ディオスさんの精霊に導かれるままに、私は森の奥にある小屋のようなところへと辿り着いた。
「……こんなところに小屋が?それにしては、綺麗ね」
森の奥にあり、人が生活していた雰囲気など感じられないにも関わらず目の前の小屋はとても綺麗な状態が保たれている。
ここまで案内してきてくれた精霊は、私に納屋の中へと入るように誘導してきた。
私は、精霊の誘導に従い小屋の中へと入った。
小屋の中には、テーブルとその上には日誌のようなものが置かれているだけだった。
(……日誌?)
私はテーブルの上の日誌を手に取ると、一枚の紙が挟まっていた。
―ユリス様へ
この日誌があなたの手に渡っているということは、私の精霊は最後の願いを聞き届けてくれたということでしょう。
ユリス様が大きく成長なされた際にお伝えすると決めていたことをこのような形でお伝えすることをお許しください。
私の名前は、ディオス・バンハルト。王国最後の国王である、ユリウス・ヴァン・アッシュ様の近衛騎士でした。そして、ユリス様はユリウス国王の実の子供、ユーノアリス・ヴァン・アッシュ様にございます。
国王様の命令により、帝国との戦争が始まる前に私はユリス様の母であるエリーゼ様とそのお腹にいたユーノアリス様を辺境の村へとお連れいたしました。理由は定かではりませんが、側室であったエリーゼ様は王宮では隠された存在であったため戦争の前に逃がしたかったのだと思います。
そして、あの戦争の結果はご存知の通りです。戦争に負けた我が国は、帝国の占有地となり、国王様含め王族は捕縛、処刑されてしまいました。
私は王の命令により、あの村の村長としエリーゼ様とその家族を守っていくことが使命でした。しかし、あの日帝国によって襲撃を受け私はエリーゼ様たちをお守りすることが出来ませんでした。
なぜ、帝国があの村を襲ったのかはわかっていませんが、エリーゼ様のことがどこかから流出したと考えられました。そのため、ユーノアリス様の存在を隠さねばならず、このような形で真実をお伝えすることになってしまいました。
ユーノアリス様、あなたは王国の最後の希望です。
どうかその時までご無事で。
ディオス・バンハルト―
そう締めくくられた手紙を私は静かに置いた。
私は突然知った真実に困惑した。だが、それよりも勝る感情が心の中に渦巻いていた。それは恨みや憎悪をはるかに超えるものだった。
「……母さんとジルを奪ったのは帝国?」
ディオスさんが居なくなってから、私はずっと母と弟を奪った人物たちを探し続けていた。しかし、ただの子供である私には集められる情報にも限界があった。
そんな中、探し続けていたものが人ではなく国であったこと。その国が世界を牛耳る超大国であることに私は驚きを隠せなかった。だからか、私の頭は冷静だった。
(……私一人の力でどうにか出来ることなの?)
相手は超大国。そして、私は一人。
単純に考えてどうにかなる問題ではなかった。
現実に絶望するしかなかった私はもう一度日誌に目を落とした。そこには今の私にとって、何よりも重要なことが書かれていた。
王国の生き残りの貴族の居場所、そして私が頼るべき家のこと。
(ありがとう、ディオスさん)
私は日誌を静かに閉じると、小屋から出た。
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