
だが二人は全力で戦った直後であり、怒らせてしまったアミッドとヘイズから回復して貰えない状態で正座をさせられ説教を喰らっていた。
それに1番早く気が付いたのはザルドだ。
慌てて立ち上がりアミッドとヘイズを突き飛ばしてその場から離した。
遅れて気が付いたオッタルだが、戦いのダメージと正座による足の痺れで行動が遅れてしまう。
様子を見に来ていたフィン達は二人から少し離れた位置にいたので避難が間に合った。
そしてとうとう、それが逃げ遅れた二人を襲う。
「ぬお!?」
「これは・・・!」
神の送還により天へと伸びる光の柱。
深層から地上までを貫くそれの威力は強大で直撃すればレベル7に至った2人でもただでは済まない。
だが、
「え、何アレ?」
「・・・報告を受けた大災厄のモンスターの特徴ほぼそのままなんじゃが」
「・・・傷だらけな所を除けばまさしくその物では無いか?」
丁度地上と深層の中間にいた大災厄ことデルピュネ。
ミア母ちゃんに散々ボコボコにされたのかお前よく生きてるな?という悲惨な状態で地上へと打ち上げられたそれは気のせいかちょっと泣いているようにも見える。
なお、デルピュネをボコボコにしたミアは
「考えてみればこんなことしてる場合じゃないね。私はアーニャを探すからヘディン、こいつはあんたがトドメを刺しな」
と言ってシルを担いでダンジョンの奥深くへと去って行った。
あまりの事に呆けてしまったヘディンはすぐに2人を追いたかったがデルピュネを始末しない訳にもいかないので魔法で速攻倒してから後を追うことを決めた。
だが呆けてしまったのが不味かった。
その僅かな時間で神の送還が生じ、デルピュネは巻き込まれてしまう。
ついでに
「・・・あれ、ヘディンも吹っ飛んでない!?」
「あやつ、ダンジョンであれと戦っておったから巻き込まれたのか!?」
「なんとかデルピュネを盾にしているから生きているが、下手したら即死だぞ!?」
なんか、鬼畜眼鏡も巻き込まれていた。
その光景を偶々目撃したヘグニ。
え?と呆けた彼は吹き飛ばされながらも必死に抗うヘディンと目が合う。
───なんでそうなったの?しかもオッタルとザルドまで一緒に。
───私が知るか阿呆!
視線で会話する2人。
「「「「いや、そうはならないだろ!?」」」」
ヘグニの隣で同じくその光景を目撃したガリバー兄弟はツッコミを入れた。
「いや、なっとるやろがい!」
「ロキ、急にどうしたの?」
「いやなんか急にこう言わなアカン気がしてな」
彼等とは離れた場所にいるにも関わらず何かを察知したロキは叫んだ。
神の送還に吹き飛ばされるデルピュネとそれに押し出されるようにして天へと打ち上げられていく3人。
なまじ漆黒の、神の力に耐性がある故に一気に天界へと吹き飛ばされるのではなく徐々に昇っていく。
当然第1級冒険者である3人はすぐに体勢を立て直しデルピュネを足場に脱出しようとする。
だがこの瞬間、3人は死を覚悟した。
ロキ・ファミリアの3人もヘグニもガリバー兄弟もそれを察知した。
何故ならあり得ないほど強大な魔力の高まりと殺気を感じたからだ。
「ま、まさか・・・!?」
ザルドはそれの正体に真っ先に気が付いた。
何故なら7年間もの間、すぐ側で感じていた嫌でも覚えのある魔力だからだ。
オラリオを一望出来る高さに吹き飛ばされたザルド達。
彼等と同じ高度で、地平線の彼方から強大な魔力と殺気の持ち主が凄まじい勢いで迫ってくる。
それは最初、豆粒程の大きさだったがすぐに輪郭が解るほど近くに迫って来ていた。
故にそれの正体はすぐに解った。
「あ、アルフィア!?おま、なんで空飛んで『半身喰らいし我が身の原罪』っておい待て!?」
そう、アルフィアである。
しかも既に詠唱を始めている。
殺意満々、ザルドを問答無用で殺す・・・というより最早消滅させるつもりだ。
アカンこれ、説得とか絶対無理。
全力で抵抗しないと冗談抜きに死ぬやつ。
3人は即座にそう判断した。
だが、結論は同じでも対応は異なった。
ザルドはデルピュネが盾になるように横へ跳躍。
振り返り様に詠唱を開始し、デルピュネで威力を削いだアルフィアの魔法を自分の魔法で相殺するつもりだ。
対してヘディンは下に向けて飛び降りた。
狙われているのはザルドで次にオッタル。
つまり自分は関係ないので2人から離れる事が第一。
そもそもレベル5の自分がアルフィアの魔法を喰らったら確実に死ぬので迎撃も無理。
逃走に全力を尽くした。
そしてオッタルは
『銀月の慈悲、黄金の原野───』
「は?」
「おい待て愚猪」
「お前、それは無いだろ!?」
「「「「あ、アホ過ぎる・・・」」」」
「強さに貪欲なのは知ってるが」
「流石に死ぬだろ」
「(思考が停止したリヴェリア)」
何故か全力で迎撃に向かった。
距離を取ることも無く、いやむしろ嬉々としてアルフィアへ向けて跳躍し詠唱を開始。
嘘だろお前!?と他の面々が驚愕するがそんなもん知ったこっちゃねえとオッタルは挑む。
フレイヤの事を除けば元々強くなることと食うことにしか執着が無い猪にとってこれは超えるべき試練でしか無かったらしい。
比較的見所がある小僧だと思っていたがこれはお前違うだろ!?とザルドはツッコんだ。
だってガチ切れしたアルフィアの魔法とかほぼ確実に死ぬ。
試練じゃなくて死刑である。
ザルドですら全力で直撃を避ける一撃へ嬉々として向かうとか勇気と蛮勇を履き違えてるとかいうレベルじゃねぇ。
だがもうこうなってしまったのなら仕方が無い。
同じレベル7になったオッタルの耐久ならあのヒーラー2人がいれば 最悪の事態は避けられるだろう。
まずは自分の身が優先だと判断したザルドは詠唱を続けるがふと気が付く。
「・・・(え、何これ知らん怖っ)」
「・・・のうリヴェリア。儂は魔法には疎いからよく解らんのじゃが、アルフィアの魔力やけに強大というかヤバ過ぎんか?」
「・・・安心しろ、私もそう感じている。本当にレベル7か彼奴は?」
「えっと、怒りで限界を突破したのかな?」
即ち、アルフィアの奴なんか強くなってね?という事実である。
いや、なんで?
「(いかん、このままでは死ぬ?!というかあいつから感じる気配が団長(マキシム)に近いんだが、まさかレベル8になってる!?)」
ザルドは震えた。
己の感覚が伝えてくる驚愕の事実を否定したかったが、恐らく正しい。
まず間違いなくアルフィアはレベルアップしている。
◆少し前に遡る。
学区を文字通り飛び立ったアルフィアは自分が完治している事に気が付いた。
理由はどうだって良い。
何故治ったのが今で妹は治らなかったのかと不条理に怒りも感じたがそれは一旦置いておく。
まずは何より、ザルドを制裁しなければならない。
怒りを飲む込む為に息を大きく吸って吐いたアルフィア。
気怠さ等無く、空気が美味いと感じる。
初めて味わう健康な身体の感覚を暫し堪能しているとふと気が付く。
聞き慣れた声が2つ、近くにいることを。
「ゆ、許してくれヘラ!覗きは男のロマンなんじゃ!」
「ふふふ・・・コロス」
その後、とある男神を捕らえたアルフィアは自分の主神にそれを差し出すついでに義息子にあった事を報告。
更にキレた主神が男神を締め上げるのを手伝いながらステイタスを更新して貰いレベルアップ。
そういえばオラリオで妹の出産に悪そうな奴等を磔刑にしてから何だかんだで更新して無かったなと振り返るアルフィアとヘラ。
地面に埋まった状態でそれを聞き震える男神は必死に自分の眷族へ祈る。
「(・・・逃げるんじゃザルド!!)」
◆男神の祈りは届かない。
『哭け、聖鐘楼!───ジェノス、アンジェラス!!』
そして、それは放たれた。
病さえ無ければレベル7に収まってなどいなかったと称され、ゼウスとヘラ両派閥の団長相手に一矢報いたこともある彼女が完治してレベルも上がっているとなれば当然その魔法の威力もそれ相応の物になる。
「ぬおおおおっ!?!?」
まずオッタルが一瞬の拮抗すら出来ず呑み込まれた。
「おのれ愚猪がぁぁああああ!!!」
そしてヘディンは直撃こそ逃れたものの、余波で地面へ向かって勢いよく吹き飛ばされる。
そもそもの原因であるオッタルを呪いながら地面へ埋まった。
「■■■■ーーーッ!?!?」
次にデルピュネがそれを喰らった。
元々アーニャのジャイアンソングに対抗するべく生み出された為に音への耐性があったデルピュネ。
だがそんなもん知ったこっちゃねえと言わんばかりにアルフィアの魔法は容赦なくデルピュネを削っていく。
一息に死ななかったのは凄いがデルピュネとしては苦痛が無駄に続いた為むしろ悲劇である。
生まれた理由もアレなのにミア母ちゃんにボコられ、神の送還で地上までの階層をその身でぶち破りながら打ち上げられ、そして今ヤバい女の魔法で生きたまま身体を削られていく感覚を味わっている。
「・・・イッソコロシテ」
悲劇の果て、デルピュネは知性と理性を獲得した。
その呟きを聞いた物はいない。
だが
『喰らえ、灼熱の牙!───レーア、アムブロシア!!』
放たれた炎の斬撃。
それがデルピュネを瞬時に焼き切り、トドメを刺した。
本来ならデルピュネが消滅してから放つ予定だった魔法。
だがザルドは予定よりも早くそれを放った。
デルピュネの嘆きが聞こえた訳では無い。そもそもアルフィアの魔法のせいで他の音など碌に聞こえない。
それでも、
「(あんな目をした奴を苦しめ続けるのは・・・っ!)」
絶望したデルピュネの瞳を見て咄嗟に身体が動いてしまった。
自分もアルフィアには散々な目に遭わされていた身である。
相手がモンスターとはいえ、つい同情してしまった。
「・・・アリガトウ」
聞こえないとは解っている。
それでも、感謝を伝えられずにはいられなかった。
その想いが小さな奇跡を起こす。
魔石を砕かれ消滅していくデルピュネの身体。
灰となっていくその中から小さい何かが飛び出しザルドへ飛んでいった。
生存を諦め目を閉じ静かに最期を待つザルドはそれに気が付かなかった。
そして
「「ザ、ザルドォォオオオオーーーッ!!!!!」」
叫ぶエレボスとアストレア。
「「「うわぁ・・・」」」
あまりの酷さに最早言葉も無いフィン達。
「「「「「「オッタル・・・とついでにヘディンが死んだ!!」」」」」」
オッタルのことは残当なのでどうでも良いがヘディンに関しては一応巻き込まれただけなので手を合わせて黙祷する5人。
「www」
なお、どっちも嫌いなヘイズはざまぁみろと抱腹絶倒していた。
そして、
「ダハハハハッ!・・・最高過ぎるだろコレ!!」
それら全てを間近で見届けた邪神はヘイズ以上に抱腹絶倒しながら天へと送還された。
彼にとって様々な事が複雑に絡み合って生まれた奇跡のピタゴラスイッチのような喜劇の果てに生まれた結果は満足いくものであったらしい。
この喜劇を胸にこれから先の長い神生を生きていけると天界へと送還された。
・・・まあ最も、散々遊び呆けていた邪神が天界で呑気に過ごせる訳が無い。
元々天界で押し付けられた仕事に忙殺されていた神々は勿論、エレボスの策略で送還された神々からも怒りを買った邪神は数日足らずで「イッソコロシテ」と嘆く羽目になるのをまだ知らない。
「・・・えっと、レベル7を瞬殺出来る冒険者が誕生したから結果オーライ、かな?」
「「そんな訳あるか/無いでしょう!!」」
「ですよねー」
なお、あまりにもアレな発言をしたヘルメスはエレボスとアストレアにツッコまれた。
「(・・・ヤバい、想定以上に不味いことになった)」